ラブライブ!side “M” お兄ちゃんは魔法使い   作:真仁

47 / 53
幕間 グッバイ ブラザー その2

にこ「はあっ!」

束「うおぉっ⁉︎」

窓から飛び出した二人はそのまま外に止まっているトラックの荷台に着地する。

にこ「急いで袋から出すわよ!」

すかさずにこはゴミ袋を開けて中から赤い箱を取ろうとする。しかしその瞬間トラックのエンジンがかかり、動き出してしまう。

束「うおっ!」

発進時の衝撃でバランスを崩した束は荷台から落下してしまい、にこを乗せたままトラックが走り出す。

束「くそ!逃がすかよ!」

束は魔法を使い自転車を呼び出す。それは以前穂乃果を乗せ暴走したマウンテンバイクだった。

束「もう一度頼むぜ!」

束が握ったハンドルから魔力を流し込むことで自転車が淡い光に包まれたかと思うとそのまま猛スピードで走り出した。

 

 

 

にこ「中々止まんないわね・・・まさかこのまま集積場送りとか・・・」

袋から取り出したボックスを大事に抱えながらトラックが止まるのを待つにこ。そこに自転車に乗った束が後ろから追いかけてきた。

束「にこちゃん!例のブツは⁉︎」

にこ「ここにちゃんとあるわ!」

にこは持っていたボックスを束に見えるように上げて見せる。しかしその時にトラックが段差の上を通過した為、ガタン!と大きく揺れた。その衝撃は荷台にも伝わり、そのはずみでボックスがにこの手から飛び出してトラックの隣を追い越していったスポーツカーの中に入ってしまう。

にこ「嘘でしょぉぉっ⁉︎」

束「何やってんだよ!」

束は追跡目標を赤いスポーツカーに変えて追いかけるがあまりにスピードが違いすぎてどんどん離されてしまう。

それと同時にトラックが止まった為、にこも荷台から降りて同じく一度停止した束の元へいく。

にこ「どうすんのよ束!」

束「いや、大丈夫だ。このルートなら先回りできる」

束が自転車の向きを変え発進しようとすると、にこが後ろに乗ってきた。

束「お、おい・・・コレ一人乗りだぜ?」

にこ「ジッと待ってるなんて出来ないわ!」

束(参ったな・・・俺一人なら魔法使ってどうにかできるのに・・・)

にこ「それに〜、にこは軽いから大丈夫にこ♪」

束「・・・まぁ小さいしどこも出っ張ってないからな」

 

 

 

 

秋葉原

その日、花陽は凛と一緒に買い物に来ていた。一通りの買い物を終えたのでベンチに座って休んでいた。

花陽「ふう・・・ちょっと沢山買いすぎちゃったかな?」

凛「かよちんはホントにアイドルが大好きだね」

座っている花陽の両脇には何冊ものアイドル雑誌やアイドルグッズが入った袋が置いてある。

花陽「えへへ、今月は大好きなスクールアイドルが載ってる雑誌が多くて・・・。凛ちゃんも今日は一緒に来てくれてありがとう」

凛「かよちんが楽しそうで何よりだにゃ」

二人が話していると目の前に赤いスポーツカーが止まり、中から男性が出てくる。

男性「ん?なんだコレ?こんなの持って来た覚えねぇぞ?」

そう言うとスポーツカーの後部座席に入っていた赤い箱を拾い上げて投げ捨てる。捨てた後、男性はまた車に乗って走り去ってしまった。

投げ捨てられた箱は転がって花陽達のところへ。

花陽「なんだろう・・・コレ?」

凛「開けてみるにゃ!」

凛が箱を拾い赤い包みを開ける。

凛「DVDみたいだにゃ?」

花陽「こ、コレは・・・!」

包みの中身を見た花陽は驚愕する。

凛「かよちん?どうしたの?」

花陽「コレは・・・伝説のアイドル伝説 DVD全巻BOX !略して伝伝伝!各地のスクールアイドルのお宝映像を集めたDVDで発売当時ネット・店頭共に瞬殺(完売)になり、現在入手困難な激レアアイテム!なんでこんな所に⁉︎」

