インフィニット・ストラトス 夜天の息子の鮮烈なる物語 作:ウィングゼロ
「はい、今日の授業はここまでです。皆さん気をつけて帰ってくださいね」
初日から漸く五日目…明日からは休日だ。
回りのみんなは休みに何をしようかと談笑しているようだけど俺はそんな余裕なんて無いんだよな……
『さてと……』
まず参考書なんかを全部鞄に突っ込んで教室から後にする。
五日目だというのに未だに視線は痛い。
(……はぁ……学校ってどこもこうなのか?)
小学も中学も行ったことないからわかんないけど……これが基準なら……図太い精神の持ち主じゃないとやっていけなさそうだな。
「おーい、やーくん~!」
と廊下を歩いていると声を掛けてくる人物が一人……
振り返ると袖の丈が長くて手が制服で隠れている内のクラスの生徒……確か名前は
『布仏本音さん…でしたっけ?』
「あ、やーくん覚えてくれてたんだ」
と名前を呼ばれたことに嬉しそうに話す布仏さん…
「ねえねえ、やーくんってさかんちゃんと同じ部屋なんだよね?」
『かんちゃん?もしかしてですが簪さんのことでしょうか?』
もしかして布仏さんと簪さんは友人なのであろうか
「うん、そうだよ~かんちゃんとは幼馴染みなんだー」
と嬉しそうに話す彼女だけど何故こんな話をしてきたのであろうか…
ただ単に男の俺にお近づきになりたいために話しているのかもしくは他に起因が……
「ねえ、やーくん……かんちゃん……部屋では何してる?」
『え?なにやら真剣にディスプレイに打ち込んでいましたが……それが…』
と簪さんの近況を話すと布仏さんは先程とは違い何やら思い当たることがあるのか彼女らしからぬ思い詰めた表情を見せた。
『…………』
そういえば……
簪さんが帰宅する時間はあの初日以降夜遅くまで帰ってこない、しかも帰ってくるなりディスプレイと睨み合ってるから……かなり無理してるんじゃないだろうか
といっても俺に何が出来るというのだろうか
所詮はただの部屋が同じだけでさして接点など何もない。部屋でもあまり話もしないのに…出来ることなど…
『ん?なんだ?』
簪さんのことで悩んでいるとIS学園の前に人だかりが出来ていて俺はなんだろうと首を傾げた。
どちみち通り道ということもあり近づいてみると車道にえらく立派なリムジンが止まっていて物珍しさにみんな止まって見ていたようだ。
「あ、リムジンだ…こんなところに止まってるってことは誰かを待ってるのかな~」
と隣の布仏さんも気になったのか考えていたことをやめてリムジンのことを見ていた。
するとリムジンの一部の窓が開いて中から…
「あ、漸く来たわね優希」
『ええ!?ア、アリサ姉!?』
リムジンの窓から顔を出したのはバニングス社の現社長のアリサ・バニングス。
母さん達の若かりしころからの親友であり今回の任務で一番にお世話になると思われる人物。
御年24歳と若いのはやはりISによる効果もあって前社長であるアリサ姉の父親は状況を垣間見て社長の座を譲り今はアリサ姉のオブザーバーとして支えているとか
「まあ話すことは山ほどあるだろうけど乗りなさい、外泊届けはもう出したんでしょ?」
『え?あ、ああ……それじゃあ布仏さん俺はこれで……また週明けにあいましょう』
「あ、う、うんそれじゃあねやーくん」
いきなりのことであったために戸惑っている布仏さんに別れを言って集まっていた女子達の視線に耐えながらもアリサ姉の乗るリムジンに乗り込んでいくのであった。