ラブライブ!side “M” お兄ちゃんは魔法使い   作:真仁

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第7話 束の長い一日 その6

メイドカフェを出てすっかり陽も落ちて暗くなった道を歩いて帰宅する束。途中で音ノ木坂学院の前を通るのだが何やら校門の前に人影が見える。

真姫「うぅ・・・怖くない・・・怖くないんだから・・・」

人影の正体は真姫であった。なにやら校門の前でブツブツ言いながら立っている。すると・・・

束「西木野さぁん・・・診察ですよ・・・」

後ろから音も無く忍びよった束が真姫の耳元に怪しげに囁きかける。

真姫「ヒッ⁉︎嫌ぁぁぁっ!」

バチコーンッ‼︎

束「ぶべらぁっ⁉︎」

驚いた真姫が思い切り平手打ちをし、束は3メートル程吹っ飛ばされる。

真姫「ハァ・・・ハァ・・・つ、束?何してんのよ!」

束「あだだ・・・。凛ちゃんの言った通りだ・・・。コレやって許されるのジャグジャグだけだわ・・・」

真姫「イミワカンナイ・・・。あとそれ言ったの凛だけど凛じゃないし・・・」

束「で、真姫ちゃんは何してる訳?誰もいない夜の学校で。肝試し?」

真姫「そんな訳ないでしょ。忘れ物を取りに来ただけよ」

束「忘れ物?」

真姫「今作ってる新曲の楽譜。音楽室に置いてきちゃったみたい」

束「そりゃ大変だ。じゃ、頑張って」

真姫「待ちなさい」

そのまま立ち去ろうとする束の肩を真姫がガシッと掴む。

真姫「しょうがないわね・・・。まぁどーしてもって言うなら一緒に来てもいいわよ」

束「え?そんな事言ってない・・・」

真姫「ほら、行くわよ」

束「イテテ!ちょっ、真姫ちゃん!耳!耳引っ張んないで!」

二人は校門を開けて夜の学校へと入っていった・・・。

 

 

 

 

 

束「光の力、お借りします!」

カチッ

真姫「懐中電灯つけるくらいで大袈裟よ・・・」

懐中電灯で前を照らしながら夜の校舎を歩く二人。懐中電灯を持った束が前を歩き、その後を真姫がついて行く。

束「にしても意外だな、真姫ちゃんこうゆう所苦手なんだ?」

真姫「べ、別に苦手なんかじゃないわよ!あなたが一緒に来たそうだったから・・・」

束「ハイハイ、そういう事にしときますよ・・・ん?」

何かを感じた束がその場に止まる。いきなり止まったので後ろを歩いていた真姫が束の背中にぶつかる。

真姫「きゃあ!ちょっと!いきなり止まんないでよ!」

束「真姫ちゃん、静かに」

束に遮られて黙る真姫。耳をすませると微かだが音のようなものが聞こえてくる。

真姫「これって・・・ピアノの音?」

束は再び耳をすますと確かにピアノの音色らしき音が聞こえた。

束「どうやら空耳じゃないみたいだな」

真姫「違うわ、今のはソラミミじゃなくてラシドレよ」

束「音階の事じゃねぇよ!」

束は耳をすませて何処から音がしているのかを探る。

束「音楽室の方からだ・・・」

真姫「そんな・・・今日は休みだし学校に入れるわけないのに・・・」

束「・・・まぁ俺たちが言えた義理じゃないけどな?」

束は音楽室に向かって歩き出す。

真姫「ちょっ、束⁉︎」

束「どのみち俺たちの用事は音楽室なんだから行かなきゃなんないだろ?ジーッとしててもドーにかなるもんじゃないし」

真姫「それはそうだけど・・・あ!待ちなさいよ!」

ズンズン先に進む束とそれを追いかける真姫、音楽室に近づく程音は大きくなっていく。そして遂に音楽室の前に到着する。中からはハッキリとピアノの音色が聞こえている。

束「ここか・・・」

真姫「怖くない・・・怖くないんだから・・・」

真姫は先程から束の後ろに隠れながら束の上着の袖の部分をギュッと握っている。束も真姫の心境を察して特に何も言わずに掴ませている。

束「じゃ、入るぞ」

束は扉を思い切り開けて中に入る。途端にピアノの音は消えそこには蓋の開いたピアノだけがあった。

真姫「だ、誰もいない・・・?」

真姫がピアノに近づくとピアノの影から何かが飛び出してきた。

「わあぁぁぁぁっ!」

真姫「きゃあぁぁぁぁぁぁっ⁉︎」

その瞬間束が素早く飛び出してきた何者かの後ろに回り込んだ。

束「奥義!堕天龍鳳凰縛!」

ガシィッ!

