斉木栗子と斉木楠雄のΨ難   作:ムラムラ丸

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先に前の話を読む事をおすすめします。
無理にとは言いません。

やはり文才ないです。後、日本語が下手なんじゃないかと思いますね。いい感じの言葉が出てこないんですよ。そんな事は関係なしに投稿者は元気です。

九月六日

冒頭少し変えました。これからもっと変えるかもしれません。


第11x 昔の斉木栗子のΨ難……それとG((裏) 斉木楠雄から見た斉木栗子という存在)

(虫の仕業ですな)ドサッ

 

 

 ん?なんだ、近くに蟲師でもいるのか。

 

 どうやら違ったようだ。千里眼で一階の様子を見るに掃除もせずに栗子が寝ているのが確認できた。サボっている…とは考えにくい。父さんならまだしも栗子はそんな真似しないだろう。恐らく虫を見て気絶したと言ったところか。……放っておくか…。

 まあそうも言っていられないので一階に移動する。プレ○ターが付近にいるレベルで警戒しながらな。目標を発見、とりあえず安全な場所まで運ぶ………!。

 

 

 栗子の体の上を走る黒い生き物 カサカサ

 

 

 ヒュン!場所 アメリカのどっか

 

 ………あまりにショッキングな現場に流石の僕でも耐えられなかった。あまりの出来事に体が震えてしまってる。こ、こんなの残酷すぎる!。酷すぎる、栗子が何をしたって言うんだ!

 ………落ち着いて冷静になるんだ。あれは逃げちゃダメな場面だった。今も栗子はあのおぞましいアレと一緒の部屋にいるのだから。

 瞬間移動をした後の三分間のインターバルが終わるのを待つのには慣れていたが今回ばかりは苦痛だった。ものすごい罪悪感に襲われたのだ。

 

 ……行くか。

 

 ヒュン! 自宅 一階

 

 よし、時間も経ったからなやつは栗子の体から離れたようだ。一先ずは良かった。

 行動は早い方がいい。十分に警戒しつつ栗子に近づく。出来ることなら瞬間移動で運びたいところなんだが瞬間移動はついさっき使用してしまっているので三分間使用出来ない。

 ならどうするか、栗子の背中と足を支えるように持ち上げる、いわゆるお姫様だっこだ。栗子にしてみれば屈辱的だろうが僕だってあまり気が進まないんだ。このまま安全な二階に移動しよう、音速でな。

 ……これで一先ず安心だ。適当な地べたに栗子を放置してもいいんだが……流石にな。今の僕は罪悪感で一杯ではち切れそうなんだ、これ以上の罪は重ねられない。栗子の部屋のベットに寝かせておくとしよう。出来る限り丁寧にな。

 

 この後燃堂が家に来てやつを退治するのだが、これは今回の重要な話じゃないから省略する。別にいいだろ。

 

 手がめっちゃ汚ない燃堂を追い出した後、掃除の続きを始めた。二階の掃除が僕の担当だが栗子が気絶した以上全て僕がやらなければならない。これは貸しに…と思ったが今回は…うん、いいかあんな事があったし。嫌な…事件だったな。

 

 

 

 掃除済ませくつろいでいると栗子が夢を見ている事に気が付いた。それは懐かしい記憶の夢だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕が子供の頃を一言で言うなら「子供らしい子供」だった。テレパシーが原因で二歳で人間に絶望したりもしたが基本的には純粋無垢だったように思う。そう、その純粋さ故に栗子を傷つけたと言える。

 

 僕と栗子の仲が悪くなったきっかけ、それがプリン事件だった。今にしてみればたかがプリンのせいでこんな事になるなんて馬鹿馬鹿しく思う(コーヒーゼリーならまだしも)。

 昔の僕は栗子以上に負けず嫌いだった。一度プリンの為にケンカを始めたならたとえ仲良しの栗子だろうと負ける気はなかった。とにかく勝ちに行く、そう超能力の全てを使ってでも何がなんでも勝つ。その必死さが栗子にトラウマのようなものを植え付けてしまっていた事に当時の僕は気付く事が出来なかった。

