ラブライブ!side “M” お兄ちゃんは魔法使い 作:真仁
束「痛てて、まだ頭がクラクラする・・・」
『ギリギリチャンバラ』をやった後、凛と別れた束。他のメンバーを探していると、花陽を見つけるがどうも様子がおかしい。見ると他校の男子学生らに囲まれており、本人の人柄もあってか断りきれず困り果てていた。
束「ったく、なんでこの作品に出てくる男はろくな奴がいないんだよ・・・」
メタい発言をしながら束は気づかれない様に静かに近づくと、物陰に隠れて指をパチンッ!と鳴らす。
途端に男子学生達のズボンが一斉に落ちてしまう。突然の事態に困惑した男子学生達はズボンを抑えながら慌てて何処かへ行ってしまった。
束「魔法でズボンのベルト切ってやったぜ。ざまぁみろ」
そう呟いた後、束は何食わぬ顔で花陽の所に行く。
束「花陽ちゃん大丈夫か?なんか人が集まってたみたいだけど?」
花陽「束さん!はい、一緒に遊ぼうってずっと誘われてて困ってたんです。でも、突然・・・ズ、ズボンが落ちて・・・」
束「天罰だよ天罰。アイドルにちょっかい出そうとしたからバチが当たったんだ」
花陽「そ、そうなんですかね?・・・そっか、花陽はもうアイドルなんですね・・・」
束「アイドルらしい事まだ何もしてないがな」
花陽「そ、それを言わないでください〜!」
束「冗談だよ、まだ入って数日だし。それより何かゲームやらないのかい?協力でも対戦でも付き合うぜ?」
花陽「そ、そうですね!・・・え〜と・・・あ、アレがいいです!」
花陽が指差したのは5つのボタンが並んで配置されたリズムゲームだった。
束「今度は『ドレミファビート』ね・・・」
花陽「最近スクールアイドルの新曲も追加されたらしいのでやってみたかったんです!」
『ドレミファビート』はリズムゲームの1つで筐体の画面に表示された縦の五線譜に沿って上から落ちてくるアイコンに合わせて画面下に設置されている対応したラインのボタンを押すゲームである。アイコンの種類に合わせて同時押しや長押しなどを押し分けるのだが難易度が高い程コレが難しくなる。
束「花陽ちゃん、難易度はどこまでいける?Proくらいならいけるか?」
花陽「一応Specialまでいけます!フルコンボ出来るかは微妙ですが・・・」
因みにSpecialはこのゲームにおける最高難易度である。
束「俺も似たようなもんかな・・・楽曲は何に・・・ん?」
難易度選択が終わりプレイ楽曲を選んでいるとある楽曲に目が止まる。
束「花陽ちゃん、コレで勝負しようぜ?」
花陽「え?コレって・・・『START DASH』⁉︎」
束「スクールアイドルの曲でも再生数が多い楽曲は追加される事もあるって聞いてたけどまさかμ’sの曲が入るとはな。どうする?」
花陽「私は構いません。譜面が初見なのでどうなるかわかりませんが・・」
束「そんなの俺だって同じ・・・お?良いタイミングで来たな」
花陽「え?」
束が大声で遠くにいたその人物を呼ぶ。
束「おーい!作曲者ー!」
真姫「作曲者って・・・もしかして私の事?」
呼ばれた真姫が振り返り、束達のところに来る。事情を説明すると・・・
真姫「良いわよ。私が作った曲ですもの、負けるはずがないわ」
自信満々で参加する真姫。
束「じゃ、スコアマッチで始めるぞ」
コインを入れてゲームを始める。
『ド・ド・ドレミファ・ソ・ラ・シ・ド♪OK!ド・レ・ミ・ファ・ビート♪』
特徴的なタイトルコールの後に選択した楽曲『START DASH』が流れ始める。曲に合わせて画面上の五線譜にアイコンが落ちてくる。Specialではアイコンが高速で落ちてくるだけでなく複数のアイコンが不規則に落ちてくる為、それらを瞬時に見分けながらリズムに合わせてのアイコンの種類に応じたボタン操作が求められる。
やがて楽曲が終わりそれぞれのスコアとそれに応じた順位が発表される。
花陽「な、なんとかフルコンボ出来ました・・・」
束「くそ!最後の最後にミスっちまった!」
真姫「・・・・・」
結果は花陽が一位で束、真姫の順だった。
束「じゃ、他のゲームを探しに・・・」
真姫「待って!」
ゲームが終わりその場を離れようとする束と花陽を真姫が止める。
真姫「もう一回!もう一回よ!次は負けないわ!」
花陽「え・・・もう一回?」
束「俺は別に構わないけど・・・花陽ちゃんは?」
花陽「私もいいです」
真姫「見てなさいよ!次こそ勝ってやるんだから!」
再び3人はゲーム筐体の前に並ぶ。
真姫「はぁ・・・はぁ・・・み、見たでしょ!コレが私の実力よ!」
束「た、確かに勝ったけどさ・・・」
スコアマッチの結果発表画面では真姫がぶっちぎりのトップでクリアしていた。
真姫「私が作曲したんだもの・・・こ、こんなの・・・訳ないんだから・・・」
そう言いながら真姫の手はプルプル震えており・・・、真姫だけではない。束も花陽も同様に手が小刻みに震えていた。花陽に至っては立っていられず筐体に寄りかかっていた。
束「ま、まさか自分が勝つまでやめないとは・・・」
花陽「さ、さすがにSpecialを50回連続プレイは・・・限界です・・・」
