仮面ライダーDRAGOON 赤龍帝で仮面ライダー   作:名もなきA・弐

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 うわー、長くなった!いつもは七千字以上を目安にしているのですが今回は長くしすぎたと思います。
 ですが、変身シーンも入れたらここまで長くならざるを得なくなってしまいました…大変申し訳ありません。
 それでは、どうぞ。


HEART4 Sisterと神父の出会い

「そっか、アーシアは仕事で日本に」

「はい、色々な人たちに神のご加護を広めようと」

 

「立派だ」とイッセーが褒めるとアーシアは照れた表情で謙遜する。

あの後、互いに自己紹介を終え、イッセーは彼女が向かおうとしている町はずれの教会へと案内しており、その道中で軽い話をしていた。

ちなみに、アーシアは外国人なのだが悪魔の特性でもあるGo○gle翻訳もびっくりな能力で互いにコミュニケーションが取れるようになっているのだ。

やがて、二人が公園を通り過ぎようとした時…子どもの泣き声が聞こえた。

慌ててそちらへと向かうと、膝を抱えて地面に尻もちをついている男の子がおりそこから血が流れている。

イッセーは応急処置をしようと行動に移す前に、アーシアが駆け寄り男の子の膝に優しく手を当てる。

 

「……」

 

すると、彼女の手から淡い緑色の光が発せられた瞬間、すると男の子の膝の傷がなくなるように治り、最後には傷が完全に治癒された。

 

(ドライグ…あれは)

(間違いない、神器だ……それも飛び切りレア物のな)

 

イッセーたちが彼女の『能力』に驚き、分析していることに気づかないままアーシアは治癒を施した男の子に「もう大丈夫ですよ」優しい笑みを向ける。

 

「……!」

 

当然、彼女の言葉は彼には通じなかったが「自分を助けてくれたことを理解する」と男の子は「ありがとう!」と感謝の言葉を口にする。

 

「えっと……」

「『ありがとう』だってさ」

 

イッセーが通訳したその言葉にアーシアは再び微笑むと、元気よく手を振って走る男の子に彼女も手を振って返した。

 

「すみません、つい」

「アーシア、その力って…」

「はい、治癒の力です……神様から頂いた、大切な…」

 

アーシアは舌を出して小さく、嬉しそうに笑う。

イッセーは先ほどの出来事について尋ねるが、彼女は先ほどの表情とは違う暗い表情へと変わる。

それ以上先のことを聞くことはしなかった…彼女の笑顔を曇らせてしまうようで、イッセーは何も言わなかった。

やがて、教会の目印が見えてくると二人はそこで一端立ち止まる。

 

「教会は、そこから真っ直ぐだから」

「はい、何から何までありがとうございます。イッセーさん」

「良いよ。お礼を言われるために助けたわけじゃないから…何か困ったことがあったら、いつでも頼ってくれ」

 

笑顔でそう返したイッセーに、アーシアは笑顔を見せるとそのまま教会の道へと足を進めて行った。

 

「…良い子だったな」

『まったくだ、あれが巷で話題の「癒し系女子」か』

 

再会出来ることを思いながら、イッセーとドライグは軽口を叩きながら帰路へと向かった。

 

「あ、連絡先教えるの忘れた」

『教会に行けば会えるだろ』

 

 

 

 

 

アーシアを教会まで送り届けたその日の夜、オカ研の部室でイッセーはリアスに怒られていた。

 

「二度と教会に近づいたら駄目よ」

 

リアスの表情が険しく、はっきりと彼を見据えて彼を窘める言葉を口にする。

その光景に木場と朱乃は苦笑いしており、小猫に至っては黙々と洋菓子を口にしている。

黙って話を聞いている彼を見て彼女は話を続ける。

 

「良い、イッセー?私たち、悪魔にとって教会とは踏み込めばそれだけで危険な場所なの。それこそ、いつ光の槍が飛んでくるかわからないわ……」

 