 判定勝ちした僕は急いで幼稚園に戻った。わくわくしながら出入り口の戸を開けると、そこには美味しそうにプリンを食べる遊び友達の姿があった。この時の気持ちを何と言えばいいのだろうか。敗北感?虚脱感?挫折感?。今まで感じた事のない感情に僕は穏やかではいられなかった。

 子供の時とは言えこの僕だ、泣き叫んだりはしない。食べられてしまったものはどうしようものないと理解出来る。ただどうしてもこんな風に考えてしまうんだ。

 

 栗子が負けていれば僕がプリンを食べれたんだ、と。

 

 気が付くと後ろに栗子が立っていた。僕の心の声を聞いたのだろう。とても傷付いた、そんな顔をしていた。…その表情は今になっても思い出せる程に印象的だった。

 すぐに表情はうって代わり怒りの表情になり僕に反抗的な言葉を投げ掛けてくる。当時の僕に取り敢えず謝るという選択肢はなく、売り言葉に買い言葉で口喧嘩は両親が迎えに来るまでずっと続いた。

 

 この時から約十年間栗子とはずっと仲の悪い状態だったのだが両親には特に迷惑をかけた。両親は本気で心配してくれて頻繁に僕達を仲直りさせようと奮闘してくれた。少し…いや、かなりうっとうしかったが素直に感謝している。

 

 家に帰ってからも口喧嘩は続いた。テレパシーで伝えるまでもなく心の中の悪感情は相手に伝わる。今考えてもあれで仲直りなんてとても無理だろう、そう思うな。

 栗子がある決意と共に僕の元へやって来た。言いたい事があればテレパシーを使えば近付いてくる必要はない。つまりそれが決意の表れ。ならば僕もそれに応える必要経費がある。

 ここで引いていればまた結末は違っていたのだろうが何度も言うが僕は負けず嫌いなんだ。間違ってもそんな事はしなかっただろう。

 

 

「「お前の考えている事なんか聞きたくない」」

 

 

 この言葉をお互いに同時に言うとそれから一切の栗子の心の声が聞こえなくなった。始めのうちは喜んださ、清々したーって感じにな。しかし月日が経つと徐々に徐々にゆっくりとだが、淋しい、そんな感情が溢れ出てくるのを確かに感じていた。

 

 子供の頃の僕はとにかく自由だった。お祭りに行けば超能力で景品という景品をかっさらい、ゲームセンターに行けばモグラ叩きゲームを破壊した上にクレーンゲームの景品をワンコインで全部持っていった。

 クレーンゲームはヨーヨー釣りや金魚すくいの感覚でやったので興味のない景品でも構わずにやったので、いらない景品はほとんど父さんにやっていた。父さんは気持ち悪いほど喜ぶのを冷ややかな目で見ていたのを覚えている。そして大漁の景品を持って帰る僕もまた冷ややかな目で見られていた。栗子にな。

 

 ケンカ後の栗子は今現在と同じように超能力を人前で使う事を自粛するようになっていた。そんな栗子を鼻で笑うように僕は人に見せつけるように超能力を使う。

 幼稚園の友達や小学校(低学年の時だけ)の友達なんかには超能力を自慢気に使っていた。結果的には某国に拉致されたり(某国は潰した)、最近になって小学生の時の同級生に超能力者なんですか?なんて聞かれる始末だ。今にして見れば間違いだったなと分かるがそれでも超能力を使い続けた。

 

 

 もうご存知だと思うが僕には兄がいる。斉木空助、天才なんて呼ばれてるやつだ。僕はとにかくこいつが嫌いなんだ。

 あいつは僕の天才的頭脳で超能力に勝って見せるだなんて下らない考えの持ち主で、何かと勝負を仕掛けてくるうっとうしいやつだ。

 そんな空助の行動に対する僕の行動はたった一つ。絶対に勝たせない、だ。

 鬼ごっこを挑まれれば瞬間移動に透明化、空中浮遊に体に帯電して触ると感電するようにしたりなんかもしてとにかく勝たせたりなんかしない。他にはあいつが作ったコンクールなんかに出せば確実に優勝出来そうなロボットを自慢してきた時などは僕の空き箱ンガーZのミサイルパンチで空助ロボの首を三百六十度回転させて破壊したりもした。

