ここまで第2xを読んで頂いた読者諸君、まことにありがとう。見えていないだろうが僕は今百八十度お辞儀をしている。
おっと自己紹介がまだだったな。
僕の名前は斉木楠雄。超能力者だ。
そして、災難真っただ中にいる私に彼は笑いを隠せないでいるだろう、そう考えているあいつは、
僕の双子の妹、斉木栗子、超能力者だ。
今の状況を話す前に重要な話があるため先にそっちから話そう。
栗子は僕を天敵だと思っている。それはもっともだと思う。燃堂のようにテレパシーで心の声が聞こえず僕と同じ力を持っている。これが同じなら僕も栗子を天敵と考えるだろう。同じなら…だ。
少し前…と言ってもこの小説もどきの第1x、つまり初めの話だ。僕が冷房庫からコーヒーゼリーを取り出す時、栗子の前に僕は立っていた。テレパシーで心の声が聞こえないといのはニンジャに命を狙われるくらい危険なのだ。…それなのにおかしいと考えなかっただろうか。それなのにたびたび僕は栗子の前を歩いている。ご察しの方もいたかもしれないが、
僕は他の人間同様、栗子の心の声がテレパシーによって聞こえいる。
そうでなければ背中など見せるか恐ろしい。
考えていることが分かれば一手先に動けるため、危機感がなくなると言っていい。
僕にとって栗子は天敵ではない。むしろ燃堂のほうが天敵と言える。さらに栗子は性格、考え方が僕とほぼ同じなため行動が予測がつきやすく扱いやすい。その点で言えば海藤のほうがうっとうしいし、僕の兄、斉木空助は考えている事は(テレパシー)で分かるが考え方が理解不能で予想がつかないため厄介だ。
切っ掛けはコーヒーゼリー事件、地球に巨大隕石が落ちてきた事件の数十倍重大な事件だ。(隕石を破壊した後デオキシスがいないか探したがいなかったな)
あの時、栗子のコーヒーゼリーを食べた事を知った僕は土下座をした。コーヒーゼリーの事もそうだが一緒にプリン事件(四歳のプリンを巡ってケンカし、無人島を消滅させた事件)の事もテレパシーで謝った。前々から謝りたかったのだ。だがなぜかテレパシーは聞こえていなかったようだった。やはり怒っているのか、そうおもったが栗子は少し悩んだ後、
[分かった許すよ]
と久しぶりテレパシーが聞こえた後、
(そこまでされると怒れないな)
と心の声が聞こえた。久びさに聞くテレパシーに驚きと懐かしさがあったものの黙っているわけにはいかない。
[本当にすまない。ありがとう]
(まぁ僕は弁償なんかしないがな)
[素直に謝った上に礼を言うなんて思わなかったぞ。まぁ私のためにコーヒーゼリーを弁償してもらうがな]
この時確信した。栗子は僕の心の声が聞こえていない、と。
僕の推測でしかないがプリン事件のことを謝った(聞こえていなかったようだが)僕とコーヒーゼリー事件は許したがプリン事件は謝りも許しもしなかった栗子との差がこの結果を生んだのだろう。「病気は気から」ということわざがあるように超能力者も気の持ちようだ。(コーヒーゼリーは弁償する事にした。気が変わったんだ)
少し長く話しすぎた。話を戻そう。
栗子と燃堂がクズ(高橋の事を指す。栗子がそう呼んでいたから僕もそれに乗ろう)を連れて体育館を出た後熱血こと灰呂杵志(はいろきねし)が叫び始めた。
「皆!何をしているんだい!高橋君を応援するんだ!熱くなれよ!!」
「灰呂がそう言うんだったら…なぁ」
「あぁ俺達もやるぞ!うおおおおぉぉ!」
最初は灰呂と同じクラスだった生徒が叫びだし熱気に当てられたほぼ全生徒が叫びだした。そのため体育館は阿鼻叫喚状態だった。ただはっきりさせたいのだが愛されているのは
「私の話を聞いて欲しいのであるからして」
という校長の言葉は無視された。僕だけでも同情しておいてやろう。
「おい才虎!帰ろうとするな!」
「うるさいぞ愚民の分際で。ほらこれを受け取れ」
「行ってらっしゃいませ才虎様」
