ラブライブ!side “M” お兄ちゃんは魔法使い 作:真仁
アニメも終わったのでまたマイペースに書いていきますがよろしくお願いします
季節外れの降雹事件の後、束は成り行きからAqoursの練習の様子を見させてもらう事に。その後、そのまま皆で束の歓迎会を行おうという流れになり全員が千歌の家の前にある浜辺に集合していた。
千歌「皆集まったかな?」
梨子「集まったけど・・・」
善子「なんで外なのよ」
千歌「それはね・・・」
束「よいしょ・・・っと」
千歌達が話していると浜の方から大きな荷物を運ぶ束が現れる。束の後ろには小さな小屋が見える。
曜「束さん?その荷物ってもしかして・・・」
束「ああ、そこの海の家で使う備品ってとこかな」
果南「もうそんな時期なんだね」
束「まさかこんな事までやらされるとはね・・・」
千歌「で、束君と私達で海の家の準備をしながらついでにここを借りて束君の歓迎会もやっちゃおう!って」
束「俺のはついでかよ」
善子「それって・・・人手が足りないから呼ばれたって事?」
梨子「でも確かに人数が多い方が早く終わりそうだし」
花丸「そういう事ならオラ・・・じゃなかったマル達も手伝うずら!」
束「すまない、助かる」
ダイヤ「仕方ありませんわね。歓迎会もやるなら遅くならないよう手分けして早めにやってしまいましょう」
10人で手分けして行った結果予定よりも早く海の家の準備を終える事が出来た為、引き続き束の歓迎会に移るための準備に各自取りかかる。
海の家の中では束、曜、果南の三人が歓迎会用の料理を作っていた。
束「なんで俺の歓迎会の料理を俺が作らなきゃならんのだ・・・」
果南「いいじゃん別にさ?料理上手いんでしょ?千歌から聞いたよ。東京にある伝統と格式あるお店の職人さんなんだよーって」
曜「え?私は一流ホテルの専属パティシエって聞いたけど・・・」
束「話が段々と大袈裟になってる⁉︎」
花丸「食材持ってきたずら〜」
買い出しに出かけていた花丸、ルビィ、善子の一年生組が段ボール箱一杯の食材を持って帰ってきた。
束「お、サンキュー」
ルビィ「ひっ!」
食材を受け取ろうとした束だったがルビィは花丸の後ろに隠れてしまう。
束「溝は深いかぁ・・・」
花丸「ルビィちゃん、元々お父さん以外の男の人苦手だから・・・」
ルビィ「ご、ごめんなさい・・・」
束(花陽ちゃんに似てると思ったけど中々に難儀しそうだなこりゃ・・・)
果南「それにしても・・・随分と大きいヤツ買ってきたねぇ・・・」
善子「フフフ・・・このヨハネの持つ魔性の魅力を持ってすれば人間の心理を操るなど造作も無い事!」
花丸「訳すとお店の人がサービスしてくれたずら」
善子「訳すな!」
調理台の上には下に敷いたまな板が見えなくなる程の巨大な魚が乗っけられていた。
果南「束、コレ切れる?無理なら変わるよ」
束「ノーサンキューだ・・・俺に切れないものは無い」
そう言って束は包丁を構える。
束「術式レベル2!・・・ハアッ!」
スパァン!
