斉木栗子と斉木楠雄のΨ難   作:ムラムラ丸

21 / 39
知ってるか、マグロは泳ぎ続けないと窒息して死んじまうんだ。泳ぎだしたら止まれねぇのさ。小説家(俺は小説家もどきだが)も一緒さ。書き始めたなら止まれねぇ。止まれねぇのさ。



今回いつもより長いので飛ばし読み、流し読みなどをおすすめしています。
それにしても文才がないのが悔やまれます。


第11x 昔の斉木栗子のΨ難……それとG

[お前が上、私が下だ]

[命令するな、っと言いたいところだがまあいいだろう]

[そうだそうだ、それでいい。物分りのいい人間は好印象を持たれるぞ]

[ムカつくやつだ。好印象なんて持たれなくていいし、それに物分りが良すぎる僕ら超能力者は逆に反抗したくなる、そうじゃないか?]

[ふんっ。さっさとしろ]

 

 

 今のは掃除をどっちが一階でやるか二階でやるかの会話だ。それ以外にないだろ?

 

 両親はさっき出かけた。友人の結婚式に行くとかいってたな。あんなドロドロとした感情渦巻くところに嬉々としていくなんて、と思ったがテレパシー能力のない両親には上っ面だけの幸せを見るだけで済むんだよな。

 それにしても時間ギリギリまで結婚式に行く準備をしていたとはいえ散らかりすぎだ。掃除や片付けなど超能力を使えば全く苦ではないが、どうせやるなら小遣いをせびりたかったな。だが汚い部屋で住ごすのは私も嫌だからな。早く掃除を始めよう。

 まずは雑誌をまとめておこうか。フワッ

 

 

 カサカサ

 

 

 虫の仕業ですな。

 

 これが気を失う前に頭の中で考えた最後の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は夢を見ていた。昔…幼少期頃だろうか。

 

 そうあれはまだ私が四歳の頃、そしてあのプリン事件の後の記憶だ。

 

 そうだな、まずはプリン事件の話も軽く話そう。

 プリン事件の起こる前までの私達双子、私とくすお(この時期はそう呼んでいた)とはゼロ歳の時から仲良しで、盗んだバイクを二人乗りで走り回ったりもしたそうだ。隠し事もない時期だったからかテレパシーで心の声 を聞いても特に嫌な感情もなく、むしろ面白いからと永遠とテレパシー会話を続けていたそうだ。

 

 そんな仲に亀裂が走ったのがプリン事件だ。プリンジャンケンでは決着が付かないので無人島に瞬間移動してケンカで勝敗を決めようとした。これが大きな間違いだった。今まで兄妹でケンカなどした事などなかったが、ポカポカという音がでそうな軽いパンチやキック(ブロレスラーを大怪我させるレベル)で済むと考えていた。だが予想に反してくすおは完全にガチで来た。

 確かにあの時、

 

 

[まけないからね!プリンはわたしのだもん](でもけがとかはしないようにね)

 

 

と、言った私に対してくすおは

 

 

[うん!](プリンプリンプリンプリンプリンプリン)

 

 

と、適当な返事とプリンしか頭になかったくすおに危機感を持たなかった私も悪かったのだろう。

 

 本当は認めたくないのだがハッキリと言おう。怖かった。

 全力で襲いかかるくすおを全力で迎え撃つ。やられっぱなしは嫌だからな。暫くケンカを続けると業を煮やした、と言うより早くプリンを食べたい彼は飛び上がり巨大なエネルギー玉を作り、無人島を消滅させた。今でもトラウマものだぞ上からエネルギー玉が落ちてくるのは。まあ当たっても軽い火傷で済むのだが。

 何より怖かったのはあのプリンの為なら私が怪我してもいいという姿勢だった。今回はプリンが原因だが今後は?もし今後なにか彼を怒らせるような事があればケンカで済むのだろうか?。考えは悪い方へ悪い方へと傾き続ける。そうだ今まで考えてこなかったが彼と私は他の人と違って凄く強いのだ。大抵の事じゃ怪我なんてしなかったが彼なら私に傷をつけられる。

 

 くすおはとても危ないんじゃないか?ここまで考えた私はゾッとした。

 仲良く遊んでいたくすおは、テレパシーでお話していたくすおは!ゼロ歳から一緒にいたくすおは!!天敵!天敵なんだ!!

