ラブライブ!side “M” お兄ちゃんは魔法使い 作:真仁
束「スマン、ちょっと熱くなりすぎた・・・」
花陽「いえ・・・あそこまで熱く語れるなんて凄いです!」
束「いや、アイドルの事話してる時の君もあんな感じよ?」
花陽「えぇっ⁉︎」
なんとか落ち着きを取り戻す束。
束「真面目な話、どうかな?まぁこれ以上は無理には誘えないが・・・」
花陽「あ、え・・・と・・・その・・・」
花陽は未だに踏ん切りがつかない様子で迷っている。
束(この様子じゃこれ以上は逆効果だな・・・無理矢理引っ張っても意味ないし)
束「分かった。あまりしつこく誘うのも良くないからな。
この辺にしとくよ」
花陽「え⁉︎あ、ご、ごめんなさい!私・・・」
束「別に怒ってる訳じゃないさ。ただまぁこういうのはやっぱ自分の意思でちゃんと伝えないと意味がないかな?って思ってさ」
花陽「自分の意思で・・・」
束「放課後なら俺も学校に出入り出来るようになったし、穂乃果達も屋上で練習してるからいつでも来てくれ。それじゃ」
そう言って束は花陽と別れた。
束「ああ〜どうしよ・・・結局2人ともフラれちゃったよ」
落ち込んだ様子で穂むらに帰宅する束。穂乃果が店番をしており
穂乃果「あ、おかえり!どーだった?」
結果を聞かれ束は首を横に振って答える。
穂乃果「そっかぁ・・・」
束「まぁそれほど嫌がってる感じでもないからあとは彼女達次第ってトコかなぁ。何かキッカケがあればまた違うかも、だけど・・・」
穂乃果「穂乃果達も無理に誘わないで待ってみる。あ、二階に海未ちゃんがいるよ。穂乃果も店番終わったら行くから先に行ってて?」
束「分かった」
束は居間を通って二階に向かおうとするがそこで何かが目に入る。
束「ん?なんだコレ?オモチャ?」
穂乃果「ああそれ?お客さんの忘れ物、親子連れだったんだけど男の子が置いてっちゃったみたいで取りにくるかもしれないから預かってるの」
束「へえ〜、最近のオモチャは良く出来てるなぁ」
束が手に取ったオモチャは一言で言うと歩行者用信号機がついた斧であり、子ども用サイズだからか大人の束が持つとちょうど片手持ちの手斧くらいになった。
束「っとそうだ。海未ちゃんは・・・と」
オモチャの斧を持ったまま二階に来た束。廊下は灯がついておらず薄暗い。その中で一部屋だけ明かりが戸の隙間から漏れ出していたので束はそこに向かう。部屋に入ろうとする束だったが・・・
海未「イェーイ!みんなー!ありがとうー!」
誰も見ていないからか海未が部屋の鏡に向かってノリノリでポーズやライブパフォーマンスの練習をしていた。戸の隙間からこっそり見ていた束は・・・
束(マジか・・・あの海未ちゃんが・・・後でなんかのネタに使えるかもしれないから撮っておこうっと)
静かに携帯のカメラを構える束、その時一階から穂乃果の声が響いた。
穂乃果「お兄ちゃーん!お客さんのオモチャ勝手に持ってったでしょー!返してよー!」
束「あ!バカ!」
大声で呼ばれた事で存在がバレてしまい海未が勢いよく戸を開ける。カメラを構えたまま固まる束。
海未「・・・今、何を撮ってましたか?」
束「えっと・・・自撮り?」
顔を引きつらせながら答える束。海未の視線は持っているオモチャの斧に向く。
海未「あら、いいものを持ってますね?ちょっと貸して下さい」
束「え?あ!」
斧を取ると海未はボタンを押して斧を振り上げる。
『マッテローヨ!』
束「待って!海未ちゃん!落ち着け!話せばわかる!」
『イッテイーヨ!』
海未「逝っていい・・・そうですよ?」
束「あ、あああああっ⁉︎」
『フルスロットル!』
ゴスッ!という鈍い音と束の悲鳴を聞いた穂乃果が二階に様子を見に来ると頭頂部にデッカいタンコブを作って廊下に突っ伏して倒れている束と片手に斧を持ちながらそれを見下ろす海未がいた。
海未が不気味に笑いながら穂乃果の方へ振り向く。
海未「おや、穂乃果・・・お手伝い終わったんですか?・・・お疲れ様です」
恐怖に笑顔を引きつらせながら穂乃果は答える。
穂乃果「お、オツカーレ・・・」
穂むら 束の部屋
ことり「穂乃果ちゃんのお兄さん、どうしたんですか?そのデッカいタンコブ?」
束「聞かないで・・・ことりちゃん・・・」
パソコンを持って来たことりが後から合流し束の部屋に4人が集まる。ことりは束のタンコブが気になるようだったが事情が事情なので誤魔化す束。
穂乃果「そんな事よりことりちゃん、あった?」
ことり「うん、えっと・・・これ!」
ことりがパソコンを操作して画面を3人に見せる。そこには先に行ったファーストライブの模様が映し出されていた。
束「ほー、よく撮れてるな。しかしいつの間にこんなの用意してたんだよ穂乃果」
