ラブライブ!side “M” お兄ちゃんは魔法使い 作:真仁
とある休日の昼下がり。その日は練習が休みだった為、にこは自宅で家事をしていた。元々あまり裕福な家庭ではない為母親も仕事で家を空ける事も多く、必然的に家事や炊事などはにこがやる事が多かった。
にこ「ふう、とりあえず掃除はこれでいいわね」
部屋の掃除を終えたにこが掃除機を片付けていると慌てた様子で二人の小さな女の子がにこの所に来る。
にこ「?どうしたの?こころ、ここあ」
二人の少女は以前束との会話にも出てきたにこの妹達である。髪が黒く大人しめな雰囲気の方の子・・・こころが困った様子で話す。
こころ「お姉様!虎太郎見ませんでしたか?」
にこ「小太郎?一緒に遊んでたでしょ?」
ここあ「気づいたら部屋にいなかったんだよ!」
茶色がかった髪の活発そうな雰囲気の方の子・・・ここあも部屋の中を見回しながら言う。ちなみに虎太郎はにこの弟であり矢澤家の末っ子の事である。矢澤家は4人姉弟なのだ。
にこ「こっちには来てないわよ・・・。台所やトイレは⁉︎」
こころ「見たけどいませんでした!」
にこ「あと考えられるのは・・・玄関⁉︎」
急いで玄関を見にいくとそこには虎太郎のいつも持っていたピコピコハンマーと虎太郎の靴が片方だけ落ちており玄関は僅かに開いていた。
にこ「そんな・・・虎太郎・・・虎太郎ーー!」
にこは慌てて家を飛び出した。
秋葉原、ちいさな公園にて
束「・・・・・」
虎太郎「・・・・・」
ベンチに並んで座っている束と虎太郎。
その日、頼まれた用事を終えた束は帰り際に公園に寄り、少し休んでいたのだがそこに小さな男の子がフラフラ歩いているのを見つけた。見ると靴も片方しか履いてなく、気になった束は声をかけてみたのだった。
束「で、君の名前は?」
虎太郎「こたろう・・・・」
束「虎太郎だな。虎太郎は靴を片方しか履いてないけどもう片方はどうしたんだ?」
虎太郎「おとした」
束「そっかぁ・・・。お家の場所わかるか?」
虎太郎「・・・・・?」
首をかしげる虎太郎。
束「やっぱわかんないかぁ」
束はポケットからほむまんを一つ取り出すと虎太郎に差し出す。
束「食べるか?」
虎太郎「食べる」
ほむまんを受け取った虎太郎は包みを開けて食べ始める。
束「にしてもこの顔、どっかで見た事あるような・・・ん?」
ふと前に目を向けるとにこがこちらに向かって走ってきていた。
束「あれ?にこちゃーん!そんなに急いでどうしt」
にこ「うちの虎太郎に何してんのよぉっ!」
バキィッ‼︎
束「ゴッフォッ⁉︎」
にこの飛び蹴りが炸裂し、束は座っていたベンチから後ろに吹っ飛ぶ。
にこ「虎太郎!大丈夫⁉︎怪我はない⁉︎変なことされなかった⁉︎」
虎太郎「おねーちゃん、強い」
にこ「当然よ!虎太郎に手を出す奴にはにこにーの『ニコ クリティカル ストライク』をお見舞いしてやるにこ♪」
束「ニコはニコでもニコが違う!」
ベンチから転落した束がツッコミながら起き上がる。
にこ「束!いくらアンタでもうちの弟に手を出したら許さないわよ!」
束「出すか!どう思われてんだよ俺!」
にこ「海未のパンツ盗んだんでしょ?」
束「盗んでない!」
虎太郎「このおにーちゃんがお菓子くれたー」
にこ「お菓子?はっ!まさかお菓子で釣ろうと・・・」
束「してない!大体弟ならしっかり面倒見とけよ、靴も片方しか履いてないしそっちのがあんまりだぜ!」
にこ「う、うるさいわね!だからこうして探しに来たんでしょ!・・・はぁ、もういいわ。虎太郎も見つかったし。さ、虎太郎、帰りましょ?」
しかし虎太郎は束の服をギュッと握って離さない。
にこ「虎太郎?」
虎太郎「・・・・・」
にこ「もしかして・・・遊んで欲しいの?」
無言で頷く虎太郎。しばらく考え込んでいたにこだったが・・・
にこ「はぁ・・・仕方ないか。束、この後時間ある?」
束「あ、ああ。今日の仕事はもう終わったとこだったし」
にこ「少し一緒に遊んでもらっていいかしら?なんか虎太郎が気に入っちゃったみたい」
束「ああ、わかった」
にこ「じゃ、うちに行きましょ。あ、あと・・・く・れ・ぐ・れも!うちの家の事は他のメンバーには喋らない事!いいわね?」
束「お、おう・・・」
矢澤家
ここあ「お客さんだ!お家にお客さんが来た!」
