やはり私と彼の出会いは間違っている。   作:赤薔薇ミニネコ

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第23話です。


第二十三話 委員長と出会う

 

 

 文化祭実行委員会の顔合わせの日、各教室から文実のメンバーが集まってくる。私と雪乃さんは空いてる席に座って会話をする。

 

「部活どうしよっか」

「そうね、由比ヶ浜さん以外は文化祭実行委員だし、部活は中止でいいのではないかしら」

「そうなるよね~」

「まあ、部活の時に決めましょう」

 

 ホワイトボードに書いてある内容で、私はミーティングの趣旨を確認する。ホワイトボードには役職決めと書かれている。文実メンバーも揃い、生徒会の方から各役職の仕事内容が書かれたプリントが配られる。生徒会長の城廻先輩のやさしい声でミーティングがはじまる。

 

「誰か立候補いますか?」

 

 実行委員長の立候補という城廻先輩の質問に、みんな静まり返る。もちろん私も立候補などしないので黙り込む。城廻先輩は静まり返った文実メンバーを見渡し、八幡のところで動きを止める。

 

「あの~、比企谷君だよね?」

「……はい」

「去年も実行委員やってたよね?仕事内容もわかるしどうだろ、委員長やってみない?」

 

 八幡はすごく嫌そうな顔をしている。私はギルドにいる時のような、みんなに指示を出すかっこいい八幡の姿を見たい気持ちがあり、後押しをするか悩む。しかし、赤い髪の女子が小さく手をあげる。

 

「うち、やってもいいですけど……」

「ほんと~!えっと……」

「2年F組の相模です、この文化祭を通して成長したいっていうか」

「いいとおもうよ~!」

 

 他の立候補がいないので、相模さんが委員長に決まった。ミーティングも終わり私達が教室を出るとき相模さんの会話から『ノリで委員長になっちゃったよ~』という言葉が聞こえた。私はその言葉を聞いて、すこし嫌な気持ちになる。

 部室で私達は文化祭までの間、奉仕部の活動をどうするか話し合う。

 

「ゆきのんとたたみんが委員会とかやるって意外だね~」

「そうかしら」

「私は雪乃さんがやるなら私もやろうかなって、安易な考えでなっただけだよ」

「俺は今年もシズカさんに文実メンバーにさせられた」

「二年連続で文実やってるのってヒッキーだけなんでしょ、すごいじゃん」

「俺はどこの社畜ですか……」

「文実の間、部活の事を雪乃さんと話し合ったんだけど」

「まあ、部活の件だが休みで問題ないだろうな」

「そうだね~ヒッキー達は忙しくなるだろうし私も賛成かな~」

 

 私達が文実の間は部活動は中止することになった。部室のドアがノックされる。開かれた扉から女子三人組が入ってきた。

 

「しつれいしま~す。平塚先生に聞いてきたんですけど、奉仕部って比企谷達がやってる部活なんだ~」

 

 相模さんの後ろにいる女子二人からせせら笑いが聞こえる。奉仕部の私達は眉をひそめるが、八幡だけはいつもの顔をしている。しかし、発せられた声はいつもより低く私は八幡が怒っているとわかった。

 

「なあ、聞きたいんだが、その笑いはこいつらに対してか?」

 

 八幡の一声でその場が一気に静まり返りる。緊張した表情でみんなは八幡をみつめる。雪乃さんと結衣ちゃんも怒られていないのに八幡を真剣に見つめる。

 

「み、南ごめん、用事思い出したから私達戻るね……」

 

 相模さんの後ろの二人は、怯えた表情で部室を出ていく。部室には相模さんだけが残され、まるで神の怒りを鎮めるための生け贄にされる感じだ。

 

「ご、ごめんなさい……」

「いや、相模には言ってないんだが……まあ、なんだ、用事があって来たんだろ?」

「うち、実行委員長になったんだけどさ、自信ないっていうか……だから助けてほしいんだ」

 

 雪乃さんは責めるわけでもなく、いつもの凹凸のない声のトーンで返事をする。

 

「自身の成長という、あなたの掲げた目的とは外れるように思えるのだけど」

 

 雪乃さんの意見に、私は心の中で『そうだ!そうだ!』とつぶやいてしまう。

 

