インフィニット・ストラトス 夜天の息子の鮮烈なる物語   作:ウィングゼロ

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八十二話『簪の修行 不届き者に制裁を(前編)』

ヘリから飛び降りた優希、直ぐにリヴァイヴのスラスターを噴かせて追撃してくる敵機へと向かっていく。

 

出撃した優希の姿は倉持技研の方でも目視していた。

 

「隊長!あの八神優希が出て来ました」

 

「更識簪は出てこない…か…ではプランDでいく。打鉄弐式を取り戻す!」

 

「了解!!」

 

当初に予定されていた作戦を伝える隊長、それに応じて隊員達は隊列を組む。

 

「先手を打つ!」

 

まだ距離も1㎞程離れているにも関わらずに優希はガルムを構えて2発ほど射撃しまだ射程内ではないと油断していた隊員達の打鉄、二機に直撃させる。

 

「ぐっ!この距離で!」

 

「油断するな!相手は鬼神だ!」

 

射程外だと思われていた距離からの狙撃にたじろぐ隊員達だが隊長はたじろぐ隊員に一喝する。

 

これまで疑いたくもなる所業をやってきた優希…そこからつけられた二つ名が鬼神…その名の通り圧倒的な力で敵を倒してきた優希に周りがつけた名前であった。

 

「隊列が立て直された、ちっ!これまでとは行かないということか!」

 

崩れた隊列が直ぐに戻ったのを見て相手はこれまでの刺客達とは比べものにならないほど練度が良いことを分析し右手にアーマーシュナイダーを持ってエネルギーブレードを生成して刀身を刀ほどの長さにする

 

「隠し球か!!各機!仕掛けるぞ!」

 

お互い距離が詰められて射撃武器射程内に入ると同時に打鉄部隊は散開し戦闘が開始された。

 

 

十一個の飛び回る影がぶつかり合う。

 

約3㎞ほど離れたバニングス社のヘリでは開かれたハッチからその光景が見えており、簪は何か思うことがあるように思い詰めていた。

 

《あそこで優希が戦ってる、試合じゃなく……本当の殺し合いをしている……今の私には打鉄弐式があるのに》

 

そう思いながら指輪(打鉄弐式)を填めていない手の方で覆い悲観に浸っていると後ろに居るはやてが至って落ちついた顔で簪に語りかける。

 

「…優希の所に行きたいんか?」

 

それだけの言葉しかし、簪の意中をずばり当てているその言葉に簪は頷いた。

 

「私……優希の隣に居たいんです……けど、今のままじゃ……」

 

簪の脳裏に優希が出撃する前に言い放った言葉がよぎる。

 

殺す覚悟……そんな覚悟持ち合わせて居るはずもない……それは恐らく戦いに迷いを持ち込むなとそういう意味を持たせた言葉なのだと簪は思った。

 

「優希はほんま、強くなったわ……けどな……ほんまは……優希には戦場に出て欲しくないって言う気持ちがあるんや……」

 

「え?」

 

はやての言葉に簪は耳を疑う……それはどういう意味だと聞こうとしたがはやてはその簪の意中を組み取るように話を続ける。

 

「優希は子供の頃から戦いを知ってしもうた……その反面、学校には行かず……優希の年齢での当たり前な事をさせることが出来ひんかった……私達の所為でそうなってしもうたんかとよく思うことがあるんや……」

 

はやての口から語られるのは優希のこれまでの道程……そのことから、はやてがどれだけ優希のことが心配であったのか伺えた。

 

「……だから今回……IS学園に優希が行ったこと……心から嬉しいと思うとんねんや……簪ちゃんは……優希のこと……どう思ってるんや?」

 

はやての心中を聞いて、訪ねられた簪は少し目を閉じて考えると、答えは直ぐに見つかりゆっくりと目を開けて口を動かした。

 

「私も優希に出会えて本当によかったって思います。だから私、優希の隣で支えていたいんです!」

 

「そうか…ならいってきい!簪ちゃんは簪ちゃんの戦いをすればええ!」

 

「は、はい!」

 

簪の決意の言葉に感応してはやては優希の元へと向かえと進め、その言葉に簪は嬉しく頷いた。

 

「ヴァイスくん!簪ちゃんのフォロー頼むわ、ヘリの運転は私に任せとき!」

 

簪が出撃することが決まり、はやてはヴァイスに援護をするように指示、そして空いたヘリの操縦は自分のすると伝える。

 

しかしここで疑問と感じることが発生する

 

はやてはヘリの操縦する資格を取得していたのだろうかと…

 

「あの……別に援護ぐらいしますけど……ヘリの資格って持ってましたっけ?」

 

「ふっ、当然……もっとるはずがないやろうが!!」

 

「いやいや、そんなどや顔されても困りますから!!」

 

はやてに資格を持っているのか恐る恐る聞くヴァイスに堂々と持っていないと暴露するはやてに鋭いツッコミがはいる。

 

 

そんなど素人に、ヘリは任せられないとヴァイスは思うがそんな中……優希から通信が届く。

 

「母さん!そっちに敵機が4機向かった!」

 

ヘリのスピーカーから流れてきた優希の声……知らされたその状況からは一刻の猶予も無さそうであった。

 

「あ~八神司令絶対に動かさないでくださいよ!そのまま維持していてください!」

 

そう折れたヴァイスは操縦席から立ち上がるとはやてと交替、ヘリを静止させると後部ハッチまで急いで移動し体をしゃがませて起動したストームレイダーを構える。

 

「ふえ!?なにそれ!?」

 

何も知らない本音は突如出現したストームレイダーに驚くがそんな余裕は今は無い。

 

「見えた!ヘリを落とす!打鉄弐式は死体から回収するぞ」

 

4機のうちの1機の打鉄のパイロットが指揮して4機ともスティンガーを構え、ヘリをロックするとミサイルを発射……ミサイルはみるみるとヘリへと近づいていくが照準を合わせたヴァイスの狙撃で全て撃ち落とされる。

 

「なっ!?撃ち落とされた!?しかもあれは……男!?」

 

スティンガーを全て撃ち落とされたことに驚愕すると同時に落としたのが男であることにも驚きを隠せない彼女たち。

 

驚いているのを、隙と見てヴァイスは顔を簪の方に向けて言い放った。

 

「今ならでれるぜ!嬢ちゃん!」

 

「は、はい!更識簪…打鉄弐式……行きます!」

 

ヴァイスのゴーサインとともに簪は打鉄弐式を展開し戦場の空へと駆けだした。

 

 


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