穂乃果「え?お兄ちゃんがやってくれたんでしょ?」
束「え?俺やってないよ?」
穂乃果「え?」
束「え?」
海未「じゃあ・・・一体誰が・・・?」
ことり「でも、凄い再生数だよ!」
誰がライブの模様を撮影したのか疑問は残るが、今はライブの動画が多くの人に見てもらえている事の喜びの方が大きくすぐに忘れてしまった。
穂乃果「これだけの人に見てもらえてるんだもん。まだまだこれからだよ!」
束「それよりもまずは部員確保だよ・・・」
海未「ダメだったんですか・・・?」
束「説得はしてみたけど・・・」
穂乃果「とりあえずは待ってみようって」
海未「そうですか・・・」
翌日 音ノ木坂学院
花陽はμ’sのメンバー募集のチラシの前で迷っていた。
束からμ’sに入らないか誘われたがハッキリと決断する事が出来ず保留という形にはなったが・・・
花陽「大事なのは自分の意思、かぁ・・・」
そんな事を呟いていると誰かがこちらに近づいてくる。花陽は慌ててその場から離れる。やって来たのは
花陽「西木野さん?」
真姫はチラシの前で立ち止まると暫く見たのち一枚チラシを持っていった。真姫が立ち去るのを確認し、チラシの所に戻る花陽。
花陽「なんで西木野さんが・・・そういえば先輩達の曲を作ったのって西木野さんだったっけ?・・・あ」
花陽はチラシが置いてある台の下に生徒手帳が落ちているのを見つける。開いてみるとそれは真姫のものだった。
花陽「これが無いと・・・西木野さん困るよね?」
花陽は真姫の自宅に手帳を届ける事にした。
束「・・・ヒマだ」
束は音ノ木坂学院の校門前でそう呟く。放課後練習の予定だったのだが穂乃果が補習で行けなくなり、ことりも急用が出来たと言って慌てて帰っていき、今日の練習は中止という事で海未と弓道部にいった為、束は何にもやる事が無いまま校門前にいた。相変わらず他の生徒達からは怪しがられているのでいつまでもここにはいられない。
束「このまま帰るか・・・ん?」
帰ろうとする束だったが校門から出ていく人影の中に顔見知りを見つける。
束「おーい!凛ちゃーん!」
凛「?今誰か凛の事呼んだ?」
束が大声で名前を呼びながら近づくと向こうも気づいたようで手を振る。
凛「あ!お兄さんだにゃー!こんな所で何してるのー?もしかして覗き?」
束「冗談でもそんな事は言うな!」
凛「だって皆言ってるよー?あのお兄さんは・・・」
束「も、もういい!聞きたくない!」
凛「そんな事よりお兄さん、かよちん見なかった?何処にもいなくて・・・」
束「そんな事って・・・。花陽ちゃんなら見てないぜ?帰る約束でもしたのか?」
凛「そうじゃないんだけど・・・最近かよちんの様子が変なんだにゃー」
束「変?」
凛「うん。授業中も上の空だし、なんか迷ってるみたいで・・・」
束「迷ってる?・・・そっか・・・」
花陽がまだ自分の誘いの事を考えていてくれているのが分かり、少し安堵する束。
凛「お兄さん、何か知ってるの⁉︎」
束「あ、いや?でも多分それは花陽ちゃん自身で解決するから大丈夫だと思うぜ?」
凛「ダメだよ!かよちんは迷うとずーっと迷っちゃうから決める時はパッと決めてあげたほうがいいの!」
束「・・・もしかして、今までもそうやって?」
凛「そうだよ!凛が決めてあげないとかよちんはずーっと迷っちゃうからね!」
恐らく花陽の消極的な性格にはこれも関係しているのだろう。
束「なるほどね・・・。でも多分、今回はそれじゃあ駄目なんだよ」
凛「・・・え?」
束「友達を引っ張ってあげる事ももちろん大事だけどさ?それだけじゃ駄目なんだよ。それは・・・引っ張られて踏み出した一歩は自分の意思で踏み出した一歩じゃないから・・・」
凛「お兄さん何言ってるの?意味がわかんないよー!」
言ってる事の意味がわからずやきもきするのか凛の顔が段々不機嫌になっていく。
束「とにかく、今回の事は花陽ちゃん自身の決断を待ってあげようぜ?友達ならな」
凛「凛はかよちんと小さい頃からずーっと一緒だったんだよ⁉︎かよちんの事ならお兄さんより友達の凛のがよくわかってるにゃ!」
束「わかってないのはそっちだろ!」
凛「わかるよ!もう!いい加減にしないと怒るにゃー!」
よほど頭にきてるのだろう。手をバタバタさせながら束に食ってかかる凛。
束「はぁ・・・仕方ない。それじゃ、こういうのはどうだ?俺と凛ちゃんで勝負をして、凛ちゃんが勝ったら花陽ちゃんの悩みが何か教えて俺はもう干渉しない」
凛「凛が負けた時は・・・?」
束「そうだな・・・その時は・・・μ’sに入ってアイドルをやって貰おうかな?」
バーッと書いてたらいつもより少し多めに書いてました
感想とかあると嬉しいです