淡々と怒ってこそいたが、その表情はとても心配そうで…まるで姉や母のようにその身を案じているようだ。

木場や他の部員から聞いた話だが、グレモリー家は悪魔の中でも情愛が深いこと…つまり身内を大切にすることで有名らしい。

彼女の表情に流石にバツが悪くなったイッセーは素直に頭を下げる。

 

「すいませんでした。次からは、気をつけます」

「……私も少し熱くなりすぎたわ、ごめんなさい。でもこれだけは言わせて頂戴……悪魔払いは私たちを完全に消滅させる。悪魔の死は『無』よ。それだけは覚えていて」

 

彼へのお説教を終えたリアスは、場の空気を変えるように手を叩いて「今日は解散」と連絡してお開きとなった。

イッセーも帰り支度を終えて旧校舎から外に出た時、突如後ろから声がかけられる。

 

「ハロー、イッセー♪」

「ヴァイアッ!?今まで何処に…」

「僕はシリアスが嫌いだからね、外で時間を潰していたの。それよりも、さ…」

 

突然背後から現れたヴァイアは胡散臭い笑顔を向けながら、彼の耳元に顔を近づける。

 

「…緊急事態だ、黙って僕の後について来てくれ」

「っ!?」

 

今まで聞いたことのない真面目なその声色に、イッセーは顔を上げた。

 

 

 

 

 

住宅に辿り着くのは一瞬だった。

ヴァイアと共に人間以上のスピードで、やや豪華な家を見据える。

 

「君も感じるだろ、上手いこと臭いを誤魔化しているようだけど…」

「……」

 

彼の言葉に、冷や汗をにじませながら頷くと先陣を切るヴァイアの後を追うように鍵のかかっていないドアを開けて侵入する。

部屋には薄暗く、アンティークな電灯だけが光源となっている通路を歩きながら光が僅かに強くなっているリビングへと足を踏み入れた。

 

「うっ…!?」

 

イッセーの視界には、血塗れになって転がっている男性の遺体と血まみれの室内…そして、そこのソファに座っている白髪の青年。

 

「……君が、この惨状を引き起こした原因かい?」

「んんぅ?」

 

笑ってこそいたが、冷たい視線を向けるヴァイアの声に白髪の青年は首をこちらへと振り向く。

 

「おぉ~?これはこれは悪魔君たちじゃあーりませんか~?」

 

最初こそ怪訝な表情だったが、二人を見た青年は楽しそうに立ち上がりその姿を彼らにはっきりと見せる。

白い服の上に黒いコートを羽織った神父服の少年であり、彼はふざけた口調で殺意をぶつける。

 

「俺の名前は『フリード・セルゼン』。とある悪魔払い組織に所属する末端にございますですよぉ」

 

青年……フリード・セルゼンはふざけた言動で自己紹介をしながらも恭しく一礼するが、ヴァイアはそれを無視して再度質問する。

 

「これは、君が、やったのか」

「そう!俺っちです、はいっ!悪魔に頼るなんてのは人として終わった証拠、EndですよEndッ!!だから殺してあげたんですぅっ!!くそ悪魔とくそに魅入られたくそ以下を退治するのがぁ……俺様のオシゴトなのぉっ……!!」

 

言動を崩さず、さも当たり前のように自慢げで話すフリードにイッセーはそれを無視して素通りし、遺体となっている男性にシーツをかける。

ヴァイアもドヤ顔で銃と光剣を構える彼を無視して男性に近寄り黙とうする。

その様子に不思議な顔をするフリードだがやがてイッセーが口を開いた。

 

「今すぐこの場から消えて、二度と人を殺さないと誓うか」

「それとも僕たちに無様に負けるか……どちらか選択しな」

「アーハン?」

 

首を傾げるフリードが怪訝な表情で視線を向けた時だった。

 

「きゃあああ!!!」

 

女性の悲鳴が室内に響き渡り、イッセーとヴァイア…フリードも声がした方向に視線を向ける。

リビングの惨状に表情を固まらせていたのは教会へ案内をした少女…アーシアだった。

フリードは気にせず、彼女に声をかける。

 

