インフィニット・ストラトス 夜天の息子の鮮烈なる物語   作:ウィングゼロ

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三十五話『力とは』

簪を追いかけるため食堂から出た俺は往来する女子の合間をすり抜けながら出ていった簪を探す。

 

『もう此処ら辺には居ないか…』

 

意外と早い…そう思いながら足を動かそうとしたとき後ろから声を掛けられる。

 

「優希さん!お待ちになって!」

 

『っ!セシリア』

 

後ろからやってきたのは食堂にいたセシリアだった。

 

何故追いかけてきたのか少し気になるところで走ってきたセシリアは息を整えると話しかける。

 

「追いつきましたわ…優希さん、更識さんをお探しに?」

 

『ああ、でも遠くにいってないはずだから…』

 

簪が出て行ってから俺が追いかけるまでの差は短いことからまだ近くに居ると思っていると懐にしまったスマフォが鳴り響き画面を確認すると本音からだった。

 

『本音、今どこに居る?』

 

「屋上だよ~かんちゃんもそこにいる」

 

『わかった直ぐに向かう』

 

と本音から簪の居場所を聞くと通信を切って屋上へと向かった。

 

屋上に辿り着くとあまり此処には人が来ないのか人影は余りなく、それによって本音と簪を直ぐに見つけることが出来た。

 

『簪!本音!』

 

「あ、やーくんが来たよ…あれ?セッシーもいる」

 

俺が声を上げると本音は気がついて返事を返すが簪は気付いているか落ち込んでいて返す気力がないように見て取れた。

 

『少し探したぞ…全く…』

 

「優希…」

 

とポツリと俺の名前を言う簪に俺は耳を傾けた。

 

「優希はあんなに言われて…悔しくないの?可笑しいよ…優希は優しいのに…誰も分かってくれない…そんなの…」

 

以前にも俺を恐れていた生徒のことも含めて…織斑に言い放ったのか…俺は大丈夫でも簪はやっぱり堪えたんだろうな…

 

『俺のこと自分のように考えてくれてありがとう………簪…』

 

「なに?」

 

『力って…なんだと思う?』

 

「力?」

 

俺が言った力について訪ねるがあまり意味が分かっていないのか簪やセシリア達も含めて首を傾げる。

 

『まあ、分からないよな…色々と主点が変わると力っていうのは別の意味を表すことが出来る…例えば…相手を倒す力…テストでライバルに勝つために身につけた知識の力…これだけで同じ言葉なのに意味合いがなんかが変わってくるだろ?』

 

とここまでは分かったのか三人ともうなずく。

 

『次は誰かを救うための力と復讐のための力…この二つは確かに同じ力だけど…方向性が違う…守りたい気持ちと憎しみに狩られる気持ち…』

 

「つまり…力はみんなそれぞれってこと?」

 

ここまで話していると簪はなんとなく分かったのか俺が言いたいことを述べる。

 

『ああ、簪に言えば…姉を越えるための力…理由も力も人それぞれってわけだ』

 

「…うん、なら優希の力は何なの?」

 

と簪の力を述べると簪は俺が何のために力を振るっているのか気になって訪ねてくる。

 

『俺の力か……俺は家族や大切な者を守るために戦う…そのための力だと思う』

 

「大切な者を守る力…」

 

『でも守る力といえど…周りから見たら恐れられるのも無理はないけどな…』

 

強すぎる力は周りを恐怖させ恐れられる…それに…

 

『力だけじゃ…駄目なんだ…力を振りかざすだけはただの暴力と変わりない…力を使うことで必要なこと…』

 

「自分自身の力を振るう理由…だよね」

 

と俺が言うまでのなく簪は答えて俺は縦に首を振って頷いた。

 

『そう、心構えがないとそれはただの力を見せつけてるだけに過ぎない…その力を自分自身で何のために誰のために使うか…力と心この二つがあってこそ…人は強くなれる…俺はそう思ってる』

 

…と俺は三人に話す中頭の中で織斑のことを気にかける。

 

あいつはこの前白式という名の力を手に入れた…しかし力を手に入れたが心はまだ無い……いや借り物の心で戦っているのであろう。

 

「…力はただ力…真の強さは曇り無い信念とそれを突き進む力を持つ者」

 

『…セシリア?』

 

先ほどまで黙っていたセシリアが何とも貫禄のある言葉を口ずさむと気になった俺は振り向いてセシリアの名前を呼んだ。

 

「ごめんなさいまし…これは幼き頃の私を育ててくださいました、叔父様のお言葉なのです」

 

中々良いこと言う叔父さんなんだな。

 

「ほえ~セッシーの叔父さんってすごいね~その人今は何してるの~」

 

と本音もセシリアが放った言葉に興味を示してその叔父のことを訪ねるとセシリアは暗い顔をして顔を俯かせる。

 

「もう…居りませんわ…」

 

「え…それって」

 

「3年も前に叔父様は亡くなっていたと…私はその頃は色々と対処に手間取っておりまして…今の今まで私は叔父様にお返しもできませんでしたわ…」

 

『…そうか…』

 

3年…前か…それぐらいだと…グレアム叔父さんが亡くなった年だったな…

 

それにセシリアの叔父さん…一体どんな人だったんだろうか…

 

 

そんなことを思いながら時間は過ぎて行くのであった。

 

 


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