仮面ライダーDRAGOON 赤龍帝で仮面ライダー   作:名もなきA・弐

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 懲りずに新連載してしまいました。
 あくまでもアーサーの筆休めですので更新ペースがかーなーり、遅いです。短いですが、今作の怪人と主人公がわずかに登場します。
 それでは、どうぞ。


旧校舎のDiabolos
HEART 0 暗躍するNew Species


そこは、広く薄暗い一室だった。

妙に小綺麗な内装からは、そこが何処かの洋館の一室であることが確認出来るが、周囲には乱雑に置かれたコンピューター機器と少年・青年向けの週刊雑誌や月刊雑誌が辺りに散らばっており、状態からそこまで昔の物ではない。

現に、その一室には何十人、何百人ほどの人影が……正確には、異形がたむろしていた。

その異形は一貫して全身が黒く染まっており、まるで影のようにも見える。しかし、彼らは共通してデフォルメした大きく赤いハート型のシンボルが右胸に埋め込まれている。

一番目立つ特徴を持った異形たちは椅子にもたれかかる、書物に読みふける、あろうことか人間のようにコミュニケーションを取っている個体もいる。

やがて、扉が開く。

全員が思い思いの作業をやめて振り向くと、そこには彼らと同じ四体の異形が立っており、彼らは中心まで歩く。

やがて、先陣を切っていた異形が口を開いた。

 

『…友よ、今ここにいる…もしくはこれから姿を得るであろう我らが同胞たちよ。ついにこの時が来た』

 

透き通るような青年の声で言葉を発するその異形の声量は決して大きくはなかったが、それでも彼らには響き渡り、その声に聴き入っている。

 

『我々は、もはや影の存在ではない。我々は、「心」を持った生命であり神話体系に新たに名を刻む種だ。だが、この世界を牛耳る「ニンゲン」たちは俺たち細胞生命体の進化を侮っていたらしい』

 

そこで、一度言葉を区切ると中心にいる異形の内一体が彼の言葉に続くように一歩前に出る。

 

『俺たちは、弱者でもなければ愚かな傍観者でもない。人々を堕落させる薄汚い翼を生やした「異形」を始末するために選ばれた存在だ。俺たちは進化する』

『そして、この世界を侵略し支配する!あぁっ、オペッ!オペだっ!!待ちに待ったオペの時間が始まるぅっ!!患者、患者は何処だぁっ!!?』

 

冷たい声色を持った異形に続くように、威圧感のある声で隣にいた異形がエキセントリックな言動で一方的にまくし立てる。

彼らの声は着実に、徐々にここにいる異形たちの士気を高め、ある種の連帯感を与えている。

そして、最後の異形は年端のいかぬ…それでいて落ち着いた声色で言葉を続ける。

 

『私たちは、力を得るための手段がある。進化がある…私たち「ネオストラ」は、胡坐をかいているニンゲンたちの頂点に君臨するっ!!』

『666666666666666666ZZZ!!!』

『ネオストラf@yx@e!!f@yx@e!!f@yx@e!!』

『0qdqat@dfer.k9Z!!』

 

女性の異形…ネオストラが宣言すると、残りのネオストラたちは…聞き取れない、まるで文字化けしたような言語でまくし立てながらも彼らは拳を振り上げる。

高揚した彼らに満足するように、最初に言葉を発していたネオストラが全員に見せつけるように握り拳を固めながら、再び口を開いた。

 

『さぁっ、侵略の時だ。同胞たちよ……革命を起こすぞ…!!』

 

その言葉と共にネオストラたちは散開した。

ある者は扉を蹴破るように、またある者は自身をコンピューターウィルスへと存在を変えて…地球への侵略を開始した。

 

 

 

 

 

踏み入れてからまだ数か月…それでも慣れ親しんだ場所に変わりはないその土地を踏みしめながら、少年は呆然としていた。

辺りは土煙が舞い、鉄臭さと硝煙の臭いが充満する…最悪の光景を眺めるしかなかった。

そして目の前には…親しくなった人たちがいたその場所には、瓦礫と真っ赤に染まった惨状が。

 

「あっ、あぁ…!」

 

少年は叫んだ。自身の喉が張り裂けるほど…ボロボロになった手を必死に動かし、もはや激痛すらも感じないその両手を使って必死に瓦礫をどかそうとする。

それが無理だと分かっていても、自己満足ですらない現実逃避だと分かっていても彼は瓦礫を手に持とうとした。

その時。

 

「…っ!!?」

 

急に自分の周囲が暗くなり、麻痺した頭を必死に回転させて上を見る。

それが瓦礫だと気づいた時…彼は自らの終わりを受け入れた。

だが、運命はそれを許しなどしなかった。

 

「えっ……」

 

突如、自分の前に誰かが降り立ったかと思うと右手に持った『何か』を振るい瓦礫が中央から分断される。

その誰かは、鎧を纏った異形だった…姿こそ完全には見えなかったがティラノサウルスを彷彿させるような赤い鎧を纏い、紫色のアンダースーツで全身を覆っていた。

右手には銃のリボルバーに刀身が合体したような奇妙な武器が握られており、恐らくあの銃剣で瓦礫を切り裂いたのだろう。

しかし仮面の目に当たる部分には綺麗なグリーンカラーの『瞳』があり、まるで一昔前の玩具のようだと場違いにも感じた。

呆然としている少年に対し、誰か…仮面の戦士は右手に持った武器を消すとこちらへと近づいてくる。

 

「…もう大丈夫だ」

 

優しく、そう言われた少年は柄にもなく彼にしがみつき涙を流し思いの丈を言葉にする。

目の前にいたのに何も出来なかった、どうしてこんな目に、力があったのに誰も救えなかった…そんな八つ当たりとも取れるその言葉を仮面の戦士は黙って聞き、それを受け入れる。

まともに立てない少年と目線を合わせるように戦士は少しだけ頭を下げる。

 

「…すまない。本当に、すまなかった……!!」

 

なぜ彼が謝るのか、なぜ彼は震える声で彼を強く抱きしめたのか、なぜ仮面の下で彼が鳴いていたのか、それは少年には分からなかった。

 

「うっ、ゲホッ!!」

 

やがて少年は激痛に苦しむ。

無理もない。彼の身体は既に限界が来ており負傷も酷い…応急処置をしなければすぐにでも死んでしまうだろう。

薄れゆく景色の中で、仮面の戦士が自分の身体に触れたことを感じながら、意識を手放した。

 

 

 

 

 

目が覚めた時、少年がいたのは清潔感あるベッドの上だった。

医師が言うには病院の前で倒れており、そこにいた人たちの活躍で一命を取り留めたらしい…目立った外傷もなかったが、彼の手だけは現在の医療では不可能だったので手袋を使用せざるを得なかったが幾分かましだろう。

入院の間は共に来ていた友人二人に泣きつかれたり心配され、帰国後は両親たちにとても心配された。

心の傷までは完全に治療出来なかったものの、彼には目標が出来た。

まず一つは、手の届く範囲でも良い…困っている誰かを決して見捨てないこと。

もう一つは、自分を助けてくれた仮面の戦士のような人間になること。

そして、少しばかりの変化と共に物語は0から1へと始まる。

少年…『辰巳一誠(たつみ いっせい)』の物語が……。




 短いですが、こんな感じです。イッセーの苗字変更については少しばかり家族構成を変更するからです。原作を愛する方は本当に申し訳ありません(汗)
 ちなみに意味不明な言語を喋っていたネオストラたちですがあれはあるゲームの言語を使っています。
 続く予定ではありますがアーサーの連載が一区切りついたら進める予定です。
 ではでは。ノシ

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