「おんやぁ?助手のアーシアちゃん。結界は張り終わったのか、なぁん?」

「こ、これは…………」

「そっかそっかぁ♪アーシアちゃんはビギナーでしたなぁ。そう、これが俺らの仕事。悪魔に魅入られた駄目人間をこうして始末するんす♪」

 

そう言って、被せたシーツを切り裂いて見せた原型を留めていない遺体に呆然としているアーシアに、フリードは何でもないような口ぶりで自分が行なったことを説明する。

 

「そ、そんな……っ!?」

 

その説明を聞いてショックを受けた彼女が恐る恐る振り向き、その表情は驚愕したものへと変化する。

イッセーの顔を見た彼女は、声を震わせて呟く。

 

「……イッセーさん?」

「…アーシア」

 

まさか普通の男子高校生が、しかも以前知り合った彼がここにいるとは思わないだろう…ヴァイアは何も言わなかったがこの空気に気づいたのは、フリードだ。

 

「何なぁに?君たちお知り合い???もしかして悪魔風情と仲良くなっちゃった系って感じぃ?」

「悪魔?…イッセーさんが?」

「ごめん…アーシア……」

 

ふざけた口調で嘲笑うフリードの言葉に「信じられない」と言わんばかりに両手で口を抑える。

その表情にいたたまれなくなったイッセーは、ぽつりと謝罪の言葉を口にする。

フリードはアーシアに近づき、囁くように話す。

 

「残念だけどアーシアちゃん、悪魔と人間は…相容れませぁん……!!ましてや、ボキたちぃ、堕天使様のご加護なしではぁ、生きてはいけぬ半端者ですからなぁ…!?」

(…堕天使だって?)

「さて。ちょちょいとオシゴトをぉ…完了させましょうかねぇ!」

 

フリードはイッセーに光剣を突き付けた瞬間だった。

何とアーシアがイッセーとヴァイアの前に立ち、庇うように両手を広げたのだ。

 

「おいおいマジですかぁっ?」

「フリード神父、お願いです。この方と…イッセーさんのお友達を見逃してください。悪魔に魅入られたからといって、人間を裁いたり悪魔を殺すなんて……そんなの、絶対に間違ってますっ!!」

(…彼女は)

 

目に涙を溜めながら、懇願するアーシアに先ほどまでふざけていたフリードに嫌悪と憤怒の感情が宿る。

ヴァイアはそんな彼女に感嘆する…悪魔であるイッセーはおろか会ったこともない自分を必死に守ろうとする芯の強いその姿に唖然とする。

 

「あ、そうですか…それなら……バイバイしちゃおうねえええええええええええっっ!!!」

「……っ!!」

 

フリードが思い切り、光剣を振り上げたのを見たアーシアは強く眼を瞑り迫りくるであろう激痛に身を委ねようとした。

しかし…。

 

「んなっ…!!」

「……っ!!」

 

驚愕するフリードの声にアーシアがゆっくりと目を開く。

そこには左腕に赤龍帝の籠手を装備したイッセーが彼女を守るように立ち塞がり、左手で刀身を掴んでいた。

 

「アーシアを、泣かせたな…!!」

「な、なぁっ…!?」

【BOOST!】

 

強い闘志が彼の瞳に宿り、倍加の音声が響き渡るとイッセーはその光り輝く刀身を粉々に握り潰す。

フリードが驚愕の表情を見せるが、すぐさまバックステップして懐から拳銃を取り出し、両腕に持った二丁の拳銃から銀の銃弾を発射する。

 

【BOOST!】

「甘いっ!」

 

銃弾の嵐をイッセーは躱し、赤龍帝の籠手で弾いたり斬り裂いたりしながらフリードへと接近する。

 

「なめてんじゃねぇぞ、くそ悪魔あああああああああっっ!!」

 

拳銃を投げ捨て、予備の光剣を取り出して彼を斬り捨てようとするが上段から振り下ろされた攻撃を僅かな動作で躱すと、彼の懐まで入り込んだ。

 

「まずはっ!相手を怯ませるっ!!」

「痛いっ!?」

 

