インフィニット・ストラトス 夜天の息子の鮮烈なる物語   作:ウィングゼロ

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五十二話『ありがとう』

突然、起きた今回の事件、敵の目的は判らなかったが簪達を救えうことは出来た。

 

でこれで解散…とはいかないわけで、少し前に漸く念話が出来るようになったために何処かにいる母さんを念話で呼び出し俺達は手頃な休憩所に羽を休めていた。

 

『更識さん、体…大丈夫ですか?』

 

「全然…大丈夫に思える?」

 

休憩できる椅子に座り、この中で怪我を負っていた更識さんに体は大丈夫か聞いてみるけどそのまま質問を質問でかえされて、言われたとおり止血はされているが体中痛いのは変わりないため明らかに大丈夫には見えず苦い笑みを浮かべた

 

『見えないですね』

 

「よろしい」

 

そう更識さんは扇子で口元を隠しながら当然と言わんばかりの顔をする。

 

「あっ!来ましたよ」

 

とリインが声を上げてリインの視線の先を俺達は見ると小走りながらもこちらに近づいてくる母さんの姿があった。

 

「ごめん、お待たせや~」

 

「はやてちゃん、遅いですよ~」

 

「いや~局に連絡入れるのに少し手間取ってな~」

 

と遅かったことに少し頬膨らませるリインに、母さんはやんわりと理由を述べた。

 

「あの人が優希のお母さん…若い人だな…」

 

と後ろにいる簪がそう呟いているのに気づき、俺は簪の方に振り向き、簪に話しかける。

 

『若いというか…母さんまだ23だぞ』

 

「…え?」

 

母さんの年齢を述べると急に固まる簪…いや更識さんに女の子も固まっていた…そして…

 

「2、23才!?ちょっとまって!?優希は15だからつまり…8才しか変わらないの!?」

 

「確かに若いとは思ったけどあり得ないわ!ちゃんと説明してくれるかしら?八神くん?」

 

「ほえ~あなたってできちゃった婚の子供なの~」

 

それぞれ詰めよって問い詰めてくる三人…なんか一人だけ明らかに違った気がするが…まあいいか…

 

「あれ?優希いっとらんかったんか?私と優希は親子やけど養子やで」

 

『いや、まあ家族のことは余り話さなかったからな』

 

思い返しても家族関係の話は簪にしたこともない…というかこんなところで合うとも思ってなかったわけで… 

 

「そんなの一言も聞いてない」

 

と恨めしそうに見てくる簪…ほんとうすまん…

 

「まあそういうんは置いといてお話の方なんやけど…」

 

漸く本題に入りそうになったけど、なぜが申し訳なさそうな、顔つきをしている。

 

「えっと、これから……組織の本部に戻らなあんのや……そやから……明日きっちり説明するさかい」

 

と両手を合わして少し頭を下げる母さん……まあ地球でこんな事件起きたら招集されないわけが無いわな……

 

『てことは…俺も呼び出し?』

 

「優希はそのままでええよ、でも今日のことはきっちりとまとめて送ってな」

 

『了解』

 

「ほんなら、明日場所は…海鳴市の翠屋午後2時頃に集合、これでどうや?」

 

と母さんは少し考えて明日の集合時間と場所を言うと全員予定も無かったことから頷いた。

 

「さてと、それじゃあ優希、ちゃんと簪ちゃんと楯無ちゃんを送るんやで…もしかしたらまた襲ってくるかもしれへんしな…私とリインはこの子を……そういえば名前聞いとらんかったな」

 

「は、はい、神崎奏です」

 

「神崎ちゃんやな、ほんなら神崎ちゃん連れていくな」

 

「ま、待って!」

 

と言って母さんは神崎さんと一緒に別れようとするも簪が声を上げてそれを止めた。

 

『簪?』

 

「あの八神さんその…少し聞きたいことがあるんです…大丈夫ですか?」

 

「うん、ええよ……なんや?」

 

俺じゃなく母さんに聞きたいこと?何のことだろう?

 

「五年程前…私、誘拐にあってその時、多分優希だと思うんですけど…助けられたんです…」

 

『五年…前…』

 

誘拐、簪に似た女の子、そして五年前……

 

やばい、ものすごく身に覚えがある。もしかすると……いや確実にあのことを指摘している。

 

「五年前……それやと……優希が丁度グレとったときかな?」

 

「あの時ですか……優希に見覚えは?」

 

『…………』

 

母さんが記憶の奥底から五年前の俺のことを思い出し、同じくリインも覚えていたために俺に訪ねるがどう言えば良いか分からずに押し黙る。

 

「優希?」

 

そう首を傾げて俺の名前を呼ぶ簪……このまま黙っていても拉致があかない……

 

『ああ、仕方ない……簪、こっち』

 

俺は腹を括り簪の手を持つと簪を引っ張って母さん達から離れていく。

 

そして辿り着いたのは人気のない裏路地、そこで俺は摑んでいた簪の手を離すと、少し小恥ずかしそうに頰かいて話し始める

 

『その…簪って…やっぱり昔に出会った…女の子…なんだな?』

 

聞いて違うと言われれば少しショックだなと思いながら恐る恐る訪ねた。

 

「………っ!」

 

訪ねると簪は無言のまま俺に抱きついてきた。

 

『簪!?』

 

いきなりのことで戸惑う俺だが簪はそんなことお構いなしに話しかけてくる。

 

「警察が来たときにはもういなくなって……ちゃんとお礼も出来なかった……だからこれだけは言わせて」

 

五年…五年も言いたかった言葉、漸く言える日が来たからか簪は柔やかな笑みを浮かべ短い言葉なれど俺に伝わるに十分な言葉だった

 

「助けてくれて…ありがとう優希」

 

偶然にも交差していた優希と簪の道…今再び交差する。

 

 


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