原作通りにならない僕アカ   作:オリオリ

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皆さんの温かい言葉、本当にありがとうございます!
僕アカとBLEACHの小説は、応援してくれた人たちの為に続けることにしました。

今回から温泉旅行が終わるまでずっとオールマイト視点となります。
またもやオールマイトのキャラが崩壊してます。
それでもよろしければ、楽しんでくれると嬉しいです!


第十二話 温泉旅行の朝

 遂にこの日が来た。

 昨日は興奮してあまり眠る事ができなかったが、一日程度の徹夜ならどうにでもなる。

 ……もしかしたら、今日から二日間眠る事ができないかもしれないがな!

 

 今日から3日は完全にOFFだ。

 ナイトアイが本当にオールマイトの力が必要だと思ったら連絡するとの事なので、その言葉に甘えることにした。

 普通のTシャツにジーパンを履いて、一週間前から用意してあるカバンを持つ。

「……いざ、行かん。温泉旅行へ」

 今回は駅前で待ち合わせだ。

 

 個性は使わない。

 今日はオールマイトではなく、八木俊典として過ごすことになっているのだから。

 駅まで歩く道中では心臓がバクバクとしていた。

 好きな人と温泉旅行……HAHAHAHA……

 いつもの様に笑おうとして、ふはっと変な笑いが出て思わず口を押えた。

 

 いかん、今の顔は見られたくない。

 きっとにやけすぎてて変な顔になっているはずだ。

「落ち着け私……いくら何でもはしゃぎすぎだろう」

 自分に言い聞かせながら、待ち合わせ場所に行くと……思わず隠れたくなった。

 

 馬鹿か私は!?

 何故こんな普通の服装で来た!?

 もう少し考えるべきだろう!?

 

 視線の先にはアリス君が居る。

 待ち合わせ20分前に来たというのに私よりも先に来ていた様だ……だが、問題はそこじゃない。

 アリス君の服装だ。

 麦わらのカンカン帽に、カーキ色のカーディガン、白色のTシャツ、ネイビー色をした踝丈のスカート、白いサンダルを履いていて……お洒落をしている様に見えた。

 それに比べて私はいつもの普段着である。

 これは、まずいんじゃないだろうか?

 

 自分を着飾るような服は自宅にもない。

 ならば、急いで買い物をすれば……!

 そう思って行動しようとした瞬間、アリス君と目が合った。

 ふわりと言う音が付きそうな笑みを浮かべて、私の方へと小走りで駆け寄ってくる。

 ……その仕草だけで、私の心臓はオーバーヒートしているのだが……。

 

「おはようございます、俊典さん」

「ッ!?」

 名前を呼ばれた瞬間、体に電流が走った気がした。

 俊典さん……なんて甘美な響きなんだ……!

 感動に打ち震えていると、アリス君の表情が少し曇った。

「あの……名前呼びじゃ馴れ馴れし「そんなことはないぞ! 是非ともそう呼んでくれたまえ!」よかった……俊典さん、なんか固まってるから失礼だったかなって」

 安心したように綻ぶ顔をみて、自分を叱咤する。

 挨拶すらもしてないじゃないか!!

 どれだけ私は浮かれているんだ!?

 

 私の内心を悟られない様にして、できるだけ普通に返す。

「ハハハ、すまない。アリス君の姿に見惚れてしまっ!?」

「え?」

 しまった!!

 普通に返すつもりがつい余計なこと口走ってしまった!!

 むしろそこまで口に出たならそのまま全部言えばよかったものを!!

 アリス君を見ると、そこには顔を赤くして照れたように笑う彼女の姿が……

「よかった。マネキンが着ていた一式そのままなんだけど、少し不安だったから」

 こういう格好するのは初めてだし、と言ってスカートのすそを摘まんでいる。

 

 ここはもうそのまま褒めて、アピールした方が良いのではないだろうか。

 そう考えると『行け! いったれ!』と叫んでいる元部下と親友が脳裏に浮かぶ。

「その……なんだ……すごく、似合っているよ」

 流石に面と向かってはいえず、視線を逸らしながらになったが、これが私の限界だ!

 だから『そこは目を見てしっかり言えよ』とか言うな脳内の二人!!

「……見惚れるくらい?」

「ぐぬっ」

 思わず言葉に詰まると、アリス君は悪戯気に笑った。

「俊典さんも緊張してたんだ。私もちょっと緊張してたからお相子かな」

「……そういえば、いつもと言葉遣いが違ったね」

 

 私がそういうと、アリス君は少し恥ずかしそうに笑った。

「俊典さんと一緒の旅行だからね。私だって少しくらい緊張するよ」

 私は一週間前からずっと緊張しっぱなしだがな!!