逃げないように彼の胸倉を掴み、思い切り頭を振りかぶって頭突きをする。

頭突きとは思えないほどの痛みにフリードは怯む……その隙を見逃さなかった。

 

【BOOST!】

「これは、この家の人の分っ!!」

「がっ!?」

 

更に倍加した左腕でフリードの顎を殴って少しだけ空中に打ち上げると、彼の顔面目掛けて拳を振り下ろした。

 

「これが、アーシアを泣かせた分だぁっ!!!」

【EXPLOSION!】

「ブベエエエエエエエエエエエエッッ!!」

 

強烈な一撃を受けたフリードは断末魔と共に地面に叩きつけられた。

今の攻撃で完全に意識がなくなったのかフリードは白目を向いたまま地面を転がっており起き上がる気配はない。

ヴァイアがビニールテープの紐で彼の手足を拘束する中イッセーはアーシアの安否を確認する。

 

「大丈夫か、アーシア?」

「はい、イッセーさんのおかげです」

 

ほんの少しだけ笑みを見せた彼女に緊張が解けると、神器を解除して地面に腰を下ろす。

ヴァイアがフリードの顔に「餌を与えないでください」と書かれた紙を張り付けていると赤い魔法陣…今ではもう見慣れたそこから木場たちが現れる。

 

「遅いよー、君たち。ここにいたエクソシスト擬きは僕とイッセーが倒したよ」

『お前は何もしてないだろうが』

 

彼らに笑顔向けて話すヴァイアにドライグがツッコミを入れると、最後に現れたリアスが男性の遺体に目を向ける。

 

「……すいません。俺が、俺のせいで…」

「イッセー、これはあなたのせいじゃないわ」

「でも、もしかしたら救えたかも知れない命なんです……俺が…!」

「イッセー君、これ以上はいけませんわ」

 

悔しそうに、自分を罰するように自分の腕を強く掴む彼に朱乃が静かな声で窘める。

「すいません」と頭を下げる彼に、リアスはアーシアの方を見る。

 

「イッセー。あなたはそこにいる女の子の正体を知っているのね?」

「……はい」

 

彼女は何も言わなかったがイッセーにはその意味が分かった。

悪魔と天使、そして堕天使の三大勢力には互いに境界線がある……つまり、悪魔とシスターは相容れない。

理屈は分かっているし、彼女の真意も分かる…けれども。

 

「俺は…」

「っ!部長、この近くに堕天使のような気配が近づいていますわ」

 

堕天使の気配を感じ取った朱乃がリアスにそう告げると、彼女は手を開いてその場に魔法陣を出現させる。

 

「イッセー、話しは後で聞くから今は帰るわよ!」

「ならアーシアもっ!」

「…無理よ。この魔法陣は眷族しか転移されない、だから…その子は無理なの。彼女は堕天使に関与している者なら猶更よ」

 

彼女の言葉に、イッセーは愕然とするが再び赤龍帝の籠手を装備しようとするが…。

 

「それなら…よっと」

「きゃっ!?」

 

何と先ほどまで黙っていたヴァイアが彼女を抱え始めたのだ。

まるで米俵を担ぐように、その華奢な見た目からは想像も出来ない力で彼女を持ち上げて彼らに告げる。

 

「はっはー!僕は、君たちの眷属でもなければ悪魔でもないからね…というわけで、彼女は僕が責任を持って預かる!では、諸君…サラダバーッ!!」

 

一方的にそれだけ話すと、ヴァイアはそのまま窓枠へ脚を掛ける。

 

「あ、あの、イッセーさんっ!また、また会いましょうっ!」

「アーシア…」

 

そして、眩い光と共に…イッセーはリアスたちと共にオカルト研究部の部室へと移された。

 

 

 

 

 

その翌日、初めて学校を休んだイッセーは勉強を終えると、ただぼんやりと自室で漫画を読んでいた。

考えているのは、アーシアのことだ……ヴァイアは彼女を何処へ連れて行ったのか、あれから彼女は無事なのだろうか。

その不安だけが胸の内を締め付けていた。

ふと、部室に転移されてからのリアスの言葉を思い出す。

 