こころ「お姉様がお客様を連れてくるなんて珍しいです!」
束「お、おぉ・・・これは・・・」
出迎えた二人の妹と家の中の様子をパッと見て大体の矢澤家の事情を察した束。にこの方に振り返り、
束「お疲れさんです」
ペコリと頭を下げた。
にこ「何よいきなり・・・。悪いんだけどごはんの支度をしないといけないからその間だけでも一緒に遊んでたもらってもいい?」
束「あいよ」
にこ「変な事したら許さないからね?」
束「しないって・・・」
その後、支度を終えたにこは妹達を呼びに部屋に入る。
にこ「ごはん出来たわよ・・・ってなによコレ!」
にこが入ると辺り一面に画用紙の切り屑や絵が散らばっておりその中で虎太郎達が画用紙で作ったお面やらチラシを巻いて作った剣やらで遊んでいた。
束「フハハァ!タドルレガシーは絶版だぁ!」
虎太郎「おのれー」
ここあ「くっ!ハイパームテキがあれば!」
にこ「いい加減にしなさぁぁぁい!」
バタバタと暴れすぎとうとうにこのカミナリが落ち、全員で片付けを始める。
にこ「全く・・・いい歳して何こどもと同レベルで遊んでんのよ」
束「いや、クロニクルゲーマーにはレベルが設定されてないからレガシーゲーマーのレベル100と一緒にされちゃ困る」
にこ「レベルってそういう意味じゃないわよ!」
虎太郎「ハイパームテキがあれば・・・」
束「そしたらリセットしてやる」
虎太郎「くそぉ・・・」
にこ「もういいって!」
そんな事を言いながらも手も動かし、無事片付けも終わる。
にこ「ふう、こころ達もお疲れ様。さ、ご飯にしましょう。束も一緒に食べてく?」
束「いいのか?」
ここあ「お姉ちゃん、今日は何ー?」
にこ「ふっふっふ、今日は少し豪華よ?チーズ入りハンバーグとパインサラダにこ♪」
こころ「わぁー!」
妹達はメニューを聞いて喜んでいたが束は一人難しい顔をして考え込んでいた。
束「パインサラダ・・・、あれ?でも確か今回の話のサブタイトルって・・・」
にこ「どうかしたの?束?」
束「いや、なんか凄〜くヤな予感がして・・・」
にこ「はあ?」
するとにこの目がある方向を見て止まる。
にこ「束、ここに赤い包みの箱置いてなかった?」
束「赤い包みの箱?さあ・・・見てないけど」
にこはその赤い箱の置いてあったらしき場所の周りを探し始める。
にこ「こころ達は先に食べてて?」
束「俺も手伝うよ。二人の方が効率いいだろ?」
束も加わり、二人で部屋中くまなく探すが赤い箱は見つからない。その様子を虎太郎がジーッと見ている。
にこ「虎太郎?どうしたの、先にご飯食べてていいのよ?」
虎太郎「・・・・・みた」
束「え?」
虎太郎「赤い箱、みた」
にこ「ホント⁉︎」
虎太郎「片付けの時に床に落ちてたから袋に入れた」
にこ「袋って・・・」
束「片付けの時って言ってたから・・・多分、ゴミ袋・・・」
にこ「ぬわんですってぇぇぇっ⁉︎」
束「ちなみに箱の中身は・・・?」
にこ「伝説のアイドル伝説 DVD全巻BOX !略して伝伝伝!各地のスクールアイドルのお宝映像を集めたDVDで発売当時ネット・店頭共に瞬殺(完売)になり、現在入手困難な激レアアイテムなのよ!」
束「それって・・・部室に無かったっけ?」
にこ「それとは別!コッチは保存用!」
束「マニアの考える事はわからん・・・」
にこ「ゴミ袋ってことは外のゴミ置場よね⁉︎まだあるかもしれないわ!束!行って見てきて!」
束「俺⁉︎」
にこ「つべこべ言わずにさっさと行く!」
束「は、はい!」
言われるがまま束はダッシュで部屋を出ていった。少しして再び部屋に帰って来る。
束「行ってきた!」
にこ「どうだった⁉︎」
束「ダメだった!」
バシィッ!
頭を引っ叩かれる束。
束「だって行ったらもう無かったし!」
にこ「そんな早く無くなるわけ・・・ん?」
にこが窓を見ると一台のトラックがゴミ袋を乗せて走り出そうとしてるのが見えた。どうやらエンジンが上手くかからず発車に手こずっているようだ。その荷台のゴミ袋のひとつにうっすらと赤い四角が見える。
にこ「あった!あそこよ!行くわよ束!」
束「へ?行くって・・・あああぁぁぁっ⁉︎」
束の首根っこを掴んだにこはそのまま窓からトラックめがけて飛び出した。
次回、衝撃のラストが・・・