ラブライブ!side “M” お兄ちゃんは魔法使い   作:真仁

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勢いでバーッと書きましたが思いの外結構真面目になってしまいました・・・


第6話 ヤザワ作戦 その3 “fromにこ襲来”

生徒会室に通された束。中は彼女が言っていた通り誰もおらず静まり返っていた。・・・外のアルパカ小屋の方から「いやぁぁぁ・・・」という悲鳴が聞こえた気がしたが・・・。

絵里「どうぞ、座ってください」

絵里に勧められ、束は椅子に座る。そして長机を挟んで反対側に絵里が座った。

束「えっと・・・話って一体・・・?」

絵里「・・・あなたは以前、私に『私が私じゃない』と言いましたよね?あの意味を教えて頂きたいんです」

束「ああ・・・あの時の・・・」

以前喫茶店で話をした時の事を思い出した束。

束「意味って言われても・・・そのまんまなんだけどなぁ・・・」

束は困ったように返事を返す。

絵里「そのまんま?」

束「ああ。ま、こんなんでも君よりは長生きしてるからな。おまけに親の都合であちこち行く事も多かったし色んな人を見てきたつもりさ。まぁ細かくわかる訳じゃないんだけど・・・」

束は悩みながら言葉を捻り出す。

束「あまり上手くは言えないけどさ。絵里ちゃん、無理してるんじゃないか?やりたい事我慢してさ」

絵里「私は無理なんてしてません!やりたい事なんて・・・」

束「生徒会長としての責任感とか使命感ももちろん大事だけどさ?それだと支えきれなくなった時が怖いんだよ・・・。何も無くなっちゃうんだ。真っ暗になって・・・何も感じなくなっちまうんだ」

絵里「・・・まるで経験した事があるかのような言い方ですね」

束「まぁ・・・ね」

そう言う束の表情はいつもより少し暗く感じた。

束「とにかく!もし本当に廃校を阻止したいなら!」

そう言って束はいきなり絵里の頬をぎゅ、っと横に引っ張る。

絵里「ひ、ひゃんでひゅか⁉︎ひゃめひぇひゅだひゃい!」

束「まずは笑う事だな!眉間にシワ寄せて仏頂面で『学校を盛り上げていきましょう!』なんて言ったって誰もついてこねぇよ。楽しくやらないと!」

束は先程の暗い表情を払拭するかのように笑う。しかし絵里はそんな束の手を無理矢理払いのける。

絵里「わかったような事言わないで下さい!楽しくやる?

それで結果が出せますか⁉︎絶対にこの学校を救えるんですか⁉︎・・・楽しむだけじゃ・・・辿り着けない場所だってあるんです!」

絵里はそう言って束を睨みつける。しばらく黙っていた束だったが・・・

束「・・・確かにそうかもしれない。楽しんでやれば全て上手くいく。なんてのはそれこそ漫画やアニメの世界だよな。でもさ・・・」

束は絵里の肩に手をかけその眼をジッと見る。

束「『それ』を失くしても、やっぱり前には進めないんだよ」

絵里「・・・そんなのは、綺麗事です・・・」

束「百も承知さ。だけど高みを目指して怖い顔で夢を目指す奴より、バカみたいに笑いながら楽しそうに目指す奴の方が俺は好きだな」

おどけたように笑いながら束は手を離し、絵里から離れる。

束「言いたい事は大体わかった。君がスクールアイドルに対して余り良い感情を持てない理由もな。でも君はまず穂乃果達の事を知った方が良いかもな。あいつらがどんな思いでスクールアイドルをやっているのか。意味の無いアイドルの真似事かどうか判断するのはそれからでも遅くないだろう?・・・後はまぁ、やりたい事を見つけるべきだな。生徒会とかそーゆーの抜きにして、絢瀬絵里として本当にやりたい事を見つけてみたらどうだ?」

絵里「私の・・・本当にやりたい事・・・」

束「それが見つかればあいつらの事だって少しは理解出来るかも・・・だし」

そう言いながら束は席を外し部屋を出る支度をする。

束「年長者の御節介は以上だ。この後どうするかは君が決めればいい。ただし・・・もし君がこれ以上穂乃果達の活動を妨害する方向で進めるのであれば、俺も容赦しない」

初めて束が絵里を睨みつける。普段の軽い雰囲気からは想像もつかない束の怒気を帯びた声に絵里は思わず怯んでしまう。が、束はすぐにいつものおどけた顔に戻る。

束「話は終わりかな?じゃ、お疲れさん・・・ッ⁉︎」

帰ろうとした束が突然窓の方へ振り返り身構える。

絵里「あ、あの・・・どうしました・・・?」

束「あ、いや・・・なんか窓の方から殺気を感じた気がして・・・」

絵里「窓の方?あっちは確かアイドル研究部の部室がある・・・」

束「あ!そうだよ!アイドル研究部!穂乃果達の所に行かないと!じゃあな!」

束は慌てて生徒会室を飛び出していった。

絵里「私の本当にやりたい事・・・」

 

 

 

 