鮮やかな包丁さばきで一瞬でまな板の上の魚を三枚下ろしにする。
果南「お〜!」
花丸「ブレイブすらぁ〜」
曜「包丁の扱いもお手の物だね!」
束「違う」
曜「へ?」
束「コレは・・・メスだ」
曜「いや、包丁でしょ?」
ダイヤ「いい加減に・・・しなさぁぁぁい!」
突然ダイヤの声が調理場に聞こえてくる。
束「な、なんだ?」
ルビィ「お姉ちゃんの声だったけど・・・」
果南「確か、千歌と鞠莉と梨子ちゃんとで一緒に会場の準備をしてるはずだよね?」
束「ちょっと様子見てくるか・・・。ヨハ子とキング借りてくぞ。
ルビィちゃんは代わりにコッチ手伝ってあげてくれ」
ルビィ「は、はい!」
善子「ヨハ子じゃなくて善子!・・・でもなくてヨハネよ!」
花丸「キングって・・・オラの事?」
束「さっきブレイブって言ってたろ?なんかガブガブ食べそうだし」
花丸「オラそんな食いしん坊じゃないずら〜」
そんな事を言いながら三人は調理場を出て行った。
果南「さて、向こうはとりあえず任せて私達も料理作ろっか!」
曜「了解であります!」
その横ではルビィが包丁を逆手に持っており・・・
ルビィ「てやぁー!」
果南・曜「危なーい!」
ルビィ「ピギィッ⁉︎」
調理場を出て会場にきた束達。会場といっても海の家の前に長テーブルとイスを出してあるだけなのだが・・・
束「どうかしたのか?・・・ってなんじゃこりゃ」
束が目にしたのは海の家の柱や屋根などに巻きつけられたイルミネーション用のLEDライトが色とりどりの光を放っている光景だった。
鞠莉「イェーイ!シャイニー!」
ダイヤ「シャイニー!じゃありませんわ!これじゃまるでクリスマスじゃないですか!今は夏なんですよ!」
鞠莉「ダイヤってば相変わらず硬いんだから。こーゆーのは派手に綺麗にやらないと!」
ダイヤ「綺麗ならいいってもんじゃありませんわ!」
千歌「そうだよ鞠莉ちゃん!それじゃダメだよ!」
ダイヤ「ほら、千歌さんもそう言っ・・・て・・・」
ダイヤが振り返ると身の丈程の大きさの木に千歌が何かをせっせと付けている。
ダイヤ「千歌さん?これは・・・?」
千歌「クリスマスツリーだよ」
ダイヤ「言ってる事とやってる事が全然違うじゃありませんか!」
千歌「違わないよ。LEDを飾るのはクリスマスだけなんだよ」
束「年がら年中光らせてる家もたまにあるけどな」
千歌「とにかく!ツリーにLEDを飾るのはクリスマスなの!梨子ちゃん、今の季節は何?」
梨子「私⁉︎・・・夏?」
千歌「そう!夏なんだよ!で、花丸ちゃん夏といえば?」
花丸「夏といえば・・・スイカずら!」
千歌「そ、そうだけど・・・ほら、もっと他にあるでしょ!綺麗に光って・・・」
花丸「りんご飴ずら!」
千歌「じゃなくて色鮮やかで・・・」
花丸「かき氷ずら!」
千歌「屋台から一回離れよう!」
善子「・・・もしかして、花火って言いたいの?」
千歌「そうだよ善子ちゃん!それが欲しかったんだよ!」
善子「善子じゃなくてヨハネ!」
花丸「花火は食べれないずらよ?」
ダイヤ「花丸さん、食べ物の話じゃありません」
束「花火って・・・お前まさか・・・」
千歌の用意したツリーの枝をよく見てみると線香花火やロケット花火、ねずみ花火などあらゆる種類の無数の花火が括り付けられており・・・
千歌「クリスマスのツリーがLEDなら夏のツリーは花火だよ!というわけで・・・点火!」
束「・・・皆逃げろぉぉぉっ‼︎」
ドドドドドドドドドッ!
