タイトルとあらすじを変更しました。良かったらご覧下さい。
「〝絶刀〟って女の子だったの!?」
「別に驚くような事じゃ無いだろ?〝絶剣〟も女だったし」
「それ初耳なんだけど」
現実ならば身体能力の関係上で男性の方が強いのだが、ステータスによって支えられているゲームだと性別による差は生まれ難い。精々体格くらいしか出てこないのだが、それさえ相手によってはただのデメリットになりかねない時もある。
「それじゃあ、私とデュエルがしたいって事で良いんですか?」
「あぁ、シュピーゲル……俺の友人が俺とアンタのどっちが強いのか賭け始めたからちょっと戦ってこいって言われてさ。それに俺も〝絶刀〟ってどのくらい強いんだろうって気になったし」
「そうですか……じゃあ全損決着でルールは何でもありで良いですか?」
「もちろん……っていっても、俺は魔法なんてほとんど使わないけど」
ALOをしているというのに俺は魔法なんて数える程しか使ったことは無い。俺の種族はインプなのだが、それを選んだのだってインプは時間帯に関係無く飛行する事が出来るってWikiで見たからだし。
「あは、奇遇ですね。私も
「だろうな」
さっきのサラマンダーとのランの立ち回りは完全に
ランから飛ばされてきたデュエル申請のモニターを一瞥し、YESの欄を迷う事なく押す。自然と距離を取った俺とランの中間地点にモニターが投影されてカウントダウンを始めた。シノンは巻き込まれないように、それでいて俺たちの戦いを観れる位置まで逃げている。
それを確認し、俺は腰から刀を引き抜き、片手で持ったまま自然体を維持する。
「二本使わないんですか?」
「使わせてみろよ。それにそっちだって納めたままじゃ無いか」
「抜刀したいんでこれで良いんですよ」
「知ってる」
納刀したまま左手に鞘を持ち、右手で刀の柄を握っている。その構えを見て抜刀術以外に何を思い浮かべばいいというのか。しかもランの抜刀術の構えは中々に様になっている。普通ならば幾らか力みはするのだが余分な力が入っているようには見えない。その立ち姿だけでもランの実力の高さが伺える。
そしてカウントダウンがゼロになり、同時に突進する。
小気味の良い音を立てながら引き抜かれた刀は下段、俺の足を狙って振るわれる。それを弾き、止まる事なく前に出ながら膝を上げて顔面を蹴り抜く。防御とカウンターを同時にして、普通ならば回避不可能なはずなのだがランはそれを
しかしそれすらも
反撃の刺突を首を傾げて避け、手を振り解かれて距離を置かれながら先のやり取りからランの強さの一端を知った。
彼女は恐ろしい程に
これ程までに動きに鈍さを感じないのは廃人を量産するGGOのプレイヤーたちか、ALOのトッププレイヤーたち……後はキリトたちのようなSAO
その上、彼女は
素の反応速度は恐らくはキリト級、それだけでも化け物の領域に入っているというのに彼女は俺のことを知っているのか
爺さんや母さんでも俺の成長先の動きを予想して対応していたというのに、だ。
少なくともさっきのやり取りでゴリ押しで倒せるような相手では無いと分かったのでしばらくは様子見に回る事にする。
初手の抜刀で抜かされた刀を再び納刀させない為に視線で、動作で、呼吸で誘導してそれとなく攻撃させるように仕向ける。幸いな事に俺の成長先の動きを知っていてもそれらの技術への対処方法を知らないのか面白いように引っかかって思い通りに動いてくれる。
反応速度はキリト級であっても、所詮は人型のアバターから繰り出される動きしか出来ないのなら攻撃方法を誘導させる事で予想が出来、防ぐことは容易い。
いなし、受け流し、弾き、受け止める。剣速は眼を見張る程に速かったものの一連の動作には拙さが感じられる。まるで誰かの動きを手本にしているようなそれは
普段ならその程度だと笑って蹂躙していたのだろうが、その動き自体は悪く無い上にランの反応速度と合わさって凶悪なものになっていた。もしもキリトが戦ったらどうなるかと考えたところでランは攻めきれない状況を嫌ったのか飛び退いて仕切り直しを図る。
「……全然攻めて来ませんね?女の子ばかりに動かせるとか男として最低じゃないですか?」
「初めてやるんだから多少気後れしたとしても笑って見逃して欲しいもんだよ。それにーーーそろそろ攻めさせてもらおうか」
戦況は受けに回り続けた俺の方がHPを多く削られている分不利に見える。ランの強さは間違いなくトッププレイヤーに名前を連ねられる程のもの。今の状況が続けば俺は押し切られて負ける事になるだろう。
けど、それがどうした?
キリト級の反応速度?成長先の動きを知っているのかように反応される?既知感と新鮮味を感じられる動きをする?
重ねて言おうーーーそれがどうした。
例えキリト級の反応速度を持っていたとしても、成長先の動きを知っているのかように対応されるとしても、どこかで見た事がある見知らぬ動きをするとしても、俺が負ける理由にはならない。
修羅のような人であれと爺さんと母さんから言われて育てられた。
例え化け物の領域に入っていたとしても、それを笑いながら蹂躙出来るのが
呼吸を合わせてランの無意識の領域を知覚して縮地にてその領域へと一息の間に滑り込む。突然消えたように見えるだろうが彼女ならば俺が無意識の領域に入ったことに分かって対応してくるだろう。
その時点で負けているというのに。
どんな反応速度を持っていたとしても、成長先の動きを知られていたとしても見えなければそれらは使い物にならない。俺を無意識の領域から出す為に飛び退こうとしたランの足を砕かんばかりの勢いで踏み抜いてその場に縛り付け、ガラ空きになっている胴体目掛けて空いている手で発勁を叩き込む。
鈍い音を立てながら拳がランの腹に突き刺さり身体をくの字に曲げながら苦悶の声を上げる。普通ならばそこで吹き飛ばされるのだが彼女の足は俺の足によって踏みつけられて縫い止められている。吹き飛ぶはずの身体がその場に留まり、さらにもう一度持っていた刀を投げ捨てて発勁を叩き込む。
VRMMOではペインアブソーバーというダメージによって痛みを再現するシステムが実装されている。ALOではGGO程にペインアブソーバーは強く設定されていないものの、それでも痛いと感じるだけの痛みは発生する。
そんな中で加減無しの発勁による腹パンを喰らえばどうなるか?
答えはーーー内臓が揺さぶられるような痛みを味わいながら呼吸が出来ずに動きが止まる。
「次も腹だーーー
「ーーーッ!!」
続く三打目の発勁も腹に叩き込む。ゲーム内で用意されている〝拳術〟スキルでは無くてリアルで培った〝拳術〟は三度ランの腹に突き刺さる。
刀と鞘を手放さないその根性は認めるが最早彼女にはこの状況からの脱出は不可能だ。超至近距離まで潜り込まれた事で刀を振る事は出来ないし、俺の足を退かして抜け出す事も彼女のSTRでは不可能だろう。精々出来て自分の足を切り落とす事ぐらいだがそれをしてしまえば俺の動きについていく事が出来なくなる。八方ふさがりだと分かっているから何もする事が出来ず、ランはどうしていいのか分からずにいる事しか出来ない。
そしてランのHPが無くなるまで発勁による腹パンは延々と続けられた。
ユウキチャンのネーチャンだし反応速度は早くてよくねとキリト級の反応速度に、その上で訳のわからない補正によりランねーちん超絶強化。
それを笑って蹂躙出来るのが修羅波よ。
だけど儚げな風貌のランねーちんに腹パンしまくる修羅波とか絵面が酷いな。