生徒会室を出てアイドル研究部の部室に急ぐ束。すると途中で向こうから歩いてくる穂乃果達を見つける。

束「あれ?穂乃果?皆も・・・」

穂乃果「あ!お兄ちゃん!どこ行ってたの?」

束「いや、ちょっと御節介を焼きに・・・ってそれより部室の件は?」

穂乃果「・・・ごめん、怒らせちゃった・・・」

穂乃果は束に謝罪する。その様子と言葉で大体の事を察した束は・・・

束「・・まぁしょうがないさ。日を改めてまた頼みに行ってみようぜ?今度はちゃんと間に合うようにいくから」

穂乃果「・・・うん」

俯く穂乃果の頭を束はバシバシと叩く。

穂乃果「痛い!痛いってば!」

束「下向いてたってどーしようもないだろ?今日の事はもう終わり!また明日考える!それでいいだろ?」

真姫「・・・良くそんな前向きに考えられるわね」

真姫が呆れたように呟く。

束「上手くいかない事ばっかだけど・・・楽しくやらないと、な?誰かさんに示しがつかねぇし」

真姫「?」

意味がわからず全員が首を傾げる。束は生徒会室の方向を見るのだった。

・・・その夜、束が海未からラブアローシュート(物理)を食らったのは言うまでもない・・・。

 

 

 

翌日、束は改めて穂乃果達のアイドル研究部の説得に付き合うべく学校へ。穂乃果達と直接合流する為、アイドル研究部の部室前に行くと何やら騒がしい。

部室の前に着くと、にこと、穂乃果達が既に集まっていたが様子がおかしい。近くに行くと、にこが穂乃果に掴みかかっていた。

束「お、おいおい・・・一体何の騒ぎだ?」

にこ「束⁉︎どうしてここに⁉︎」

穂乃果「お兄ちゃん!た、助けて!」

穂乃果が助けを求める。にこは穂乃果を掴んだまま離さない。その目には涙が溜まっていた。

束「・・・何があったんだ?」

一同は部室の中に入る。そこには・・・

花陽「ひどい・・・」

部室内には至る所に何かで切り裂いたような傷があった。それは壁に掛けられていたポスターや棚に置いてあった雑誌などにも及んでいた。

束「確かにこりゃひどいな・・・。一体誰が・・・」

にこ「コイツらに決まってるでしょ」

にこが震える声でそう吐き捨てる。

にこ「自分達の要求が通らないからって・・・随分と汚い真似してくれるじゃない・・・」

ことり「違います!私達じゃ・・・」

にこ「じゃあ他に誰がやるっていうのよ!恨みを持ってるアンタ達以外に考えられないじゃない!」

束「落ち着けって、にこちゃん」

にこ「こんな仕打ちを受けて落ち着いていられるわけないでしょ⁉︎」

束「まだ穂乃果達がやったと決まった訳じゃない」

にこ「じゃあ他に誰がやるっていうのよ!そう言えばさっきお兄ちゃんとか言われてたわね。身内だから庇うって訳⁉︎」

束「そうじゃない。身内だろうと何だろうとやっちゃいけない事をしたら俺はちゃんとぶっ飛ばすよ」

穂乃果「ぶっ飛ばすのは確定なんだ・・・」

束「にこちゃん、コレに気づいたのはいつだ?」

にこ「・・・今朝、部室に来た時よ」

束「昨日の事は穂乃果から聞いている。穂乃果達を追い出した後は誰も来ていないのか?」

にこ「コイツらを追い出した後はすぐに鍵をかけて帰ったわ。今朝も鍵はしまってた」

束「つまり昨日の放課後から今朝にかけての間の犯行って事だな。しかも現場は密室だった」

凛「おぉ・・・なんか推理ドラマみたいだにゃ・・・」

真姫「黙ってた方がいいわよ。凛」

束は改めて部屋の内部を見回す。

束「昨日は穂乃果達とは一緒に学校を出たからアリバイがある。もっとも、君が身内を庇ってるって思うのなら成立はしないが」

にこ「・・・・・」

束「それに鍵が掛かってた以上外からはいるのは困難だ」

凛「テレビでよく見る針金とかで開けるのは?」

束「ピッキングなんてそこらへんの女子高生が習得できるスキルじゃないだろ」

海未「では一体誰が・・・?」

束「・・・『誰が』ならまだいいんだがな」

海未「え?」

束「いや、なんでもない。とにかくこの件は学校側にも報告しないといけないだろう。その上で俺が犯人を探し出す」

花陽「束さんが・・・ですか?」

束「お前達の無実を証明しなきゃならないだろ?(それにこの件はおそらく・・・)」

にこ「そこまで言うならいいわ。もし真犯人を見つけ出せたなら昨日の合併の件、考えてやってもいいわ」

穂乃果「本当ですか!」

にこ「ええ、でも無理ね。どうせ犯人はアンタ達なんだから」

束「にこちゃん」

にこ「なによ、文句でもあるの?」

束「文句なんてないさ。大切な物を傷つけられて怒る気持ちもよくわかる。でも俺は君よりも彼女達の事をよく知っている。だから彼女達がこんな事を絶対にする筈が無いと言い切れるんだ。・・・だからもし俺が彼女達の無実を証明出来たら・・・穂乃果達を疑った事を謝ってもらうからな」

にこ「ひッ⁉︎・・・わ、わかってるわよ!ま、まぁでも?そんな事絶対あり得ないけど!」

にこは束の怒気に一瞬怯みそのまま顔を背けてしまう。それはにこ以外の初めて見た人々も例外ではなく・・・

花陽(つ、束さんの怒ったとこ、初めてみました・・・)

凛(怒らせると怖いんだにゃあ・・・)

真姫(ふ〜ん・・・結構男らしいとこあるじゃない♪)

花陽(・・・真姫ちゃん?)

 

 

 

 


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