ヒューマン・デブリ・ストラトス   作:T-shi

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生い立ち…

ポトッ、ポトッ

液体のようなものが滴る音の中、彼の目が開いた。

「ここ…は?」

どこかの廃工場だろうか?

寂れた場所で手を後ろに縛られ、足も重りのようなモノを付けられていた。

「なんで、こんなとこに?」

彼が疑問に思ったことは直ぐ、横からの声で解かれた。

「悪いが俺たちの仕事の為にお前を誘拐させて貰った。

なに、お前の姉が決勝を辞退して、お前を助けに来れば済む話だ。」

要するに彼、一夏は姉のモンド・グロッソ、決勝を妨害する為に誘拐されたのだ。

 

彼の姉、織斑千冬は日本代表、ISパイロットとして第一回モンド・グロッソを優勝し見事、

ブリュンヒルデの称号を得た。

当時、17,8歳の少女が引退する訳もなく第二回モンド・グロッソに出場した。

だが、彼女の優勝を是としないものがいた。

その結果、彼女の試合を観に来ていた弟の一夏は、優勝を妨害する為に誘拐された。

だが、彼らは少し日本の対応を見誤っていたらしい。

 

「おいっ! 織斑千冬が決勝に出てるぞ!

どういう事だ!」

その言葉を聞いて彼、一夏は自分の耳を疑った。

「日本のチームにはちゃんと"織斑一夏"を誘拐したって連絡しましたよ!」

「どうする?! これじゃあ、報酬が貰えないぞ!」

「それなら、中東の傭兵のところに買い取ってもおう!」

「悪いが坊主、お前の姉が決勝に出たもんで

お前を売る事になった。

恨むなら姉を恨めよ。」

その言葉と同時に気を失った…

 

 

ここは、中東のどこか

傭兵たちの持つ少年兵を育成する為の施設だ。

ただ、ここにいる少年兵たちは普通の少年兵ではない。

"阿頼耶識"という名の端子を脊髄に埋め込まれた特殊な兵士である。

阿頼耶識は成長期の子供に脊髄端子を埋め込まれ、その端子は背中に剥き出しだ。

また、阿頼耶識の手術は危険で失敗すれば、一生歩けなくなるか最悪の場合死ぬ。そんな危険な存在であり、禁止されている。

そのようなモノを背中に付けている彼らは、モビルワーカーという名の戦車に阿頼耶識を接続し、紛争区域で戦闘をする。

 

彼らのほとんどは孤児である。

そして、この世界での孤児は鉄屑よりも安い金額で買われる。

彼らは通称、ヒューマン・デブリと呼ばれ人としての扱いを受けることはない。

そんな少年兵たちの中に、明らかに異色を放つ存在がいた。

黒髪黒目の明らかに中東の人間ではないことがわかるアジア系の顔をしている。

彼の名は、三日月・オーガス。

かつて、姉に見捨てられ、売られたヒトだ。

ただ、それだけが異色を放っている理由ではない。

彼の背中には、一回の手術でも危険な阿頼耶識を"三回"も行って得た三つの端子があるからだ。

だが、彼は平然とレーションを食べている。

悪魔と出会うなど思いもせずに…

 

 

 

 

 

 

 




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