仮面ライダーDRAGOON 赤龍帝で仮面ライダー   作:名もなきA・弐

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 さて、第一章もクライマックスです。スパイダーとの決着もこれで終わらせます。さぁ、アーシアを助けることが出来るのか!?
 それでは、どうぞ。


HEART5 Dragonの覚悟

パシン……!!

乾いたその音が、オカルト研究部の室内に響き渡る…リアスが、イッセーの頬に平手打ちをしたのだ。

その表情は、怒りに染まっており彼のした行動に本気で怒っている……。

イッセーとヴァイアはスパイダーに攫われたアーシアを助けに行こうとしたが、彼を探していたらしい木場と小猫に発見され、部室まで来たのだ。

事の顛末を話した彼は、彼女を救おうと部室に出ようとした瞬間…彼女の平手打ちを受けた。

 

「何度言えば分かるの…駄目なものは駄目よ。辛いけど、彼女のことは忘れなさい。あなたは、グレモリー眷属なのよ」

 

しかし、いくら駒王町で動いていた堕天使がネオストラと成り代わっていとしても所属としては堕天使陣営であり、そこに足を踏み入れることは出来ないのだ。

リアスは自分勝手なことをしたイッセーに怒っているのではない…危険な道に足を踏みれ用としている、命を顧みない彼に対して怒っているのだ。

自分の眷属を大切にしているからこそ、彼女は厳しい口調で彼を責める。

彼女の言い分が分からないほど、イッセーは愚鈍ではない。

しかし、それでも彼は……。

 

「…だったら、俺をグレモリー眷属から外してください。そうすれば、部長たちに迷惑はかけません」

「お願い、言うことを聞いて…!私は、私はあなたの主なのっ、主として、眷属を危険に晒すなんて、出来ない…!」

 

非常とも言えるその言葉に、リアスは辛い表情を彼に向けて叫ぶ。

その想いは、イッセーにもはっきりと伝わった。

それでも、彼には譲れないものがある。

 

「…ありがとうございます、部長。俺なんかのために……でも、嫌なんです。誰かを見捨てるのは、もう嫌なんです」

 

「お願いします」とリアスに寂しい表情を見せたイッセーは頭を下げる。

その態度に、彼女は少し息を吸い込む。

 

「本気、なのね」

「はいっ、俺は友達を…アーシア・アルジェントを助けに行きます」

 

迷いのない、その答えにリアスはゆっくりと眼を瞑ると彼に背を向けた。

 

「私と朱乃は少し外出します。祐斗、小猫…お願いね」

 

それだけを言うと、彼女たちは魔法陣を展開してこの場から立ち去る。

イッセーは、そのまま無言で部室から出ようとしたが準備をしている木場と小猫を見て驚く。

 

「どうして…」

「これでもあの方の眷属だからね。部長は、教会を『敵陣地』と認めたんだよ」

「じゃあ、小猫ちゃんも?」

「…二人では、不安です」

 

その言葉に、イッセーは二人と…この場にはないリアスたちに感謝すると扉を開けて外に出る。

通路にはヴァイアが肩組んで立っており壁にもたれかかっており、彼は楽しそうに話しかけてくる。

 

「良い主を持ったね君たち。それじゃ、行こうか!」

「はは…君も来るのかい?」

「だって、僕はアーシアちゃんの友達で…イッセーの相棒だからね」

「いつから相棒になったんだよ」

「たった今からさ」

 

木場の問いに彼は当たり前のように答える。

そう答えた彼にイッセーは呆れたように笑うと、四人は旧校舎から外に出る。

辺りは暗くなっており月が暗闇を照らしていた。

 

 

 

 

 

リアスと朱乃は共にとある森林へと転移した。

そこには胸元が大きく開いた黒のボディコンスーツを身に纏った大柄な堕天使の女性が降り立つ。

 

「全てはレイナーレ様のために全てはレイナーレ様のために全てはレイナーレ様のために全てはレイナーレ様のために……」

 