点火と同時に括り付けられた花火が一斉に火を噴く。
善子「きゃあああっ!」
鞠莉「ワァーオ!バーニングシャイニー!」
ダイヤ「言ってる場合ですか!このままだと海の家に燃え移ってしまいますわ!」
梨子「千歌ちゃんは⁉︎」
見ると木の根元には至近距離での爆発に驚いたのか倒れてる千歌の姿が。
束「くそ!近づこうにもこの火力じゃ・・・」
遠くまで飛んでくるロケット花火や近くにシャワーのように火の粉を降らす線香花火などで文字通り死角は無く、かといって燃え尽きるのを待つわけにもいかない。
ダイヤ「とにかく早く消火しなくては!」
花丸「お水持ってくるずら!」
二人は水を入れる容器を探しに行く。しかし程なくしてツリーが千歌の倒れてる方向に傾き始める。
束「マズイ!」
梨子「束さん!コレを!」
束「マント?・・・そうか!」
梨子から差し出された物を見てその言葉の意図を汲み取った束は黒いマントを受け取る。
善子「それ私の堕天グッズ⁉︎」
束「借りるぞ!」
束はマントを前面を覆うように被るとそのまま木に向かって突っ込む。
ジジジジジジ・・・
激しい火花が飛んでくるがマントでガードされている為なんとか前進が可能になりそのまま接近、花火の勢いが弱まってる箇所を見つけるとそこに向かってスライディングで根元に滑り込む。
束「この瞬間を待っていたんだー!」
某海賊な機動戦士のパイロットように叫んで木の根元を思い切り蹴り飛ばす。ツリーはゆっくりと傾いてその後大きな音をあげて倒れた。
ダイヤ「大丈夫ですか!」
花丸「水持ってきたずら!」
両手になみなみと水が入ったバケツを持ってきた二人はすぐに倒れたツリーを消火する。
梨子「千歌ちゃんは⁉︎」
束「大丈夫、ビックリして目を回してるだけだ。怪我は無い」
善子「あぁ〜私のマントが・・・」
一方の善子は大量の火花を浴びて至る所が焦げたマントを見ながら茫然としている。
束「わ、悪い・・・ちょうどよかったモンで・・・」
善子「どうしてくれんのよ!これお店に売ってないのよ!通販で高かったんだからね!」
束「今度弁償するから!」
果南「なんか凄い音したけど・・・大丈夫?」
花火やら倒木やらの音を聞きつけて調理場にいた三人が出てくる。
曜「なんで夏なのにクリスマスツリー?しかも焦げてるし・・・」
果南「もしかして・・・キャンプファイヤーでもするつもりだった?」
千歌「そうだよ」
束「いつの間に・・・ってかしれっと嘘をつくな嘘を」
その後、なんとか飾り付けが終わり同じタイミングで料理組も出来上がったのでそのまま歓迎会を始める。
束「もらったぁ!」
善子「あ!ちょっとそれ私のじゃないのよ!」
束「ふはは!食卓は戦場なのだ!ブファァァッ⁉︎辛ぇぇぇッ⁉︎」
花丸「自業自得ずら。神様はちゃーんと見てるずら」
曜「善子ちゃん、辛いの大好きだからね・・・」
束「あんな辛いモン平気で食うって違う意味で人間じゃねぇって・・・ん?この料理だけなんか見た目が他のやつと違うな?」
果南「それはルビィちゃんが作った料理だからね」
束「ルビィちゃんが?」
果南「包丁職人になるために頑張って修行したから」
束「イミワカンナイ・・・」
そう言いながらも他の料理よりも大きめに切られていた野菜を口に運ぶ。
ルビィ「ど、どうですか・・・?」
束「・・・うん、美味いなコレ」
ルビィ「本当⁉︎」
束「ああ、これならすぐにでもお嫁さんになれるぜ」
ルビィ「お、お嫁さん⁉︎」
ダイヤ「ルビィに手を出したら・・・タダじゃおきませんわよ?」
束「姉さん目がマジやないですか・・・」
鞠莉「ほーんと、妹離れ出来ないよねーダイヤは」