 あいつを負けを認めざるを得ない状態に追い込んで半泣きで捨て台詞を吐いて逃げ出すのを見るのはとても楽しかったな。いい思い出だ。

 

 ある日を境に空助が超能力の能力限界を理解しての勝負が増えた。理由はすでに知っている。あいつと栗子が手を組んだからだ。

 あいつは栗子を元に超能力の把握、研究、観察、実験、超能力成長率の測定などをしていた。確かに厄介だがそれで僕に勝てるはずもなくあいつは僕に全敗した。それでも僕に勝負を挑み続けるのだが、徐々に負けた時の思考な表情が気持ち悪いものになっていった。ほんと迷惑極まりないな。

 そんな事より問題は栗子があんなやつについたという点だ。別に構わない、僕と敵対するってならそれで。栗子にとって僕が天敵であるように僕にとっても栗子は天敵なんだ。やろうと言うのなら僕は全力で叩き潰すだけだ。

 

 小五の時の休日のある日、空助はニヤつきながら僕の方へ近寄ってきた。

 

 

「おはよう!楠雄。今日はいい天気だね。と・こ・ろ・で、楠雄の大嫌いな栗子は今どうしてると思う?」

[知るか。どうでもいいな、あんなやつの事なんて。……………!]

 

 

 あいつはニヤついたままわざとらしく僕が朝起きる前の出来事を思い起こす。テレパシーによって自動で聞き取ってしまう。

 

 ――いつものように研究すると騙して寝ている栗子の体に二つの装置を取付ける――

 ―― 一つは超能力制御装置。これを着ければ赤子同然だ――

 ――二つ目は速度感知機能付き爆弾。走り続けないと大爆発を起こす僕の対超能力者用の発明品。今栗子は世界マラソン中――

 

 内容をまとめるとこんな感じか。所々に自慢が入っていて鼻に着いたのでカットした。

 

 

「どう?感想があるなら聞かせて欲しいな」

[頭イッちゃってるな]

「フフ、そう?残念だなー楠雄も栗子の事嫌いでしょ?きっと喜んでくれると思ったんだけどなー」

[…そうだな]

「フフフ、そう言うと思ってたよ。そんな楠雄に朗報だよ!。実はあの爆弾は超能力者を殺るには火力不足なんだけど制御装置を着けた状態では話が変わってくるんだよねー」

 

 

 !。…まさか!こいつガチで頭狂ったんじゃないか?

 

 

「アッハッハッハ!やっと気付いたかい楠雄。このままだと栗子は大火傷を負うことになるね。アッハッハッハ!」

 

 

 爆死はしないんだな。…いや大火傷も十分不味いだろ!

 

 

[制御装置を外せばいいだけの話だろ]

「そうだね。でも制御装置を外すと脳に刺激を与えて体を動かせなくする機能をつけちゃったんだー。まあ数秒だけだろうけど。でも体の爆弾が爆発するのには十分な時間だよ」

[…………クソ野郎が]

「んっん~どうしたのかな楠雄君。もしかして栗子ちゃんを助けたくなったのかな~?でも助けに行くにしても栗子の居場所を探すのに時間がかかるんじゃないかな」

 

 

 栗子をテレパシーで探す事は出来ない。だがテレパシーで爆走している小五女子の情報を集めたり千里眼を使って虱潰しに探す方法もある。だがこいつの言う通り時間がかかる。

 

 

「僕の計算だと栗子が制御装置を外した方が速く、そして楽に走れると気が付くのには後五分と言ったところかな。それまでに頑張って探してみるのも悪くはないとおもうけど…、一つ提案があるんだ。楠雄、この制御装置を付けてくれないか」

[は?何故そうなる]

「実は制御装置にもう一つ設定を付けてあってね、二人の超能力者が制御装置を付けると、外す時に脳に刺激を与える機能を停止させるんだよ。…それで?付けてくるよね?」

 

 

 つまりこいつは僕に制御装置を付ける為に栗子を出しに使った、と言うわけだ。ほんと性格悪いな。まあ栗子を不憫だと思わないでもないが僕に敵対したんだから自業自得だろう。

