文章書くの苦手なんて馬鹿の言い訳してもこれはないわ。ほんとすみません。
これからも最低でも月一更新くらいのぺースになりそうですが、調子が上がればもっと早く更新出来るはずです!がんばります!!
注意。タイトルに変態兄とありますが今回は出ません。次回後編で出ます。すみません。
僕の名前は斉木楠雄、超能力者だ。
ちゃんとした自己紹介は久々だな。
現在の時刻は七時を過ぎ、日が完全に落ちはしたものの、少しの明るさが残る夜空に、一般的な家庭では家族が食卓に集まり夕ごはんを食べ始める、そんな時間帯。今は僕たちの家族もそんな一般的な家族の例に漏れず夕ごはん中である。
ただ、今日はいつもと少し様子が違う。それも良くない方でだ。
いつもなら、
『どう?あなた。今日はいつもより愛情を込めてご飯を作ったの。おいしい?』
『ああ!もちろんだよ、ママ!。あぁ僕はこの世で一番の幸せ者だなぁ』
『あなた、今の発言は聞き捨てならないわ。この世で一番幸せなのは私よ!だって愛する夫が幸せそうなだと私はもっと幸せなんですもの♥』
『愛する妻がこんなにも嬉しい事を言ってくれるなんて……僕ぁ感動の涙が出てきたよ!』
『泣かないでパパ、泣いたら私まで涙が……』
と昨日のようにまるで新婚みたいにベタベタと愛を語る結婚十数年目の両親だが(余談だが昨日は最終的に抱き合いながら二人して号泣、落ち着いた頃には料理が冷めているといった家ではよくある展開に落ち着いた)、今日はそんな甘ったるいムードはない。かといって夫婦喧嘩中というわけでもない。
「よがっだ、
何故汚く言い直した。
昨日とは違う理由で号泣する父。確かに目障りではあるがこれが原因というわけではない。
「ごめんなさい、本当に駄目な、母親で」
謎の五、七、五。どうやら狙って言った訳ではないようだ。
かたや歓喜全開ではしゃぎ、かたや申し訳なさそうに俯いている。どちらも相手にしたら疲れるといった点は共通している。
元々両親は喜怒哀楽のハッキリとした性格でこれくらいの盛り上がり盛り下がりも日常茶飯事ではあるものの、似たもの夫婦の両親は笑う時も怒る時も二人一緒というパターンが常であるため、今の現状は少し様子が違うのである。……いや、そうでもないか。割と日常的な光景なような気もする。
ただ、僕の双子の妹、栗子は僕の隣で我関せずと言わんばかりに夕ごはんを口に運ぶ。その姿だけは昨日も今日も変わりがない。
そもそも何があったのか、簡単に語っておこう。今回やらかしたのは母である。
母(三十七歳)はとにかく純粋で、疑う事を知らない少女のような性格をしている。後ついでに見た目も少女のように若い。肌年齢は実年齢より若く、精神年齢は肌年齢よりも若い、というより幼い。
そんな母はとにかく騙されやすい。疑う事を知らないというレベルではない、「疑う」という単語すら知らないのではないかと疑ってしまうほどだ。
そんな母が訪問販売、それも質の悪いのに当たってしまったらどうなるか。それはもう買う。買ってしまう。
どんな胡散臭い代物だろうと全て訪問販売員に丸め込まれて財布の中を空にするだけでは止まらず銀行に走るほどに買わされてしまう。というより買わされてしまった、というべきか。
その後、僕と栗子、それと父が帰宅してまず目に入ったのは満足そうな母と玄関周りに山のようにつまさった戦利品ならぬ戦“害”品。
僕達の様子を見てやっと“やってしまった”事に気が付いた母はぽつりと被害額を口にすると父はどさりと膝から崩れ落ちた。
そんな悲壮感に包まれた両親を放っておくわけにもいかないので僕の超能力、アポート(対象と同価値の遠くにある物をテレポートで交換する超能力)で戦害品と現金を交換、つまりクーリングオフした。多少強引な気もするが