希少なアイドルグッズを前に興奮気味に話す花陽。そこに

息を切らしながら自転車を漕いできた束とにこが現れる。

にこ「ああもう!行っちゃったじゃない!何してんのよ束!」

束「さ・・・流石に・・・二人乗った状態で全力疾走は・・・キツイって・・・」

凛「お兄さんとにこ先輩?どうしたんだにゃ?」

花陽「束さんは頭にデッカいタンコブが出来てますが・・・」

にこ「気にする事ないわ。自業自得なんだから」

その時、にこは花陽が持っている物に気づく。

にこ「花陽、それって・・・まさか・・・」

花陽「はい!あの幻の伝説のアイドル伝説!伝・伝・伝です!」

にこ「どこで手に入れたの?」

凛「赤い車から捨てられたのを拾ったんだにゃ」

束・にこ「なんだって⁉︎」

凛の言葉を聞いて束は花陽達に詰め寄る。

束「おいそれ本当か⁉︎」

にこ「あぁ!この破れた包装紙・・・間違いないわ!」

包装も開けずに保管していたにこは破れた包装紙を見て肩を落とすがすぐに花陽の所へ。

にこ「花陽!悪いけどそれ私のなの!返して貰うわよ!」

花陽「え?え?」

束「ゴミ袋に捨てちゃって色々あってココに来たんだよ!」

凛「ちょっと待ってよ!これはかよちんが拾ったんだよ!にこ先輩のだっていう証拠はあるの!」

にこ「なんですって!」

花陽「ちょっと凛ちゃん・・・」

束「にこちゃんも落ち着けって」

にこ「これが落ち着いていられる訳ないでしょ!」

花陽「凛ちゃんも・・・にこ先輩のモノだって言ってるし・・・」

凛「大事な物ならゴミ袋に捨てたり知らない人の車に入るなんて訳ないにゃ!」

にこ「それは・・・まぁそうなんだけど!」

束「にこちゃん、押されてる」

凛とにこが言い争っている横で花陽は暫く困惑した様子で見ていたがやがて耐え切れなくなってしまい・・・

花陽「だ・・・だ・・・ダレカタスケテェェェッ‼︎」

そう叫ぶと同時に持っていたボックスを放り投げてしまう。

束・にこ「ああっ⁉︎」

大きな放物線を描きながら飛んでいくDVDボックス、そのまま道端に停車していた大型トラックのコンテナの中に落下、それに気づかない運転手が扉を閉めてしまいそのまま発進してしまう。

束「またトラックかよ⁉︎」

にこ「さっきのゴミ収集車とは訳が違うわ!あんな大型トラック、どこに行くかわからないわよ!」

そう言ってにこは止めていた自転車に乗る。

にこ「行くわよ束!早く後ろに乗りなさい!」

束「え?にこちゃんが運転すんの?」

にこ「あちこちのスーパーのタイムセールを駆け回る、にこの脚力を舐めんじゃないわよぉぉぉぉぉっ!」

束「え?・・・あああぁぁぁっ⁉︎」

束が後ろに乗ると同時に猛スピードで走り出すにこ。その場には呆然とその様子を見ていた凛と花陽が残された。

凛「な、なんだったのにゃ?」

花陽「さ、さあ・・・?」

 

 

 

 

 

にこ「おぉりゃああああっ!」

猛スピードでトラックを追跡するにこ。その後ろで束が振り落とされない様に必死にしがみつく。

束「穂乃果の時より速いぞコレ⁉︎どーいう身体してんだよスクールアイドルってのは⁉︎」

ただでさえ本来一人乗りのマウンテンバイクに二人乗りしてる上に限界以上のスピードを出し続けた為車体が先程からミシミシと音を立てている。壊れるのも時間の問題だろう。

にこ「追いついたわ!後はアンタに任せるわよ束!」

束「へ?任せるって・・・何を⁉︎」

トラックの真後ろに追いついたにこはその場で急ブレーキをかける。するとその反動で後ろに乗っていた束が前に向かって吹っ飛ぶ。

にこ「かっ飛べぇぇぇ!束ぁぁぁっ!」

束「嘘ォォォッ⁉︎」

ブレーキと同時に自転車も壊れてにこはその場に転倒する。そして前方に飛ばされた束はそのままトラックのコンテナの扉付近に捕まる。走行中のトラックのコンテナの取手にぶら下がっている状態の為、足が地面に擦れる。

束「ぐ・・・このぉ!」

束は急いで魔法でコンテナのロックを解除、扉を開けて中に入る。どうやら食料品関係を運ぶトラックらしく中は冷凍庫並みに冷えていた。そんな荷物の中に1つだけ不釣り合いな箱を発見する。

束「あったぜ!にこちゃん!」

束はDVDボックスを回収するとにこに見せる。

にこ「でかしたわ束!・・・・・あ」

回収したボックスを見て喜ぶにこだったが途端に表情が固まる。

束「どうした?・・・・・あ」

にこの様子を見てキョトンとしていた束だったが荷台の遥か後方に紫色の『ETC』の看板を見つけ全てを理解する。

束「嘘ぉぉぉっ⁉︎」

にこ「束ァァァッ!」

束「にこちゃぁぁぁん⁉︎」

束の叫びも虚しく、トラックは高速道路に消えていった・・・。

 

 

 

携帯が鳴り電話に出るにこ。

穂乃果「あ、もしもし?にこ先輩ですか?うちのお兄ちゃん、知りませんか?届け物を届けに行ったっきり帰ってこなくて・・・」

にこ「・・・束なら、多分当分帰って来ないわよ・・・」

穂乃果「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれだけの時が経ったか・・・冷蔵品を運んでいる為氷点下のコンテナで身動きも取れず座り込んでいた束。

やがてトラックが高速を降りたらしく停車した事を察知した束はすかさずコンテナを開けて外に逃げ出した。

束「う・・・うぅ・・・さ、寒い・・・。ここはどこなんだ・・・」

寒さにながらも束は持っていた携帯で位置情報を確認する。そこに出てきた文字は・・・

『静岡県 沼津市 内浦』

束「・・・・・嘘ぉぉぉぉぉっ⁉︎」

早朝の海辺に束の絶叫が木霊した・・・。




という訳で次回から新展開になります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。