紺野家の自宅訪問から数日後、予定していた通りに〝スリーピング・ナイツ〟のメンバーと一緒にダンジョン攻略をする事になった。1パーティーの最大人数は7人。なので〝
31層のダンジョンの入り口に集まったのは〝
「えっと、それじゃあマトモにリーダーが出来そうな人が居なさそうなので私がリーダーをします。異論は聞きません」
「よっ、バーサクヒーラー」
事実なのだが少しだけイラっとしたのでアスナの2つ名を呼び、即座に首を倒す。するとさっきまで頭があった場所に閃光が走る。前々から思っていたがアスナの煽り耐性が少し低すぎる気がする。確かに手を出されても構わないと考えて煽ったのだが、圏外なのでダメージは入るのだ。ダンジョンアタック前で消耗を避けたいのに頭部を狙って来る。
「次は当たるから」
「次も躱すから」
「話が進まないからそこまでにしておきなさい」
「シノンありがとう、出来ればそこのキチガイの手綱をずっと握っておいて下さい……パーティーの役割なんだけど私とシウネーが後衛をして、盾役はテッチにしてもらって、シノンにはアーチャーに徹してもらうって感じで。ユウキとウェーブさんとランさんは遊撃を任せたいのだけど大丈夫かしら?」
「大丈夫だよ」
「ユウキ、どっちが多く敵を倒せるか競争よ」
「おっと、俺を忘れてもらっちゃ困るな」
「……ねぇアスナ、この3人だけで良いんじゃないかしら?」
「確かにそうしてもらった方がポーションの消耗は抑えられそうね」
「そうかもしれませんけど……」
「出番、あるのか……?」
シウネーは後衛なのでまだ可能性はあるのだが、テッチは盾役をする前にエネミーを俺たちが倒すだろうから出番は無いと思われる。まぁボス戦に向けてポーションの消耗を抑える為に彼らの出番は犠牲になってもらおう。
全員が武器を抜き、戦闘が出来る状態になったのを確認してからダンジョンへと足を踏み入れた。
「ヒャッハァー!!逃げるエネミーはただのエネミーだ!!向かって来るエネミーは良く訓練されたエネミーだ!!」
「邪魔なのでさっさと退いてください」
「おぉ、姉ちゃんもお兄さんも凄いな!!ボクだって負けないよ!!」
ダンジョンに入ってから数十分が経ったが、当然の事のように予想していた通りの展開になった。ウェーブがダンジョンの回廊を縦横無尽に動き回りながらエネミーの弱点に的確に攻撃を当ててクリティカルダメージを連発、僅かな撃ち漏らしをランとユウキが倒していく。3人とも反撃は受けるのではなくて避ける事を基本にしているのでダメージはここに来るまでゼロのまま。シウネーは困った顔をしていて、テッチに至っては自分の存在意義に付いて自問自答を始める始末だ。アスナはウェーブで耐性が付けられているのか3人の活躍を無視してマップで現在地の確認をしている。
「ラン、ちょっとあの技借りて良い?」
「あの技ってOSSの事ですか?」
「そうそう」
「出来るなら良いですけど、出来るんですか?」
「何度も見たから、
刀を鞘に納めたウェーブが前傾姿勢になり、その姿を消した。そして前方を見れば、ダメージエフェクトを発生させながらポリゴンになっていくエネミーの向こうにウェーブは立っている。
それはどこからどう見ても〝統一デュエル・トーナメント〟でランが見せた神速のOSSと同じ物だった。違いがあるとすればウェーブの場合はガードされていてもガードごと斬り伏せ、鞘に納められた状態のままでいる。しかも、さっきのは
「えぇ……なんで人が苦労して作った技を簡単に真似出来るんですか?しかも私よりも完成度高いですし」
「下地で言ったら俺の方が出来上がってるからな。それに完全に真似してるわけじゃなくて俺の使える技術でそれっぽく見せてるだけだし」
「ボクらからしたらどっちもどっちなんだけど……」
ユウキの言いたい事は分かる。ランがOSSを作ったという事は、ランはあのOSSを
だけど、良く良く考えてみればクランドとロートスの2人なら平然とやってのけるだろう。きっとウェーブよりも数段上の完成度の技を見せつけてくれるに違いない。GGOで暴れているらしい2人がALOに戻って来ない事を祈るしかない。
「このペースでいけば30分くらいでボス部屋まで着きそうなのだけど……」
「何か問題でもありますか?」
「実は知り合いの情報屋から、私たちがダンジョンに入る数分前に30人くらいのプレイヤーがダンジョンに入ったって聞いたのよ」
30人というレイドの最大人数に届かない人数のプレイヤーがダンジョンに入っていると聞いて思い出したのは1月にあったレイド部隊との戦闘の事。あの時も確か20人くらいのプレイヤーがアスナたちがボスに挑んでいる間に集まってボス部屋の前を封鎖しようとしていた。その時はウェーブが1人で倒していたが、またあれがあるのかと考えると少しウンザリする。
「また27層みたいな事になるのかしら?」
「そうだとしてもウェーブさんとランさん使えば問題無いわ」
「……確かにそうね」
対人戦に特化しているウェーブに〝統一デュエル・トーナメント〟で名前が広まったラン。2人が出れば、プレイヤーの2、30人なんて問題にはならないだろう。寧ろ2人の存在を知って向こうが逃げ出すまでありえる。
28層のボス戦の経験から、出来る限り楽に終われば良いと考えながらPOPした瞬間にポリゴンに変えられるエネミーと楽しそうにしているウェーブたちを見て前に進むことにした。
〝
count down……2