インフィニット・ストラトス 夜天の息子の鮮烈なる物語 作:ウィングゼロ
優希SIDE
簪の告白を受け取った後俺は小恥ずかしながらジュースを持って母さんのオフィスに戻った。
中に入ると母さんだけで残りの本音やリイン、神崎さんの姿が見当たらない。
俺達が話し合っていた間に何処かへ行ったのだろうか
リインはともかく、神崎さんもここに来てから少し経つから問題ない
だけれど、今日来た本音がいないと言う事が俺に関しては気になっていた。
「お帰り…どうやら蟠りはなくなっとるな…いや~良かった」
俺達の仲が直ったことに笑みを浮かべて嬉しそうにいう。
『心配させてごめん…所で…リイン達は?見当たらないけど』
「リイン達には地球のアリサちゃんの所に行ってもらっとるんや」
『演習場?何でまた…』
本音は演習場にいち早く戻ったということで説明がつくけど他の二人は行く理由がわからない。
その理由聞こうとした時、後ろの扉が開く音がして振り向くと、何故か俺達の荷物を持っているリイン達がやってくる。
「はやてちゃん、優希達の荷物持ってきたのですよ」
「リインお疲れ…まあ、優希がおらんときにアリサちゃんから連絡があってね…明日から緊急の査察が入ったから演習場を使えへんって」
『…そういうことか』
俺は母さんから告げられた内容に納得した表情で返事を返す。
恐らくは突然の査察は倉持技研の件にも関わりがあると見て良いだろう。
しかしそれはかなり困った事になった。
演習場が使えなくなったことで更識さんと簪の決闘の話がまた有耶無耶に…なるかもしれない。
それはなんとかしなければと模索するが直ぐには答えは出て来なかった。
「まあ今考えても答えは纏まらへんやろうし…それで簪ちゃん達泊まるところないやろ?」
そういって母さんは椅子から立ち上がり座っていて凝っていたのか背筋を伸ばす。
「ん~!!取りあえず、私の家に泊まるってことでええやろ」
「え!?はやてさんの家ってつまり…優希の…実家?」
驚いて母さんの家=俺の家だということを口に漏らしながら呟く。
『大丈夫なのか?…部屋割りとか』
「そこんところは大丈夫や…ほんなら私とリインは仕事終わりやから着替えてくるな…取りあえずミッド行きの転送ポータル前で集合や」
母さんが問題ないと強気で言い切り、俺は母さんのその言葉を信じて俺達はミッド行きの転送ポータル前で待ち合わせた。
そして私服姿の母さんとリインがやって来て、みんなでミッドに降り立ったわけだが、まず家に戻るのだがその前に買い物をしに行かなければならない。
「取りあえず、車、駐車場に止めてあるから行こか」
母さんの声と共に母さん先導で地下の駐車場にやって来るとギリギリ八人は乗れるであろうファミリータイプの見知ったナンバープレートの車が一つの駐車スペースに置いてある。
『母さん?よくもまあファミリータイプの車で…乗ってたの三人だったろ?』
「まあ、色々途中、他のみんなも乗るかもしれへんからな…」
そういって母さんは車のロックを解除すると母さんは運転席へ俺は隣の助手席に座る。
簪達も後部座席に乗り込むとエンジン始動して車を発進させた。
簪SIDE
はやてさんの車に乗って地下駐車場から出た私達…
地下から出て私が目にしたのは地球では見れない、発展した街並みだ。
辺りには高層ビルが建ち並び進む先にも同じようなビルが建ち並んでいる
「ほえ~見てみてかんちゃん!あっちに物凄く大きい塔があるよ~」
隣に座っている本音がはしゃいで私に呼びかけてくる、何かと思って振り向き本音が指さす方向を見ると私は絶句した。
一際目だつ高い塔…この都市の象徴と言わんばかりにその塔は堂々と立っている。
「あっ、あれは管理局の地上本部なんですよ、あそこが地上での管理局の要なんです」
つまり、日本の国会議事堂と同じということかな?
そう思うと一つ気になったことがあって私は優希に向かって話しかける。
『ねえ優希?優希はその地上本部って言ったことあるの?』
「地上本部か?ああ、何度か…行くとしても母さんの付き添いばかりだったからな…」
「地上本部か…そう思うと…あの時のことを思い出すわ」
「……ああ、あの時の…な」
何を思い浮かべているのか優希の表情に影を落とすような物が見える。
これは聞かない方が良いかもしれない。
「…そういえば神崎さんって今は母さんのところにいるけど…結局、家出問題…どうなったの?」
「ほえ?…話してなかったですか?…えっと…一度…はやてさんと一緒に家には戻ったんですけど……色々話し合った結果…はやてさんの所に行くことになったんです」
「ああ、あれな…ほんま、私が優希の母親って言ったら手の平返しで差し出してきたわ…もう完全に下心見え見えでな」
そう、淡々とその日のことを清明に説明をするはやてさん…なっとも…簡単に想像が出来てしまう。
「出て行く前…優希さんを籠絡しろなんて言われたよ~やる気はないですけど」
「でもまあ、差し出してくれるんやったら好都合や…それで今は私の家に居候させとるんや」
「……ミイラ取りがミイラになった…というかミイラ取りは実はミイラだった…だな」
…それ物凄く言い得て妙だよ
そんな事を思いながら車はスーパーへと向かって走り続けるのであった。