「ぐえっ⁉︎」

堕天龍鳳凰縛(只のコブラツイスト)を決め動きを抑える束。その時束が落とした懐中電灯が転がり抑えられた人物の顔を照らす。

真姫「え・・・?副会長・・・?」

希「痛たたた!ウチが悪かった!謝るから離してぇぇ!」

ピアノの影から飛び出した人物は希であった。束から堕天龍鳳凰縛(只のコブラツイスト)を受けてたまらず床をバシバシ叩いてギブアップの意思を伝える。

その後・・・

 

 

 

束「で?副会長がこんな時間にこんな所で何やってんの?」

希「いや〜、元々は生徒会の書類でやり残した事があったから先生に許可もらってそれをやってたんよ。で、終わった頃にすっかり外が暗くなってて、帰る途中で物音がしたから音楽室にきたら楽譜が置いてあってちょっとやってみようかな〜って・・・」

束「真姫ちゃん脅かしたのは?」

希「誰か来たから慌てて隠れて、それでちょっと出来心で・・・」

束「全く・・・」

その後、楽譜も回収し謎も解決した為、束達三人は音楽室を出る。

希「えりちが用事が無ければ手伝って貰えてもっと早く終わった筈なんやけどなぁ」

束「あれ?希ちゃん知らないの?絵里ちゃんさぁ・・・」

束は昼間の事を希に話す。

希「あちゃー・・・そっちいっちゃったんかぁ・・・そうゆう意味じゃないんやけどなぁ・・・」

束「だろ?」

束と同じように頭を抱える希。その後ろでは真姫が先程からチラチラと後ろを振り返っている。

束「どうした真姫ちゃん?」

真姫「なんか・・・変な音しない?」

束「なんだ?またピアノの音か?」

真姫「違うわよ。今度は・・・なんかこう・・・足音というか、走ってくる音というか・・・」

希「走ってくる音?」

二人も会話をやめて静かにして耳をすます。確かにタッタッタッ・・・という足音のような音が聞こえてきた。その音は段々と大きく聞こえてくる。

希「コッチに・・・近づいてる?」

真姫「な、何なのよ・・・一体・・・」

束「・・・くるぞ!」

次第に大きくなる足音とともに廊下の奥の暗闇から音の主が姿を現す。

ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!

暗闇の中から人体模型が現れ、こちらに向かって全速力で走ってきた。

三人「・・・ギャアァァァァァァッ⁉︎」

本当の怪奇現象を前に三人は思わず悲鳴をあげてしまう。

希「ホントに出たぁぁぁっ!」

真姫「もうヤダ!イミワカンナイ!」

束「落ち着け!かまいたち!いやお前達!奴の動きを良く見てみろ!」

束に言われて二人は走ってくる人体模型を見る。

束「いいか?パッと見た限り奴の特徴はあの脚力だ。あの脚力があるからこそ奴はあれ程のスピードで走れるんだ」

真姫「っていうかそもそも人体模型が走る事がおかしいんじゃ・・・」

束「だったらコッチも目には目を、だ!コッチも足を使ってやるんだ!」

真姫「足を・・・?」

希「なるほど!で、どう使うん?」

束「・・・・・逃げるんだよぉぉぉぉぉっ!」

真姫&希「・・・・・ええぇぇぇっ⁉︎」

そうこうしている内に人体模型がすぐ後ろに迫ってくる。

束と希は逃げる為走り出すが真姫が立ち上がらずその場に座り込んでしまう。

希「真姫ちゃん⁉︎どうしたん⁉︎」

真姫「こ、腰が抜けちゃって・・・」

束&希「ええぇぇぇっ⁉︎」

真姫も逃げようとするが恐怖の方が優ってしまい立ち上がれない。

希「束くん!抱っこ!」

束「ガッテンテン!」

急いで束が真姫を抱き上げて走り出す。この時、急いでた事もあって束は無意識だったのだが結果的に抱きかかえる体勢がいわゆるお姫様抱っこになってしまっていた。

真姫「ちょっ⁉︎なんでこの体勢⁉︎お、降ろしなさいよ!降ろしてー!」

束「うわ⁉︎バカ!暴れんなって!」

希「束くん!あの人体模型・・・パワーを感じる!」

束「え⁉︎パワー?・・・あー、そうゆう事ね・・・」

以前のディスク事件の時を思い出し、束は走る人体模型のカラクリを理解する。

束「とりあえず真姫ちゃんをどうにかしないと・・・」

お姫様抱っこしたままでは解呪が出来ないのでどうにかして真姫を安全な所へ退避させる術を探す束。昼間の弓道大会が尾を引き、魔力が完全に戻っていない為、魔法も使えない。回復した魔力量からも恐らく解呪法一回が限界である。束はチラッと希の方を見る。