全ての戦害品をクーリングオフ……出来ていれば良かったのだが、母は僕達が帰るまでの時間に晩ごはんの用意を済ませた後のようで、その時に「全自動卵割り機」なる〇平が嬉々として買ってきそうな商品を箱から開けて使用してしまったため、これだけはクーリングオフ出来なかったが……それ以外の全ての戦害品に支払ったお金が帰って来て父はウザいくらいに大喜び、とこういった経緯で今に至る。
……そういえばその時栗子は何をしていただろうか……まあ、いいか。
軽く話すつもりがつい長く話し込んでしてまったな。
だがその間に落ち込む母に父が「家族を想っての行動なんでしょ?その気持ちが嬉しいよ、ママ」と、ドヤ顔きめながら金が戻って来たからこそ平静を持って言えるセリフを吐いたお陰かいつものラブラブ夫婦モードに戻っていた。これはこれでウザったい。
「やっぱり私が頑張って訪問販売の人を追い返せるようにならないと駄目よね……」
「一人で頑張ろうとしないでよ。僕がいるじゃないか!一緒にセールスなんか追っ払おう!」
「パパ♥」
「ママ♥」
[いい感じのところ悪いがそれじゃ駄目だ]
「「どうして〈だよ!楠雄/なの?くーちゃん〉」」
[とてもお似合いで素敵な夫婦ですね、なんておだてられても平気なら……ほら見ろ]
夫婦そろって照れ笑いを浮かべる姿には呆れるしかない。
が、母さんの初めの意見には同意する。母さん本人が買わない意思を見せるのが一番だ。
「じゃ、じゃあこういうのは?楠雄か栗子が全部ブッ潰してくればいいんだよ!セールスに来る会社を片っぱしから!」
父の考えなしな発言には呆れてしまうな。やれやれ、短期間でどれだけ呆れさせてくれるのやら。
[やれや――]
[それだ。ふむ、いいアイデアだな、流石はこの私の父。靴を舐めるしか能のない駄目中年だと思っていたが……見直した、誉めてやる]
[なっ!?]
これには呆れを通り越してただただ驚愕するしかない。
「えーこれ僕喜べばいいの?悲しめばいいの?それとも親に対してすごい上からの発言に怒ればいいの?ものすっごい複雑!」
この際いいアイデアと言われて最初は喜び、すぐに辛辣な言葉が襲いかかり微妙な顔をする父は放置するとしよう。
それよりも今まで黙ってご飯を食っていた栗子の唐突な発言に待ったをかけなければ。
[お前気は確かか?いいかよく聞け、こういったセールスは他会社と提携し情報を共有しているものなんだ。母さんが今日だけであれだけの商品を買ってしまったのも複数人の、それもそれぞれ違う会社の人間が来たからだろう。おそらく母さんがいいカモだってのはもはやその手の業界じゃ共通の認識なんだろう]
「うっ、ごめんなさい。今日だけじゃなくて前々から訪問販売の人からよく商品を買ってたの……」(私ってば本当に、馬鹿……)
「えー!そうだったのかい!?」(おいおいそうなると被害金額は百万どころじゃないんじゃないってことに……我が家は既に終わっていた?)
夫婦そろって頭を項垂れて意気消沈な様子を見せる。悪い事を言ってしまったな。
だが、そもそも過去に母さんがセールスで買った商品はその都度僕が独自にクーリングオフをして戻って来たお金を母さんの財布に入れて戻しておいたのだ。
なので父が心配しているそれは全く問題がないのだが、それを説明するのは後にしよう。
[今や我が
そ、それはまずいな…と立案した帳本人が呟く。会社勤めの中年には色々と思うところがあるのだろう。
[もっと簡単にこの問題を解決するいい案がある。母さんが訪問販売員に対し「買わない意志」を見せつければいい。僕が少しだが手を貸そう。絶対に上手くいく]
「私一人じゃ不安だけど、くーちゃんが手伝ってくれるならきっとなんとかなるわよね!」
「ああ、大丈夫さ!楠雄がそう言うんだから問題ないさ。やっぱり持つべきは超能力者の息子だな~、うん」
これで両親の了承は取り付けた。残るは後一人。栗子は自分の案、いや正確には父の案に乗っかったわけだが、それを否定されたんだ。ここは慎重に行こう。
[そういう事だ。お前も分かってくれるな]
[……お前に任せれば解決するんだな?]
[ああ、そうだ。今回の件、僕に任せて欲しい。いいよな?]