生気のないその表情から、ぶつぶつと同じ言葉を繰り返している堕天使…『カラワーナ』の額には子蜘蛛のような小さい物体が額に引っ付いているのが確認出来る。

彼女は黒い翼を羽ばたかせると光の槍を両手で生成して勢いよく投擲すると二人はそれを躱し、朱乃は巫女服の姿へと変わって対峙する。

見ると、周囲には彼女と同じように生気のない堕天使が取り囲んでおり数では圧倒的にこちらが不利であろう。

しかし、二人は不敵に微笑むと…目の前の敵を迎え撃つべく魔力を練り始めた。

 

 

 

 

 

「イィィィィヤッホーーーーーーーーーーッッ!!!」

『まったく無茶苦茶だな、貴様はっ!!』

【BOOST!】

 

一方、ヴァイアたちは凄まじいスピードで走る改造車に乗って大爆走していた。

曰く「ゴミ山から持ってきた」らしいバギーカーに呪法による改造を施したらしく、赤龍帝の籠手による倍加の力を流し込んでいるらしく、運転手はイッセーとなっている。

爆走するバギーカーで張本人であるヴァイアはハイテンションで叫ぶがそれに対してドライグは文句を口にする。

一方のイッセーもかなりテンションが高くなっており無言でアクセルを全開にしている最中だ。

木場と笑ってこそいるが、冷や汗を流しており小猫に至っては胃の中の物をリバースしないように口を必死に閉じている。

やがて、目的地でもある教会が見えるが彼らは気にせずその扉をぶち破った。

 

「やぁやぁやー…再会だね…」

「「邪魔だヒャッホーーーーーッッ!!!」」

「あんぎゃああああああっっ!!?」

 

フリードが大仰な態度で彼らを出迎えたがそれを遮るようにバギーカーはそのまま彼ごと巻き込む。

それを確認したイッセーたちは素早く車から脱出すると彼らのおかげで更に酷くなった教会の内部を確認する。

フリードは激突して壊れたバギーカーの下敷きになっていたが、恐らく再起不能だろう。

そんな彼を無視してイッセーたちは最深部へと侵入する。

そして、四人が最深部へと進む。

 

「…っ!アーシアッ!!」

「ん…イッセー、さん…?」

 

広い空間に出た彼らを迎えたのは巨大な十字架に張り付けられたアーシアと、学生服を着たレイナーレ。

イッセーは慌てて彼女の元へ行こうとするが、木場がそれを抑える…するとライオットが落ちるように短剣を突き立ててくる。

紙一重でそれを躱した彼らにレイナーレは彼らを嘲笑う。

 

「感動の再会ね?でも、もう儀式は終わったの……彼女の神器『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を奪うためのね」

 

その言葉と共に、アーシアは苦しそうにする。

そして……。

 

「い、嫌あああああああああああああっっ!!!」

 

まるで、何かを失いそうなことに恐怖するような悲痛なまでの悲鳴が響き渡る。

同時に、アーシアの胸元から優しい緑の光が灯る。

 

「くそっ!」

 

ヴァイアは、指で鉄砲を撃つような形にするとそこから呪法を固めた弾丸を飛ばす。

ライオットたちを掻い潜るように放たれたそれはアーシアを拘束していた手枷を撃ち抜き、ゆっくりと倒れるのを、走ってきたイッセーが優しくキャッチする。

 

「アーシアッ、俺だ。迎えに来たんだっ、しっかりしろっ!」

「……はい…!」

「退けっ、イッセーッ!!」

 

ヴァイアは慌てて彼女の元まで走り、何かの紋様が描かれた紙を彼女の胸元に張り付ける。

すると、少しだけアーシアの表情は和らぐ。

 

「…一時的な応急処置だ。でも、長くはもたないっ」

「方法はっ!?」

「…あいつを倒せば、あるいは」

「させると思っているの?」

 

彼の言葉に、イッセーは活路を見出すがレイナーレは姿を歪めるとスパイダー・ネオストラへと姿を変える。

 

