インフィニット・ストラトス 夜天の息子の鮮烈なる物語 作:ウィングゼロ
既に優希とヘラクレストとの攻防戦が続いて数分が経過した。
両者、隙あればと打ち込んでくるが中々決めてとなる一撃は入らず時間だけが過ぎていた。
《そろそろ……一発入れたいところだな…》
そう考える優希だが、それを行うのは至難の業だ。
《…そろそろ…あれも使って行った方が良いかもな》
そう、まだ奥の手があるのか…使うか使わないかを頭の中で思考し、その答えを直ぐに導き出す。
「おりゃあぁぁっ!」
優希は考えを纏めるとロンギヌスを強く横に空振り、土煙を舞わせるとそれにより周りから優希の姿が煙の中に消える。
「目眩まし…優希は仕掛けるみたいですね」
離れたところから見るリイン達も優希の姿は確認できなくなり簪の中には不安と心配で胸を締め付けるような感覚に陥る中、ヘラクレストは土煙のなか至って冷静で次の瞬間右腕を大きく振り回すとその風圧で土煙を乱す。
乱した土煙の合間から優希の姿が見えて、それをヘラクレストにしっかりと見られる。
「優希!」
簪も優希が発見されたことで叫ぶがもう遅い
既に視認した着後からヘラクレストは優希に迫りすでに拳を振り落としていた
既に目の前に迫っていた拳に優希は何も出来ずその拳は優希の腹へと直撃した。
「あっ!」
直撃したことで簪は目を大きくして短い悲鳴を上げる。
ヘラクレストの拳に直撃した優希は腹に拳めり込み体がくの字に曲がり……そして…………
体が氷のように砕け散った。
「え?砕……けた?」
優希がただ砕けたことに目を丸くして驚く簪
それもそのはず、普通なら人間粉々に砕けるなどあり得ないこと……しかも血も一滴も出ていない
「
どうなっているのか3人は唖然としている中、リインが知っているのか技名を呟いた。
「
「はい、優希の数少ないサポート系の技です、自らの力で氷の分身体を作り敵を攪乱する…ティアナのフェイクシフトを優希がアレンジして生み出した技なんです」
坦々と説明するリインだがどういう原理でそうなっているのかわからず三人とも首を傾げた。
「あの…そんな…生身の人があんな離れ技を使えるのでしょうか」
そう質問したのはこの中でまだ名前が明かされていない女の子…そう質問するとリイン達は女の子に何か言いたげな表情で見つめた。
「あなたがそれを言う?」
「普通に手から電撃使ってましたよね?」
「はぅっ!」
完全に図星、楯無と簪に的確に指摘されて何も言えなくなった。
「まあまあ、えっと…あなたが電撃を使えるように優希は氷……凍結の素質を持ってるのですよ、因みにリインも凍結の素質を持ってるですよ」
図星で何も言えない女の子にリインは柔やかにフォローを入れる。
「……色々と聞きたいことがあるけど……それなら本当の優希は?」
簪は色々と聞きたいことが多くなる中その欲求を抑えて本当の優希がどこにいるのかと聞くとリインは自分の予測を述べた。
「そうですね……リインの予想ですが……あの召喚獣の背後だと思いますよ」
とリインが予測したとおり背後の土煙の中から優希がヘラクレストの背後を目掛けて飛び出してくる。
「ロンギヌス!」
[ロードカートリッジ]
背後を取った好機と優希はロンギヌスに込められている残りのカートリッジ2発をロードして魔力刃を生成するがハリネズミで見せた時とは少し違っていた。
魔力刃の周囲に目視できるほどの冷気が発生していて気になった簪達は自然とリインに目を向けた。
「あれは凍結の能力を自身の武装に纏わせているのですよ…属性の変換素質があるならあれぐらい出来て当然です」
と軽く言うリインに女の子は自身の手を見て思い詰める。
自分は電撃を意のままに出せるのがやっとなのに優希はそれを自由自在に攻撃やサポートなどに応用している。自分は何と狭い世界を見ていたのだろうと…
《私もいつかああいう風に使ってみたいな…》
そんな女の子の考えを他所にヘラクレストの背後を取った優希はロンギヌスの射程内に入ると叫びと共にロンギヌスを振るった。
「氷華…一閃!」
振るった優希の一撃は方向転換していたヘラクレストの右肩から胸へと一線に切り裂き、ヘラクレストは受けた衝撃で後ろに押されて下がった。
優希に切り裂かれた場所は優希の力で凍りついておりそれによりヘラクレストの動きを先ほどより鈍くなった。
「まず一撃……」
漸く良い一撃を入れられたと笑みを浮かべているとヘラクレストの足元から魔法陣が展開され…瞬く間にヘラクレストはこの場から消えた。
「消えた!?」
「転移?撤退したのでしょうか…」
消えたことに驚く楯無、リインは転移したことを見て召喚士が撤退したのかと考えた。
突然起きたこの戦い…その終わりは目の前まで迫っていた。