私は校長の話など聞かずに頭の中を整理する事に努めた。校長の話?よくよく聞いたら話の内容が校長の頭のように薄かったので問題ない。
冷静になれ。考えてみたら後ろの化け物が顔の見た目通り殺人を平気でやるようなやつだとしてもだ、背後から日本刀を突き刺し体を貫通する、なんてことはまず有り得ない。
前にこんな事があった。
私の父、斉木國春が下らないこと言いながら私の肩に手をポンッと置いた時(あんな父さんだが嫌いというわけではないので避けたり払いのけたりはしない)。
「えっ、アイ〇ンマン?!」
急にわけの分からないことを言い出したと思っていたらどうやら私の肩こりは酷いらしく私の双子の兄、斉木楠雄、彼も同様だった。
両親は肩こりをなんとかしてやろうと試行錯誤してくれた。途中、私の母、斉木久留美が背中を包丁で刺してきたが(母さんに悪意はない。テレパシーで分かる)ガキイィンッ という金属音を出して包丁は折れ、私の背中は無傷だった。
しばらく奮闘していると、家にいない私の二つ上の兄、斉木空助(さいきくうすけ)が、豪華な椅子を二つ送ってきたので(カス兄は海外留学している)早速座ってみるとピリリとした心地よい痛みとガガガッという激しい音がしだしたので何事かと思ったら高級椅子は実は拷問椅子だった。よく見ると見るとメモが挟まってあり「ママは絶対に座らないでね 」と書いてあった。
父さんは直ぐ様、国際線でカス兄に連絡を取った。
「どういことだ空助ぇぇ!!あの椅子はぁぁ!!」
「あっパパ久しぶり、元気?。あぁあの椅子ね僕の予想だと今頃楠雄と栗子が座ってダメージを受けるどころか肩こりが完治してるところだと思うんだけど」
「せっ、正解だよ…。というか僕かママが座ったらどうするつもりだったんだよっ!」
「あれっメモ書いたんだけどな、もしかして見ないで座った?ママは絶対座らないデザインにしたし、それに栗子がいればなんとかなるでしょ」
「そりゃそうだけど…」
「あなた変わってぇ?…あっくーくん久しぶりぃ 元気してた?」
「ママ久しぶりうん元気だよ。そうだお詫びにママの好きそうな高級一人用ソファー送るからね」
「まあ嬉しい 」
「あれ?僕にはないの?」
そんな会話を余所に私は肩がアーマーテイクオフしたかのように軽いことに喜び、隣の彼も同じのようだった。二人同時に(偶然)腕を軽く振ったら家が全壊した。彼が直したからそれはいいのだが。また肩がこってきた頃これまた試行錯誤した結果、私と彼が交互に肩もみをするのがベストだった(けっして仲がいいわけではない)。どうやら私のほうが彼より肩がこりやすいようだがこれについては謎だ。
とまぁ長くなったが後ろの化け物が刀振ろうがスタンガンを打ってこようが平気な訳だ。そう考えると気が楽になった。ただその時はほんの少しだけ驚くからやめてほしいのだが。
頭の整理がついたところで後ろからドサッという音がしたので振り返ると男子が倒れていた。立ちくらみだろうか。
「どうしたあぁ!!」
「なにがあったあぁ!!」
これにはいい意味で驚いた。
化け物はこういうのを見ると倒れた男子に唾でも吐きかけに行くのかと思っていたが実際は必死に倒れた男子を熱血と共に介抱しているではないか。
ふむ、これなら化け物から燃堂に呼び方を変えたほうが良さそうだ。燃堂は悪いやつじゃない。私は燃堂に対してほんの少し極々ちょっぴりビビッていた自分をバカバカしく思ったのだった。
{続く}
捕捉
斉木栗子が人に対して強い不信感を持っているのは半分カス兄、斉木空助と斉木楠雄のせいです。
Ψ悪⇒燃堂
↑
取り消し