斉木栗子と斉木楠雄のΨ難   作:ムラムラ丸

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またしても前回「次回後編」と銘打っておきながら中編に突入する暴挙、並びに「月一回ペースの更新」と書き込んだ事に安心してもっと早く更新出来たのに本当に一ヶ月後に更新した事、更に前回の馴れ馴れしいあらすじとあとがきの言葉、これらについて深く反省し誠心誠意を持って謝罪致します。誠に申し訳ありませんでした。


あぁ、それと今回も変態兄は出ないよ。ごめ~んね。しかも後半から長ったらしい説明があるから飽きたり詰まんないなって時は全然飛ばしちゃっていいからね~。それでは中編スタート!

8月4日 後から気がつきましたが変態兄一応出ていました。すみません。

8月11日 本文の一部を変えました。


第17x クーリングオフしたい!Ψ愛の妹を想う変態兄 中編

 {前回のあらすじ 斉木栗子は怒り狂う般若}

 

 

 僕はぶちギレた栗子が向かうであろう場所付近のビルの屋上に瞬間移動した。

 そこで見たもの、それは集英健康食品本社だと思われる残骸とそれを見下ろす栗子の背中だった。

 

 遅かった……。めのまえがまっくらになっ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕はぶちギレた栗子が向かうであろう場所付近のビルの屋上に瞬間移動した。

 そこで見たものは、集英健康食品本社と書かれた看板を掲げた小さめの建物とそれを見上げる栗子の背中だった。

 キレた栗子は何をするか分からない。だがまだ大惨事になっていないようで一先ず胸を撫で下ろしたのだった。

 

 ……いや、おかしい、本当にそうだろうか?何かひっかかる、妙な違和感が拭えない。腑に落ちないのだ、あの見るもの全て食い❌しそうな猛獣と化した栗子が本当に何もやらかさないなんてあり得るのだろうか……。

 

 

(三秒時戻し完了。ふぅ、スッとした。やはり腹に据えかねる怒りは何処かにぶつけるのが一番だな)

 

 

 思った通り、こいつ、やらかした後だ。

 栗子の傍若無人さには頭が痛くなる。もっと穏やかに生きられやしないものだろうか。

 だが栗子の激情が緩和されたからなのか、通常通り心の声が聞こえるようになっている。これで大分監視しやすくなるな。

 僕は気を取り直し再び今いるビルの屋上から遠くにいるせいで小さく見える栗子を見下ろす。僕が監視している事に気付いた様子はないが念のため気配を消しておくとしよう。

 

 

(さて、気分もある程度だがスッキリした事だし始めるとしようか)

 

 

 ん?会社(集英健康食品)の中に入っていたか。堂々と玄関口から入っていったがこの会社の警備がザルなのか栗子があっさりセキュリティを突破しているのか。

 やれやれ、ともあれこれは完全な不法侵入だな。それはまぁいい、いやよくはないのだが。侵入ってのは何か用があってするもんだからな。……もしや内部から滅茶苦茶にするつもりか?可能性は、あるな。いやあるどころじゃない九分九厘そうだよし止めに

 

 

(あった、これが見たかったんだ。……よし、もうこんな所にようはない)ヒュン!

 

 

 違った。それと瞬間移動さ(逃げら)れた。

 

 栗子が瞬間移動する前に何を見ていたのかは千里眼で見ていた。栗子がそれを見て何をしようとしているかについてはおおよその予想がついている。僕の予想があっていれば……あっている、だろうか?

 最近になって栗子の行動や考えといったものが今まで把握していたものとは違って来ている事に気が付いた。

 本当にあっているか自信なくなってきた。よし、ここはもう確実にそうだと言いきれるまでもう少し栗子を追跡して――

 

 痛っ

 

 頭が痛い、いや何行か前の“頭が痛い”とはまた別の意味で普通に頭が痛みが走った。痛みと共に頭に映像が過るこの現象、予知か。

 ふむ、こうなるのか、少し意外だな。さて、このまま放置したら予知で視た展開になるが、僕が対処する事で変える事も出来るはずだ。さてどうしたものか。

 やれやれ面倒な事をしてくれるな栗子は、まったく。

 

 

 

 

 {一週間後}

 

 

 夕刻を当に過ぎ日が完全に沈む頃、僕達家族は晩ご飯を丁度食べ終えテレビでも見ながらゆったりとした時間をすごしている。普段なら自分の子供の前で平然といちゃつきだす両親を視界から外すため早々に二階にある僕の部屋に移動しているところだが、今日は一階のリビングで適当な漫画でも読んで時間を潰す事にする。

 栗子は自分の部屋でスペランカーしている。いい加減飽きていい頃なんだがな。

 

「楠雄、ここ最近一階にいる事が多いね。なにか理由とか、いや全然いいんだけどね!」(楠雄がいるとママとイチャイチャしずら……くなんか全然ない!むしろ燃える!)

