修羅の旅路   作:鎌鼬

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〝絶剣〟

 

 

ランに頼まれた翌日、スレの情報から現在の〝絶剣〟は第24層の主街区の北側にある小島に出現するらしい。ランの言う通りならば〝絶剣〟はスカウトを終えるまではそこから動かないだろうがいつ終えるのか分からない。なので今のうちに接触、もしくは監視をしてしまいたい。

 

 

その事をシノンに話したらストーカーだと言われたので、違うと言い訳しながらリアルで詩乃の事を猫可愛がりして腰を抜かせてやった。

 

 

「……変態、セクハラ、痴漢」

 

「シノンが可愛いのが悪い」

 

 

ALOにログインすれば抜けた腰の影響は無くなるが、猫可愛がりされたからなのかシノンの顔は赤いまま。ジト目で睨まれるがそれすらも俺からすればシノンの可愛さを引き立てるスパイスにしかならないむしろウェルカムだったりする。

 

 

だけど悪口だけは心にザクザク刺さるから止めて欲しい。

 

 

「……で、〝絶剣〟ってどんなプレイヤーなの?」

 

「インプの女の子だな。〝絶剣〟って名前の通りに武器は片手直剣。地上と空中のどちらかでデュエルをして、勝ったらオリジナルソードスキル(OSS)をくれるらしい」

 

 

ソードスキルは元々はSAOにあったゲームシステムだがALOにSAO要素が追加された時にOSSとして実装されている。オリジナルという名前の通りに自分でソードスキルを作って登録し、使用する事が出来る。しかし登録する為の条件は厳しく、簡単に言えば〝システムアシストに頼らずにその剣技を再現しなくてはならない〟。アスナもOSSを持っているがそれでも五連撃が精々、ALOで一番強力とされているOSSはサラマンダーのユージーンが作った八連撃。

 

 

だが〝絶剣〟が賭けているOSSはユージーンを上回る十一連撃だという。OSSを一代コピーに限ってOSSを他のプレイヤーに伝授出来る〝剣技継承〟システムがあるのでそれで教えるつもりなのだろう。

 

 

もっとも、俺はソードスキルが嫌いなので興味は微塵も湧かないのだが。

 

 

「戦闘スタイルだけど、昨日のランとのデュエルを観てたよな?正直言って俺から言わせて貰えば()()()()()()()()。反応速度と攻撃速度こそズバ抜けているけどそれだけ。攻撃は全部素直にそのまま振るだけでフェイントを一切使わない。あれならキリトの方が強いな」

 

「ふぅん……そう言えばキリトは戦わなかったの?彼、そういうの好きそうなのだけど」

 

「あぁ、キリトなら負けたぞ」

 

「……え?でもさっきキリトよりも強いって」

 

「キリトが本気だったらの話だ。キリトが本気だったら、俺みたいな例外を除いてまともなプレイヤーじゃ絶対に敵わない。だけどあいつが本気にならない方が絶対に良いんだよ」

 

「なんでよ?」

 

「キリトが本気になる時は大抵、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

デスゲームとなったSAO、SAOプレイヤーの一部が囚われたALO、ゲーム内から現実世界の人間を殺すGGOと、キリトが本気で戦わなければいけなくなった時はゲームが娯楽の領域を超えてしまった時だった。

 

 

それを考えるのならキリトは本気にならない方が良い。俺とのPVPで本気になってくれないのは少し寂しいが、それは煽れば解決するので問題無い。

 

 

小説の主人公並みの巻き込まれ体質を持っているキリトには不可能かもしれないけど。

 

 

「そういう事だからなぁ……ん?」

 

「今度はどうしたのよ」

 

「あそこ、キリトとアスナが歩いてる」

 

 

噂をすれば何とやら。キリトとアスナが主街区の海沿いの浜辺を歩いているところに出くわした。何かを話しているらしく口元は動いている。そうして話している内に2人は顔を近づけた。

 

 

そのままキスでもするのかと思っていたら空から3人のプレイヤーがキリトたちを攫っていった。

 