束「ああ、そゆこと?」
ダイヤ「どんな事ですか!」
梨子「・・・・・」
その様子をジッと見つめていた梨子に千歌が話しかけてる。
千歌「どうしたの?梨子ちゃん?」
梨子「千歌ちゃん、・・・ねぇ、千歌ちゃんは束さんとは知り合いなんだよね?」
千歌「そうだよ。あと曜ちゃんと果南ちゃんもかな」
梨子「束さんって昔からあんな感じなの?初めて会った人達ばっかの筈なのに・・・もうあんなに打ち解けてるし・・・」
千歌「うーん・・・知り合いって言っても一緒だったのは1年くらいだけだったし、私もまだ小さい頃だったからなぁ・・・でも、私は昔のまんまだと思うよ。明るくて頼りになってでもちょっと馬鹿で」
梨子(千歌ちゃんに馬鹿扱いされるって束さんって一体・・・)
千歌「でも一緒にいると面白いし楽しいんだよね」
束「おい誰だよ!炭火の中にミカン突っ込んだヤツ!」
千歌「あ!それ私の!私の焼きミカン〜!」
束「焼きミカンってそーゆーのじゃねぇだろ⁉︎」
梨子「・・・・・」
時間はあっという間に過ぎ、歓迎会は終了、片付けも終えて全員が各々の帰路についた。梨子も帰宅し、自分の部屋にいたのだが窓の方から何かの気配を感じ窓を開ける。
梨子「束さん・・・?」
束「おお、梨子ちゃんか」
窓を開けると束が旅館の屋根の上に座っていた。片手には飲料の缶を持っている。
梨子「お酒・・・ですか?」
束「大人だからな」
梨子「なんでそんな所で・・・」
束「まぁ懐かしくってな」
束は目の前に広がる海の方を見ながらそう答える。
束「この海と、昔話ってとこかな?」
梨子「海と昔話・・・」
束「まぁ、おかしいよな」
梨子「・・・そんな事ないです。私も海の音を聴きましたから」
束「そっか。海の音を・・・ねぇ」
梨子「束さん、音ノ木坂から来たって言ってましたよね?・・・私もここに来る前は音ノ木坂にある高校に通ってたんです」
束「音ノ木坂にある高校って言えば・・・」
梨子「はい、音ノ木坂学院です。でも、四月から親の都合で転校になって・・・この内浦に来たんです」
束「四月から・・・」
束(そういやμ'sの活動始めたばっかの頃、作曲できる人を探していてる時に海未ちゃんが「去年、隣のクラスに一人ピアノの上手な子がいたのですが進級と同時に転校してしまったらしいです・・・」なんて言ってたっけ)
梨子「東京とは全く違う環境で戸惑う事もいっぱいあったんですけど・・・千歌ちゃんや曜ちゃんと出会って、友達になって、一緒に飛び込んだ海の中で音が聞こえたんです」
束「それが海の音・・・か」
梨子「それを聞いたらなんだかホッとしたというかスーっと自分の中にあった戸惑いや不安が消えていって・・・、千歌ちゃんから誘われてたスクールアイドルにも挑戦してみようかなって思ったんです」
束「そっか・・・」
梨子「あ、ご、ごめんなさい!私、自分の事ばっかり話してしまって・・・」
束「いや、いいんだ。いい話を聞かせて貰えたし、な」
梨子「海の音の事・・・ですか?」
束「ああ。・・・多分俺には、一生聞くことの出来ない音・・・だから」
梨子「え?」
千歌「束くーん!そろそろ降りておいでよー!」
旅館の奥から千歌の声が聞こえる。
束「さて、そろそろ退散しますかな。じゃあな梨子ちゃん、おやすみ」
梨子「あ・・・はい・・・」
束はスルスルッと屋根を降りると窓から千歌の部屋に入っていった。
梨子「・・・さっきの言葉・・・一体どういう・・・」
ひとまず10話はこれで終わりです。なるべくペースを上げられるよう、そしてネタが作者趣味全開のマニアックネタになりすぎないよう気をつけていきたいです・・・