 内心でそんなことを叫びつつ、笑顔がこぼれる。

 

「俊典さんの荷物、収納しておくね」

「あぁ、頼むよ」

「ふふ、畏まりました!」

 アリス君は楽しそうに笑いながら、私の荷物を魔法陣へと収納した。

 

「まだ少し時間があるけど、どうする?」

「そうだな……」

 正直言えば、アリス君の隣に並んでも恥ずかしくない服を買いに行きたい。

 温泉街直通列車が出発するまで、後一時間ほどだ。

 荷物はアリス君のお蔭で預ける必要もない。

 ……ここはやはり、服を買いに行くか……?

 

「服が気になるの?」

 アリス君の言葉にドキッとした。

 なぜわかったのだろうか……?

「さっきから自分の服を気にしてるから、そうかなって」

「……いま、私は何も言わなかったよな……?」

「わかりやすい顔してるよ?」

 アリス君の言葉に思わず顔を触る。

 直正にもそう言われたのだが……あれ?

 そこまで私はわかりやすい顔をしているのだろうか?

 

 もしやアリス君を想っていることも……?

 そう考えると冷や汗が吹き出る。

「今度は何か隠し事がバレてるのでは!?って顔してるわよ」

 アリス君がクスクスと笑いながら言うが、内心を見事に当てられては困る!

 直正は友人と思われているようだと言っていたが、いつバレるかもわからないのだ。

 誰かに恋をするなんて初めての経験だが、男である私としては気付かれる前にちゃんと思いを伝えたい。

 ……いっその事開き直って伝えてみるべきだろうか……?

 

「ど、どうしたの? なんか凄い真剣な顔してるけど……?」

 アリス君を見ると、少し後ずさっていた。

 いかんいかん、怖がらせては意味がない上に絵面が悪い。

 開き直って伝えるにしても、今は伝えるべきではないな。

 フラれてしまえば、この旅行も楽しむことができなくなってしまう。

 言うとしても、この旅行が終わってからだな。

 

 ……しかし、アピールくらいはするべきだろうか?

 アピール……休みの時にぼーっと眺めていた恋愛ドラマぐらいしか思いつかない。

 ……いや、しかし……ドラマみたいなことをするのは流石に恥ずかしいが……

 ええい!男は度胸!!

 当たって砕けろ!!

 そう決意して、私は恋愛ドラマの内容を思い出して、アリス君に出来そうな事を思い出す。

 ……羞恥心を今は捨てよう!

 

「あ、アリス君」

「な、なに? どうしたの?」

 アリス君に声をかけて、少し顔を近づける。

 近距離でアリス君の目を見つめる……アリス君は落ち着かないのか目が泳いでいる。

 顔も少し赤い……と言う事は照れているのだろうか?

 そんな情報を自分で収集しながら、これからの予定を告げた。

「できれば、君の隣にいてもおかしくない服を買いに行きたいのだが」

「…………えっ? ちょ……えぇえええ? ど、どういうこと? え? 一体どういう事!? 何が起きた!?」

 

 私の言葉に動揺しながら狼狽えるアリス君

 ……あまりにも直球的過ぎたかもしれない……

 視線が私の目を見て、すぐさま逸らされてを繰り返しているアリス君は可愛らしいが、

 実に可愛らしい仕草だが、私自身、自分の言葉で精神に凄まじいダメージを受けている。

 普段の私からは想像できない言葉だ、血を吐きそう。

 

 しかしアピールするならガンガン押していくべき……と登場人物が言っていた。

 アリス君が嫌がらない範囲でアピールをしたいが……それほど精神的に余裕がない。

 だがやると言ったらやる男なのだ私は!たとえ恥ずかしくてもな!

「せっかく綺麗な女性といるのだから、私も恥ずかしい格好はできないと思ってね」

「ほ、本当にどうしたんだ俊典さん!? 恥ずかしい!! 恥ずかしいから!!」

 ついにあわわわと言い始めたアリス君にほっこりしながらも、津波の様に押し寄せて来る羞恥心を押し殺す。

 今だけは羞恥心など意識してはいけない。

 例え後でのた打ち回ろうとも、今だけは押すのだ私よ!

 

 アリス君の忙しなく動いていた手を掴んで、耳もとで呟いた。

「だめかい?」

「わ、わか、り、ました……ぅぅ……顔が熱い……」

「ありがとう」

 アリス君の了承を得ることができたので、できるだけ優しい笑顔を意識して礼を言った。

「ぅぅ……なにこれ……すっごい恥ずかしい……」

 小さな声でそう呟いたアリス君は、両手で赤くなった顔を隠しながら俯いた。

 HAHAHAHA!!

 言うなアリス君!!今の私は羞恥心を宇宙の彼方へ追いやってこんなナンパな事をしているのだ!!

 あまりにも似合わない私の姿に、内心でゴフッと血を吐く気分になりながらも目標を達成した。

 アリス君の手を取って、駅前のショッピングモールへ向かう。

 アリス君の顔は真っ赤だ。

 私の顔も真っ赤だろう。

 逃避の限界も近い。

 

 店に移動して、アリス君に服を選んでもらって、更衣室に入った。

 そして鏡に映った顔が真っ赤になった私の姿を見て、我慢も限界を迎えた。

 鏡から目を逸らすために、手で顔を覆い隠した。

 

 何を言ってるんだ私はーーーーーー!!!!???