――――「もし、堕天使と戦ったら私たちも堕天使たちと争うことになるわ。それで私の可愛い眷属を失うのは嫌なの……分かって頂戴、イッセー…」――――

 

悔しいが、事実なのだ。

眷属になったばかりのちっぽけな自分の気持ちだけで、彼らを危険な目に遭わせるわけにはいかない。

だけど、彼は見捨てられないのだ。

 

『相棒、そこにいても気が滅入るだけだ』

「そう…だな」

『外に出るぞ、俺は連載したばかりの「東都科学者」が読みたい』

「買うのは俺だぞ」

 

ドライグに言われたイッセーは、彼と軽口を叩きながら着替えて少しばかりの身支度をすると、街へと繰り出した。

暫く外をゆっくり歩いていると、公園を通りがかった辺りで見知った姿を見つける。

 

 

「とう!……ふっふー、見たかアーシアちゃん。これが逆上がりだよっ!」

「す、すごいです!体が回転して……」

 

鉄棒で逆上がりをして自慢げに話しているヴァイアと、白いヴェールを頭に被ったシスター少女…アーシアだ。

半ば無条件に、イッセーは早足で彼女の元へ向かう。

 

「アーシアッ!」

「あっ、イッセーさんっ!!」

「無事だったんだな……良かったっ!」

 

何も異常がないアーシアにイッセーは安堵のため息を吐く。

やがて、彼の存在に気づいたヴァイアは鉄棒から手を離して話しかける。

 

「やぁ、イッセー!ところで見てくれたかな?僕の完璧な逆上がりをっ!」

「誰が見るかっ!」

「酷いっ!?僕は初めて逆上がりが出来たんだぞっ!懸垂逆上がりなら出来るけど」

「逆に何でそれが出来るんだよっ!?むしろそっちがすげぇわっ!!」

 

出しゃばる彼にツッコミを終えたイッセーは、咳払いをしてからアーシアに話しかける。

 

「アーシア、どうしてここに?」

「その、ご飯を食べようと思いまして……///」

「んで、保護者である僕が一緒にいるってわけさ」

 

彼女とヴァイアの言葉通りなら、堕天使たちは居場所を完全に把握出来ていないのだろう…嫌な予感がしていたイッセーからしたら彼の存在はある意味で幸運だった。

 

「そっか…なぁ、アーシア。もし用事とかなかったら」

「は、はい」

「今日は、俺と遊ぼうか!昨日の件のリフレッシュだ」

 

ウィンクして言った彼の言葉に、アーシアは呆然としていたがやがて言葉の意味を理解すると……。

 

「……はいっ!」

「僕を忘れないでっ!」

 

彼女は、年相応の満面の笑みで頷いた。

……ヴァイアもいたが。

 

 

 

 

 

最初はハンバーガーショップで腹ごしらえをする。

アーシアは教会出身なのか興味深そうに、けれどどう食べて良いか分からず困惑していたがイッセーとヴァイアが手本を見せるように食べると彼女も小さく口を開けて食べる。

 

「…!美味しいです!イッセーさん、ヴァイアさん!」

 

食事を終えた後、ヴァイアは「コンビニの賞品手に入れなきゃ」と独り言を言いながら、別行動を開始したため、イッセーとアーシアはゲームセンターへと向かう。

町の灯りとは違う、大きな音とゲーム機に目を輝かせながら一緒にプリクラをしたり興味深そうに見ていたクレーンゲームの賞品であるぬいぐるみを取ったりする。

 

「ありがとうございます!この子は、イッセーさんとの出会いが生んだ宝物です」

「あはは……」

(結構百円玉使ったけどな)

(シャラップだドライグ!)