 

 くすおは自分がケンカで勝つと(私はこれ以上続けたくないので降参はしたが負けたつもりはない)急いで幼稚園に戻ったがプリンは食べられなかったそうだ。他の子が食べてしまったのだ。後から私も瞬間移動して幼稚園に着いたがくすおの機嫌が悪いのがすぐに分かった。顔色や雰囲気だけでなくテレパシーでもそれが伝わってくる。いろいろと心の中で悪態をついていたが、

 

 

(くりこがさっさとまけてればぼくがプリンをたべれたんだ)

 

 

これには私もキレてしまった。くすおが危険な存在だということは忘れて言い返すとくすおもまた言い返す。口喧嘩になってしまったが本当のケンカはしない。もう無人島は消し飛んだし次に何を消滅させるか分かったもんじゃないしな。

 その後家に帰ってからも私もくすおも悪感情を残したままだった。お互い負けず嫌いな性格もあってか謝るという選択肢はなかった。相手の感情が分かるということがこんなにも辛いことだとは今まで思わなかった。お互いの悪口や苛立ちにはお互い参ってしまったのだろう。ついには、

 

 

「「お前の考えてる事なんか聞きたくない」」

 

 

とテレパシーを使わずに言った。テレパシーを使わかったのはテレパシーでお前と話なんかするもんかという気持ちの表れだ。するとどうだろう?くすおの心の声が聞こえないではないか。これには凄く喜んだものだ。もううざったい彼のテレパシーは聞こえてこないのだと。これで安心して熟睡出来る!

 

 それからはくすおを避ける日々が続いた。くすおがお祭りに行きたいと言えば私は行かないと言い。次の日お祭りにくすおが行かないと言えば私は行くというふうに徹底にな。ただ出店の人にメチャクチャ警戒されたんだがテレパシーで(ピンク髪の子はヤバイ)と聞こえてきた。くすおが何か超能力でしでかしたのだろう。腹立たしい。

 お祭りの件もそうだが幼い頃のくすおは人前で超能力を普通に使う。だが私は超能力の恐ろしさに気付いてしまったが為に超能力を使う事を躊躇っていた。くすおは危険な存在だがそれは私も同じなのだから、と。現にくすおが様々なところで超能力を使ったせいで情報が出回り、テレビの取材やら父のブログ炎上やら、遂には某国の諜報機関に追われるに至れば超能力を使いたくもなくなる。某国は滅んだ。くすおが単身乗り込んでボコボコにしたらしい。やはりくすおは危険なやつだと強く思った。

 

 この頃の私は完全にくすおを敵視していたが同じくくすおが嫌いという存在がいた。二歳年上の兄、斉木空助だ。

 空助兄さんは一言で言うなら超の付く天才だ。何をやらせてもすぐにマスターして飽きてしまうような人だ。そんな天才は三歳にして挫折を味わった。私とくすおが生まれたことによって。天才であろうと超能力者には勝てない、それを認めたくないという理由で何度も勝負を挑まれたが何度も返り討ちにした。私が小学校に通うくらいからだろうか、空助兄さんに、

 

 

「栗子。楠雄とケンカしてからずっと仲が悪いね。なら僕と組んで楠雄をギャフンと言わせてやらないか?。知ってるだろうけど僕は楠雄が嫌いだし。栗子よりもね。で、どうする?」

 

 

と、言われた。少し悩んだが頷いて了承した。超能力というものを見つめ治してから考えていたのだが、超能力を使って天才の空助兄さんを打ち負かすのはズルいんじゃないんだろうか。例をあげるなら空助兄さんがテストで全教科百点を取るが、くすおは先生を脳操作して九億点をとったりするのだ。(私はテレパシーで聞こえてくるカンニングを無視して全教科約九十点代だった)

 それでも超能力を頭脳でもって勝とうとする空助兄さんを応援したくなったのだ。何よりくすおをギャフンと言わせるというのはとても魅力的に思えたのだ。

 それからは空助兄さんと組む事になったのだが二対一で勝負するという訳ではなく、私を元に超能力を研究する事でくすおに打ち勝とうという作戦だ。それでも空助兄さんはくすおに勝てた試しはないのだが。私は陰ながら空助兄さんを応援していた(実際に応援していると伝えたりはしない。絶対に気を悪くする)。