 こいつの言う通りにするのは癪だがここは黙って従おう。僕はこいつから制御装置を受け取り頭に刺す。体に溢れていた力が弱まったのを実感した。

 

 

「大好きな栗子の為なら素直に従う、思っていた通りに運んで良かったよ」

[勘違いするなよ。別に栗子の為なんかではなく制御装置を付けたのはおねちょ(寝ている間に無意識にしてしまう超能力)を治す為だ]

「そんなのどうだっていいよ。僕にとって大事なのは、楠雄が制御装置を付けた今なら楠雄に勝てる確立が大幅に上がったて事だけだからね!まずは一発食ら、へぶぅ!」ヒューン ドゴーン!

 

 

 僕に勝てる確立が上がったって?確かに零から一京分の一くらいにはなったんじゃないか?

 ビンタして壁まで吹っ飛んだが、あいつは結構元気そうにしてた。まあまあの強さでやったんだがな。やはり弱体化しているな。

 

 

[たとえ今の僕が赤ん坊の時と同じレベルの能力まで下がっても余裕でプロレスラーを破壊出来るくらいの力はあるんだ。残念だったな]

「うへへへ~やっぱり楠雄は強いな~。そんな楠雄をいずれ倒して見せるぞ~」(恍惚)

[うっわ、きっも]

「さーて次の手を考えるかな。あ、今栗子の制御装置から通信が来てたんだけどなんの問題もなく外れたってさ。爆弾の方もまだ爆発してないみたいだし。うんうん、一安心だねー」

 

 

 …まだ?。と言うか元凶が何言ってるんだ。

 

 栗子は元気にマラソン中だが火傷の心配がない以上助ける必要はなくなった。

 正直な話、栗子の所に直接行って助けると言うのは嫌だったりする。瞬間移動で近くに行ったりすれば警戒して攻撃を仕掛てくるかも知れない。僕はこの時はまだ栗子の心を読めないからな。僕にとっても栗子が恐ろしい存在であることには変わらない。

 僕は栗子の事なんか忘れて超能力で物を吹き飛ばす事のない現状に感激し、そして満喫していた。

 

 それから九時間後キリングオーラ全開の栗子があいつの前に現れるのだった。

 

 

(く、く、くす、楠雄!栗子が僕の元に殺りにやって来た!このままじゃほんとに殺されるかも!助けて!!)

 

 

 ふむ、いい気味だな。よし、ギリギリで行こう。それにしてもあいつの悲痛な叫びを聞くのは気分がよかったな。

 

 そろそろヤバそうだ、行くか。ヒュン!

 

 バチバチバチ!

 

 瞬間移動するとそこには赤黒のオーラが見える気がするほど激怒して腕にエネルギーを溜めている全裸の栗子とイスに座ったまま微動だにしないで固まっている空助の姿だった。

 このままだと空助は真っ黒コゲになるだろう。流石にそれは不味いので栗子の肩に手を置き止めさせる。

 だが肩に置くのは失敗だったな。置いた瞬間すごい勢いで肩が上がった。かなり驚かせてしまったがそのおかげで赤黒キリングオーラが消えた。

 それでも怒りは完全に消えた訳ではないようで苛立ちながら僕の方へ振り返る。栗子が僕の顔を見るのを確認して僕はゆっくりと首を振る。それを見た栗子は怒りが増したようだが腕のエネルギーを収める。

 どうやら僕の言いたい事は伝わらなかったようだ。実はこの時に、

 

 

[全殺しは流石に不味い。せめて半殺しにしとけ]

 

 

 とテレパシーで伝えていたのだが無視された。それが無視ではなく聞こえていなかったと栗子の夢を覗き見ている今現在知った。

 

 僕は栗子に復元を使い全裸(おそらく爆発で吹き飛んだのだろう)から服を着た状態に戻す。僕に気をつかわれるのが嫌だったのかまた苛立ちながら部屋から出ていった。

 

 

「相変わらず嫌われてるねー。まあ、今回しでかした僕も同じくらい嫌われたかな」

[礼も言わずにまず言う事がそれか。まったく呆れるな]

「あーそうだね、ありがとありがとーっと。そんな事より栗子としたいんでしょ。仲直り」

[…別にそんな事はない]

「ふーん、そう。僕としては楠雄と栗子が仲直りしてくれた方が都合がいいんだ。今回の出来事が仲直りのきっかけになったりすると踏んでいたんだけど、僕もまだまだだね」

 

 

 やはりこいつの思考回路は読めない。やり方は酷いが僕達の事を考えてくれているのか?

