仮面ライダーDRAGOON 赤龍帝で仮面ライダー 作:名もなきA・弐
それでは、どうぞ。
当然のことだが、修行をするにはそれだけの場所と設備が必要となる。
そこでリアスはグレモリー家が所有する日本の別荘地で泊まり込みの修行することを提案し、イッセーたちはそこに向かうための山道を歩いていた。
顔を上げて周囲を見渡せば、綺麗な青空と景色があり自然豊かな木々が生い茂っている。
小鳥も囀っている大自然を堪能しながらイッセーは大きめの荷物を背負って足を動かす。
「ぜぇ、ぜぇ…ち、ちょっと待って…タイム、タイム…!!」
「またなのかい、ヴァイア君?」
「……これで何度目ですか?」
後ろを見れば、一番軽装備であるヴァイアが息を切らしており苦笑いする木場と、大量の荷物を背負っている小猫が彼を急かしているのを確認出来る。
まさか徒歩で行くとは思ってもいなかったのだろう、本人曰く「病み上がり」らしいのだが気にする余裕もないので先を行く。
ちなみに、イッセーはリアスとアーシア…朱乃の分の荷物を全て一人で背負って歩いているが涼しい顔だ。
そして、少し休憩したヴァイアも再度歩き始めると三人はリアスたちが待っている場所へと向かった。
そして、数時間後。
「ふぁー……素敵ですぅ…!」
別荘地に着いて一番初めに口を開いたのはアーシアだった。
白を基調としたサイズのある屋敷であり、湖やプールも完備されておりアーシアやイッセーは驚くしかない。
リアスは「別荘」と言ってはいたが、イッセーのような庶民の感覚からすれば『豪華な屋敷』であり、それと同時に「実家はもしかしてお城かよ」とツッコミそうになってしまう。
(中々良い場所だな。別荘自体もそうだが人払いの結界もあるしこれだけ広いなら修行にももってこいだろう)
ドライグがそんなことを言う。
しばらく呆然としていたが、リアスが口を開いた。
「さっ、中に入ってすぐ修業を始めるわよ」
彼女の声に続くようにイッセーたちは別荘へと入って行く。
別荘の中は綺麗に掃除されて埃一つなく、窓に至っては太陽の光で反射しているほどだ。
リアスに一つの部屋へ案内されたイッセーと木場はそこで修行をするのに動きやすい格好へと着替える。
ついでにヴァイアもそのベッドに寝転がりながら、金色・青・オレンジに塗り分けられた三つの四角いガジェットにハートバッテリーを押してから並列にセットをしていく。
【並列!BAER!】
【並列!SHARK!】
【並列!SMILODON!】
短い電子音声と共にエネルギーをチャージされた四角いガジェット…『ロボックス』はクマ、サメ、スミロドンを模した小さなロボットへと姿を変えてあちこちを動き回る。
「おおっ!何だこりゃっ!?」
「ふっふーん、驚いたかな!!これは僕が作り出したスーパーがジェット、ロボックスさっ。ハートバッテリーを注入することで僕たちに忠実な自動操縦ロボになるんだ」
自慢げに語るヴァイアだったが、その発言を理解出来たのかロボックスたちは彼に飛び掛かると噛みついたり体当たりを仕掛けてくる。
「ちょっ!?痛い痛いっ!調子に乗ってました!すいません勘弁してください!何でもしますからっ!!」
(ん?今何でもって…)
(二度ネタは却下だボケッ!!)
ロボックスとじゃれているヴァイアを無視し、前回と同じネタを使おうとしたドライグを黙らせて、木場と共に着替えを終わらせたのであった。
ジャージへと着替え終えたイッセーと木場はそのままリアスに指定された中庭へと向かい、先にいたアーシアたちと合流する。
イッセーの力量を確かめるのも兼ねて、互いに神器を使わずに最初のレッスンが始まった。
【レッスンその1 剣術】
「はぁっ!」
「よっと!」
真っ直ぐに打ち込んできた木場の攻撃をイッセーは防ぐ。
木場の戦闘スタイルはスピードとテクニックを駆使した剣術で攻め込むがイッセーは木刀を左手に持ってそれを防ぎ、右手に持ち変えて攻撃を仕掛ける。
木場の剣戟を「正統派」と称するなら、イッセーの剣戟は「我流もしくは邪道」と蔑まれるべきものだ。
しかし、木刀を打ち合って行くにつれて変化が起き始める。
「くっ!(攻めきれない…!)」
攻撃を仕掛けているはずの木場に焦りの色が見え始めたのだ。
攻撃のスピードを徐々に上げて行くが、それでもイッセーは木刀を左右に持ち変えて攻撃を防いでおり疲労の色が見えない。
やがて、イッセーの姿が消えた。
「なっ…!?」
「隙だらけだぜっ!」
間合いを詰めてしゃがんでいたイッセーが逆手に持った木刀で、木刀を持っていた木場の右手へ打ち付けた。
木刀は弾かれて宙を舞い、地面へ落ちたと同時にイッセーは彼の眼前に木刀を突きつける。
「…参りました」
宣言と共に、荒い呼吸を繰り返しながら地面へとへたり込む。
決着が着いたのを確認したヴァイアは二人にスポーツドリンクとタオルを投げ渡す。
「少しショックだな、スピードと剣には自信があったけど」
「運が良かっただけだ。それに打ち込んでいて分かったけど木場の剣裁きは教科書通りだから俺でも防げる」
