ラブライブ!side “M” お兄ちゃんは魔法使い   作:真仁

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魔法使い始めましたその2 “from叶え!私達の夢”

穂乃果を乗せた自転車はかなりの速度を出しながら街中を駆け抜けていってしまった

ことり「穂乃果ちゃ〜ん!待って〜!」

駆け抜けていった自転車を束が呆然と見ていると後ろからことりが走ってくる。

束「ことりちゃん?今穂乃果が自転車で走っていったんだが・・・何かあった?」

ことり「穂乃果ちゃんのお兄さん!えっと、実は・・・」

 

遡る事20分前、穂乃果達は下校後にこの近辺では最も人気の高い学校、UTX学園を見に行ってみようという事になった。人気のある学校なら廃校を無くす為の手がかりが何か見つかるかもしれないとの事だった。

海未は弓道部に顔を出してから行くので後から行くとの事で穂乃果とことりの2人で先に行く事になったのだが一刻も早く行きたがっていた穂乃果は・・・

穂乃果「あ、そーいえば駐輪場に1つずっと置きっ放しになってる自転車あったよね?」

ことり「えぇ?ダメだよ穂乃果ちゃん、泥棒は良くないよ?」

穂乃果「でもあの自転車、穂乃果達が入学してからずーっとあそこに置きっ放しで置いてないとこ見た事ないよ?大丈夫!大丈夫!ちょっと借りるだけだから!」

ことり「あ!穂乃果ちゃーん!」

穂乃果は駐輪場に向かい自転車を見つける。自転車は鍵がついておらず長い間放置されていた事もあり至る所に錆びがあったが作りがシッカリしていた為か動かすには問題はなさそうであった。

穂乃果「あった!よいしょっ・・・と!」

穂乃果は駐輪場から自転車を出すとその場で乗ってみる。

ことり「穂乃果ちゃ〜ん!やっぱりその自転車錆びてて危ないよ〜!歩いて行こう〜!」

穂乃果「大丈夫だよ!ほら!全然乗れるよ!」

そう言って穂乃果はその場で自転車でグルグル回ってみせる。しかしその瞬間自転車に異変が起こる。

穂乃果「あ、あれ?ハンドルから手が離れない?」

更には穂乃果がペダルを漕いでもいないのに車輪がひとりでに回り出し自転車を加速させる。

穂乃果「何⁉︎いったいどうなって・・・うわぁっ⁉︎」

そのまま自転車は校門方面に猛スピードで走り出した。

ことり「ほ、穂乃果ちゃぁぁぁん!」

ことりも慌てて後を追いかけて走りだした・・・。

 

ことり「・・・という訳で・・・」

束「何やってんだあのバカ・・・」

おそらくここまでずっと走ってきたのだろう。ことりは説明している時も息も絶え絶えといった感じで苦しそうであった。

束「海未ちゃんは?」

ことり「弓道部の用事も終わったみたいで事情を説明したらこっちに来てくれるって・・・」

束「そっか・・・。それじゃことりちゃんは海未ちゃんが来るまでここで休んでいて。後から2人で来てくれるか?

ここからは俺がアイツを追っかけるから」

ことり「は、はい、お願いします・・・」

束は穂乃果の自転車が向かった方向へと走りだす。

束「ことりちゃんの話が本当なら・・・アレが例の魔力憑きってやつなのか?」

束は自転車の走り去った方向に走りやがて猛スピードで走る自転車を発見する。自転車はまるで意思があるかの如く車や人を避けながら街中を走っていた。高速で走る自転車が急回避を繰り返すのだから乗っている方はたまったもんじゃない。