 耳もとで「だめかい」だと!?

 駄目に決まってるだろう!!なんでそこをチョイスした数十分前の私!?

 どこの恋愛ドラマだ!?参考にしたのは恋愛ドラマだったな!!

 なに影響受けてるのだ私は!?馬鹿なのか!?

 筋肉モリモリの私がやっても違和感全開……ってそうじゃないだろう!!

 うわあああああああ!!

 早く着替えねばならないのに、ここから出たくない!!

 

 お、落ち着けぇ私。

 これ以上時間を浪費してはいけない。

「HA、HAHAHA、大丈夫だ、私は大丈夫」

「俊典さん? 何か言った?」

「いや! なんでもないよ!」

 そうだ、この記憶は封印しよう。

 今は服を買いに来ただけだ。

 そういえば、耳もとで囁いた時、アリス君が顔を赤くして実に可愛かったな……

 だから、さっきのやり取りは忘れよう、忘れろ、忘れろって言ってるだろう!!

 ぐああああああああ!!!

 

 

 何とか落ち着いた私は、アリス君と同じようにマネキンが着ていたものをそのまま購入して、着替えて列車へと乗り込んだ。

 上がポロシャツになったくらいで、あまり大きな変化はないのだが……これでいいのだろうか?

「私もファッションはよくわからないから……ごめんね?」

「いや、もともと私が選ぶべきものだったからね。むしろ付き合ってくれてありがとう」

「どういたしまして…………いつもの俊典さんだ……」

 アリス君がぽつりと呟いたことは聞こえなかったことにしておく。

 そうでないと、またのた打ち回る。

 

「温泉街までの直通列車か……すごいな」

 温泉街は初めて行くが、普通直通の列車はないのではないだろうか?

「パンフレットには、温泉街の温泉はどれも財閥の社長の個性で見つけた物みたい。何もない状態から温泉街まで開発したって書いてあるね」

 アリス君が駅に置いてあったパンフレットを見ながら笑っている。

「温泉を見つける個性か……一体どういう個性なんだろうか」

 水を感知するとか、お湯を感知するとかだろうか?

「温泉を見つける個性だって」

「そのままだった!?」

「でもいい個性よね。この個性で温泉同好会の名誉会長になったんだって」

 確かに凄く平和的な個性だと思うが。

 

 そんな話をしていると、発車時刻になり列車が動き始めた。

「こうして乗り物に乗るのは久しぶりね」

 アリス君が景色が流れる窓の外を見ながら呟いた。

「アリス君の個性だと距離は全く関係ないからね。どうだい久し振りに乗った列車は?」

「時間がゆっくり流れてる気分。こんなにのんびりするのはいつぶりかな」

 世界中の病院を文字通り飛び回っているからね。

 アリス君を探していた時は中々に捕まえる事ができなくて大変だった。

 

 弟子二人の育成や雄英高校で教師をする準備、施設の管理など、今のアリス君は凄く忙しいからな。

 今日から三日は分身を作ってそちらに任せているようだが。

 ……私よりもアリス君の方がゆっくりと休む必要があると思うのだがな……

 私はオールマイトの姿でパトロールしたり、要請があればそちらへ駆けつけたりと、言うほど大変ではない。

 最近はアリス君の言いつけ通り週一では休むようにしているから、疲労もほとんどない。

 

 ……今日は徹夜の所為で少し眠いが……

 落ち着いたら眠くなってきた。

「眠い?」

「いや、大丈夫だ」

「嘘、目の下に少しだけクマができてる」

 アリス君の指摘に、内心でしまったと思った。

 アリス君が私の体調不良を見逃すわけがなかった。

 駅前で言わなかったのは、恐らく私が押せ押せ状態だったからだろう。

 

「少し眠ったら? 温泉街につくまで1時間はあるんだし」

 アリス君がパチンと指を鳴らすと、私達が座っていたボックス席が広くなった。

 私でも足を延ばして寝転がれる広さになった。

「この席だけ空間を拡張して、認識阻害を掛けたわ。眠ってても誰にも分からないから、少し眠りなさい。幸い乗客は全然いないし」

 ぬぅ……先手を打たれてしまったか……。

 ここまでしてもらったのだ、少し眠るとしよう。

 

「すまない、では少しだけ眠らせてもらうよ」

「えぇ、どうぞ」

 せっかく広くしてもらったが、流石に横になって眠るのは恥ずかしいので、深く腰掛けて目を瞑った。

 予想以上に眠かったのか、睡魔はすぐにやってきた。

 

「------」

 意識が深く落ちる前に、アリス君の声が聞こえた。

 何か、やわらかいものを後頭部に感じながら、私の意識は深く眠りについた。

 

 




旅館につかないまま終わってしまった……
服装は適当にファッション雑誌から取りました。
ただ、オールマイト視点なので服の詳しい名称は省きました。
なので好きなように想像してください……

今回は、甘くなかったなぁ……

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