「それでも防ぎ切るのはすごいと思うけど…ところでイッセー君は木刀を右手左手と持ち変えていたけど、何か意味はあるのかい?」
「いやっ、ただ左右に間合いとバランスを調整してるだけ…剣を持つ時は二つじゃないと調子が出ないんだ」
苦笑いする木場にイッセーは軽く笑って返す。
そこから、軽く打ち合った結果…木場はフェイントと相手の気配を掴む、イッセーは一刀流になった時の対処法などが今後の課題となった。
【レッスンその2 魔力操作】
木場とのレッスンが終わった後は、朱乃と共に別荘のリビングへと移動し、アーシアと次のレッスンが始まる。
「魔力と言うのは身体から溢れるオーラを流れるように集めるのです。意識を集中させて、魔力の波導を高めるのです」
彼女はいつもの調子で微笑みながら、解説を始める。
それをイッセーとアーシアは言われた通りに、意識を高める。
最初に出来たのはアーシアであり歓喜の表情と共に手元には緑の魔力を集中させた小さな球体を出している。
一方のイッセーは何とかイメージを重ねて意識を鋭くさせるが、球体すら出てこない。
「あらあら?実践の時は出来ているのにおかしいですわね」
「いつもは、神器を介してやっていたので」
普段からイッセーは赤龍帝の籠手から魔力弾を発射しているので自分の力だけで使用するのは不得手なのである。
何とか魔力を出そうと何度も意識を集中させるが結果は同じでしばらくすると、思い切り息を吐いて彼は呼吸を繰り返す。
「はぁっ、はぁっ!やっぱりきつい…ちょっと気分転換して良いですか?」
「構いませんわ」
朱乃からの許可をもらったイッセーは窓を開けて穏やかな風を感じる。
そして、窓に足を掛けてそのままもう片方の脚を掛けた。
「「えっ?」」
アーシアと朱乃は目を見開いて驚く。
次の瞬間、イッセーは階段を上るように空中を歩いて行ったのだ。
魔力を固めて空中を足場にする……政宗家が扱っている精霊術の基礎である。
「……あれ?どうしました朱乃さん」
「イッセー君は…普段通りに魔力を扱った方が良いかもしれませんわね」
空高く下りてきて唖然としている二人に小首を傾げるイッセーに対して、朱乃は困ったように微笑んだ。
【レッスンその3 格闘技】
そして、再び野外へと向かって小猫との特訓を始める。
先手を切った小猫が放った鋭いストレートをイッセーは躱し、彼の背後にあった大木へと命中する。
すると、大木は嫌な音をたてながらゆっくりと地面へ倒れる。
小さな体躯からは想像出来ないほどのパワーに冷や汗を流すイッセーだが、気にせず彼女は拳を放つ。
「当たって、ください…」
「無茶言わないでっ!?」
小猫の攻撃は的確に中心を捉えており、抉り込むようにこちらを狙って来る。
イッセーもその攻撃を僅かな動作で躱し、掌底を使って拳を受け流していく。
そして、小猫の放ったストレートを片手で受け止めた。
「…とぉっ!!~~~痛ってぇ…!!」
「……」
攻撃こそ受け止めたが、衝撃を殺し切れなかったイッセーは痺れた手を振るが、完全に防がれた小猫は呆然と見るだけだ。
「…良く止められましたね」
「えぇっ?…まぁ、小猫ちゃんの攻撃は魔力を込めてないから」
「魔力を、込める…」
「そっ。力を一点に集中させれば、『戦車』の特性と相まって凄まじいパワーになると思うよ」
その言葉に、再び闘志を宿した小猫はイッセーから距離を取って構える。
「絶対に、当てて見せます…!」
「よし、来いっ!!」
それから、しばらくイッセーは彼女との組み手を行い…最終的にはイッセーに魔力の籠った一撃を掠めることが出来るようになっていた。
『食事をしながらで構わないから聞いてくれ。総合的な評価だが、相棒の方が強い』
夕方、別荘で食事をしていたグレモリー眷属にドライグが批評を口にした。
食事をしていたヴァイアを除くメンバーはイッセー…正確にはそこに宿っているドライグに視線を集める。
『剣術、格闘技、魔力の操作……各々の分野に限ればお前たちの方が一歩勝っているし才能もある。だが、総合的に見れば相棒の方が抜き出ている』
「確かに……それにイボンコは再生能力の持ち主だ。再生が追いつかないほどの攻撃を当てることが出来るのもイッセーしか出来ないだろうね」
ドライグの言葉に賛成するように、ヴァイアはアーシアにカレーのお代わりを要求する。
彼の言う通り、ライザーは不死再生の能力を宿しており彼を完全に倒すにはその精神をへし折るか強烈な攻撃を叩き込むしかない。
もちろん、イッセーにもいくつかの欠点が見つかっている…剣術では二刀流でしか真価を発揮出来ず、格闘技に至っては我流のため荒削りだ。
しかしそれを差し引いてでもイッセーのポテンシャルは計り知れないのだ。
『しかし、修行は始まったばかりだ。今後の訓練次第ではお前たちも相棒と肩を並べられるぐらいにはなる』
「そうね…それじゃ、食事も済んだしお風呂に入りましょうか」
(何っ、お風呂だと!?相棒っ、すぐにポイントBに向かえっ!四十秒で支度しなっ!)
