インフィニット・ストラトス 夜天の息子の鮮烈なる物語   作:ウィングゼロ

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百二話『GW3日目/決戦世界カルナージへ』

 

 

午後二時半…楯無達が海鳴りに向けて出立し漸く、月村邸前までやって来た。

 

「ここね、凄い豪邸じゃない…本当に此処なのか疑いたくなるわね」

 

楯無の脳裏には月村は八神家とは親密な関係ということは頭の隅に覚えていて、取りあえずと門の横に付いているチャイムを鳴らした。

 

チャイムが鳴って数秒後インターフォンからすずかの声が聞こえてくる。

 

「はーい…」

 

「えっと優希の知り合いの更識です…優希くんからこちらに行けといわれてきたのですが…」 

 

「あ、更識さん達だね、話は優希くんから聞いてるよ入って来て」

 

家主の了承も得たことで門を潜り敷地内に足を踏み入れる楯無達、そして玄関の扉を開けて中に入るとすずかが柔やかな笑みを浮かべて待っていた。

 

「初めましてこの家の主の月村すずかです」

 

「初めまして、更識楯無です、そしてこちらにいるのが布仏虚です」

 

「お、お初にお目にかかりますわ、私、セシリア・オルコットです」

 

「凰鈴音です」

 

「うん、みんなのことは聞いてるよ…さて、まだはやてちゃん来てないから、少しお茶でも飲んで待ってようか」

 

そういって中庭に案内され…鎮座するテーブルには用意された紅茶やお菓子などが置かれていた。

 

そこでしばらく休憩して雑談などをする楯無達…

 

決戦前ということもあり何処か落ち着かない雰囲気も醸し出されていた。

 

「それじゃあ、セシリアちゃんも鈴音ちゃんも優希くんのこと好きなんだ」

 

「え、ええ…私にとって優希さんは理想の殿方ですから」

 

「私は…その好きってわけじゃ…ただ優希には色々と助けられたから…その…」

 

優希に好意を持ってる?セシリアと鈴にすずかが指摘すると少し恥ずかしそうに紅茶を飲むセシリア、鈴はまだ自分の気持ちがわからないのかもじもじしながら言い放つ。

 

《青春ね~簪ちゃんのライバルが多いわ~》

 

あまり顔に見せない楯無も内心でそんなことを思いながら、この先のことを思い浮かべながら紅茶を飲んでいく。

 

すると近くから何やら不思議な音が聞こえてきて、この場にいる全員がその音に反応する。

 

「何の音でしょうか」

 

「結構近くで音がしたわね」

 

不思議がるセシリアと鈴と虚、それと対照的にすずかと楯無は至って落ちついていた。

 

楯無はこの音が何処か優希がやっていた魔法と同じ起動音であることを察し、すずかに至ってはもう既に聞き慣れた音だったため…それほど気にしていなかった。

 

それから少しすると、楯無達に近寄る足音が1つ、近寄ってくる相手は中庭に楯無達がいることを知っているように一直線に向かっていき、声が届く範囲で話しかけた。

 

 

「すずかちゃーん!!」

 

「うん、はやてちゃんだね」

 

楯無達の元にやって来たのははやて、それがわかっていたすずかは当然のごとく物言いで柔やかに笑みを浮かべる。

 

「ごめんな、集合場所に使ってもうて」

 

「気にしないよ~ミッドに行けるの此処以外だとアリサちゃんの島しかないし」

 

勝手に楯無達との合流場所に使ったことを謝る、はやてだがそんなこと気にしていないすずかは平然と返した。

 

「えっと、お久しぶりです。八神さん」

 

「うん、半月ほどぶりやな、さてと…私のこと知らん人が多いから自己紹介しなあかんな…八神はやてです、優希の母親で海上警備の司令やってます」

 

と自己紹介をするはやて、しかし海上警備司令であることは知らなかった楯無は恐る恐る、訪ねた。

 

「あ、あの…はやてさん…海上警備司令…って」

 

「ああ、楯無ちゃんも気になるとは思うけど…少し時間が迫っててな…優希達も待ちくたびれてると思うしさっさと行こうか」

 

迫り来る時間のことを考え、楯無の質問を応えることなく、はやては楯無達を連れて…中庭にある転移ポータルの前へとやって来る。

 

「さてと、ある場所に行く前にみんなにはお願いがあるんやけどええかな?」

 

「お願いですか?」

 

「これから見ること体験することは他言無用にしてほしい……勿論国の命令であったとしても…」

 

はやてから告げられるその言葉には強い意志が含まれていて、その場にいた全員が気圧されて、たじろぐ。

 

全員がたじろいだ中最初にはやての質問に答えたのはセシリアであった。

 

「勿論ですわ!このセシリア・オルコット、その名を賭けて秘密は守りますわ」

 

「わ、私もよ!ここまで来て引き下がるわけないでしょ!?」

 

まず、同学年の二人は秘密にすると了承した後、次に応えたのは楯無であった。

 