 

 どういう神経してんの?なんてツッコミを入れるのは今日は止めておこう。

 

[気にしないでくれ]

 

 なんて荒波立てない返しでもしておこう。

 

「んー、まぁいっか。楠雄が何を考えてるか分かんないのはいつもの事だからなぁ」

 

 なんか癪に触るが、まあそれでいいや。

 

「それよりも、ママ!今日も美味しいをご飯ありがとう!愛してるよ!」

「うふふ、私もよあなた♥今日の献立は何が一番美味しかった?愛するあなたのためにまた作ってあげたいの」

「全部美味しかったよ。けど強いて言うなら一番は煮卵かな。醤油がしっかり染みててさ!」

「まあ!二日前に味付けした醤油に茹で卵を浸けたんだけど上手い具合いに味が付いてたか心配だったんだけど、あなたにそう言って貰えて良かったわ~♥」

「本当に美味しかったよ、毎日食べたいくらい!……って言いたいところだけど、茹で卵の殻を剥くのって地味に大変だし無理しなくて大丈夫だよ」

「あらそんな事ないわ。この間買ってきた『全自動卵割り機』を使えばね!」

「『全自動卵割り機』だって!?あれに茹で卵を剥く機能があったてのかい?」

「そうなの~♥『全自動卵割り機』の卵型の頭に茹で卵を入れてからスイッチを入れるとね、揺れたり震えたりしていい感じに卵にヒビが入るの。後は普通に殻を剥くんだけどスルスル殻が剥けるし、中の卵もツルツルで傷がないのよ~」

「おいおい僕はてっきり生卵を割るだけの手でやった方が早いだろっ言われるだけに生まれた道具なだけだと思い込んでいたけど、僕の勘違いのようだね!HAHAHA! うーんでもそんな便利な道具だとやっぱり高かったんじゃないの?」

「そうでもないの。税抜き千五百円よ」

「そいつは安い!明日にでも編集長におすすめしてみるよ!」

 

 

 ショッピングチャンネルか!

 

 このまま、ご注文の際はこちらの番号まで!、とか言い出すんじゃないかとヒヤヒヤしたぞ。後、それで千五百円って安くはないんじゃないか?

 ……いや正直驚いているんだ。あんな馬鹿みたいなものでも確かに母は大助かりしている。実際茹で卵の殻を剥くなんて事にいちいち超能力は使いたくはない。今まで頭ごなしにセールスの商品を否定してきたが、少しだけ考えを改める必要がありそうだ。

 

 セールス、か。やはり思い起こされるのは丁度一週間前のあの出来事。集英健康食品のセールスマンが明確な悪意を持って母を陥れようとした結果それが栗子の逆鱗に触れたあの日だ。

 あの後どうなったのか、あの日予知で視たニュース番組で確めるとしよう。

 

「次のニュースです。本日〇〇時にて集英健康食品の倒産が決定しました。集英健康食品は六日前にて集英健康食品が独自に作られた全ての商品が偽装された悪質な物と判明され世に反感を買いました」

 

{街頭インタビュー 集英健康食品についてどう思われましたか?}

{三十代女性}「最低ですよね。今まで平気な顔してあんなしょぼいくせに無駄に高くて結果なにも健康にいい影響を与えないどうしようもないふざけたものを平然と売ってたと思うとすごく腹が立ちます」

{二十代男性と三十代男性}「俺は前から前から集英は駄目だと思ってたんすよね~~」

「おいおい集英じゃなくて集英健康食品な。これ大事だから二度と間違えるなよ。あ、でもわたしもあの会社のやった事が許せないのは同感ですよ」

{十代男性 (顔出しNGのためモザイク編集をしています)}「家に来た集英健康食品のセールスが家族の健康のために買った方がいいなんて言うから百万円ぽんと出したんです。ええ、僕の大事なココミのためならそのくらい安いですから。後から集英健康食品の商品が悪質なものだって知ったんです。憤りはありますが可愛いココミに僕の愛情は十分に伝わったはずなので後悔はしていませんね」

 

 などなど様々な意見がありましたが、集英健康食品を責める声が圧倒的に多く、倒産が決まった現在もなお怒りが収まらない住民から集英健康食品本社の取り壊しを望む声が上がっています」

