一時間目終了後、三日月の元に一人の生徒が訪ねた。
「三日月、ちょっといいか?」
その少女はさっき窓際で三日月を見て驚いていた少女、篠ノ之箒だ。
「うん、いいよ」
三日月は了解の意を示し篠ノ之に次の言葉を促した。
「ここじゃあ、話しにくい。屋上まで来てくれないか?」
三日月と箒は今、屋上にいる。
「三日月、お前は一夏なのではないのか?」
箒は一夏とは幼馴染、やはり三日月の見た目は多少成長しているとはいえ、面影がある為気づいたようだ。
だが、今の三日月には篠ノ之を満足させる答えは出来ない。
「俺の名は三日月・オーガス、それ以上でもそれ以下でもない。」
その言葉に箒は、そんな事は信じられないとばかりに別の問いを投げかけた。
「じゃあ、私に見憶えはないか?篠ノ之箒だ。一夏の幼馴染の篠ノ之箒だ…!」
だが、三日月は分からない。
「悪いけど、あんたの事は憶えがない。
もう直ぐ授業始まるから。」
そう言って三日月は屋上から出て行った。
箒は、三日月 一夏が自分を憶えていない事に呆然とし、立ち尽くしていた。
そんな彼女に、聞き慣れたメロディーが流れた。
電話がかかってきたのだ。
『ほーきちゃん、おひさ〜お姉ちゃんだよ?』
その電話の主は箒の姉、そしてISの開発者篠ノ之束だった。
「姉さん、何の用だ。」
箒は彼女を邪険に扱うが、ある言葉によってその態度を変化させた。
『彼、三日月・オーガスの事知りたくない?』
箒は、迷った末に聞く事にした。
『彼、三日月・オーガスはいっくんだよ。
だけど、第二回モンド・グロッソ時に誘拐された後少年兵として、過酷な環境を生きてたから日本の事は憶えていないみたい。
…ごめんね、ほーきちゃん。私がISなんかをつくったからいっくんとほーきちゃんの仲を引き裂いちゃった…
本当にごめんなさい…』
箒は三日月の真実を知り驚いた。だが、それよりもしなければいけないことが今はある為、直ぐに切り替えた。
「姉さん、謝らないでくれ、私は大丈夫だから。謝るべき相手は、三日月だ。」
その言葉で束は箒に"ありがとう"と言い電話を切った。
(三日月がこれから平和に暮らせるよう、支えていこう。)
三日月・オーガスは、箒と出会った事で心に靄がかかった感覚に陥っていた。
「俺は、誰だ?
俺の本当の居場所は何処だ?」
三日月は、箒との会話の後教室に戻って来ると、参考書を開いて予習をしていた。
箒が戻ってきたと同時に千冬と真耶が教室に入室し、チャイムがなった。
「この時間は、ISの基礎理論についての授業になります。
まず、参考書の一ページを開いてください。」
この時間の担当をするのは、真耶のようだ。
彼女の授業は分かりやすく、ISの理論を理解しきれていない三日月でも、比較的容易に理解出来たようだ。
「一通り説明しましたが、分からない事はありませんか?」
すると、三日月が質問をした。
「真耶ちゃん、ISって結局何の為につくられたの?」
「三日月くん、真耶ちゃんではなく山田先生と呼んでください。
そうですね…篠ノ之博士は宇宙進出の為につくったそうですが、本人に聞かないと分かりませんね。」
篠ノ之博士という単語に反応した一人のの生徒がある事を質問した。
「篠ノ之さんって、篠ノ之博士の親族か何かですか〜?」
その言葉に答えたのは、千冬だった。
「そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ。」
生徒たちはその事実を知り騒ぎ始めた。
そして、遂には箒にまで博士の事を聞き始めた。
「博士ってどんな感じの人なの?」
「篠ノ之さんも博士と同じで天才なのかな?」
そのような質問が続き、山田先生もこれは不味いと思い止めようとしたが、生徒たちの押しの強さに為すすべもなかった。さすがの箒も我慢の限界に近づき、声を張り上げようとしたその時、
「五月蝿いなぁ、真耶ちゃんが話そうとしてるだろ。」
三日月の冷たい、感情の乗らない言葉にクラスメイトたちは静まりかえった。
このままの状態だと流石に不味いと思ったのか、真耶がフォローをし、事なきを得た。
文字数足りず2話くっつける羽目に…
創作って物凄く難しいです。
感想、お待ちしてます。