『ようやく優秀なパワー源を手に入れたの、そしてお前たちを始末すれば…私は至高の存在へと高まるのよっ!!』

「…させるかよっ、アーシアの力を…彼女の優しい力をお前なんかに渡さないっ!!」

 

その言葉と共に、イッセーはドラグーンドライバーを腰に巻きつけた。

取り出したローカストバッテリーを装填し、ホルダーを上げる。

 

【WHAT THE CHOICE HEART!? WHAT THE CHOICE BATTERY!?…♪】

「変身っ!!」

【CURSE OF CHARGE!…L・O・C・U・S・T! LOCUST~!!♪】

 

テンションの高い待機音声が鳴り響くのを気にせず、ローカストバッテリーのインジェクタースイッチを押し込んだ。

瞬間、イッセーの身体は赤い龍を思わせるような赤いスーツに装着すると、ズババスラッシャーと酷似した双剣型のエネルギーが交差するように彼の頭部に突き刺さる。

緑色のラインが全身に駆け巡るとその上にイナゴを模したパーカーが装備され、アニメキャラクターを思わせるような獰猛なオレンジの瞳が光る。

 

「ミッション・スタートだっ!!」

『丁度良いわ、私の力を見せてあげるっ!』

 

スパイダーは両腕に備わっている銃口から糸を凝縮した弾丸を発射するが、イッセーはそれを召喚したズババスラッシャーで弾いて距離を詰める。

 

「ラァッ!!」

『このっ、図に乗るなぁっ!!』

 

緑色のオーラを纏ったスパイダーがドラグーンを殴るが双剣を交差して防ぐ。

しかし、あまりの威力にドラグーンは吹き飛ばされてしまい、壁に叩きつけられる。

 

「何だっ、この威力…!!」

『そうかっ、アーシア・アルジェントの神器で力を底上げしているのか』

『ご名答、あなたたちニンゲンの力なんて…ネオストラを進化させるための道具にすぎないのよっ!!』

 

ドライグの考察に、スパイダーは口から糸を吐き出してドラグーンを拘束しようとするが、それを横転して回避する。

しかし。

 

「うぉっ!?」

『バカねっ、むざむざ私の巣に足を踏み入れるだなんて』

 

粘り気のある糸に右腕を捉えられ、続けて放たれた糸に左腕を雁字搦めにされる。

 

「イッセー君っ!」

「今は自分のことに集中しようか、木場君っ!!」

 

ヴァイアのその言葉に、我に返った木場は抜刀してライオットの攻撃を防ぐ。

小猫はライオットたちの銃撃を跳躍して躱すと、自由落下の勢いを利用したナックルを繰り出す。

ヴァイアは応急処置を施しながらも迫りくるライオットを狙撃する。

やがて、ライオットたちが木場を目標に定めたのか物量に任せて彼を押し潰そうとするが、彼にそれに対して、笑った。

 

「『魔剣創造(ソード・バース)』ッ!!」

 

自身の神器の名を叫び、彼は力を解放すると彼の周囲を覆うように無数の刃を出現させてライオットたちを貫いた。

強度こそ本来の過程で製造されたオリジナルにこそ劣るが、あらゆる属性の魔剣を創造出来るという代物だ。

創造した剣だけでなく他にも魔剣を自身の足場にしたり、先ほどのように魔剣のフィルターなどの応用も可能となっている。

そして、自身を狙撃しようとしている最後のライオットを神速の如き速さで踏み込み、すれ違いざまにその個体を切り裂いた。

 

 

 

 

 

そして、リアスと朱乃は……。

 

「『gagagagagagagagagagaッ!!』」

「くっ!」

 