真姫「ちょっと・・・だらしないんじゃ・・・ない?こ、これくらい・・・で・・・」
そう言いつつも真姫も足下がフラフラしている。
束「まさか真姫ちゃんがここまでやるとは思わなんだ・・・」
真姫「私の作った曲よ・・・コンティニューしてでも・・・クリアしてやるんだから!」
花陽(真姫ちゃんって・・・もっとクールな性格だと思ってました・・・)
束(ああ、結構負けず嫌いみたいだな・・・。根性もあるし、もしかしたら化けるかもしれないぞ・・・)
まともに立っていられず筐体に寄りかかりながらそんな話をヒソヒソとする束と花陽だった・・・。
予想外に長時間に及んだ『ドレミファビート』も終わり、そろそろ出ようかという話をする3人。しかし凛の姿が見つからず探す事に。ゲームセンターのスタッフに聞いたところ、『猫みたいな女の子』と言っただけで一発で見つかった。
花陽「あ!凛ちゃん!」
真姫「何してるのよ!探したんだから!」
凛はダンスゲームをプレイしていた。もう何回もプレイしているらしく汗ビッショリになりながらプレイしていた。
束「凛ちゃん?そんなに汗だくになるまでソレやってたのか?」
凛「だって、アイドルになるからには踊りが上手い方がいいかな?って思ったんだけど・・・中々抜けないにゃ〜」
凛が指さしたのはダンスゲームのスコアボード。凛自身のスコアも本人の運動神経の良さからかなりのハイスコアでありランキングの2位になっていた。しかしその上にいる1位のプレイヤーは凛はおろか他のプレイヤーとは段違いのスコアを叩き出していた。
花陽「凄い・・・凛ちゃんのスコアも十分凄いのにそれをあんなに超えるなんて・・・」
束「名前は・・・『kira』?確かに凄いスコアだな・・・」
凛「うぅ〜やっぱ届かないにゃ〜」
ゲームが終わり、出てきた凛は悔しそうにボードを見る。
真姫「もう諦めたら?2位でも十分凄いんでしょ?負けず嫌いもほどほどにしないと・・・」
束と花陽が『お前が言うな』的な視線をぶつけるが真姫は気づいていない。
凛「うぅ・・・わかったにゃ・・・」
凛はすっかり意気消沈してしまう。その姿が見るに耐えなかった束は・・・
束「ゴメン皆、ちょっとトイレ」
真姫「このタイミングで?早くしてよね」
トイレに行くと言って束は人混みの中に消えていった。程なくして1人の少女がダンスゲームに挑戦しにきた。
花陽「あ、誰かが挑戦するみたい」
凛「待ってかよちん!あの人って・・・」
2人はその少女に見覚えがあり・・・
真姫「何?知り合いなの?」
花陽「うん。花陽のご飯が猫さんに取られちゃった時に捕まえるのを手伝ってくれた先輩なの」
凛「その猫ちゃんはなんと喋る猫ちゃんだったのにゃ!」
真姫「喋る猫?イミワカンナイ・・・」
そんな会話をしていると少女のゲーム設定が完了したらしく曲が始まる。プレイヤー名には『Tukasa』と入力してあった。
真姫「『Tukasa』・・・どうやら名前は“つかさ”って言うらしいわね」
凛「お兄さんと同じ名前にゃ!」
ゲームが始まるとつかさの様子が一変し、鮮やかでキレのいいダンスを披露する。そのあまりにハイレベルな動きに花陽達を含めた観客は釘付けになる。観る者全てが言葉を失い観入ってしまい、その場にはゲームから流れる曲のみが響き渡っていた。やがて曲が終わりつかさが最後のポーズをキメると観客から一斉に拍手と歓声が湧き上がる。
凛「凄かったにゃ〜!」
花陽「まるでプロのダンサーさんみたい!」
程なくしてスコアボードにスコアが表示される。その結果は・・・
凛「一番だにゃ!」
花陽「凄い・・・あの『kira』って人に勝っちゃった!」
真姫「僅差でギリギリだけどね」
スコアボードでダントツの成績を残していた『kira』を抜いて1位になった少女を一目見ようと3人はゲームステージの方を見るがいつの間にか少女はいなくなっていた。
凛「あれ〜?何処にもいないにゃ〜」
花陽「もう帰っちゃったのかな?」
真姫「あんなダンスが上手いならμ’sに入って貰ったらどう?音ノ木坂の生徒なんでしょ?」
花陽「そうだね!今度聞いてみよう!」
そこに束が戻ってくる。
束「お待たせ!」
真姫「遅いわよ」
凛「凄いモノ見逃したにゃー!」
束「凄いモノ?」
花陽「はい!あの『kira』って人を抜いて1位になった女の子がいたんです!」
束「へ、へぇ〜。そうなんだ、凄いなー」
真姫「・・・なんか反応薄くない?」
束「そ、そんな事ないって!ほ、ほら!もうこんな時間だし帰ろうぜ?」
真姫「ちょっと!押さないでよ!」
束は3人を連れて慌ててゲームセンターを後にした。
束達がゲームセンターを出た後、1人の少女がダンスゲームの前に来ていた。スコアボードを見ると自分の記録が塗り替えられていた。
「プレイヤー名は・・・『Tukasa』?・・・ツカサ、ね?」
遠くから少女を呼ぶ声がする。
「ツバサ!もう行くぞ!」
「今行くわ」
ツバサと呼ばれた少女はもう一度スコアボードを見ながら呟く。
ツバサ「ツカサ・・・いつか直接会ってみたいわね?」
次回、満を辞してあの先輩が登場です。