「そうなんだけど、みんなに迷惑かけるのが一番まずいっていうか、失敗したくないじゃない、それに誰かと協力して成し遂げることも成長の一つだとおもうし」

「話を要約すると、奉仕部であなたの補佐をすればいいということになるのかしら」

「うん、そうそう」

「そう、ならあなたの依頼はお断りさせていただくわ」

 

 相模さんは泣きそうな表情でその場に固まってしまった。

 

「ごめんね、相模さん奉仕部は文化祭の準備期間中は部活を中止することになったんだよ。だから依頼は受けないことにしてるの」

「わかりました……失礼しました」

 

 相模さんは落ち込んだ表情で部室を出ていく。部室にはまたいつもの雰囲気に戻る。

 

「ちょっと、ヒッキー怖かったよ」

「そうか?」

「でもヒッキーが怒ってくれたのはすご~い嬉しかった!」

「そうね、守られるというのも悪くないわね。いつも守られてる畳谷さんがちょっと羨ましいわね」

「そっそうかな?でも相模さんを部活としては依頼受けれないけど、文実メンバーとしては支えてあげないといけないね」

「そうね、一人で抱え込まないといいんだけど」

 

 文実メンバーは各自の仕事を順調にこなしつていった。私も分からないところは経験のある八幡に聞きながら仕事をすすめる。相模さんも最初は一人でなんでもこなそうとしていたが、さすがに限界を感じたのか八幡や雪乃さんに相談してた。

 

 

「なあ、相模。今日のミーティングは大丈夫そうか?」

「うん、比企谷のおかげで、うちもだいぶ慣れてきたかな」

「各部署の進行具合は把握できてるか?」

「各部署の責任者ともしっかり情報も共有できてるし大丈夫だよ。それにしても比企谷って教室だといつも一人で寝たふりとか、ボーっといるのに、しっかりしてるよね」

「おまえ、人間観察が趣味なの?教室ボッチを観察してもつまらんだろ」

「そんな趣味ないわよ!葉山君達ともなんか仲いいし、ちょっと気になっただけ」

「まあ、順調に進んでるならかまわんが、油断はしないようにな」

 

 会議室では文実の定例ミーティングが行われている。今日は平塚先生も出席していた。

各部署の進行状況、改善点など話し合いの後、平塚先生が発言をする。

 

「今年の文化祭も問題なさそうだな、相模もしっかりがんばってくれてるし大丈夫だろう。今日はみんなだけにちょっとしたサプライズ発表がある。今年の文化祭はテレビ取材がある」

 

 テレビ取材という言葉にみんなは歓喜の声をあげる。私も『おお~』声をあげたがよくよく考えたら八幡から聞いていたことを思い出す。

 

「まあテレビ取材と言っても千葉県の広報課からの依頼だから残念ながら全国区ではない」

 

 みんな、地方のテレビと聞いてテンションが一気にさがる。そんなの見るやついねーだろと生徒から愚痴が聞こえる。

(私はけっこう見るんですが、主にアニメの再放送だけど……)

 

「まあ、そう落ち込むな。当日は千葉県知事もテレビ取材と一緒にこられるから、各自しっかりとたのむ。あと当日までほかの生徒には内緒でたのむぞ、それと比企谷は個別でちょっと話があるあとで職員室までこい」

 

 千葉県知事も来るのか、と思っていると、私はなにやら違和感を感じる。そういえば八幡がゲーム内でテレビ取材の話をしていた時、案内をお願いされていたような……。

チバを愛するギルドを思い出した瞬間、私の頭に電流が走る!圧倒的、閃き……!じゃなかった。チーバさんが知事だったことに気付く。そして知事のチバを愛するギルドのメンバー、チバケンセツさん。『娘をよろしく』と言っていた。ということは雪乃のお父さんの雪ノ下県議会義員?そういえば、他にもカツウラタンタンメンとか、ふざけた名前の人もいたな……その人も県議会議員?そんな人達と普通に話していた八幡って実はすごいんじゃ、私の想像でしかないがすこし嬉しくなった。

 

「なあ、ハチ。校長が言うには知事から直接指名で名前があったらしいのだが、知事と知り合いなのか?」

「まあ、知り合い?なんですかね……」

「詮索はしないが、くれぐれも失礼のないように頼むぞ」

「うっす」

 




読んでくれてありがとうございます。

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