穂乃果「うえぇぇぇ・・・」

見事に目を回してしまっておりハンドルから手が離れないから辛うじて掴まっていられている状態だった。

束「まずは動きを止めないと・・・」

束は自転車の走る道を見つめる。どうやら自転車はこの音ノ木坂エリアからは抜け出す気は無いらしくエリア内をグルグルと回っている様子だった。

束「今ここを走ってるって事は・・・次はアソコを通るな」

束は自転車の動きを先読みし先回りをする。

束「・・・来た!」

自転車は予測通りの場所に来る。束は魔法でロープを出すと自転車とのすれ違いざまにロープを自転車にひっかける

それと同時にロープを近くの電柱に括りつけて止めようとするが・・・

ブチィッ!ロープはいとも簡単に千切られてしまう。

束「くそ!やっぱダメか!」

魔力憑きを止める為の解呪法は覚えているがその為には動きを止めなければならない。ただ動きを止めるのであればロープを大量に呼び出してがんじがらめにでもすればいいのだが今回は穂乃果が乗っている為、慎重にならざるを得ない。

束「穂乃果を傷付けないで動きを止める方法・・・何かないか・・・?」

自転車は尚も暴走を続けており急ターンで車や人を避けていた。

束「あの自転車は人を避けて走る・・・これしかない!」

束は自転車の進路を予測し、狭い路地を通り抜け自転車の前に出る。

束「こっちだ!暴走自転車!」

自転車は束を避けて右の道に曲がる。

束「よし!」

すかさず束はまた狭い路地をスイスイと通り抜け自転車の前に躍り出る。

束「悪いがこの音ノ木坂は俺の庭みたいなもんだ。どこを通り抜ければどこに出るかなんて手に取るようにわかるぜ!」

自転車は今度は左に避けて狭い道に入る。

束「そしてこの先は・・・」

自転車が走って行くとそこは・・・

束「行き止まりだ」

自転車は堪らず急ブレーキをかけ減速、旋回して方向転換を図る。

束「い・ま・だぁぁぁっ!」

束はあらかじめ行き止まりある電柱に隠していたロープを魔法で手繰り寄せ自転車にまたひっかける。しかし今度は電柱に括りつけるのではなく電柱を介して自分の手元に来るようにロープを操っていた。

方向転換を終えた自転車が再び走り出す。それと同時にひっかけていたロープが引っ張られその力は電柱が滑車の役目を果たし束の元へと伝わる。次の瞬間、自転車の加速と同時に束の身体が宙に舞い自転車の真上を飛び交差する。

束「やっぱぶつからなければ避ける事はないんだな。だがここからならお前に手が届くぜ!」

束は目一杯手を伸ばしハンドルを掴み穂乃果の後ろに乗り込む。自転車は振り落そうと暴れているが束も両手でガッチリとハンドルを握り離さない。

束「解呪法の発動条件・・・対象を『両手』で『5秒』以上掴む!」

束の両手が淡い光を発し始める。自転車はそれに反応するかのようにより一層抵抗を強める。

束「・・・2・・・3・・・4・・・5秒!」

一瞬激しい光が起きたと思うと自転車はそれまでの暴れっぷりが嘘のようにピタリと止まってしまった。

束「止まったか・・・」

束は激しい動きに耐えられずいつの間にか気を失っていた穂乃果を自転車から降ろす。そこに海未とことりが走ってくる。

海未「穂乃果!」

ことり「穂乃果ちゃん!」

穂乃果「・・・ん・・・」

2人の呼び掛けに答えるように穂乃果が目を覚ます。

束「大丈夫か?」

穂乃果「・・・あれ?お兄ちゃん?何してるの?」

束「何って・・・お前・・・」

海未「自転車を止められなくなったあなたを束さんが助けてくれたんですよ。そのような言い方はないんじゃないですか?」

穂乃果「自転車?・・・そうだ!自転車が止まらなくなって、ハンドルも離せなくなって、目の前がグルグルになって、それでそれで・・・!」

穂乃果は思い出したように慌てて手足をバタつかせる

ことり「落ち着いて穂乃果ちゃん。お兄さんが助けてくれたからもう大丈夫だから」

穂乃果「え?あ・・・そうだったんだ・・・」

束「わかったならもうちっとは感謝して欲しいモンだが」

穂乃果「うん、ありがとう!お兄ちゃん!」

穂乃果は満面の笑みで感謝を述べる。

束(ッ!・・・やっぱコイツの笑顔は違った意味で驚異だな・・・)

穂乃果「?お兄ちゃん・・・顔赤い?」

束「赤くない!」

海未(ことり、今の穂乃果保存しましたか?)