束「希ちゃん!二手に分かれよう!」

希「わかった!その方が良さそうやな!」

束「希ちゃんは一階に!俺は二階を逃げる!もし来なかったら玄関を開けといて!」

希「玄関を?・・・うん!わかった!」

二人は階段の所まで来ると打ち合わせ通り希が階段を降りて一階に、束はそのまま階段を通過して二階を逃げる。人体模型は束達の方を追ってきた。

束「やっぱりコッチに来たか・・・頼んだぜ、希ちゃん。そして・・・」

束はチラッと抱えている真姫を見る。人体模型を見ないように瞼をギュッと閉じており、その手は微かに震えている。

束「もうちょっとの辛抱だ。頑張れ、真姫ちゃん」

真姫を抱えたまま束は校舎を走り続ける。窓から外を見ると希が玄関を指差しながら手を振っている。

束「・・・よし!」

希の姿を確認した束は素早く方向転換をして階段に向かう。途中、廊下に備え付けられていた消化器を蹴り飛ばし廊下に転がす。突然転がってきた消化器を避ける事もできず人体模型は激しく転倒し、その衝撃で首が外れて転がる。その隙に束は階段を駆け下り一階に来ると真っ直ぐ玄関に向かう。玄関の先では希が待っており手を振っている。

希「束くーん!」

束「希ちゃん!真姫ちゃんを・・・ッ⁉︎」

束が後ろを振り向くと首の無い人体模型が走ってきていた。正確には首はあるのだが頭ではなく左手に抱えれた状態で持っていた。

束「ブロッケンみてえな真似しやがって!くそ!思ったより復帰が早い!これじゃ真姫ちゃんを希ちゃんに預けられない!」

当初の予定では二手に分かれた希が退避経路を確保し、真姫を連れて逃げてもらってから解呪を行う予定だったのだがこれでは希に真姫を渡しても二人が人体模型から逃げ切る事は難しいだろう。そうこうしてる内に玄関を通過し、外に出る。

束「くそ!こうなったら・・・やるしかねぇっ!真姫ちゃん!ゴメン!」

真姫「え?」

束「ウルトラァ・・・ハリケェェェン!」

真姫「キャアァァァァァァッ⁉︎」

希「ぶん投げたーッ⁉︎」

束は真姫を思い切り上空に向かって放り投げる。すかさず人体模型の方に向き直ると両手を構える。そんな束に御構い無しに人体模型は全速力で突っ込んでくる。

束「魔力憑きってわかってても怖ぇぇぇッ!」

ボルト並みのスピードで突っ込んでくる人体模型の迫力に圧倒されながらも束は両手で人体模型を受け止める、

束「ふぐぅっ⁉︎」

あまりの勢いに束はそのまま後ろに押されるが必死に踏ん張る事でなんとか転倒はせずに持ちこたえる。やがて数秒が経つと人体模型はガクリ!と力なく崩れ落ち、その衝撃でバラバラになってしまった。

束「と、止まった・・・」

束はホッとしてその場に座り込む。が・・・

希「束くーん!真姫ちゃん!真姫ちゃん!」

束「あー⁉︎忘れてたー!」

上空高く放り出された真姫。しばらくはそのまま上に向かって飛んでいたがやがて重力に引かれて落下をはじめる。

ドゴン!

地面にぶつかる直前、間一髪で束が間に滑り込みかろうじて地面との激突は避けられた。

希「二人とも!大丈夫⁉︎」

希が二人の元に駆け寄ると、真姫は上空に放り出された際に気を失ってしまったらしい。そして束は落下してきた真姫のヒップアタックが決定打となり完全に動かなくなってしまった。

希「ま、まぁ・・・二人とも無事?で良かった・・・かな?」

 

 

 

 

 

束「・・・た、ただいま・・・」

あの後なんとか意識を取り戻した束。真姫から散々怒られたが自分を抱えて逃げてくれた事もあり、何とか許してもらえた。後始末は希にお願いし、二人と別れてようやく穂むらに帰宅した。

穂乃果「あ、おかえりお兄ちゃん・・・ってどうしたの⁉︎なんかすっごいボロボロだけど⁉︎」

束「ま、まぁ・・・ちょっとね・・・」

穂乃果「お兄ちゃんがそんなになるなんて・・・花陽ちゃんのお願い、相当大変だったんだね」

束「は、はは・・・もうダメ、かも・・・」

穂乃果「お兄ちゃん⁉︎・・・凄い熱だよ⁉︎お母さーん!雪穂ー!お兄ちゃんが大変なの!手伝ってー!」

どうやら海未の風邪がうつったらしく、そのまま倒れ込んでしまう束。意識もハッキリしないまま穂乃果達に連れられてベッドに向かうのであった・・・・・。

 

 

 

 

 




第7話ようやく終わりました。今回はウルトラネタが多くしてみました。
次回以降も原作から脱線した展開が続きますがよろしくお願いします。(もしかしたらオリジナルキャラを追加するかもしれません)

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