 

 小学生のいつ頃だったろうか。心の中でのくすおの呼び方が彼に変わった。心の中だろうと名前で呼ぶのが嫌になったのだ。

 

 空助兄さんが中学生になってからは超能力の研究が活発化した。頭に変な機械を付けられたりもしたが、ずっと苦しんでいたサイコメトリー(物に触れるとその物の記憶が読めてしまうクソ能力)を、極薄の手袋を作ってくれた事で見たくない記憶を見てしまう悩みを解決してくれたのだから文句を言ったりはしなかった。

 ある日いつものように頭の研究が終わり目を覚ますと体と頭に機械がついていた。

 

 

[なんだこれは]

「うーん?あーそれね、爆弾。おっと変に手を出さないでよ?外そうとしたり分解しようとしたら即爆発するようになってるから」

 

 

 私は絶句していた。私は空助兄さんを信じていた。空助兄さんは手を組むと言い出してから私に勝負を仕掛けた事はない。確かに内心では私に対しても嫉妬や劣等感を感じていたが、それでも空助兄さんの頑張りは知ってたいから、信じていたかったのに。

 

 

「知りたいよね、何でこんな真似をしたのかを。一言で言うなら、栗子はもう用済みなんだよねー。理由は二つ。一つが脳の研究の結果、超能力を弱体化する方法が分かったんだ。それで今栗子の頭に付いてるそれが超能力制御装置なんだ。これで楠雄にようやく勝てるよ。今まで研究に付き合ってくれてありがとう、ほんと感謝してるよ。そしてもう一つの理由。栗子、君は楠雄よりつまらないんだ」

[あぁあ!?]イライラ

「怒った?まあ最後まで聞いてよ。楠雄は張り合いがあったんだ。うっとうしがりながらも勝負には手を抜かないんだ、そう超能力を使ってもね。でも栗子、君はどうだ?超能力はズルい?はっ、馬鹿にしてるのかって話だよ。本当につまらない。だから僕にとってもう必要のない栗子には消えてもらうよ」

 

 

 

 そうだった、空助兄さんは彼に負けるたびに段々と心境が変化していったんだった。小学校低学年の頃は

 

「くそっ!また負けた!」

 

と、普通に悔しそうだったのに中学年には

 

「あーまた負けたー。次はどうしてやろかなー」

 

となり、高学年になる頃には

 

「あ~~また負けた~~~~。やっぱり僕に勝てるのは楠雄だけだよ~~~(恍惚)」

 

と、残念になっていった。僕に勝てるのは楠雄だけっていうのには反論しそうになったがこいつに絡まれるのは嫌なので黙っていた。

 

 つまり空助兄さんは、変態ドMで今まで協力してきた私に爆弾を付けて処理しようとするトチ狂いカス兄だったという訳だ。

 

 

「そうだ忘れるところだった。栗子の体に付いてる爆弾は後二分以内に時速百キロの速さで走らないと自動的に爆発するから。時間が経つと徐々に制限速度が上がっていく仕組みでね、十時間ぐらい走れば外れるよ。じゃ、頑張ってねー」

[……ハイクを考えておけ]

「俳句?本当に栗子は理解不能だね。まあ、楠雄より頭悪いし仕方ないかもねー」

 

 

 私は捨て台詞の後、家を飛び出し走り続けた。時速百キロで走るなど超能力者には楽勝なはずなのに体が重く感じていた。それが頭についた機械、制御装置のせいだと気付いたのは走り始めて一時間後、時速二百キロで走っていた頃だった。制御装置を外すことで何か問題が起こらないだろうかと不安だったが特に問題なく外れた事で元の力が戻り、十時間、最高速度時速六百六十六キロで走り続ける事が出来た。その結果、超高速で走る少女「ターボロリ」の都市伝説が世界中で広まった。(当時の年齢は十一歳)

 走っている間ずっと怒りの感情が支配していた。どうやってカス兄を再起不能にしてやろうかとか、やはり人は信用してはいけないんだとか、時間はあったから色々と考えを巡らせていたが、まさか十時間経っても爆弾が解除されないとは思わなかった。しかも