 

 

「フフ、協力する二人の超能力者に打ち勝つ。なんて甘美で素晴らしい響きだろう。いつか成し遂げて見せるぞ~。ウフ、フフフ」(とろけ顔)

 

 

 そんな事はなかった。

 一生来ない未来に思いを馳せる空助を置いて僕も部屋から出た。

 

 

 仲直り、か。

 

 

 一年後空助は海外留学すると言って家を出た。行き先はケンブリッジ大学だそうで高校を飛び級したそうだが、義務教育はどうしたんだよ。天才だから成せる事なんだろうがあんなやつが天才として生まれるなんて世の中どうかしてるな。

 

 

 さて問題は栗子だけになったな。

 

 正直な話この仲の悪い関係をいい加減にうんざりしていた。前々から栗子には警戒され家にいる時や登校中(母に学校が一緒なんだから二人揃って行きなさいと怒鳴られた)なんかは僕が下手な行動をしないかとガン見してくる。そのせいで

 

 

「もしかして栗子ちゃんってお兄さんのこと好きなんじゃないの」コソコソ

「えーそんな感じの顔してないよ?」コソコソ

 

(うわーあんなに見られてら。もしかしてヤンデレってやつ?コワイ!)

(羨ましいぜ!俺もあんなヤンデレ妹が欲しかったぜ!)

 

 

 などと勘違いされて目立つ毎日だ。栗子も聞こえているのだろうが目立うことより僕の警戒の方が重要なんだそうだ。

 だめだこいつ…なんとかしなければ…。

 

 でも言ってしまうと僕より栗子の方が危険度は高いぞ。

 栗子は僕より感情を溜め込みやすい傾向にある。そして溜め込んで爆発するタイプだ。理性が働かず殺っちまう可能性もある。

 僕か?僕は適当に超能力を使ってガス抜きするぞ。ムカつくやつに永遠と、今では懐かしいタラコのCM曲を頭の中で流したりしてな。今現在の栗子もそんなガス抜きはするようになったが昔は超能力を使わないようにしていたからな。

 それと栗子は思い込みが激しいところもあるな。僕の印象が悪い上に数年間会話がなかったせいか僕を悪人かなにかだと思い込んでいる。

 残念だが的外れだ。確かに人に嫌気がさして滅ぼしてやろう、そう考えた時期が僕にもありました。そうしなかったのは温厚で穏やかで優しい母の影響が大きい。母に迷惑はかけたくないのだ。後なんか人類を滅ぼそうって考えが中二病っぽいし。

 母とついでに父が一番に気にしている栗子との不仲をなんとかするのも一つの親孝行だろう。

 

 だが世の中そううまくいかないものだ。

 栗子にテレパシーを送っても何の反応もない。僕は完全に無視を決め込んでいると思っていたのでへそを曲げてしまったな。どうしてもの場合は目の前で頭を下げて気は進まないが口に出して「あの時は、ごめん!」なんて言おうと思ったが、僕のほんの少しだけ高いプライドが邪魔して行動に移す事が出来なかった。

 

 そのままずるずると時は流れて中学二年の六月頃、僕にとって失態とも転機とも言える事件を起こす。

 

 

 栗子のコーヒーゼリーを食べた。食べてしまった。

 

 自分でも最低な事をしでかしたと思う。だが気付かなかった。まさか黒いコーヒーゼリーの入った容器の側面に黒いペンで名前を書いていたとは…。

 

 ある日学校から帰宅して麦茶でも飲もうと冷蔵庫を開けるとコーヒーゼリーが一つあった。きっと両親が買ってくれたのだろう、そう考え早速食べ始めた。

 後から来た栗子は僕を見て驚愕の表情をしたと思えば次は真剣な顔つきで僕を見る。

 何だ、僕が何かしたか。心当たりのない僕は困惑するしかない。

 栗子は真剣な顔つきのままコーヒーゼリーを指差し、次に自分を指差す。察した。次にする僕の行動は早かった。

 