 』

 

 インタビューを受けていた最後の十代男性だが、サングラスとマスクを付けた上でモザイクまで入れるとはよっぽど顔バレしたくないらしい。……顔はほとんどわからないはずなんだがどうにも最近何処かで見た気がする。気のせい、であって欲しいところだ。

 

 それはさておき、あの日予知で視えた映像――一階のテレビに映るニュース番組、アナウンサーとその下に書かれた『集英健康食品の倒産。取り壊しの声相次ぐ』の文字――の通りになったか。

 

 

 

 

 

 

 ここまでの話では全容が伝わらなかったと思う。

 なのでシンプルに分かりやすさ重視で今回の「悪徳セールス撲滅事件」を栗子が一体何をしでかしたのかを明記しつつ振り返ろうと思う。ダ〇ガ〇ロ〇パで言うところの苗〇君が「これが事件の真相だよ!」と決め台詞を吐いてからやるアレをイメージしてくれると助かる。

 

 事件は僕の母がセールスの商品を衝動買いするところから始まるがここは割愛する。詳しくは前回を読んで欲しい。

 

 話は飛んで栗子が集英健康食品本社に侵入したところから語っていこう。まず栗子が侵入した目的、これは様々な会社で提携して拡散している情報源“顧客名簿”を調べるために他ならない。

 

 顧客名簿を盗み見見た栗子は次の行動に移す。顧客名簿を基に集英健康食品の消費者の家を一件一件周り“虫の知らせ”を使ってまわった。その内容は、

 

 ――黄金水(ゴールデンウォーター)はただの水道水の可能性大――

 ――集英健康食品に金を騙し取られているーー

 ――集英健康食品は最低で外道でこすずるい悪党、とにかく滅ぶべし――

 

 等々、集英健康食品に疑惑と嫌悪を植え付けた。

 

 “評判を地に落とす”それこそが栗子の“復讐”だった。

 

 突然降って湧いて生まれた集英健康食品への猜疑心や不信感に消費者は多少動揺するものの、差異はあれど「あれ?考えてみれば買ったこれってどうなんだろ」と疑惑の心が芽生えたのは確かだ。

 

 スマホは持ってないしパソコンなんかはあまり触らない僕には馴染みが薄くあまりぴんとこないが、現代は簡単にネットで知ったり伝えたりが簡単な時代だ。集英健康食品について悪評の伝搬や、被害者の会が結束して訴えを起こすのも然程時間はかからない。集団による行動力は時に超能力者よりも強力だな。

 

 そんなこんなで最終的に先程見た今日のニュースの通り、集英健康食品の倒産&取り壊し(予定)という結末になったのだった。そうこれが事件の全貌だ、と言いたいところだがこの僕が何をしていたかを語らせて欲しい。

 

 話は栗子が“顧客名簿”を覗いてから瞬間移動で消えた後からになる。残された僕は、栗子を追いかけて監視でも続けようとした寸前で予知を視たのだ。予知の内容は“集英健康食品の倒産&取り壊し”。その未来を知り栗子がやろうとしている事に完全な予測がついたのだった。

 

 ああ、これは余談だが僕が予知を視たのは合計二回だ。二回目の予知では“集英健康食品跡地と思われる場所に新しく出来たロー〇ン”が視えた。……これは忘れてくれて構わないし、僕自信も気に掛けるべき内容ではないと即判断した。

 

 話を戻すが一つ目の予知を視た僕には二つの選択を迫られる。栗子を好きなようにさせて予知通りの結末を見届けるか、それとも栗子を強引にでも止めて未来を変えるかの二択だ。

 

 未来を変える、つまり悪徳企業の集英健康食品を野放するという意味だ。「悪を見逃すって言うのか?」と言いたげな栗子と同じような直情的な読者のそこのあなた、ちょっと待って頂きたい。僕は確かに“悪徳企業”と言ったがそれは“今”の僕だから言える事であって“一週間前”の僕にはそう判断出来るほどの“証拠”がなかったのだ。

 

 可能性でものを見ればもしかしたら家に来たセールスマンの“独断”で詐欺を行っていたかもしれないし、集英健康食品のごく一部の部署がクズの集まりでそれを除けば普通の企業だったなんて事もあるかもしれない。その場合“有罪”ではあるが予知の通りに“死刑(倒産)”を宣告するのはやりすぎだろう。

 とはいえ可能性と言うなら集英健康食品が普通の会社に見せかけた詐欺グループと言う最悪の可能性も十分に考えられるのだが。

 