巨大な蜘蛛へと変貌した堕天使の攻撃を躱す。

雷撃と滅びの力で大半の堕天使たちは難なく倒すことが出来たのだが、その途中でカラワーナの頭部が不規則に揺れ始めた瞬間…巨大蜘蛛へと変異したのだ。

その姿は非常に醜くなっており、巨大な蜘蛛の下に堕天使の胴体がぶら下がっていると表現すれば良いのだろうか。

カラワーナだったその巨大蜘蛛は不可解な金切声をあげながら脚を使って攻撃してくる。

やがて、その隙を狙うように堕天使が光の槍を構えて突進しようとした時だった。

 

「……!?」

「人に光る物を向けちゃ……いけないってのっ!!」

 

自身の頭を鷲掴みにされた堕天使は反撃するよりも早く、殴り飛ばされた。

 

「…たく、イッセーの帰りが遅いから来てみれば…何こいつら?」

 

そう言って両手をはたくのはイッセーの伯母である政宗愛奈……その姿はエプロン姿であり食事を作っていたのだろうか妙に似合わない。

 

「せ、先生っ、どうして…!?」

「話は後っ!グレモリーさん、姫島さん…あれ何っ?」

「その、堕天使だと思いますわ」

 

無理やり自分のペースに引き込んだ愛奈の質問に、朱乃は冷静さを隠しながらも説明する。

「ふーん」と彼女は数人の堕天使と巨大蜘蛛を見据える。

 

「見た感じ、ゾンビみたいね……なら、遠慮はしないわ」

 

そのセリフの終わりに、懐から取り出した黒いクナイを逆手で構えると後ろに不意打ちを行おうとした堕天使の頭を貫く。

完全に敵だと認識した堕天使は唸り声をあげながら光の槍を生成しようとするが……。

 

「邪魔」

 

短い言葉と共に、クナイを投擲し、寸分の狂いもなく堕天使の胸元に突き刺さる。

それと同時にくくりつけていた爆弾も起動し、盛大な音と共に爆散する。

 

「政宗先生…もしかして魔法使い?」

「違うわよ、ちょっと変わった術を使えるだけ」

 

リアスの問いに苦笑いして答えると、巨大蜘蛛が襲い掛かろうとする。

しかし、それよりも先に動いたのはリアスだった。

 

「消し飛びなさいっ!!」

「『gagaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaッ!!』」

 

赤黒い魔力…滅びの力で巨大蜘蛛を消滅させる。

戦闘が終わったのを確認した愛奈は肩を回し、話しかける。

 

「疲れたー、あなたたちいつもこんな危ないことやってんの?」

「その…」

「良いわよ、ただの独り言だから」

 

事情を説明すべきか迷っているリアスに愛奈は疲れたように話を打ち切ると、話題を変える。

 

「ねぇ、イッセーは?」

「イッセー君は、その…」

 

朱乃がどう説明すべきか考えていた時だった。

 

「「「っ!!?」」」

 

膨大なまでの魔力…正確には呪法と入り混じった魔力がリアスたちに伝わる。

圧倒的なまでのその圧力にリアスたちは驚くことしか出来ない。

 

「今のは魔力?…もしかして」

「イッセー、君…?」

「…何だか分からないけど、あの子……」

 

その魔力に目を細めた愛奈は急いで発生源である教会の方へと向かうと、リアスたちも後を追うように走り出した。

 

 

 

 

 

同時刻、教会ではドラグーンがギプスのようになっている左腕で無理やりインジェクタースイッチを連打する。

 

【MAX BOOST!】

「うおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」

『んなっ!?私の糸がっ!!』

 

最大倍加を身体に施したドラグーンはその力のまま糸を引きちぎると、膨大な魔力を宿した右腕で顔面を殴り飛ばす。

今度は逆に吹き飛ばされる形となったスパイダーは周囲に設置しておいた蜘蛛の巣で着地し、殴られた箇所を擦る。

 

(まずいっ!このままでは…)

 

流石のスパイダーもバカではない、もしここで撃破されてしまえば今までの苦労が水の泡となる。

それだけは、それだけは絶対に認められない。

だからこそ、彼女は逃げる選択をした。

極めて優秀な判断だった……生物ならば誰もが取るであろう選択だ。

だが、目の前の仮面の戦士はそれを許さない。

 