 

大事そうに両腕でぬいぐるみを抱えるアーシアの言葉に、イッセーは照れ臭そうに笑うが呟いたドライグを黙らせる。

そうしている内に、二人は立ち寄った公園の水辺を歩く。

 

「やっほー!限定品ついでに飲み物買ってきたよ」

 

そこにはヴァイアが付近のベンチで座っており、イッセーにオラ○ジーナを投げ渡し、アーシアには午○ティーを差し出す。

 

「…と、サンキュ」

「ありがとうございます!」

 

彼にお礼を言うと、二人は渇いた喉を潤す。

「ぷは」とイッセーは楽しそうに笑う。

 

「流石に疲れたなー」

「でも、こんなに楽しかったのは、生まれて初めてですっ!!」

「大げさだよ。だけど、女の子と楽しく遊んだのは初めてかもな」

 

アーシアの輝くような笑顔に、イッセーも自分のことのように喜ぶ。

ヴァイアは限定品である下敷きやポストカードの袋から出してチェックしていたが、やがて彼女は意を決したように口を開いた。

 

「私の話……聞いてもらえますか?」

「…俺なんかで良いなら…聞くよ」

「異議なし」

 

二人の了承に、アーシアは自らの過去を話し始めた。

ほんの一筋の涙を零しながら……。

 

「私は、すぐ生まれて親に捨てられたんです」

「えっ」

 

彼女の言葉に、イッセーは顔を僅かに上げる。

ヨーロッパの小さな田舎町の教会の前で、泣いていたらしい。

彼女はそこで育ち、暮らしていたが八つの時、転機が訪れた……ある日、教会に迷い込んだ怪我を負った子犬を発見し、そしてその犬を助けようと祈っていた時、目覚めさせた神器で治癒をしたのだ。

能力を教会が知ると、アーシアは大きな教会へと連れて行かれ、人々の傷や病気を癒し続けた。

そこで、自身の持つ力から彼女は「聖女」と呼ばれ崇められた。

何処かそんな穴の空いた生活を続けていたある日、アーシアは教会の前で、傷を負った男性…黒い翼を生やした悪魔を救ったことが、悲劇の始まりだった。

神を信じる神父や信徒からしたら、穢れた存在と言い伝えられている悪魔を救えるその力は聖なるものどころか奇跡ですらない。

『魔女のものだ』と教会は判断し、アーシアを追放して見捨てた。

 

「だから、アーシアは…堕天使に」

 

その過去に、イッセーはどう言葉にすれば良いか分からなかった。

アーシアは、言葉を続ける。

 

「きっとこれも、主の試練なんです…この試練を乗り越えさえすれば、私の夢が……たくさんの友達と……」

 

アーシアは顔を俯けて、そう語る。

神器とは世界に対して平等に働き、多種多様な種族にも影響する……それに、神器は人ならざる力、異質な目で見られるのはどの世界でも見られる光景だ。

味方はおろか友達もいない、誰も守ってくれない……そんな孤独を味わいながらも彼女は人々を癒そうとしたのだ。

アーシア・アルジェントは、一緒に本を読んだりお花を買ったり出来るような…そんな当たり前の日常が欲しかったのだ。

そんな当たり前の夢を持った少女に、イッセーはゆっくりと立ち上がる。

 

「俺が、アーシアの友達になるっ」

「イッセー、さん…?」

「ほら、今日は一日楽しんだだろ?だからもう、俺たちは友達だよ!」

「確かに、それだけ辛い思いをしたんだ。だったら、この出会いこそが神様への贈り物なのかもね。本とか花は絵面的に無理だけど」

 

アーシアは二人の言葉を黙って聞いており、ぬいぐるみを強く抱きしめる。

 

「…いいえ、いいえっ、いいえっ!!嬉しいです、本当に…!でも、お二人にご迷惑が…」

「友達は迷惑を掛けて何ぼだっ。互いに楽しいことや辛いことを共有するのが、友達だからさ」

 

涙を流す彼女は、辛い笑みを向けるがイッセーはそれでもはっきりと言葉にした。

その言葉に、何処か安心したような笑顔を二人に見せてくれた

しかし……。

 

「良いセリフ、感動的…だけど、無理よ」

 

