ラブライブ!side “M” お兄ちゃんは魔法使い 作:真仁
キャラもネタも。
新年度も始まって2週間ほどが過ぎた。音ノ木坂学院の正面にある桜並木の桜の花も徐々にその数を減らしそれにとって変わるように緑色の葉が顔を出し始めていた。
その様子をジッと見つめる一人の少女がいた。絢瀬絵里、
音ノ木坂学院の3年生で同学園の生徒会長を務めている。
桜は美しい花をほんの僅かな時間の中で一斉に咲かせそして散っていく。そしてまた次の年に新たな花を咲かせるのだ。・・・しかしこの桜達はその『次』をあと何回迎えられるのだろうか?・・・そんな事を考えていた。
絵里「希遅いわね・・・。あら?希からメッセージ・・・『ゴメンえりち!急な用事が入って一緒に買い物行けなくなった!』・・・もう、希ったらせっかく生徒会の仕事早く切り上げたのに・・・」
メッセージに対しての了解の返事を打ちながらそんな独り言を呟く。
絵里「でもすぐ必要な物もあるし・・・しょうがない、今日は一人で行きましょうか」
返信を終え、携帯をしまうと絵里は桜並木の中を街に向かって歩き出した。
同じ頃、穂むらでは異常無しと判断され無事退院した束が自室のベッドに寝転がっていた。退院して帰って来たはいいが穂乃果の母から「まだ大事をとって休んでいなさい」とほぼ強制的に休みを取らされており仕事にも出れない状態だった。魔力切れの疲労感もだいぶ楽になり体調はすこぶる良い。
束「・・・やっぱジーッとしててもドーにもなんないよな・・・」
束は自室の窓をそーっと開け、魔法でロープを出すとコッソリ窓からロープを伝って降りて穂むらを抜け出した。
束「おばさんゴメン!」
束の姿は街の中に消えていった・・・。
絵里(はぁ・・・今日はついてないわね・・・)
一人で買い物に来ていた絵里はため息混じりにそんな事を思っていた。理由は現在の状況にある。状況は至ってシンプルで一言で言うならば柄の悪い男に絡まれた。という所である。先程から何度も断り続けているが一人なので大した事はないと思い無視しているのかそれともこちらの言葉を理解する頭がないのかは知らないが一向に引き下がる気配を見せない。しかしそれでも誘いを断られ続けてとうとう業を煮やしたのか強引に手首を掴んで引っ張り始める。
絵里「ちょっ・・・離して!誰か・・・っ!」
周りを見渡すが皆関わり合いを避ける為に目を背けるか遠くからただ様子を眺めている。中には面白がってカメラを向けている若者もいる。
絵里(誰でもいいから!・・・助けて!)
バチィィィンッ!
何かが当たるような音と共に男の手が絵里から離れる。
絵里「・・・え?」
何が起こったかわからず呆然とする絵里。直後にチャリーン!いう音と共に硬貨が一枚彼女の足元に落ちた。
「まったく・・・女の子のエスコートの仕方も知らねえのか?どこのカントリーボーイだ?」
絵里が声のする方へ顔を向けると一人の男性が右手を突き出して立っていた。
男「なんだぁ!お前は!」
「俺か?俺は通りすがりの仮・・・じゃなかった和菓子屋の従業員だ」
変な名乗りを上げた自称和菓子屋の従業員はポケットからもう一枚硬貨を出すと指で弾くように前へ飛ばす。
バチィィィンッ!
男「ぐおっ⁉︎」
硬貨は一直線に男の足元に飛んでいき左足に着弾。たまらず男はその場にうずくまる。自称和菓子屋の従業員は男にゆっくり近づいていく。
「まあ腕っぷしの強さでも負ける気はしないが・・・今は面倒を起こすと穂乃果達に迷惑がかかっちまうからなぁ。という訳で穏便に・・・」
男の目の前に立った自称和菓子屋の従業員は右手の人差し指を男の額につける
「眠れ」
ドサッ!
その瞬間に男はその場に倒れてしまった。その様子を訳がわからず絵里はただ呆然と見ている事しか出来なかった。すると自称和菓子屋の従業員がこちらに近づいてくる。
「大丈夫か?ケガはないか?」
絵里「え、えぇ・・・大丈夫」
絵里はそう答えながら倒れた男の方を見る。
絵里「・・・眠らせたの?」
「ああ」
絵里「・・・永遠に・・・」
「いや死んでないって」