インフィニット・ストラトス 夜天の息子の鮮烈なる物語 作:ウィングゼロ
『優希…』
私は与えられた部屋でベッドに寝転びながら優希のことを思う。
……優希は全部知ってたんだよね……
だからこそ、利用したんだ倉持技研の襲撃を……
私の頭は色々な疑問で思わず溜め息をつく。
『……もう寝よう……』
考えても答えなんて出て来ない…だからもう眠ることにした…
明日になれば少しはすっきり出来るだろうし
「かんちゃーーーん!!」
突然扉が開くと私を呼ぶ声が響く、その呼び名から本音であることは直ぐにわかった。
眠気が失せて体を起こすと、本音は両袖をパタパタと振りながら元気そうだ。
『何?本音?』
少し不機嫌に返答するけど、本音はあまり動じない
「かんちゃん、ゲームやろ!」
『…ごめん、今そんな気分じゃないの』
「で、でも…かんちゃんが好きそうな…」
『いいから!今は関わらないで!!』
思わず大声で叫ぶ…
言うつもりなんか微塵もなかった…けど頭が混乱していた私は思わずそう口にしてしまったのを後悔した…
直ぐに弁明しないと…と私は喋り出そうとしたがその前に少し俯いている本音が話し始めた。
「ごめん。かんちゃん…でも…どうしてかな…このままだとかんちゃん…何処か遠くへ行っちゃいそうなんだ」
本音は今の私を気づかって…
最低だ…私、本音にこんなに心配されていたことに気がついてなかったなんて…
やっぱりこのまま…拗らせていたら駄目だよね
「かんちゃん?」
『このままじゃ駄目だよね…ごめん本音、私優希とあってくる』
遊びに来てくれたのは嬉しいけど…私は待ってるだけじゃ駄目だと思い、立ち上がると部屋から出て行こうとする。
「ま、待ってかんちゃん!」
そこで慌てて呼び止めようとする本音、私は直ぐに顔をそっちに向けると本音は話を続ける。
「先にやーくんのところ行ったけど、やーくんが居なかったよ」
その本音の言葉にドアに手をかける指を止める。
部屋にいないということは他の場所に居るのだろう…そして優希が行きそうなのは
『あそこかな?』
大体の予想をつけて扉を開け外に出ていく私、それを見て本音も一緒にと跡をついてくる。
…
……
「優希くん?此処にはいないよ」
あれ?予想が外れた。
今私は整備室に来ていた。
優希のことなら自分のリヴァイヴを調整していると思ったんだけど……
此処にいるのは技術スタッフとすずかさんだけ……すずかさんに聞いても優希の行方はわからないようだ。
『そうですか、ありがとうございます』
「ごめんね、あっ、そうだ簪ちゃん、打鉄弐式は今持ってるよね?優希のリヴァイヴと一緒に一度オーバーホールするから渡して欲しいな……明日の夕方には完了するから明日はお休みになるって優希くんにも伝えておいて欲しいの」
『はい、わかりました』
すずかさんが私の打鉄弐式も検査すると言って、私は打鉄弐式を渡し、そしてまた優希を探すためにこの場から去る。
「優希?あれから見てないわよ」
次に来たのは監視塔、アリサさんがいるこの場所までやって来たけどアリサさんも知らないみたい。
でもアリサさんも知らないなんて…ここに来るときも一応見かけなかったかすれ違う人にも聞いてはいたけど収穫0……
「やーくん何処に行ったんだろ……もしかして外に……」
「それはないわよ、優希だってバカじゃないわ…今出ていけばどうなるかぐらいわかっていることなんだから」
アリサさんの言葉には一理ある。では一体何処に……
そう頭の中で優希が居そうな場所を模索するが見当がつかない。
「まさか、あっちに戻ってたりして…それなら此処にいないのも説明がつくわ」
いま、アリサさんが何か言った?…
小さくて聞き取れなかった…心当たりがあるというのか
「取りあえず、優希のことは明日にでもちゃんと探せば良いわ…もうすぐ日も暮れるから部屋に戻ってるといいわ」
優希のことを先延ばしにするアリサさん、その表情は一件柔やかではあるが、何かを隠しているような感じがする。
それと何あると言えば一つだけ気になる場所があったのを思い出す。
『仕方ないよね、教えていただきありがとうございます』
アリサさんに一礼して本音を連れてこの場から立ち去る私、ある程度離れた後、一度足を止めた。
「かんちゃん、どうしたの?」
『……本音……あと一つだけ調べたい場所があるの?まだ行ってなくて……一番怪しい場所』
あの時、はやてさんが入っていったエレベーターの先……あそこを調べるしか無い。
そういって私達は沈み始める夕暮れが照らす道路を宿舎へと向かって走りだした。