ヒューマン・デブリ・ストラトス   作:T-shi

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再会 拒絶 バルバトス…

彼が日本に着いたのは、次の日の午後だった。

 

彼は兵士だったこともあり危険と判断され拘束された状態で飛行機から降りる事になった。

ただ、意思疎通のために、ISは持たせたままだ。

「ねぇ、まだ着かないの?」

車に揺られながら、彼の問いに答えたのはさっき出迎えた黒服の3人の男の内の一人だった。

「直ぐに着く。目の前の人工島がIS学園だ。」

その答えに三日月はわかったとだけ言って口を閉じた。

 

5分程で彼らの乗る車は人工島にしては大き過ぎる学園に着いた。

 

 

 

(ここが、IS学園か、デカイな…。)

「いつになったら、この拘束具解いてくれるの?」

その言葉と同時に黒服の男たちは彼の拘束具を解いた。

拘束具を解かれた三日月は肩を回し、慣らし始めた。

その時、どこか聞き覚えのある声が自分の名前を呼んだ。

「お前が三日月・オーガスか?歓迎しよう、ここがIS学園だ。おっと、自己紹介が遅れたな、私の名は"織斑千冬"だ。これからよろしくたの…」

だが、彼女の言葉は最後まで続かなかった。

なぜなら、

「一夏なのか?本当に一夏なのか?!」

彼女は三日月が弟である一夏だと気付いたからだ。

だが、三日月は数年の戦闘により、日本の大半の事を忘れてしまっていた。

「あんた、"誰"?」

その言葉と同時に、彼女は泣き崩れた。

 

 

こんな事があるのか?!

一夏が私のことを覚えていないなんて、私はどうすれば…!

 

 

彼女がそう思うのも無理はない、非があるとしたらその殆どは日本政府とドイツ政府の警備態勢のせいだから。

なぜ、日本政府が悪いのか。

それは、一夏が誘拐された時、織斑千冬を第二回モンド・グロッソで優勝させることによって、自分たちの国の経歴に箔を付けようとしたからだ。

ただ、そんな事は三日月には関係ない。

三日月は、あの誘拐によって今の自分になったのだから、千冬に非があろうがなかろうが

どうでも良い事だったからだ。

 

千冬が泣き崩れている時に彼女をフォローした女性がいた。

彼女の名は、山田真耶。

千冬のISパイロットでの後輩であり、この学園の教師だ。

「これから、三日月くんには実技試験を受けて貰おうと思っています。本当は筆記もあるんですが、日本語が分からない三日月くんには無理なので実技試験のみとなっています。」

その言葉に三日月はわかったとだけ答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は今、実技試験の為に自分のISを展開し待機していた。

彼が目を閉じ集中力を高めていた時、放送によって試験の開始を指示された。

「三日月・オーガスくん、只今よりISの実技試験を行います。

 アリーナの西口から入ってください。」

その放送の終了とともに、三日月はアリーナに入っていった。

 

 

「実技試験は私が担当させて貰う。」

そう言ってアリーナに出て来たのは日本の量産IS、打鉄を纏った千冬だった。

彼女は、基本的に私情を仕事に持ってくる事を是としない人間だ。

さっきは急な事で取り乱したが、今はさっきと違い、しっかりとした面持ちだ。

「三日月、お前の入学は確定事項だ。

 だから、今からの試験は基本的には入学事態には関係ない。

 だが、この試験はお前のIS適正を見るための試験だ、手を抜くなよ?」

その言葉に三日月は わかった とだけ言って武器、メイスを構えた。

「只今よりISによる実技試験を行います。

 それでは、始めてください。」

その声の終わりとともに、両者は動いた。

 

 

"ガキーンッ" "ガンッ"

 

 

金属の打ち合う音がかれこれ10分程続いている。

千冬は、打鉄に乗っているとはいえ元世界一位のIS操縦者だ。世間からは、ISが篠ノ之 束によって世に出され7年程しか経ってはいないが、歴代最強の操縦者とも言われている。

だが、そんな彼女でさえ三日月相手に攻めあぐねている。

 

彼女は今、自分がIS操縦の初心者である三日月に攻めあぐねている事に驚きを隠せないでいた。

(なんだ、この反応速度は?!ISを操縦する上でどうしてもタイムラグが発生するはずだ。

 だが、奴の動きはそんな事を感じさせない程速い、速すぎる?!)

 

ISは彼女の言う通り、構造上 脳から神経に伝達される電気信号を肌の上から読み取って動かす。

そうすると、人間の電気信号の伝達する時間にプラスで肌からISに電気信号を伝達する時間が追加され反応速度は生身よりも少し遅くなってしまう。

だが、三日月の反応速度は生身の時となんら遜色のない、あり得ない速度なのだ。

だが、これにはしっかりとした理由がある。

それは、三日月に反応したIS、バルバトスは三日月に反応した時に、三日月に阿頼耶識が埋め込まれている事を把握し、第一次移行(パーソナライズ)でバルバトス自身に阿頼耶識システムを搭載したのだ。

阿頼耶識は脊髄に埋め込まれている。

これにより、脳からの電気信号は脊髄から直接ISに伝達される。すると、肌から間接的に読み取る時に発生するタイムラグがなくなるのだ。

 

 

三日月は今、なかなか攻められない事に苛立ちを覚えていた。

(面倒くさいな…、)

「バルバトス、ヤルぞ。」

その言葉に呼応するように、バルバトスはツインアイを光らせた。

 

二人の戦いは、次第に三日月が押し始めた。

バルバトスは、第一世代初期に定義されるISだ。それが、なぜ第二世代のISである打鉄を押しているのか、それはバルバトスの動力源に関係している。

バルバトスは、エイハブ・リアクターと言う動力源を二基搭載している。

通常、ISコアがエネルギーを供給する。また、機体の駆動、防護にもISコアの供給するエネルギーを使う。しかし、エイハブ・リアクターがあることにより、ISコアから供給されるエネルギーは駆動には、必要がなくなる。そのエネルギーを機体の駆動に使っているため、通常のISよりも出力が大きくなる。

簡単に言うと、ISコアから供給されるエネルギーは全てシールドエネルギーに回され、エイハブ・リアクターで機体を動かしていると言う事だ。

 

 

遂に、千冬の打鉄に三日月の駆るバルバトスのメイスが直撃した。

メイスの圧倒的な質量と、バルバトスの持つパワーにより打鉄は絶対防御を発動し、その一撃でシールドエネルギーを0にした。

 

 

この戦いは、世界最強を破り三日月の勝利で終わった…。

 

 

 

 

 

 

今、千冬と真耶、その他の数人の学園の教師により、彼の適正値を確認していた。

だが、判定を見たその場に居た全ての人間が驚愕に顔を染めた。

 

 

 

 

 

 

三日月・オーガス、IS適正 測定不能…

 

 

 

 

 

 




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