 土下座。

 

 言っておくがもう二度とやるつもりはない。人生で最初で最後だ。こういうのは本来は父の役割だ。

 考える前に行動していた。僕みたいな超能力者にだって悪は分かる。今回ばかりは完全に僕が悪だ。

 土下座しながら思ったのだがこれはいい機会じゃないだろうか?この僕がわざわざ土下座までして謝るなんて今後一切ないんだ。ならあのプリン事件の事も一緒に謝ってしまおう、そう考えた。誠実さに欠けるような気がしないでもないが謝りたい気持ちは確かにあるんだから別にいいだろ。

 

 

[栗子のコーヒーゼリーを食べてしまった事は本当に申し訳ない。反省している。……それといい機会だからもう一つ謝りたいんだ。もう十年も前になるか。あのプリン事件の事ずっと謝りたかったんだ。僕が悪かったんだ、謝らせてく――――][許してやる。だから土下座はもういい]

 

 

 僕がまだ喋ってる途中でしょうが!せっかくこの僕が謝ってるっていうのにその高圧的態度はなんだ!?

 

 当時の僕は怒りを顔に出さないように心の中で叫んだわけだが、今にしてみればそれが僕のテレパシーが届いてなかったんだと分かっているからな、納得だ。

 これが切っ掛けで栗子に対してテレパシー能力が使えるしオートで心の声も聞えるようになったのだが、何故か栗子は僕の心の声が聞こえないようだ。

 詳しい事は今でも不明だが原因は栗子にあるのではないかと考えている。何故そう考えたか、僕がいくらテレパシーで話かけても反応しないのに、栗子が始めて僕にテレパシーを使ったら普通に通じた上に僕もテレパシーで話せるようになった。つまり栗子が原因。単純な推理だが栗子のせいだと言っても間違いではないはずだ。

 原因が栗子にある以上栗子が僕の心の声が聞こえない理由は分かる筈がない。でもそれはそれでいいじゃないか。僕にしてみれば一人でも心の声が聞こえない方が静かでいいんだ。

 

 この事件が切っ掛けで栗子は僕に少しは気を許したようで必要最低限の会話をするようになった。例えば

 

 

[風呂空いたぞ]

[分かった]

 

 

 だとか

 

 

[コーヒーゼリーあるぞ。食うか]

[食う]

 

 

 なんてクソつまらない会話だがケンカ中は基本無視だったんだ。どうしてもの場合は両親に代わって言わせてたからな、ずっとマシになっただろう。

 そんな会話でも両親には仲直りしたのが分かったのか号泣して「よ゛か゛っ゛た ゛よ゛か゛っ゛た゛」などといいながら肩をバシバシ叩いてきたりしてうっとうしかったが、まあ僕もよかったと思ってるし一回目は許してやった。二回目は許さなかった。

 

 会話するようになったとは言え、どこかぎこちなさがあった。栗子にしてみれば心の声が聞こえない僕はまだ危険な存在なんだとか。心の声が聞こえる僕としても危険人物と思われているのが分かっていながら気軽に話しかけれるほど馬鹿じゃない。

 そんなところに栗子からのあの契約の持ち掛けだ。契約内容は「お互いに危害は加えない」。元々僕は人に迷惑をかけるのがいやなんだ。そんな契約を持ち掛けなくても危害を加えるつもりはなかったんだがな。とは言え僕としてもこのまま栗子に怯えられたまま暮らしていくのも居心地が悪いからな。それで不安が消えるのなら願ってもない話だ。ただそれが原因で余所余所しくなられても良くないのだが……そんな予想を裏切っておもいっきり高圧的に来た。もうこれで恐れる心配はなくなったんだそうだ。…………ふふ、まあそれも悪くはない。それでこそ僕の妹だ。それくらいの方が僕もやりやすくて助かる。

 

