インフィニット・ストラトス 夜天の息子の鮮烈なる物語 作:ウィングゼロ
授業が終わり、俺は教科書などをしまって次の授業の準備に取りかかる。
『えっと次の授業はっ…と』
「なあ少しいいか?」
準備に取りかかっているとまさか監視対象の織斑から俺に接触してきた。
『ええ、構いませんよ、なんでしょうか?』
「八神さんって凄いんだな、あんな分厚い参考書を読まずに答えられるなんて」
織斑が俺に向けているのは関心だった。まあ同じ男性で参考書読まずにすらすらと答えたことからだろう。
『あれぐらい、どうということもありませんよ、昔、もっと分厚い本を読んだこともありましたし…それより織斑は大丈夫なんですか?あの参考書1週間で覚えないとまた織斑先生のあれが振ってきますよ』
実際、俺の頭の知識の元になったのは管理局の本局にある。無限書庫という超巨大な図書館の中で教育書を探して読んだり、後は母さん達からの教えて貰い、殆ど独力で覚えた。
そんな俺は織斑に先程織斑先生にどやされたことを指摘すると、うっと図星のように俺の言ったことが突き刺さる。
「けど、あんな分厚い参考書どうやって覚えるんだよ、八神さんは『さん付けは結構です』ああ、八神はどうやって覚えたんだ?」
『多少、苦ではありますが、覚えられないほどのことでもありませんでしたし』
簡潔に説明し織斑は顔を引きつらせて俺を見る。
……にしても中々フレンドリーな奴だなこいつは……まあなのはさんよりかはマシだけど……
「少しよろしくて?」
「え?」
『は?え?リイン?』
織斑のことを考えているとまた俺の所に来た女性が声を掛けてきて咄嗟に声から家の妹の名前を口から溢しながら声の方へと見ると金髪でかなり髪を伸ばされて縦ロールになっており、手を胸に当ててあたかも優等生と思わせる態度を示している女性がいた。
「まあ! なんですの、そのお返事は! わたくしに話し掛けられるだけでも光栄なのですから、相応の態度というものがあるのではないかしら?それとあなた?私はそのような名前ではございませんわ」
ああ……なるほど……この女性は女尊男卑を酔狂する奴だな……にしても……まさかあっちから接触してくるとは初日からドタバタ騒ぎなことで…疲れるね全く。
『これは失礼しました、咄嗟の判断で返事を怠ったこと…心よりお詫びします。イギリス代表候補生セシリア・オルコットさん』
この人の顔はここに来る前に調べたことがある。
セシリア・オルコット、イギリス代表候補生でイギリスのとある企業が開発した試作段階の第3世代機ブルー・ティアーズの搭乗者。
やはりデータだけでは分からないこともある…まさかリインと声が似てるとは思ってなかった。
「そちらの方は、私のことをよくご存じのようですわね」
『はい、今年度の入試に主席で合格されたとか…流石は代表候補生に選ばれたかたですね』
(マスター、よくもまあ、そんな気もないこと言えますよね)
(こういうのは穏便に済ましたいからな)
そう俺はオルコットさんを褒めちぎり、その反面で念話でロンギヌスに本当のことを漏らす。
「なあ…八神…」
オルコットさんと話していると先程から会話に参加してきていなかった織斑が口を開けた。
……織斑はさっきからとんでもない爆弾を投下し続けてるからな……嫌な予感しかしない。
「代表候補生……ってなんだ?」
『はあぁ!?』
「あ、あなた本当におっしゃっていますの!?」
俺もオルコットさんも驚きだよ……
いやいや、小さい頃しかいなかった俺とは違って織斑、ずっと地球にいるよね!?実はこことは違う世界からきたとかそんなことじゃないよね!?
「ああ、新聞は見るけどニュースとかあんまり見ないからな」
………いやニュースもみろよ
とそうこうしているうちにチャイムがなって次の授業の開始を知らせる。
ずっと此処にいればまた織斑先生の一撃が振り落とされるだろうそう思った織斑は颯爽と席へと戻っていき、オルコットさんも織斑のことが気に入らないのか顔を歪ませて席へと戻った。
……神様……どうして初日からこんなに厄介ごとが振ってくるんですか?
『……はぁ…』
そう溜め息をこぼして俺は次の授業の教科書を取り出した。