「逃がすか、よぉっ!!」

『ぐうううううううううううっっ!!』

 

勢いよく跳躍したドラグーンが彼女を殴りつけると、そのままステンドグラスを割って外へと飛び出す。

強烈な敵意と共に、スパイダーは彼に問いかける。

 

『なぜ戦うっ!なぜ抗うっ!!たかがニンゲンがなぜっ!!?』

「友達だからだ…だから戦うんだっ!!やっと覚悟が決まったよっ、お前らみたいな奴らから、絶対に見捨てないために俺は…俺はあの人のように、この力で戦うっ!!」

『お前ぇっ、何者だっ!!』

「ドラグーン…俺は、『仮面ライダードラグーン』だっ!!」

 

その名乗った彼の頭部を、スパイダーは苦しみながらも銃口を向けて撃ち抜こうとするがそれよりも早くドラグーンが解放された左腕で彼女の顔面を殴る。

一瞬の隙が出来たスパイダーを踏み台に更に高く跳躍した彼は、ドライバーのホルダーを下げてインジェクタースイッチを押す。

 

【EXPLOSION! CURSE OF LOCUST!!】

『ふ、ふざけるなぁっ!!私は、私は至高の…』

「ぶっとべぇっ!!ブーステッド・ストライクウウウウウウウウッッ!!」

 

そのまま急降下キックを繰り出した。

スパイダーはそれを躱すことも出来ず、必殺技が胴体へと直撃し…けたたましい音と共に教会の天井を突き破りながら地面へと着地した。

 

『ぐっ、うぅっ…!こんな、はずでは…!!』

 

地面にのたうち回るスパイダー…それと同時にリアスと朱乃、そして愛奈が現れる。

やがて、スパイダーはぶつぶつと彼らには聞こえないほどの声量で呟くと……。

 

「申し訳、ありませ……」

 

一瞬だけレイナーレの姿へと戻って誰かへの謝罪を口にすると、スパイダー・ネオストラへと変化して爆散した。

ハート型のシンボルも砕け、完全に戦闘が終わったのを確認したドラグーンはアーシアの元に駆け寄る。

 

「アーシアッ!!」

「イッセー……さん?」

 

まるで戦士のようなその姿に、アーシアは驚きながらも笑顔を向ける。

そして、ホルダーからハートバッテリーを抜き取ってホルダーを下げると変身を解除する。

自分のために涙を流してくれるイッセーの顔を見たアーシアは安堵するように…それでいて彼を安心させるように。

彼女は、笑顔をイッセーに向けていた。

 

「会いに来てくれて、ありがとう…ございます」

「アーシア?アーシアッ!」

 

そう口にした瞬間、彼女は眠るように瞳を閉じて動かなくなった。

微かに呼吸が聞こえるが、それでもアーシアに死が刻一刻と近づいているのが分かってしまったイッセーは必死に彼女に呼びかけるが反応がない。

 

「先輩…これ」

 

ふと、スパイダーが消滅した場所で何かを見つけたらしい小猫は何かを発見する。

それは、二つの指輪のような形で淡い緑色を灯しており何処か温かさを感じる。

 

「彼女の神器…そうだ、これを彼女に戻せば……!」

「いいえっ、それだけじゃ駄目よ。これも使うわ」

 

珍しく慌てた口調で、ヴァイアが提案するがそれよりも先にリアスは懐から『僧侶』の悪魔の駒を取り出すと、「下がって」とイッセーに指示を出した彼女は神器と悪魔の駒を持ってアーシアに近寄る。

 

「ただ神器を肉体に戻しただけじゃ無理よ。でも、神器とその所有者の息があれば、転生させて甦らせる事が出来る」

 

「それに」と彼女は言葉を続ける。

 

「イッセーの友達を、見捨てるわけにはいかないわ」

「部長…そ、それって……」

「ちょっと規格外だけど、このシスターを転生させる」

 

