インフィニット・ストラトス 夜天の息子の鮮烈なる物語   作:ウィングゼロ

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二十話『抱えるものと朧気な過去』

さてと…話し合おうと決めたのは良いけど…どうしたものか…

 

『ん?』

 

簪さんの姿を良く凝らして見るとモニターが開いているのに気づく

 

『もしかして作業中に眠ったのか?』

 

俺は恐る恐るだが簪さんに近づいてモニターを覗いてみた。

 

『…これは…ISのデータ?いや…それにしては…』

 

モニターには見たこともないISの姿が映っていてモニターを見た限りで直ぐにあることに気付いた。

 

「ん…んん…あれ?私…」

 

 

簪SIDE

 

「ひっく…お父さん…お母さん…お姉ちゃん…」 

 

これは…夢…

 

いつの間にか眠りに落ちてしまったのか…またこの夢を見るなんて…

 

今、泣いて家族のことを呼んでいるのは小さい頃昔の私…

 

もう5年ほど前になるのかな…

 

ある日…私は一人で家に帰る途中…人気の無い道で誘拐犯グループに誘拐されどこかの廃棄工場に連れて行かれた。

 

誘拐された私を使ってお金と取引しようとしていたことを朧気だけど覚えてる…

 

このころの私は…ううん今の私も弱くて情けない…

 

怖くて泣いている昔の私は心の底で微かに必ずヒーローが助けにやってくると信じていた。

 

きっと…捕まった私を救ってくれる完全無敵のヒーローが…

 

そして…その人は現れた。

 

部屋の高いところにある窓からガラスを破って室内に侵入し私の目の前に着地、そして私の近くにいた誘拐犯を一撃で倒してみせた。

 

その時の私は本当にヒーローが現れたって歓喜した。

 

今でもその人の後ろ姿は覚えてる…

 

顔は見えないようにフード付きのコートを羽織って…見たこともない機械仕掛けの槍を持った…小さいヒーロー(男の子)の後ろ姿を

 

 

 

……

 

『ん…んん…あれ?私…』

 

夢から覚めたのかな…まだ頭がぼやけててはっきりしない…そういえば…私何をしてたっけ……っ!

 

『そうだ!打鉄二式!』

 

倉持技研から受け取った第3世代試作機、打鉄二式それを開発していた途中で眠ってしまったんだ、一刻の猶予もないのに!

 

「起きて早々、作業に取りかかろうとするところ申し訳ございませんが…手を止めていただけないでしょうか?」

 

『え?八神くん!?』

 

どうして、八神くんが此処に!?八神くんは事情で学園から離れていたはず…そうか…もう日曜日だし帰ってきても可笑しくはないもんね

 

「止まっていただきありがとうございます…まともな思考判断力が残っていて助かりましたよ」

 

『え?それってどういう…』

 

八神くんがなにをいっているのかわからない…私の…私の邪魔をするの?

 

「まず…冷蔵庫の中…改めさせてもらいましたが…何ですかあの健康食品の量は…簪さんちゃんとご飯食べてますよね」

 

『そ、それは…』

 

八神くんがいうことに私は言葉を詰まらせる。

 

正直に彼の言うとおりだ…

 

私は一刻も早く打鉄二式を完成させなければならないために食事も最低限にしていた。

 

だけれど、栄養はちゃんと取ってるし何らか支障も…

 

「健康食品程度じゃいつか倒れてしまいますよ……それに…あまり眠ってもいない様子…」

 

『え…っ!?』

 

どうして、それもわかるの!?

 

確かに八神くんが外出してる間は寝る間も惜しんで開発を進めていたけど…

 

「少しは眠っていたみたいけど…まだ目元に隈が付いてます…」

 

『そう…なんだ…』

 

私の顔や冷蔵庫の中身を見ただけでここまで推測するなんて凄い…

 

「無理は禁物…オーバーワークは何も得なことなんて無いよ」

 

『っ!…そんなこと…』

 

 

…八神くんに…私の…私の何が分かるって言うの!?

 

先ほどまでの気持ちから一変して私は八神くんに苛立った。

 

 


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