ラブライブ!side “M” お兄ちゃんは魔法使い 作:真仁
束「待てコラァァァッ!」
その日束は街に現れた魔力憑きを追っていた。今回の魔力憑きは粗大ゴミに出されていた掃除機なのだが、今回の束はいつも以上に血相を変えてその魔力憑きを追っていた。
というのも、実は放課後の音ノ木坂に向かう途中での交戦となったのだがその際になんでも強力に吸い込んでしまう性質により許可証を吸い込まれてしまったのだ。アレがないと学院内に入る事が出来ない為、このように必死になって追っているという訳である。
周囲の物を手当たり次第に吸い込みながら逃走を図る掃除機。追いかけている内にいつの間にか音ノ木坂学院に来ており、そのまま掃除機は校内に侵入してしまう。
束「よりによってここかよ・・・。早いとこ捕まえて許可証を取りかえさねぇと!」
束は誰にも見られてない事を確認しながら校内に入る。
暴走掃除機は簡単に見つかり、空いていた窓から校舎内に侵入していた。束もすかさず後を追い、窓から飛び込む。すると窓から入った途端、掃除機がコードを身体に巻きつけて動きを封じようとする。
束「しまっ・・・⁉︎うおぉぉっ⁉︎」
掃除機のノズルの先端がいきなり大きく広がり、コードで雁字搦めにされた状態の束をそのまま吸い込もうとする。
束「ぐ・・・この・・・!」
なんとかして脱出しようと試みる束。しかしコードの締め付けが強く抜け出せない。
束「こうなりゃ・・・一か八かだ!」
そう言うと束の身体に電流が走り、コードの拘束が僅かに緩む。その隙を突いてなんとか脱出する束。
束「痛えけど・・・助かった・・・」
相手が家電製品である事から自分自身に魔法で電撃を食らわせる事で感電させて脱出した束。当然自分も感電するので無傷ではないのだが。
掃除機はなおも束を吸い込もうとしてくる。しかしそれより速く束は前に踏み込み吸い込まれないようノズルを後ろから掴む。その状態で解呪法を発動させてなんとか掃除機を止めた。
束「ふう、なんとか止まったか。さて、許可証を返してもらうぜ」
束は掃除機の本体の蓋を開けて中から許可証を出そうとする。中にはここに来るまでの間に手当たり次第に吸い込んだ物が大量に詰まっていた。中を掻き分けながら許可証を探す束。
束「許可証・・・許可証・・・うわ、女物の下着なんかも吸い込んでやがる」
するとその時、女性の話し声が聞こえて来る。その声は段々大きく聞こえてくるようになりどうやらここに近づいているらしい。
束「ん?待てよ・・・ここって・・・」
戦ってる時は気づかなかったが束が窓から飛び込んだ場所は学院の女子トイレだった。しかも今束は許可証を探そうとして取り出した女性の下着を手にしている。もし見つかれば社会的抹殺は必至である。
束「マズイ!どうにかしないと!」
声はもうハッキリ聞こえる程近づいており、ドアノブに手をかける音が聞こえた。
ガチャ!
凛「じゃあ今日は三人で一緒にラーメン食べに行くにゃー!」
真姫「あんまり食べると先輩に怒られるわよ?・・・って何よコレ?」
トイレに入って来たのはまきりんぱなの一年組だった。三人はトイレの真ん中に掃除機とゴミが散乱している様子を見て唖然とする。そしてそこにいたのは・・・
つかさ「ど、どうも〜」
束が咄嗟に変身した女生徒、仮野つかさが苦笑いを浮かべながら立っていた。
凛「あー!ゲームセンターの時の先輩だにゃー!」
凛は姿を見るなり駆け寄り手を掴む。
凛「先輩、探したんですよ?一緒に来てください!先輩のダンスの腕なら百人力だにゃー!」
つかさ「あ、ちょっ、待っ・・・あーーーーっ⁉︎」
凛はつかさの手を掴んだまま走り出す。
花陽「凛ちゃん!廊下を走ったら危ないよー!」
真姫「・・・もっと他に気にかけるとこあるんじゃない?」
アイドル部 部室
にこ「で、この子が凛達の言ってたダンスの上手い子?」
つかさ「あ、あはは・・・」
凛に引っ張られてアイドル部の部室に連れてこられたつかさ。椅子に座らされてにこからの尋問?を受けていた。