[だが断る]
こいつ
こればっかりは頭を額に手を当てて特大の溜息が出てしまっても許されるはずだ。
誰しもが何か言いたい中で誰よりも早く言葉を発する、いやテレパシーを送る栗子。まるで文句は言わせないと言わんばかりに視線を誰の顔にも合わせず虚空をぼんやり見つめていた。
[確かに楠雄に任せておけば丸く収まるんだろうさ。だがそれじゃ私は納得しない。それじゃ私の気が収まらない]
栗子の顔はいつもの無表情だ。が、何だろう、栗子の周りの空気が歪んでいるような……。
[おい、少し冷静になれ]
[冷静になれ?ああそうだな、私もこれは不味いと思い、感情を圧し殺していたんだが、もう抑えきれそうにない。だってそうだろう、うちの
どこのヤクザだ。……と少しでもおちょくる発言をしようものなら火に油どころではない。ガソリンスタンドにもうスピードで横転したバイクを突っ込ませるより危険だ。
そんな栗子の文字通り爆発しかねない爆弾発言に母は――
「あひゅう~、くりちゃんが私のために怒ってくれてる~。家族想いな子に育って嬉しいわ~」
――呑気に涙を流して感動していた。 そんな母の姿に呆気に取られたのか空気の歪みが消え少し狼狽した様子を見せる栗子だが、それは一瞬の出来事でありすぐにまた空気を歪ませる。恐らく泣いている母を見て数分前の後悔の涙を流す母を思いだして怒りを再燃させたのだろう。
表情も態度も落ち着いた様子でゆっくりとした動作で食器を流しに運ぶ栗子だが、そんな様子とは正反対に空気の歪みは酷くなり更にはバチバチという静電気に似たをだす始末。誰の目からもヤバイと分かる(母以外は)その様相に父は母とは違った意味の涙が見え、少し震えている。
止めなければならない。だが止められるだろうか?
僕は最後の説得をするため流しに食器を置く栗子の背後から肩に手を置く。
[お前にだけは伝えておこう]
僕が何か言う前に栗子から話し掛けてきた。お前にだけ、と言うあたりこのテレパシーは母にも父にも聞こえていないんだろう。
僕が何だと返事をする前に言葉を続ける栗子。
[お前が商品をクーリングオフしている最中の話だ。私はその時に興味本意で
そう僕にテレパシーを送る栗子。そんな栗子の表情を肩に手を置いたまま横に周り込んで覗き見た。何故僕はそんな真似をしてしまったのだろう。好奇心、だろうか……。
その時の栗子の表情はそれはまるで、
怒りに狂う般若。
あまりの恐……謎のエネルギーを感じ肩から手を離してしまった。それと同時に一瞬にして姿が消える。瞬間移動か、まずいな。
やれやれ、最初から嫌な予感というか“少し違う”雰囲気を感じていたが、まさかこんな転回になるとは……。
僕は最初、“少し違う”理由は父と母のせいだと勘違いしていた。だがそれは違うと気が付くまで遅すぎた。
栗子の心の声が聞こえなかったのだ。
半径二百メートルの中にいる人間の心の声がうるさいほどに聞こえる中でたった一人の心の声が聞こえてこない。その“少し違う”違和感に気が付いてさえいれば……。
あの時栗子は、
――冷静になれ?そうだな、私もこれは不味いと思い、感情を圧し殺していたのだが――
と、こう言っていた。これは予想に過ぎないが栗子は強い怒りを覚えると無意識に心の声を隠す、のか?まだ確かな確証はないしまだ何かあるのかもしれない。
とにかく消えた栗子をすぐに追いかけなければ。今の栗子は何をしでかすか分からない。
栗子の心の声が聞こえなかった。何処に向かったのかは予想するしかない。……栗子が向かった先は黄金水を売っていた会社、集英健康食品だろう。勘でしかないが確信を持てる。
栗子が瞬間移動してから一、二秒経過したか、急ごう。僕は覚悟を抱いて瞬間移動をする。そう、栗子との契約、お互いに危害を加えない約束、それを最悪の場合は破ってでも栗子の暴走を止めなければならない。覚悟を出来ている……。
「だ、大丈夫かな?」
「心配いらないわ、あなた。だって私達の子供達ですもの」
「そ、そうだよ、ね。ああ!そうさ僕達の子だもんな!きっと大丈夫に違いないさ!」
{数ヶ月後。集英健康食品本社跡地にローソ〇が建った}
{後編に続く}
{補則}
・斉木栗子の未知の超能力「テレパシーフィルター」。この超能力は未だ制御化になく、斉木栗子自身この超能力に気が付いていません。斉木栗子が斉木楠雄の心の声が聞こえないのもこの超能力が影響しています。
投稿して一年の今日に投稿するために地味にいつもの投稿時間とは違う時間に投稿してしまいました。どうでもいいですね。
今回も読んで頂きありがとうございました!
お気に入りに高評価もありがとうございます!今でも謎なんですが六月十一日に今までにないほどのUAとお気に入りが増えたあの日は一体なんだったんでしょう。ま、いっか嬉しいですし。
次回。(love、愛してるという意味で)妹を想う兄と(ただただ心配でならない)妹を想う兄の邂逅。お楽しみに!