 真意を確めるため、栗子に続いて僕もまた集英健康食品本社へと侵入した。僕に対して隠し事も隠蔽も不可能だ。隠したい内容の書類をシュレッダーにかけようが“復元”し、重厚な金庫に隠そうと“透視”し、証拠が無かろうと“サイコメトリー”で何をしていたかがまる分かりだ。

 

 まあ結果は普通に“クロ”。水道水を山の天然水と偽って売っていただけでなく他にもスーパーで買った食品やら調味料を別の袋や容器に移しかえてなんやかんや文句をつけて本来の値段の五倍近い値段で売っていたりもした。ついでに勤めている上から下まで揃いも揃って皆騙す気満々の“クロ”、正真正銘の詐欺グループ。

 死刑!一ミリも救いようがねーじゃねーか。少しでも信じようとした僕がバカだった。くたばれクソ会社が。

 

 ……まあそんなわけで、予知通りの未来を迎えるために僕はあえてRPG(ロールプレイングゲーム)のコマンドにあったら基本的に使う機会がなさそうな“なにもしない”を実行、これ以上の集英健康食品への干渉を絶ったわけだ。

 

 そして今日予知通りになった事をテレビで“確認”したのだった。

 

 

 

 これにて事件は本当の終末を迎えたのだ。

 

 

 

 まあ総合で見れば悪くはない結果だったんじゃないか?この町に根付いた悪がまた一つ成敗されたわけだし、栗子もまだ全てが悪と決まったわけじゃない会社(実際完全悪のクソ会社だったが)を潰そうとはしたものの、あの時の怒りのままに人を❌し尽くしそうな様相だった栗子が死者は当たり前として怪我人も出さなかったのは十分に褒められた話だ。(時を戻したとはいえ本社を破壊したりしていたようだが)よく我慢した方だと思うぞ。

 ……評価が甘い?確かにそうかもな。だが僕自身も小二の頃に我を忘れるほどの怒りに任せて当時のクラスメイトに怪我をさせた過去があるからな。その負い目がある僕にはあまりきつく栗子を責められないところがあるのだ。仕方がない。

 

 

 

 これで僕の話は終わりだ。長話に付き合わせてしまい申し訳ないな。

 

 

 

 予知の確認も終わった事だしもう一階に用はない。さっきまで読んでいた漫画を本棚に戻し、イチャつき始めた両親を尻目に部屋を出て二階にある自分の部屋へと向かう。その最中、

 

 

 ピンポ~ン♪

 

 

 家のインターホンが鳴り響く。

 

 

「あら?こんな時間に誰かしら」

[僕が出る]

「まあ!ありがとぉくーちゃん」

 

 

 まぁ今一番玄関の近くにいるのは僕だからな。……それに今玄関戸の奥にいる人物を母さんが見たら悲鳴に近い叫び声を上げそうな気がするからな。

 

 僕は嫌々ながらも戸を開ける。

 

 

「やあ、こんばんわ斉木楠雄君。おや、どうしたのかな?ああ、この前一度会ったけどこのサングラスとマスクじゃ誰か分からないか」

 

 

 いや今日に限ってはその姿の方が記憶に新しい、モザイク付きでテレビで見たからな。後、今日はもうダルいから帰ってくんない?

 

 

{後編へ続く}




{補足}

・前にも書きましたが大事な事なので何度でも書きます。
“斉木楠雄はシスコンではありません”
ただこれはあくまで設定なので読者のあなたが“斉木楠雄はシスコンだ”と判断したとしてもそれはそれで構いません。

・斉木楠雄は双子の妹の斉木栗子になんだかんだで甘いです。斉木楠雄の祖父、孫にとことん甘い男、斉木熊五郎の血が影響しているとかいないとか。

・全自動卵割り機は以外にも売れ行きは好調。次に売り出す全自動卵割り機二号は生卵を所定の場所にセットして卵を割るハンマーの位置までコロコロ転がる機能を搭載する予定。



斉木楠雄君って原作でも結構人の行動を監視するの好きですよね。そう思っただけです、すみません。

ジャンプGIGA.vol3にて真の「斉木楠雄のΨ難」の最終回を読みました!やっぱりわたしなんかが書く話より一億倍以上面白いですね!残すは単行本最終巻を残すだけ!!楽しみだな~!!!!……今の気持ちを例えるのなら線香花火の最高潮の手前です。後は落ちるだけ。
いつかまた復活して欲しいとずっと願い続けます。

次回はちゃんと変態が出るよ!お楽しみに!

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