にこ「じゃあとりあえず踊って貰おうかしら?」
つかさ「・・・・・はい?」
にこ「ゲームは所詮ゲーム。いくらダンスゲームが上手くてもアイドルで通じるとは限らないわ。だからμ’sに入る前にアイドルとしての適正を・・・」
つかさ「そもそもμ’sに入る気もないんですが・・・」
にこ「口答えしない!」
つかさ「はい!」
勢いに負けて返事をしてしまうつかさ。一同はダンスの練習場所である屋上へ移動する事に・・・。
屋上
花陽「穂乃果先輩達や絵里先輩達もいないのに勝手にμ’sに入れるとか決めちゃっていいのかな・・・」
真姫「いいんじゃない?本人もあまり乗り気じゃないみたいだし」
にこ「じゃ、始めるわよ。振り付けは大体覚えたかしら?」
つかさ「えぇ、まぁ・・・」
事前にμ’sの曲の振り付けの練習用に撮ってあったビデオ映像を渡されて一通り目を通したつかさ。と言っても束は練習を間近で見ていたのでビデオを見る必要もないのだが。
にこ「じゃあいくわよ」
にこが音楽をかけてμ’sの楽曲が流れ始める。それに合わせてつかさも踊り始める。
凛「おお〜!」
花陽「細かい所の振り付けも完璧です!」
真姫「なんか上手く出来すぎのような気もするけど・・・」
にこ「ぐぬぬ・・・」
つかさが曲を踊り終えると凛と花陽が拍手をしながら側に来る。
花陽「やっぱり凄いです!動画を見ただけでここまで出来るなんて!」
凛「やっぱ凛達の目に狂いはなかったにゃ!」
にこ「ま、まあ?多少は出来るみたいね。でもあの程度で満足してもらっちゃ困るわ!」
真姫「あの振り付けにこ先輩が一番苦戦してたじゃない・・・」
にこ「う、うるさいわね!」
つかさ「あのー、気持ちは嬉しいんですけど、俺・・・じゃなかった、私はアイドルになる気は無いんです」
凛「えぇ〜⁉︎」
花陽「しょうがないよ凛ちゃん。ここに来る時も困ってたみたいだし・・・」
真姫「無理強いするのも、良くないんじゃない?」
にこ「そ、そうね!中々いい筋してると思うけど本人の意欲がないんじゃアイドルとして成長は見込めないわ!(あんな凄いのに入られたらにこの存在が霞んじゃうわ・・・!)」
凛「そっかぁ・・・、そうだよね。μ’sって無理矢理やるものじゃないもんね。先輩、迷惑かけてごめんなさい!」
つかさ「あ、謝らなくていいよ!こちらこそごめんなさい!」
つかさは凛達に向かって頭を下げた後、その場を去ろうとする。すると・・・
絵里「遅くなってごめんなさい。あら?あなたは・・・」
生徒会の仕事を終えた絵里と希が屋上に来る。つかさの姿を見た絵里の顔が青ざめていく。
希「えりち!ストップ!ストーップ!君!ちょっとコッチ来て!」
つかさ「は、はい!」
顔面蒼白になった絵里を引っ張りながら希がつかさを呼んで手招きをする。
屋上 扉の裏
つかさを呼び出して扉を閉めた希。怖がる絵里に対し、つかさの事を説明する。
絵里「つまりこの子は・・・」
つかさ「仮野つかさとは世をしのぶ仮の姿!私はポッピー・・・」
希「束君」
つかさ「はい、皆道 束。今年で21になります」
希に睨まれてふざけるのをやめる束。絵里は安心したのかその場に座り込んでしまう。
絵里「全く・・・、いい歳した大人が一体何してるんですか・・・」
つかさ「実は・・・」
ここに至るまでの経緯を説明するつかさ。
絵里「なんて言うか・・・お疲れ様です」
希「確かに女子高のトイレに下着持った男がいたら一発で御用!やもんね?」
つかさ「そしたらなんかμ’sに入ってなんて言われて・・・踊らされるしさぁ・・・」
絵里「事情はわかりました。私達からも諦めるように言いますよ」
希「ウチに任しとき!」
つかさ「ありがとう。助かるよ」
話を終えた三人は扉を開け、屋上に戻る。
花陽「絵里先輩、何の話をしてたんですか?」
絵里「それは・・・」
希「この子がやっぱりμ’sに入りたいんやって」
絵里&つかさ「・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇっ⁉︎」