私は顔を上げ軽く笑って見せる。
[大丈夫。怒ったりはしない]
私の顔を見た鳥束はさっきまでの緊張した様子から一転、何時ものへらへらした態度に戻った。
「そっすか?いやー流石は超能力者っすね!どうせテレパシーでバレてるんなら白状するっす。栗子さん、ずっと貴女のことエロい目で見てたっす。ぐへへ」
知ってる。
私は軽く笑いながら話を聞いているが、内心は違う。私が聞きたいのはそんなゴミッカスな言葉ではない。
「それで思い付いたんすよ、この部屋にいる霊なら栗子さんの体の隅々まで知っているんじゃないかってね!」
前に話した通り私は元男(今は完全に女性)だ。つまり精神的には男なのだから鳥束がエロい事を考えるのは仕方がないと許せる。
それに子供の時から斉木楠雄、彼には透視で裸を見られながら生きてきた。だから今更誰かに裸を見られても恥じらいなどない(とはいえ目立ちたくないので周囲の目には気にするが)。
とはいえ…、だ。
「この部屋にいる霊を連れ出して体を貸す事を条件に情報を引き出せたんすよ。いやーそれにしても安物とはいえ白いパンツっていうのはポイントたかーーーーー」
そんな私にも限界はある。
理性を捨て、本能で体が動く。
{斉木楠雄視点}
空気と化していた僕だがさっきから鳥束のゴミクズ発言も栗子の心情もしっかり聞いていた。僕が動かざるを得ないか、まったく、これは貸しだからな。
栗子は表情はそのままにゆっくりとした動作でイスから立ち上がる。
片腕を上げしっかりと拳を握る。
鳥束は不思議そうな顔で見ているが僕は(栗子にはバレていないが)テレパシーで次の行動が読めている。
シュンッ!シュンッ!
瞬間移動を使い一瞬で鳥束の前に現れる栗子。そのほぼ同時に僕も同様に瞬間移動で鳥束の前に移動する。
ガキイィィン!
栗子が光速で降り下ろしたグーをパーで受け止める。その時普通の人間から出るはずのない金属音が響いてしまったな。ご近所に不信に思われないだろうか。
さっきまでキレた母さんのような鬼の顔をしていた栗子は何時もの無表情に戻っている。少しは冷静さを取り戻したのだろうか。
[お兄ちゃんどいてそいつ殺せない]
どこかで聞いた台詞だな。やれやれだ。
[斉木栗子視点]
[おそろしく速い手刀。僕でなきゃ見逃しちゃうね]
どこかで聞いた台詞だな。…ハァ。
[…手刀じゃないんだがな]
[細かい事は気にするな。それより少しは冷静になったか?僕の目の前でチミドロフィーバーしようとするな。迷惑だ]
[………すまない]
[分かればいい。
そうテレパシーで言った後、彼は後はなにも言わず私の部屋の向かいに消えた。今回は彼に感謝しなければならないな。彼が止めなければリアルワンパンマンになっていた。超能力でごまかしもやり直しも出来るがあまり気分の良いものではない。
はぁ、あーいかんなあ…こんな…いかんいかん。あまりの事に泡を吹いて気絶している鳥束を見て流石に反省する。
私もここまでするつもりはなかったのだが、鳥束は一切謝罪の言葉を言わなかった。どんな形であれ謝れば許していたのだが何時までもへらへらとした態度に激しい怒りを抱いてしまった。
せめて鳥束を鳥束の寺まで運ぼう、サイコメトリーで服に触ればこいつの寺の場所が分かる。本当は家から放り出したい気分だが、やり過ぎてしまったのは私に非があるからな。
最悪の気分だ。早く鳥束を寺に捨てた後コーヒーゼリー食べたい。
読んで頂きありがとうございました。
次回は照橋さん回です。
オッフ、テルハシサンカワイイ、ヤッター!