「私も……この前の説明も納得するところが幾らかあったし、そろそろ腹を割って話して欲しかったのよね…更識家の名にかけて他言無用にするわ」

 

「私もお嬢様に従います」

 

楯無と虚の答えも出たことでそっかと呟いたはやては笑みを浮かべて話し出す。

 

「それじゃあ、行こうかみんなこの陣の上に乗って、此処から一気に優希のいる場所まで転移できるから」

 

「いや、転移って…」

 

地球出身ではあまりにも聞き慣れないか鈴が戸惑いながら訪ねてくる。

 

「まあまあ、論より証拠や!」

 

そういって、半ば強引に全員を転移ポータルの上に乗せると直ぐに転移が開始された。

 

 

 

優希SIDE

 

クラナガン中央次元港、一般人が別世界に行くための玄関口にいる俺達は簪、ヴィータ……リインと奏と合流し、もう一方の到着を待っていた。

 

「それでね!やーくん酷いんだよ!?無抵抗の私を~容赦なく…」

 

俺がいる場所から少し離れた場所で本音がパタパタと両腕を動かしながら簪と奏と話している。

 

話している内容は聖王教会での騒動であろう。

 

簡潔に話すと預言を聞き終えた後、カリム姉と雑談していると窓の外に耳を当てて盗聴しているシャンテと本音を発見…

 

勿論、シャッハが黙っていない…しかし此処でもう一つ問題が起きた。

 

盗聴していたのは一人ではなく、悪乗りをしたセインまでも別方向から盗聴していてシャッハはセインを追いかけていった。

 

そして俺も本音も関わっていたために、俺がシャンテと本音を追跡、その末少し氷結魔法で動きを封じ込めた。

 

まあ、悪いのは盗み聞きしてた本音だし、正当性はこっちにある。何を言われようが言い返せる。

 

「優希、それより預言のこと本当なのか?」

 

『ああ、今後、管理局も動きを変えるだろうな…取りあえず詳しい預言の内容は母さんも交えてカルナージで話す、今は預言より…試合だしな』

 

「ああ、そうだな」

 

しぶしぶと頷くヴィータ、預言が出たことにやはり思うことはあるだろう、そういう表情が見受けられる。

 

(こちら、はやて…優希聞こえるか?)

 

『母さんから念話?』

 

(聞こえてるよ、今到着したの?)

 

(そうやで…地球から4名ご到着、あ、優希がいる場所教えたらセシリアちゃんと鈴ちゃんそっちに走っていったよ)

 

母さんからの念話を聞いて、セシリア達が向かってきているという報告を聞くと目線の先にエスカレーターで上がってきたセシリアと鈴の姿が目に映る。

 

(母さん、二人とも見つけた、真っ直ぐこっちに来てる)

 

「見つけたわ!優希!」

 

『そんな急がなくても…』

 

走って俺の元に駆け寄ってきた鈴の言葉を聞いて、馳せる気持ちを落ちつかせようとするが…どうも効果は無さそうだ。

 

「というより!?異世界なんて聞いてませんわよ!?優希さん!説明してくださいます!?」

 

『セシリア落ち着け、ここまで来たんだ話はちゃんと話すから…それより母さん達も漸く来たみたいだ』

 

セシリアの問を後回しにしてセシリア達の後からやって来た母さん達、漸くカルナージへと向かうメンバーが勢揃いしたわけだ。

 

「さて、時間も迫って来とるから、先急ごうか」

 

「あの、優希くん少し良いかしら?」

 

先を急ぐ、母さんにふと思うことのある更識さんは俺に向かって話し始める。

 

『…母さん達は先行ってて直ぐに追いかけるから』

 

「了解、早うするんやで」

 

俺の言葉を聞いて母さんは俺と更識さんを残し先に進んでいく。

 

『さてと、話って…なに?』

 

「そうね…先ずは…ごめんなさい!今の今まで謝っていなかったけど、優希くんを危険視していたこと、今此処で謝るわ」

 

そういって頭を下げる更識さん、俺としては怪しい人物を警戒するのは当然だと思うため、それほど気にしていなかったことなのだが…

 

『別に謝らなくても良いですよ、更識さんは不確定要素が多い、俺に警戒していたんですから……上に立つものとして当然だと思いますよ』

 

「それでもよ、一度疑った上に今の今まで謝っていなかったのは事実だから……それともう一つ……簪ちゃんを助けてくれてありがとう、あなたがいなかったら簪ちゃんは、自分の殻を壊すことも出来なかったと思うから……」

 

『それも大げさ、単に少し教えただけですよ』

 

ここまで強くなったのは殆ど簪の力だ、これもお礼を言われるようなことではない。

 

「…本当…自惚れないのね…少しぐらい自惚れてもいいと思うけど…」

 

『まあ、まだまだ半人前ですから、さてと母さん達を追いかけないと乗り遅れたら色々と予定が狂うからな』

 

更識さんも言いたいことは言ったことで、話は此処で終わりにして俺と更識さんは先に行った母さん達の後を追い、無事に次元航空艦に搭乗しルーテシアが住む、カルナージへと向かっていった。

 

 


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