ことり(バッチリだよ海未ちゃん)

後ろで約2名コソコソしている者もいたが・・・

 

その後の帰り道、そのままにもしておけないので束はとりあえず止めた自転車を引いて歩いていた。

ことり「それにしてもなんでいきなり自転車が暴走しちゃたんだろう?」

海未「暴走って・・・自転車のブレーキが壊れて止まれなくなったんじゃないんですか?」

ことり「ブレーキはかけてなかったけどそれだけじゃなくてね。車を避けて走ったり、上り坂でも速く走ったりしてたの」

穂乃果「急に曲がったり車にぶつかりそうになったりするんだもん。穂乃果も目が回っちゃって」

海未「それが本当だとしたら不思議ですね・・・。まぁ勝手に人の自転車を使おうとした穂乃果への天罰かもしれませんが」

穂乃果「海未ちゃ〜ん!」

ことり「穂乃果ちゃんのお兄さんはどう思います?」

束(魔力憑きの事は言えないし・・・ソレっぽく言ってボカしておくか)

束「多分、この自転車はもう一度走りたかったんじゃないか?ずっと同じ場所に置かれていて・・・それで自分を動かしてくれる人が現れた事がキッカケになってその思いが形になった・・・とか?」

海未「そんな事・・・」

束「わからないぜ?なんせ『強い思い』は運命も変えるらしいからな。穂乃果もひょっとしたらそれに引き寄せられたもかもな」

穂乃果「強い思いは運命も変える・・・」

穂乃果は少し考えると海未とことりの方を向く。

穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん、私やっぱり音ノ木坂学院を廃校にしたくない。もし本当に強い思いが運命も変えられるなら・・・音ノ木坂学院を守りたい!お願い、2人の力を貸して!」

突然の申し出に2人は初めは驚いていたがすぐに顔を見合わせると

海未「全く、今更何を言ってるんですか?私もことりも初めから力を貸すつもりでいますよ?」

ことり「私も音ノ木坂が無くなっちゃうのは嫌だし・・・それに独りじゃ無理かもだけど2人と一緒なら何か出来るきがするの」

穂乃果「海未ちゃん・・・ことりちゃん・・・ありがとう!」

感激の余り穂乃果は2人に抱きつく。その様子を微笑みを浮かべながらみていた束だったが・・・

束「・・・あれ?ちょっと待て。穂乃果、どこが廃校になるって・・・?」

穂乃果「どこって・・・音ノ木坂学院だよ?」

束「え?・・・ええぇぇぇッ⁉︎」

音ノ木坂学院廃校の話を聞き一気に顔面蒼白になる束。

海未「束さん、どうしたんですか⁉︎」

束「いや、海外にいる俺の母親がさ音ノ木坂学院の卒業生なんだけど音ノ木坂学院にメチャクチャ思い入れがあるらしいんだよ・・・。息子の俺に地域貢献しなさい!なんて言ってくるぐらいだし・・・。もし音ノ木坂学院が廃校になるなんて知れたら・・・」

ことり「知れたら?」

束「・・・こ、殺される・・・」

海未「そ、そんな大袈裟な・・・」

束「穂乃果!こうなったら俺も全力で支援する!何がなんでも音ノ木坂の廃校を阻止するぞ!」

穂乃果「やったぁっ!お兄ちゃんも加われば百人力だよ!」

束「やるぞ穂乃果!」

穂乃果「おおー!」

海未「大丈夫でしょう・・・か?」

ことり「大丈夫なんじゃないかな?・・・多分」


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