ラブライブ!side “M” お兄ちゃんは魔法使い 作:真仁
希「凄いね。傷が無くなっちゃった!魔法って便利やね」
束「傷口を塞げるだけだよ。疲れるし、痛みは残るし・・・あー痛ぇ・・・あの円盤野郎・・・刃が骨まで達してやがった・・・」
左足を引きずりながら歩く束。彼は今散らばったディスクを回収していた。束が魔法使いという事を知った希も一緒に拾う。
希「このCD、皆キズだらけやん」
束「一番気を遣わなければいけない裏面はボロボロ、指紋だらけだし、縁の傷からみて多分聴けなくなった古いCDをフリスビーかなんかにしてあそんでたんじゃねぇか?」
希「それであんな風にクルクル回って飛んできたんやね」
回収したCDをケースに収める束。
束「もう聴けないし、俺が処分してくるよ。もう飛び回る心配もないしな」
希「にこっちはどうするん?」
束「そりゃ魔法の事は言えないし・・・適当に誤魔化しといて・・・」
にこ「何を誤魔化すって?」
束の後ろにはいつの間にか目が覚めていたにこがいた。
束「ッ⁉︎に、にこちゃん・・・」
にこ「何を誤魔化すのよ?言ってみなさい」
束「え、え〜と・・・」
困った束は希に目でヘルプサインを送る。それに気づいた希は
希「にこっち、一体何があったん?さっき来たばっかやから事情がよくわからないんやけど・・・」
にこ「束が持ってるCDがいきなりひとりでに動き出したのよ!部室の傷と同じ傷だったから間違いないわ。犯人はコイツよ!」
にこは束をビシッと指差す。
束「俺⁉︎」
にこ「違う!そのCDよ!きっとそのCDには何か悪霊が取り憑いてるのよ!でなきゃひとりでに動き回るなんてありえないわ!」
希がにこの話を引き出してくれたおかげで状況が整理できた束はコッソリと魔法で適当な字を書いたお札を作り出すとケースに貼り付ける。
束「それなら安心だぜにこちゃん。もう封印してもらったからな」
束はお札の貼られたケースを見せる。
にこ「お札?・・・束がやったの?」
束「いや、俺じゃなくて知り合いの・・・え〜と、寺生まれのTさんが、ね!希ちゃん?」
希「え⁉︎あ・・・そうそう!不可思議現象研究しとる寺生まれのTさんが駆けつけてくれて悪霊退治してくれたんよ!いや〜一緒にいたお坊さんが『タケル殿〜!』ってうるさかったなぁ!」
突然同意を求められ慌てながら話を合わせる希。
にこ「ふーん?ま、解決したならいいわ。ありがとうね束」
束「いやだから寺生まれのTさんが・・・」
にこ「部室で助けてくれたのは束でしょ?そこで気を失っちゃったけど・・・それはちゃんと覚えてるわ」
束「にこちゃん・・・」
にこ「あーあ、あの子達に謝んなきゃいけないわね。・・・悪霊の仕業なんて言ったら笑われるかしら?」
希「大丈夫やでにこっち。最近変な事件が多いからなぁ爆走バイク事件とかプールの中の発電機とか?」
束「あ、あはは・・・」
希がこちらをジーっと見ながら言ってくるので顔を背けながら苦笑する束。
希「ま、冗談はさておき、ただでさえ廃校云々って話が出とるからね?あまり変な噂が出回っても困るからうまく誤魔化そうかって話だったん」
にこ「あぁ、だから誤魔化すって言ってたのね」
束(よく舌が回るよな・・・)
希(ふふん?『口先の魔術師』と呼んでもらってもええんよ?)