 

「ノコリ十秒デ爆発シマス」

 

 と聞こえる始末。もう(はらわた)が煮え繰り返るどころの心境じゃなかった。決心した私は時速六百六十六キロの勢いのまま宇宙へ飛び出し宇宙空間で爆発した。威力は凄まじかったが結果的には服は吹き飛んだが体は無傷。

 そして気付いた、超能力者は爆弾なんかでは死なない、と。

 もっと早く気付くべきだった。何の為に十時間も走ったのだろう。こればかりはカス兄の私は頭が悪いと言う言葉には肯定せざるを得ない。まあ基本的には私は頭がいいんだ。ミクロ単位で少しだけ抜けているというだけで。

 

 さて、殺るか。

 

 

「あれ?生きてたんだ。まあ知ってたけどね、あれくらいの爆薬じゃ超能力者は殺れないことくらいね。それにしても爆弾が解除されないと最後まで気付かないなんてやっばり頭が悪いね。でもいいデータが取れて良かっ――――」

[ドーモ、サイキ・クウスケ=サン。サイキ・クリコです。カス、殺すべし]

「はぁ?意味分かんないんだけど。ていうか体動かないんだけど。やめてくれない?」

[ハイクを読め]バチバチ

「俳句ってもしかして辞世の句の事?。え、もしかして本気で殺ろうとしてる?は、はは、一旦落ち着こうか」

[イヤッ――――]

 

 

 手に溜めたエネルギーを放出しようとしたところで誰かが肩に手を置いた。斉木楠雄、彼だった。

 彼は真剣な目で黙って首を振った。私に殺しは止めろと言いたいのだろう。

 まあ殺すつもりはなかったんだがな。致死量のエネルギーをぶつけたらすぐに時を戻すつもりだったからギリセーフだろ。

 私が手のエネルギーを納める。彼は一つ頷くとまっ裸だった私の着ていた服が元通りになり、十時間走った僅かな疲れが消え去った。復元、私は一日戻しと読んでいるがそれをしたのだろう。

 正直ムカついた。なに急に気安く肩を触ってるんだと、なに偉そうに諭してるんだと。怒りは収まらないが下手に暴れて昔のようなケンカになるのは避けたかった。

 まだ肩に手を置く彼の手を払いのけ、イライラしたまま自分の部屋に戻って不貞寝した。

 一年後、カス兄はイギリスに留学しに行った。まあ、私と顔を会わせる度に手とか目とか腹とかにエネルギーを溜めて射出準備をされたら居心地が悪いだろう。

 ……いやそれが原因じゃないか。エネルギーを溜める度に息を荒くして興奮してたし。二度と帰ってきて欲しくない。

 

 カス兄はいなくなったがまだ彼がいる。カス兄と一緒に何処かへ行ってしまえば良かったのに。

 確かに小学校高学年頃には昔のように超能力を見せびらかすような真似はしなくなったしケンカの時からずっと私に危害を加えるような事もなかった。それでも天敵には違いはない。何時気が変わってジェノサイダーになるかも地球破壊爆弾を作りだすかも知れないんだ。

 私は今までそうしてきたように彼には注意を払い観察を続けた。あの事件が起きるまでは。

 

 

 時は流れ、私が中学三年生になって二、三ヶ月後、私にとって人生三度目の大事件が起きた。彼が私のコーヒーゼリーを食べていた。

 

 超能力を使用を制限しているとは言え自動的に発動するテレパシーと透視などはどうしようもなく、それ故の疲れやストレスが溜まっていた。それに加え彼という危険人物が近くにいる環境では心も休まらない。そんな私の救世主がコーヒーゼリーだった。子供の頃はずっと甘い物だけが正義だったが中学生になるとコーヒーという伏兵、いやそれ以上の存在に気が付いた。そしてコーヒーゼリー。前までは甘いプリンの隣にある理解不能な存在に鼻で笑っていた。そんな自分を過去に戻って殴りに行きたいくらいに美味だ。更にそのままで美味しいコーヒーゼリーに元々好きだった甘いもの、ホイップクリームを足せば犯罪的な美味しさに涙が出る程だ。

 