彼の問いにそう答えたリアスはアーシアの周りに魔方陣を描き、転生の際の呪文を紡ぐ。

 

「我、リアス・グレモリーの名において命ず!アーシア・アルジェントよ、悪魔となりて我の元に舞い戻れ!!」

 

紡いだ言葉と共に、魔法陣が光を帯びてくると悪魔の駒と神器が彼女の身体へと吸い込まれた。

やがて、光が収まる。

彼女はゆっくりと眼を開いた。

 

「うぅ、ん……あれ、私…」

「アーシア…?」

 

前に会った時と変わらない穏やかな声を出し、アーシアは目覚めた。

 

「イッセーさん。一体、どうして…それに、私は」

「良かった、本当に良かった…!!」

 

何が起きたのか分からず呆然としている彼女の頭を、イッセーは優しくなでた。

彼女が生きていることを実感出来るように…ようやく彼は、誰かを見捨てずに守ることが出来たのだ。

 

「…ヴァイア君、泣いているのかい?」

「べ、別に…僕は涙腺が緩くないからね!ただ、目にゴミが入っているだけだよ」

 

人知れず泣いていたヴァイアに、木場は優しく尋ねると彼はいつもの言動で流している涙を誤魔化していた。

 

「……」

 

一方の愛奈はこっそりと取り出していたクナイを戻す…実は彼女が来たのはイッセーが悪魔となった原因でもあるグレモリー眷属に見極めるためでもあった。

もしも、彼女たちがイッセーを捨て駒か何かのように利用するものならこの場で始末する予定だったが気が変わった。

彼女たちなら大丈夫だろう、もしかしたら…彼の『傷』も……。

そんな『もしも』を期待しながら、愛奈はイッセーが変身したあの姿について問い詰めようと考えていた。

 

 

 

 

 

イッセーたちがアーシアの復活に喜んでいるころ、教会の外でスパイダーの様子見ていた青年は彼女が敗北したのを確認すると、そのまま森林の奥へと進む。

 

「敗北してしまいましたか」

 

突如聞こえた少女の声に、青年は驚くことなく立ち止まる。

そこに現れたのは、青を基調とした小柄なメイド服の少女であり可愛らしい容姿をしているがその表情は「クール」と呼ぶに相応しい。

その少女は、表情を変えることなく青年に話しかける。

 

「それで、例のもう一人の仮面ライダーの情報は?」

「ここだ」

 

インフェクションドライバーを構えた青年は少女が装備しているインフェクションドライバーと接続する。

そこからスパイダーと戦闘していた様子を確認した彼女は考えるような仕草をする。

しかし、その静寂を破るように笑い声が響き渡る。

 

「なるほどっ!?つまりそれはあれか、オレに治療されるべき患者が現れたというわけかっ!!はっはははははははははははははっ!!!」

 

少し薄汚れた白衣を纏った大柄の男は頭部に器具…所謂『額帯鏡』を装着しており、満面の笑顔で高々と語り掛けると一しきりに笑う。

それに対して青年は口を開いた。

 

「…『ハルピュイア』……こいつがいるということは」

「ええっ、『主』の治療が終わりました。まだ完全ではありませんがね」

「充実したオペだったぞっ!それすなわち、ドクターの本懐だっ!」

「それで。わざわざ俺の元に来た理由は?」

 

高笑いをする大柄の男を無視して青年は少女…ハルピュイアに尋ねる。

仮面ライダーの情報だけならば、自分の元に来る必要はない…無駄なことを嫌う目の前の少女は他の仕事を自分へ私に来たのだろう。

ハルピュイアは淡々と話を始める。

 

「…素体だったネオストラが『リザード』へと覚醒しました。あなたはこれまで通り、培養したネオストラの監視を、そして……」

 

そこで一端、言葉を切るとはっきりと言葉を口にした。

 

「あの仮面ライダーを始末しなさい、『キョンシー』」

「…了解した」

 