束はふと足元に目をやると雑誌が一冊落ちていたのでそれを拾い上げる。
束「なんだコレ?スクールアイドルの雑誌?」
束は拾い上げた雑誌をパラパラめくる。
にこ「ッ⁉︎それ私の!返しなさいよ!」
それに気づいたにこは雑誌を慌てて取り返そうとする。
束「コレは・・・」
付箋の付けられたページを見るとそこにはページの隅の小さな枠ではあったがにこの姿が写っていた。
希「にこっちはな、昔この音ノ木坂でスクールアイドルをやってたんよ」
にこ「希!」
希「でも、にこっちの意識が高すぎたんやね。一緒にやってた友達が1人また1人と辞めていってん。そして・・・」
束「残ったのがにこちゃんとあの部室って訳、か・・・」
にこはしばらくの間黙っていたがやがて自嘲気味に話出した。
にこ「笑いたければ笑えば?キャラがどうこうとか偉そうな事言っといて当の本人はこのざまよ。友達からもついていけないって言われて・・・ずっと1人でやってきたのよ。それをいきなりスクールアイドルをやりたいから部室が欲しいなんて言われて、明渡せる訳ないじゃない!」
束「・・・・・」
束は黙って聞いてたがその後にこの前に来る。
束「明渡す必要なんてないだろ」
にこ「え・・・」
束は手を差し伸べる。
束「一緒にやればいいんだよ、スクールアイドル。もう一度さ」
にこ「なっ⁉︎簡単に言わないでよ!なんで私があいつらの為に動かなきゃなんないのよ!」
束「そんな事言わないよ。俺たちには君の力が必要だから言ってるんだよ」
にこ「私の・・・力?」
束「確かに君は一度、夢を追い・・・挫折した」
にこ「・・・・・」
束「それでも君はあの部室を3年間守ってきた。それはやっぱ君が夢を諦めてないからじゃあないのか?」
にこ「そ・・・それは・・・」
束「挫折しても諦めきれない。それだけアイドルの事が大好きなんだろ?」
にこ「・・・・・」
束「俺たちさ、アイドルの事とかあまり詳しくないまま始めちゃってさ?俺も雑誌いっぱい読んだけどわかんない事だらけで・・・花陽ちゃんはキャラ変わっちゃうし」
希「束君、心底嫌そうな顔するのやめよ?」
束「とにかく!アイドルに対してそこまでの情熱を持ってるにこちゃんならきっと穂乃果達の力になってくれると思うんだ!」
にこ「でも・・・」
束「昔の仲間は去っていったかもしれない。でも、あいつらは大丈夫、絶対逃げないから」
にこ「なんでそう言い切れるのよ」
束「なんでって言われても・・・今までずっとそうだったから?」
にこはため息混じりに答える。
にこ「はぁ、なーんか説得力ないわねぇ。ま、一応考えといてあげるわ」
そう言ってにこは校門の方へと消えていった。
希「あの様子じゃ、大丈夫そうやね?」
束「わかるのかよ?」
希「カードがそう言ってるんよ」
希はタロットカードを見せて答える。
束「やれやれ・・・」
翌日、アイドル研究部の部室では
にこ「・・・う、疑って悪かったわね・・・その・・・ゴメン」
穂乃果達に頭を下げるにこ。
海未「顔を上げてください先輩。疑いが晴れたのならいいんです」
花陽「それで結局犯人は誰だったんですか?」
希「タチの悪いイタズラってとこかな?ま、その生徒はウチが厳重に注意したし、にこっちもそれで納得したからええんやない?ね?」
にこ「そ、そうね」
事前の打ち合わせ通りに話を合わせる希とにこ。
花陽「そうですか・・・。貴重なポスターやグッズを傷つけた命知らずの馬鹿の顔が見たかったですが・・・」
穂乃果「花陽ちゃん?なんか・・・怖いよ?」
凛「いつものかよちんじゃないにゃ・・・」
希「ま、まぁこの話はこれでお終いや。後は部室の件、やけど・・・」
そこで穂乃果が前に出る。
穂乃果「にこ先輩!お願いがあります!μ’sに入って貰えませんか?」
にこ「私が入れば労せず部室も手に入るって事?」
穂乃果「そうじゃありません!昨日お兄ちゃんから聞きました。にこ先輩が、スクールアイドルをやってた事」
にこ「あのお喋り・・・」
穂乃果「私達、アイドルについて知らない事がいっぱいあるんです。だから私達、にこ先輩に色々教えて欲しいんです。ちゃんとしたアイドルになるために」
にこ「・・・・・」
にこの脳裏に昨日の束の言葉がよぎる。
『あいつらは大丈夫、絶対逃げないから』
にこ「・・・言っとくけどアイドル研究部の部長は私なんだからね」
穂乃果「え?」
にこ「だから!アイドル部の部長はにこなんだからμ’sのリーダーもにこって事!わかった?」
ことり「それってつまり・・・」
にこ「仕方ないから、にこがあんた達にアイドルのなんたるかを教えてあげるわ。厳しいからって、途中で逃げ出すんじゃないわよ?」
穂乃果「はい!望むところです!」
にこ「言ったわね!じゃあまずキャラをちゃんと作る所から始めるわよ!」
こうしてμ’sに加入したにこ。その顔は今までで一番明るく嬉しそうに見えた。その様子を見ていた希の横にいつの間にか つかさの姿が。
希「おや?今日は女の子の姿なん?」
つかさ「ああ、放課後じゃないから入れないし、でも気になっちゃって」
希「兄馬鹿やね・・・今の姿じゃ姉馬鹿かな?」
つかさ「からかうなよ」
そんな会話をしていると後ろから絵里が近づいてきた。
絵里「あ!希!探したわよ。こんな所にいた・・・の・・・」
近づいた絵里の目に隣にいた つかさの姿が見えてしまい・・・
希「あちゃー」
つかさ「?」
絵里「いやぁぁぁぁっ⁉︎お願いだから来ないでぇぇぇっ⁉︎」
つかさの事を完全に幽霊だと思っている絵里は恐怖のあまりそのまま逃げ出してしまうのであった・・・。
原作からの脱線が激しく、オリジナル展開も増えてくるのでサブタイトルの原作名を次回から省略しようと思います