突如聞こえた第三者の声に、イッセーたちは水辺の方を振り向く。

そこには、最初の時のような学生服姿のレイナーレが立っており、黒い羽根が舞い散る。

 

「夕麻ちゃん…!?」

「レイナーレ様っ…!?」

「……」

 

異なる名前を呟くイッセーとアーシアを守るように、ヴァイアは無言で前に立ち塞がり、ゆっくりと口を開く。

 

「目的は、彼女かい?『同胞』」

「ふん、裏切者風情が軽々しく私と一緒にしないでほしいわね」

 

彼の言葉に、張り巡らせた蜘蛛の巣の上に立っていたレイナーレは胸の下で腕を組むとその姿を変える。

蜘蛛を模した、黄色と黒のカラーリングが特徴のローブとボンテージ姿を上半身に纏った素体ネオストラ…否、覚醒態であるスパイダー・ネオストラは忌々しそうに口を開く。

 

『まったく、駒を使ってあの子を手に入れるつもりが…まさかあなたに邪魔されるとはね』

「嫌な気配が感じたからね。念には念をと考えていたのさ」

 

その言葉に鼻を鳴らすと、スパイダーは未だ状況が呑み込めずに困惑しているアーシアに呼びかける。

 

『アーシア、こっちに来なさい。私の「計画」にはあなたが必要なの』

「えっ、わ、私は……」

「させるかっ!……変身っ!!」

【CURSE OF CHARGE!…L・O・C・U・S・T! LOCUST~!!♪】

 

ドラグーンドライバーを腹部に装着し、ハートバッテリーのスイッチを押し込んで変身したドラグーンはそのままスパイダーを殴る。

 

『くっ!うざったいわねっ!!あなたはこいつらとでも遊んでなさいっ!』

 

距離を取ったスパイダーが指を鳴らすと、彼女から黒い靄が現れそこからハート型のシンボルを持った紫色の人型が群れを成して現れる。

『それら』は銃と短剣の形態を持つ武器を手に持ち、ドラグーンに襲い掛かる。

 

「うぉっ!何だこいつらっ!?」

「イッセー、そいつらは『ライオット』ッ!ネオストラの共通能力を持たない雑魚だっ!!」

 

ズババスラッシャーでライオットの攻撃を防ぐドラグーンに、ヴァイアは迫りくる戦闘員たちの攻撃を躱してカウンターを決める。

しかし……。

 

「きゃあああああああああっっ!!?」

「っ!アーシアッ!!」

 

スパイダーが口から吐き出した糸にアーシアは拘束されており、引っ張られると彼女は捕われてしまう。

 

『ふふふ、この子さえ手に入れれば長居は無用よっ!!』

「イッセーさんっ!イッセーさぁんっ!!」

「アーシアッ!!」

 

アーシアを捕えたまま、スパイダーは再び口から糸を吐き出してワイヤーアクションさながらに逃走する。

助けを求める彼女に手を指し伸ばすが、それを妨害するようにライオットたちが行く手を阻む。

 

「邪魔だぁっ!!」

【FULL ACTION! CURSE OF LOCUST!!】

 

右手に持ったズババスラッシャーのホルダーにローカストバッテリーを装填してスイッチを押すと、異なる必殺技の電子音声が鳴り響く。

そして群がるライオットたちを緑色のオーラを帯びた双剣による斬撃で一掃した。

 

『~~~~~ッッ!!?』

 

ライオットたちは唸り声と共に消滅し、ヴァイアは辺りを確認するが悔しそうに舌打ちをする。

 

「駄目だっ、もう反応がないっ」

「…くそっ!!」

 

アーシアを守れなかった……。

その事実だけが、彼を追い詰めた。




 フリードの口調、面倒くさいっ!!もしかしたらこいつと、アーシアの過去で話が長くなってしまった印象です。
 ちなみに、フリードはヴァイアを悪魔と勘違いしています。というよりも彼なら悪魔だろうとなかろうと問答無用で「敵認定」しそうですけど(笑)
 さて、次回はどうなる!?ではでは。ノシ

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