インフィニット・ストラトス 夜天の息子の鮮烈なる物語   作:ウィングゼロ

93 / 108
九十一話『八神一家』

 

 

「いや~みんなありがとうな買い物も手伝ってくれて」

 

既に日が沈み…地球では見られない月が二つある星空の中、車は先程の街並みより落ちついた…何処か海鳴市を思わせる街並み…遠くからはざーざーと波の音が聞こえてくる。

 

少し辺りが暗いためにこの近くには海があるのだろうとそう思わさせる。

 

「そういえば、母さん今晩、他に誰がいるの?」

 

「えっと、ヴィータとザフィーラやな…シャマルは忙しいらしいし、シグナムとアギトも今日は帰れんって」

 

前の優希とはやてさんが何やら聞き慣れない名前をどんどん出してくる。

 

察するに家族だと思うけどどんな人達なんだろう…

 

「あ、簪ちゃん達は分からないですよね。ヴィータちゃんって言うのは…私達の家族で…優希の戦闘の師匠の一人ですよ」

 

え?いまリインさん…なんて言った?…優希の…師匠?

 

私の中で戦慄が走る、だって優希はあれほど強いのだ、勿論教えた先生がいるのも頷ける。

 

だけど考えてみると優希の師匠の人物像が想像できない。

 

強面の何処かのダンボールを愛用する凄腕の兵士を思い浮かべてしまう。

 

いやでもリインさんはちゃんずけ…つまり、それほど怖くない?

 

色々と優希の師匠の人物像を考えるがいまいちピンとこない…

 

「…簪、もしかしてヴィータの事について考えてるのか?…別に考えるほどの者でもないし…それに会えば驚く」

 

…どういうことなのだろう。

 

私はその優希の師匠がどんな人なのか…それが気になってそわそわしながら車は車道を走っていきそして、一つの一軒家の車庫に駐車するとはやてさん達は車から降りて私と本音も続いて車から降りる。

 

そしてはやてさんの後を付いていくと車庫の直ぐ傍に建っている一軒家を見上げる。

 

『ここが…優希の?』

 

「ああ、素っ気ない一軒家だろ?」

 

私の質問に平然と返答する優希、それを聞いていたはやてさんは少し拗ねた顔で優希を見る。

 

「素っ気なくて悪かったな」

 

「別にそういった意味合いはないんだけど…ただ単にアリサ姉達みたいな屋敷じゃないって言いたいだけ」

 

「…そうか…まあええわ、ほんなら簪ちゃん達も遠慮せんでええから入ってきい」

 

そういってはやてさんは家の扉を開けて優希や神崎さん達は迷うことなく家の中に入っていき、はやてさんのお言葉に甘えるように私達も家の中に入っていっていく。

 

「ただいま~靴からしてヴィータも帰って来とるな」

 

はやてさんが玄関前でただいまと声を出すと、ふと、並べられている靴からその優希の師匠の靴があることに気づいたようだ。

 

私もはやてさんの目線に目を向けるとそこには子供が履くような小さい靴が…

 

??あれ?どうして小さい靴が?もしかして、はやてさん達の末っ子かな?

 

はやてさん先導に靴を脱いでリビングへと向かっていき、リビングの扉を開けて中へと入っていく。

 

「あっ、はやてお帰り…今日遅かったけど、何かあったのか?」

 

「ヴィータ、ただいま、少しあってな…買い物に行っとったんや」

 

リビングに入ったはやてさんが噂のヴィータさんと話し合ってる。

 

声からして女の子?しかも幼いような…

 

私の頭の中でまた謎が増えるなか続いて優希とリインさん、神崎さんもリビングへと入っていく。

 

「リインと奏…後…優希!?お前、地球にいるんじゃなかったの!?」

 

「ただいま、ヴィータ、色々あって帰郷することになった…」

 

リビングでヴィータさんが優希を見て驚きの声を上げ、それに対して優希は名前を呼び捨てで平然と話す。

 

「ヴィータちゃん。実は今日は優希だけじゃないんですよ!簪さん達もこっちに来るのですよ」

 

そういってリインさんが私達を手招きにして、私達もリビングへと入るとそこにいたのは赤髪の女の子と青い毛並みをした大型犬であった。

 

「紹介するですよ!更識簪さんと布仏本音さんですぅ!二人とも優希の同学年生ですよ!」

 

『え、えっと…更識簪…です』

 

「布仏本音…だよ~」

 

緊張して声が上手く出ない本音も何時もみたいにのほほんとしていないのも珍しい。

 

「……確か簪っていうと優希が目に掛けてる奴だよな」

 

「…ああ、大体のことは主からも聞かされている」

 

『え!?い、犬が喋った!?』

 

女の子の隣にいる大型犬が人の言葉を喋ったことに驚きを隠せずにいると…隣の優希はそういえばとといううっかりした顔つきで喋り始める。

 

「ああ、そういえばザフィーラのことなんも話してなかった…えっとザフィーラっていうのがあの犬のこと…言葉を話すけど気にするな…後こっちにも喋る動物はそれほどいないから」

 

「犬ではない…狼だ」

 

優希が言ってくれたことで少し納得するけど、その…ザフィーラ…さん?が正確な補足を付け足してくる

 

「他にも後は三人おるんやけど…仕事でおらんのよ…でもきっと会えると思うで」

 

そういってニコニコと笑みを浮かべるはやてさん……既にザフィーラさんの存在で頭の許容範囲は超えてる気がする…

 

でも1つだけ改めて分かった気がする…私より幼そうなヴィータさん、人の言葉を話す犬…ではなく狼のザフィーラさん、まだ23歳なのに15歳の息子を持つはやてさんにそれを支えるリインさん、それに逸脱している戦闘力を持つ優希…

 

まだ見ぬ三人の家族もいるというけど絶対に一般人とは思えない……八神一家…やっぱり想像を絶するような家族なのは間違いないだろう。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。