 ここまで言えば私にとってコーヒーゼリーが大事かが分かって頂けるだろうか。不本意だが同じくコーヒーゼリー好きの彼が、その彼が私のコーヒーゼリーを食べたのだ。これは戦線布告か?なら戦争だろうが!。

 殺気立つ私を見て彼は不思議そうにしていた。もしかしたらそれが私のコーヒーゼリーだと気づかずに食べているのかも知れないが、馬鹿にしているだけかも知れない。意外にも答えは前者だった。

 彼にそれは私のコーヒーゼリーだとジェスチャーで伝えると(意地でもテレパシーは使わないと決めていた)すぐに土下座した。今現在なら嘲笑ってやるところだが、当時の私はただただ戸惑っていた。あの彼が?あの超危険生物が?腹立たしいムカつく彼が?素直に謝った上に土下座!?………人生で一番の衝撃だった。

 私は彼を許した。何故?と聞かれたら答えに困るが、一つ挙げるとするならこれ以上彼の情けない姿を見たくなかったんだと思う。それにしても彼にテレパシーで許すと伝えたのだが、十年ぶりに彼と会話をしたんだ。どこか清清しい気分だったと素直に思う。

 後日、彼がコーヒーゼリーの弁償だと言って彼が買ってきたコーヒーゼリーを投げつけて来た。投げた事に関しては憤りを感じたが、まさか本当に弁償するとは思っていなかったんだ。彼の印象が変わったような気がした。

 

 それからはある程度は彼と話すようになった。彼は私が思っていた程悪い人間ではないと認めよう。それでも天敵であることは変わりがないのは事実。そこで交渉を持ち掛けることにした。正直に言おう、びびっていた。彼の逆鱗に触れる可能性がある以上平気ではいられない。

 

 

[おい、提案がある。真剣に聞け]

[…なんだ]

[お互い自分自身の危険さは十分に理解しているだろう。そこでだ。「お互い何があっても危害は加えない」これを誓って欲しい]

 

 

 この時の私はポーカーフェイスを完璧に作り、体の震えは一切なかった為、内心ビビりまくっている事を覚られずに済んだようだ。

 

 

[…分かった。元々僕は面倒な事は嫌いなんだ。わざわざケンカの種をまくような真似はしない。誓おう、絶対にお前に危害を加える事はしない]

[良かった。私も同様に誓うぞ。…………ところで私はコーヒーゼリーが食べたいんだ。買ってこい]

[何故そうなる]

[契約とは別に、私が上、お前が下だ。そうだろ?]

 

 

 吹っ切れたんだ。もう彼は恐怖の対象ではない。

 

 

[ふざけるな。兄が上、妹が下だ。依然変わりなく。コーヒーゼリーが食べたいならお前が買ってこい。ついでに僕のも買ってこい]

[私に命令するな]

[僕に命令するな]

 

 

 それからは暴言のオンパレードな毎日。天敵が近くにいるにも関わらず、それなりに平穏な日々をすごし今に至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長い上にやたら説明臭い夢を見た。

 

 ダルい体を起こすと自分のベットの上にいる事に気付く。私は一階で気絶していた筈だが…。いつの間に瞬間移動したのだろう?

 あくびをしながら二階から一階に降りてリビングのドアを開ける。すると彼がソファーに座ってテレビを見ていた。ふむ、面白そうな番組じゃないか。

 

 

[おい、なんで隣に座る。向こうのに座れ]

[私に命令するな。ここが一番見やすい]

 

 

 くどいようだが彼はとても危険な私の天敵。だが契約を受けいれた以上は安全な存在。彼は一度した約束事は守るタイプの人間だ。反故にするなんてことはありえない。それでも後ろに立たれると今でもゾッとするがそれ以外の場所なら安心すら出来る。

 

 

[ふん、勝手にしろ]

[そうさせてもらう]

 

 ガチャ

 

「ただいまー!わあ!家がキレイだ!」

「くーちゃんとくりちゃんが協力してお掃除してくれたのね!ママ感激だわ♪。そうだ引き出物で貰ったのーこのチョコ、あっ」

 

 ぱらぱら

 

 

 じょーじ。

 

 私は意味不明な言葉と共に意識が再び飛んでいったのだった。




次回。斉木楠雄編

お楽しみに!読まなきゃ死ぬぞ~(するめいか風)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。