インフィニット・ストラトス 夜天の息子の鮮烈なる物語 作:ウィングゼロ
打鉄弐式の新たなる問題に直面した俺達
簪はあまりのショックに完全に意気消沈してしまい瞳からは生気が感じられなかった。
ならば俺に出来ることをやるしかない
『…気が進まねえな…』
今いるところはとある部屋の前その周りには誰も居らず…というか極力近づきたくないのであろう…当の俺も嫌だし
『背に腹は変えられないか』
俺は部屋の扉をノックして数秒返事が来るのを待つ。
すると扉の奥からこちらに近づく音が聞こえてそして…
扉は開かれた。
簪SIDE
もう…無理だ…
私は必死になって努力してきた…周りの人に認められるために私の姉…更識楯無を越えるために…
そのために一人で打鉄弐式を完成させようと頑張った…だけど一人だと限界があるって…優希は教えてくれた。
だから優希と本音の二人と一緒に…打鉄弐式を完成させようって…決めたんだけどな…
打鉄弐式の動作確認でわかった事実…それは打鉄弐式が不良品であること…
そう言われてみればそうだ…
倉持技研が…ただの小娘に大事なコアと一緒にパーツだけ渡して完成するとはとても思っていないのだろう。
元から期待などされていない…だからもう一つのよりデータ収集ができそうな白式に狙いを絞った…
2人しかいない男性の1人…織斑一夏が乗るIS…当然注目度も圧倒的と言う他ない…
当初打鉄弍式が付ける新品のパーツも全て白式に回された…そう考えれば辻褄も合う…
私は結局…何をやっても認めて貰えない……弱い人間…私って…なんて無力なんだろう…
私はその日気絶から目覚めたら部屋の中だった。
多分優希もいた…けど感情を抑えきれなかったから声には出さなかったけど泣いた。
自分の無力さに…報われない理不尽な運命に…私は嘆いた。
次の日…私は昨日と同じで授業を受けていた
けど授業の、内容は何も覚えてない…
…まじめに聞く…理由ももうない…この学園にいる理由ももう…私には…
そして、時間は過ぎてお昼休み…みんな昼食取るために食堂に行くもの買ってきた…作ってきたものいる…
そんな中で私はただ呆然としている…いつもなら…打鉄弐式のことをしていたのに…もう…私にはする必要は無いから…
「ねえねえ聞いた?2組の話」
「うんうん、クラス代表が今日転校した中国の代表候補生に変わったって話しだよね」
…そうなんだ…でも私にはもう気にすることのない話…
「かんちゃーんいるぅ~」
そんなことを耳にしているといつもと変わらない…本音がやってくる…
『…本音…何しに来たの』
私なんか放っておけば良いのに…
「かんちゃん来て欲しいところがあるんだ~」
と本音は私の手を拝借して私を教室から連れ出していく。
方向から食堂じゃない…何処に行くつもり?
私は抵抗せずに本音に連れられていくと辿り着いたのは…
『整備…室…』
昨日、私が絶望を味わったあの打鉄弐式が鎮座する整備室…今更何しに此処に
そんな私を他所に本音は私を連れて整備室に入ると中には見知った先客がいた…
「やーくん~かんちゃん連れて来たよ~」
「ありがとう本音…漸く来たか」
打鉄弐式の前のコンソールを操作する優希…今更こんな
「…簪…」
どうして…それなのに…
『どうして優希はこんなことしてるの!?…もう何をやったって無理だよ!こんなの私たちじゃ到底…』
不可能…結果は見えてしまっている。
「そうだな…確かに絶望的…といっても良いな…」
優希も少し俯く…やっぱり優希だって…
「けど…諦めるにはまだ早すぎる」
優希は俯いていた顔を上げて打鉄弐式を見据える。
どうして…
理解できない…優希が何を考えているのか…まだ…出来ることがあるというのか…
「誰だってこんな結末を望んではいないんだ…俺も本音も簪も…そして…
最後に優希は打鉄弐式の元へ行きフレームに手を当てる。
どういうこと?打鉄弐式も望んでないって…
「打鉄弐式だって…きっと簪と一緒に飛びたいって本当に思ってるはずなんだ…この中で一番、打鉄弐式を見てきたのは…簪だから…」
『そんな…わたしは…』
私にはそんなこともう…
「諦めない先だけに未来はある」
『諦めない先に…未来?』
「ああ、受け入れられない運命を必死に足掻いて足掻いて…足掻き抜いたその先…きっとその先には幸せが待ってる…俺はそう思う…簪はどうしたい」
私…私は…ううん私だって
『私だって、打鉄弐式を完成させたい!こんなの絶対に嫌だから!』
涙声で叫ぶ私…瞳からは涙が溢れてるのが分かる。
「ならやるしかないな!必ず俺たちで打鉄弐式を完成させる!」
うん、決めた…無理だからって逃げない…きっと打鉄弐式を完成させてみせる。
『だけど…部品はどうするの?部品がないと…』
「その点は何とかなった…昨晩に織斑先生に交渉した結果…学園に余ってるパーツの使用許可を取れた…これはやっぱり学園からも打鉄弐式を完成させたいっていう意志をくみ取れる、計らいだとおもう」
学園からパーツが…私が無力で泣いてるときに優希は動いてくれてたんだ…うれしいな…
「それともう一つ、俺の所属するバニングスの社長にパーツのことを聞いたら喜んで了承してくれたこれで学園にない必要パーツがあった場合でも…まあ予算もあるけど…ある程度なら揃えられるはずだ」
優希の所属企業も…優希…凄いよ…
「それとこれはアリサ姉…バニングスの社長からの伝言…倉持技研から捨てられたんならいっそのことうちにこないかって…」
『本当に!?倉持技研から怨まれるかもしれないんだよ!?』
「まあ今から恨みの一つや二つどうってこと無いだろう」
と軽く優希は言うけど…怨まれるの…バニングス社の社長さんじゃ…
「まあ取り合えず…パーツ面なら問題は無い、な、まだ諦めるには早いだろ?」
と、優希は私に向かって笑みを浮かべる。
うん優希の言うとおりだ。
私のために優希は必死になって繋ぎ止めてくれた…絶望の中で希望の光へと繋げてくれた…
優希…まだ出会って間もないのに私の凍りついた心を溶かしてくれて私を照らしてくれる光のような大切な人……ううん…もっと…簡単に例えられる…優希は私にとっての…
完全無欠の