 それからは平穏に暮らせてる。何度か栗子が暴走しかけそれを止めたりもして面倒な事も起きるが、反省した栗子がお詫びにコーヒーゼリーを渡してくるのでむしろプラスだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 栗子の夢を覗き見ながら自分の過去を思い馳せていたがどうやら栗子が目を覚ましたようだ。

 僕は誤魔化すようにテレビの電源を点けてソファーに座る。まだ心の声が聞える事がバレる訳にはいかないんだ。

 

 リビングに入った栗子はテレビを見ると言って僕の近くに座る。少しうっとうしさを覚えるがまあそれだけ僕を信頼したのだろう。悪くはない。

 少しして友人の結婚式から帰ってきた両親は家がキレイになっているのに気付き二人が協力してえらいぞ的な事を言って誉めたが、実際に掃除をしたのは僕一人で栗子は寝てたぞ。まあ面倒な事になるからわざわざそんな事言ったりしないのだが。

 

 

「そうだ引き出物で貰ったのーこのチョコ、あっ」

 

 

 母さんはチョコを落とした。そう、あれはチョコだ。形があれに似てなくも…いやどう見てもチョコだ。それ以外にない。

 

 

(じょーじ)

 

 

 おいやめろ!今ゴキブリ宇宙人の鳴き声を聞かせるんじゃない!…………よし、なんとか乗り切った。下手したらパラオ辺りに逃げてたかもな。

 だが栗子はダメだった。まあ頭に落とされたら気絶しても可笑しくないか。

 

 

「まあ、くりちゃん大丈夫!?」

「おいおい気絶してるじゃないか!。お、おい楠雄、救急車だ!。えーと1119だっけか!?」

[一つ多いぞ。落ち着け、たかが気絶だ。すぐに目を覚ます。それに気絶なんて小説や漫画でよく見るから珍しくも何ともないだろ]

「そ、そんなもんなのか?」

 

 

 そう、一応ギャグ小説だからな。十中八九大丈夫だ。

 だが現実には気絶なんてそうあるものじゃないからな。本当は救急車を呼ぶのが正しいからそこのところは覚えいって欲しい。

 

 

[僕が栗子の部屋まで運んで寝かせてくる]

「…楠雄、お前、兄らしくなったな…。感動して涙が」パリィン「ちょっなんで眼鏡割るの!」

[下らない事を言い出すからだ]

 

 

 いい加減泣くな、学習しろ。余計な時間を使ったが今日二回目の俗に言うお姫さま抱っこをして栗子を運ぶ。

 

 

「パパ、私もお姫さま抱っこされたい♥」

「ああいくらでもしてあげるよ、ママ♥。でもちょっと待っててね今散らばった眼鏡の破片を寄せるから」

[僕が直してやろう。感謝しろよ]復元

「いや最初から壊さないでよ!」

 

 

 やれやれだな。

 

 

 

 さて、そろそろ締めに入るか。

 

 そうだなタイトル詐欺にならないように僕が栗子をどう思っているかについて語って終わろうか。

 前にも言った気がするが両親と同じくらいに大事に思っている。家族だからというのが一番の理由なんだが、そうだな、心の声が聞こえない時期は仲の悪さをなんとかしたいと思いつつも、やはり僕でも警戒してしまっていたな。だが心の声が聞えるようになってからは、流石双子の妹と言ったところか、僕と考え方、行動、何かに対する感情なんかがほぼ一緒なんだと改めて気付けた。だからだろうか、なんか放っておけない。それと栗子の心の声を聞ける分僕の方が有利に動けるからには何かあったら助けるのが道理なんじゃないかと思うしな。

 

 

 栗子は今でも僕をまだ警戒している。マシにはなったがな。

 確かに人類上たった一人の天敵かも知れないが僕が人類最強の味方だって事も知ってもらいたいものだな。

 




補足

・今回の話で出ました「大火傷」は、頭から五十度の熱湯をかけられるレベルですのでご安心ください。
↑訂正 今考えると五十度の熱湯ではなにも安心ではないですね。四十四度くらいにしときます。

・斉木楠雄はシスコンではありません。イイネ?


ご覧になって頂きありがとうございました!
またお気に入りしてくださった方もありがとうございます。嬉しいです!

次回からはいつも通り短いですので安心してくださいね。

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