青年……キョンシー・ネオストラの人間態はそう命令に了承してはっきりと頷くとその場を後にした。

 

 

 

 

 

「えっと…私はアーシア・アルジェントと申します!日本に来て日が浅いですが、皆さんと仲良くしたいです!」

『おおおおおおおおおおおおっ!!?』

 

翌日の学校、悪魔へと転生したアーシアは愛奈の勧めで辰巳宅へとホームステイすることになり、そこからリアスが彼女を学校に通わせてくれる様に手筈をしたのだ。

最も、イッセー本人は愛奈から話を聞いていたので特に驚いてはいなかったが何も知らないクラスメイト(特に男子)は、喜びと驚愕が入り混じった声をあげる。

 

「おぉ、元浜!金髪の美少女が来たぞっ!!」

「むっふっふ!これはまた…覗きがいがありますねぇ!!」

 

「とりあえず、こいつらは後でお仕置きしておくか」とイッセーは心の中で強く誓うのであった。

そして、時間はあっという間になりオカルト研究部の部室がある旧校舎へと二人は足を進める。

 

「アーシア、本当に良かったのか?その、悪魔になって」

「心配してくれてありがとうございます。でも、大丈夫です…だって、イッセーさんがいますからっ!」

 

満面の笑みを見せて答えたアーシアに、イッセーは恥ずかしそうに頷く。

そして、部室のドアを開くとそこには全員が集まっており、リアスはゆっくりと近づくと微笑みながら彼女に紹介を始める。

 

「改めまして、私はリアス・グレモリー。ようこそ、アーシア・アルジェントさん。オカルト研究部に」

「はい!一生懸命部長さんのお役に立ちます!」

 

可愛らしくも、元気の良い挨拶で頭を下げたアーシアに彼女は嬉しそうに笑った。

全員が拍手をして出迎える中…派手な音を立てて入ってきたのはヴァイアだ。

 

「やぁやぁ諸君っ!挨拶は終わったみたいだね!じゃあ、行こうか!!」

「えっ、何処に?」

「アーシアちゃんの入部記念に、近くのファミレスで予約したのさっ!リアスちゃん名義だけどね!」

「ち、ちょっと…それってどういう…」

「さぁさ、レッツゴーッ!!」

 

リアスの問いに耳も貸さず、彼は逃げるようにその場から去るとリアスたちは後を追う。

イッセーも慌てて彼らを追いかけようとしたが、アーシアの方を振り向いて手を差し出す。

 

「行こうぜっ、アーシア!」

「っ///……はい!イッセーさんっ!」

 

最初に少しだけ頬を赤らめたが、やがてそれに答えるように差し出された手を取り元気よく答えた。

その笑顔は人々から崇められた孤独な聖女などではなく、友達や家族と共に笑う……年相応の少女そのものだった。




 原作通りですが、レイナーレたちと絡んでいた青年はネオストラでした。そして、他の連中も登場…彼らを活躍させられるのか不安ですが頑張ります(真顔)
 ヴァイアは神器や悪魔などについては知っていますが、悪魔の駒などの詳しい構造などは分かっていなかったりします…作者のように広く浅くなタイプです。
 さて、次回は第二章!……に入る前にあのお話を始めます。ではでは。ノシ

スパイダー・ネオストラ ICV生天目仁美
ネオストラの幹部である青年が堕天使「レイナーレ」に感染させて誕生した個体が進化した姿。
黄色と黒が基本カラーであり、蜘蛛を模したローブとボンテージを身に纏っている。
両腕に装備した脚を模した銃口から凝縮した糸の弾丸を発射する他、口から糸を吐いて拘束したり蜘蛛の巣を張るなどオールラウンダーな立ち回りをする。また子蜘蛛型の端末を埋め込むことで傀儡にしたり、巨大蜘蛛に変貌させるなどの能力もある。
アーシアの神器を取り込むことで往来以上のスペックを発揮したが覚悟を決めたイッセーことドラグーンに撃破された。

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