「ふんっ。」
金持ちの才虎芽斗吏(さいこめとり)が椅子に座ったまま四人の黒服に御輿みたいに担がれ、一人お祭り状態のやつが体育館から消えていった。
この状況では始業式の続行は無理と判断した校長は始業式を中断、灰呂の指揮のもとほぼ全校生徒が保健室に向かおうとする。
このままでは保健室は都会の朝の満員電車のようになるだろう。大量の生徒に押し出され壁に貼り付く栗子の姿が目に見える。
そんなことにさせるわけにはいかない。
栗子は僕を天敵だと思っているかも知れないが、栗子は家族だ。父さん母さんと同じように大事に思っている(ただし空助お前はだめだ)。
それに始業式での並び順が男女混合ではなく男女分けだった場合、栗子ではなく僕が保健室に行くことになっていただろう。そう考えると僕の代わりに災難に有っているというのに僕がなにもしないわけにはいかない。
[高橋、仮病だってよ]
「ん?高橋仮病?」
「え、まじで言っちゃってんの?え、マジなの?」
「クズが!ふざけんなっ。ぺっ」
「アホらし。帰ろうぜ!ぺっ」
「ぺっ」
虫の知らせを使って真実を伝えた。
これでクズは全校生徒が認めるクズになったわけだ。それでも友達でいてくれるやつが二人もいるのだから別に構わないだろ?
後本当に唾を吐くな。ここ体育館の中だぞ。
「高橋君が仮病かもしれないだって!?でも僕だけでも 高橋の応援をしなければ!ネバギバ!!」
「俺もいくぜ灰呂」(情報に振り回されんのは柄じゃねぇ。この目で見たもんだけが真実だぜ、オラッ!)
意思の強い二人は止められなかったか。仕方ないなんとかなるだろう。僕はこの少し前から千里眼を使い保健室を観察している。
「なあ斉木。他のやつらは帰り支度を始めたぞ。…なんで寄り目なんだ?そんな事よりオレはこの一連の騒動をダークリユニオンの仕業だと睨んでいる。だがこのオレ!漆黒のーーーー」
なんかうるさいのがいるが気にするな。
それよりも千里眼とテレパシーでの情報によると栗子は今あまりの展開に混乱しているようだな。この僕が助言してやろう。精々感謝するんだな。
(どうすればいいか…)
[体温計…パイロキネシス]
(いや、突破口が見えた)
栗子は虫のしらせの存在を知っているため細心の注意を払ったが、バレずにすんだみたいだな。これでよし。後は自分でなんとかするだろう。栗子は僕と同じ超能力者なんだからな。
「ーーーーその時異次元世界から現れたオレのドッペルゲンガーが一瞬、いや刹那の時間でーーーーん?斉木行くのか?一緒に帰ろうぜ!」
帰り支度をしていると。救急車が来て栗子が担架で運ばれるのが見えた。訳が分からないよ。いやテレパシーでなにが起きたか理解はしているが。不憫に思った僕は栗子に声を掛けることにした。僕は優しいからな。
[ざまぁ]
[〇ね]
(家に帰ったら彼のコーヒーゼリー食ってやる)
怒らせてしまったが僕と栗子の関係はこれが丁度いい。
コーヒーゼリーを奪われる前に僕の方からプレゼントしてやろう。この災難な一日を少しでもマシなものにしてやりたいからな。
それにしても今回の結果に僕は納得出来ていない。もっとベストな形があったのではないかと考えてしまう。後の祭りだがな。まあ次があるなら今度はうまくやろう。
最後になるが某人気海賊漫画の台詞を借りて僕の話を終わろうと思う。
「出来の悪い妹を持つと兄貴は心配なんだ」
「ん、なんだ斉木?なんか言ったか?」
いい事いったつもりだったんだがな。締まらないな。
補足
この「斉木楠雄の女体化の存在「斉木栗子」が斉木楠雄の双子の妹として生まれる世界」は斉木楠雄視点では「斉木栗子という妹の存在で斉木楠雄に「兄としての自覚が生まれた」世界」となります。
読んで下さりありがとうございました。お気に入りして下さった方々、最初こんな小説もどきに!と驚きました。ありがとうございます。