 

下手人はリズベット、シリカ、リーファの三人娘。どうやらあの中の誰かが〝絶剣〟に挑むらしく、進路方向は北。しかしリズベットが途中でキリトを抱えて離脱し、それに気が付いたアスナがシリカとリーファと共にリズベットを海に叩き落としていた。キリトは何故か知らないけどアスナに横抱きにされている。

 

 

「あいつら、ちょっと目を離している間にクッソ面白い事してやがるな」

 

「あれでもシリカとリーファ以外、私たちよりも歳上なのよね」

 

「俺とシュピーゲルも同じような事やらかしているから強くは言えないけどもう少し落ち着けよな」

 

「ウェーブ、それはブーメランよ」

 

「知ってる」

 

 

落ち着きが無いというのは俺も同じで、分かった上で言っている。即答してからしばらく間が空き、可笑しくなって噴き出すとシノンも同じタイミングで噴き出した。

 

 

「そろそろ時間だな……行こうか」

 

「えぇ」

 

 

〝絶剣〟は3時頃になると小島に現れるとスレには書かれていた。時計を確認すれば3時に近い。なのでどちらかともなく差し出された手を握り、北の小島に向かって歩を進める事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北の小島には一本の大樹が生えていて、その根元には大勢のプレイヤーが集まって空を見上げながら野次を飛ばしていた。恐らくは〝絶剣〟の噂を聞いて集まった野次馬なのだろう。だけども〝絶剣〟と戦う気があるようには見えない。野次馬たちの視線を追って空を見上げると、サラマンダーの男性とインプの少女がデュエルをしている。

 

 

こうして見るのは二度目なのだが良く分かる。〝絶剣〟は本気のキリトよりも、昨日戦ったランよりも弱い。だけど攻撃速度と反応速度はズバ抜けている。相手の攻撃に速く反応が出来、相手よりも速く攻撃する事が出来る。それだけでは戦闘というのは有利に進められる。〝絶剣〟はランのようにそれを理解して工夫しているわけではなく、その優位性を持って使っているだけだ。小手先程度ならゴリ押しでどうにか出来るだろうが、その気になれば本気じゃないキリトだって〝絶剣〟を嵌め殺す事は出来るだろう。

 

 

今の俺の〝絶剣〟の評価はその程度のプレイヤーだが、逆を言えばまだ伸び代があるという事になる。本格的に成長すれば本気のキリトと同等か、それ以上になれるかもしれない。そういう意味では興味の惹かれるプレイヤーではあるが、そうなる可能性は低いと思っている。

 

 

「凄いわね……あの子、サラマンダーを圧倒してるわよ」

 

「そろそろ終わりだな」

 

 

〝絶剣〟の攻撃速度について行けず、サラマンダーは叩き落とされて地面に頭から墜落した。なんとか踠いて頭を抜く事には成功したが、これ以上は戦えないと判断してその場で降参した。

 

 

そして〝絶剣〟が地面に降り立ちーーーアスナが人混みの中から押し出される。

 

 

「アスナが戦うみたいね、どっちが勝つと思う?」

 

「6対4で〝絶剣〟」

 

 

アスナの攻撃速度も目を見張る物があるが、〝絶剣〟の反応速度を超えるかどうかと聞かれれば首を傾げるしか無い。GGOの予選トーナメントの決勝で俺と戦った時のような集中力と成長を見せれば可能性はあるのだが、そうでなければアスナは負ける。

 

 

「ま、楽しませてもらうとしますか」

 

 

ストレージから酒を取り出してコップに注ぐ。アスナが〝絶剣〟に勝てるかどうかというのは地味に気になっていたところだ。勝てるのならばそれで良し、負けたのならその事をネタにしてからかってやろう。

 

 

「ウェーブ、私にも頂戴」

 

「シノンは酒癖が悪いからあげない」

 

 

 






現段階だと、修羅波>ランねーちん≧本気キリト>ユウキチャン>本気じゃないキリトって感じ。アスナは一体どこに入るのだろうか。



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