(カッコ良いこと言ったのに台無しだよ、畜生っ!!)
ドライグの言葉に頷いたリアスは話題を変えるように全員に話しかける。
「お風呂」という彼女の言葉に、イッセーの中でテンションを上げる残念なドライグに対して鋭いツッコミを入れるのであった。
また、あの声が聞こえる。
――――『熱い、誰か…助けて』――――
――――『痛い、痛いよぉ…!』――――
聞こえる、子どもや大人…大勢の人間たちの懇願する声と悲痛な悲鳴が聞こえてくる。
助けを求める声に、自分は近づいて無謀にも手を伸ばそうとするが……それよりも先にその人たちは溶けるようにその場から消えて行く。
泣いている人がいるのに、自分には誰かを助けるための力があるのに、誰一人救うことが出来ない。
才能がないから、自分があんなにもバカで無謀だったから、大勢の人が助けられなかったのだ。
だから、目の前で苦しんでいた『彼女たち』も救うことが出来なかった。
助けなきゃ…助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ…!!
自分はどうなったって良い、自分なんかどうなっても構わない。
見捨てちゃ駄目だ、今度こそ今度こそ今度こそ今度こそ今度こそ!!
自分の全てを犠牲にしてでもマモラナキャ……。
「…はぁっ!はぁ…はぁ……」
目を見開いたイッセーの視界に映ったのは天井。
照明が消されているその部屋で、彼は酷い寝汗と共に悪夢から解放された。
『相棒……』
心配そうに自分に呼びかけるドライグに対して、イッセーは「大丈夫」と短く応える。
乾いた喉を潤すために、キッチンへ向かって水を飲んだが今さら部屋で寝る気にはならない……少し風に当たろうと彼は外へ散歩をしようと扉を開けると、偶然リアスと遭遇する。
「部長、どうしたんです?こんな夜中に」
「丁度良いわ。少し、お話しましょうか」
そう微笑んだ彼女と共にイッセーはテラスの方へと向かう。
当然だが今の彼女はジャージや制服ではなく、寝巻らしき薄いピンク色のネグリジェを着用しており眼鏡(恐らく伊達)をかけている。
いつもと違う彼女に少しだけドキドキしながらも、テラスに到着したリアスは両手で抱えていたいくつもの本を置く。
「それって…作戦、ですか?」
「えぇ。こんなマニュアルでは、正直気休めにしかならないけど」
「そんなことないですよ。こんな遅くまで頑張っているのに、俺は…」
自嘲するように笑う彼女に、イッセーはどうにかフォローしようとするが途中からの自分への蔑みになってしまっためそこで言葉を区切る。
悲しそうな目をした彼にリアスは思う、彼は誰にも話したくない何かを隠していると…。
正直、イッセーに何があったのか知りたかったが眷属の言いたくないことを聞く気にはなれない。
そう思った彼女は話題を変えてフェニックスについて問い掛ける。
「あなたも、フェニックスは知っているでしょ?」
その言葉にイッセーも頷く。
フェニックス…漫画やゲームでも聞く高い知名度を持った聖獣、フェニックス家は悪魔でありながらその不死鳥と同じ名と能力を持っている、72柱にも数えられた公爵家こそがフェニックス家なのだ。
「ライザーの戦績は八勝二敗。ただし、この二敗は懇意にしている家系への配慮……フェニックス家は、レーティングゲームが行われるようになって急激に台頭してきた成り上がりみたいなものよ」
「……すいません。俺みたいな下級悪魔があの時、余計なことを言わなきゃ…」
「良いのよ。あの時、私のために怒ってくれたんでしょ?嬉しかったわ」
その話を聞いたイッセーは頭を下げて謝罪の言葉を口にするが、リアスは「気にしないで」と笑う。
彼女としても、元々断るつもりだったし何より自分のために行動してくれた彼を見て嬉しいと感じたのだ。
「最初から負けるつもりで、お父様たちはこのゲームを仕込んだのよ。チェスで言うところの嵌め手…スウィンドルね」
「…あの。どうして部長は、今回の縁談を拒否しているんですか?」
表情を曇らせたリアスにイッセーは尋ねる。
確かに、ライザーには言動に対して問題はあるがフェニックス家の三男…その家と縁談を結ぶことにメリットがあることは彼女でも分かっているはずだ。
しかし、それでも勝負を諦めようとしない彼女にそれ以上の理由があると感じたからこそ彼は改めて尋ねたのだ。
真っ直ぐに自分を見つめるイッセーを見たリアスは、眼鏡をゆっくりと外して語り始める。
「……私は、グレモリー家の娘よ。何処まで行っても個人の『リアス』ではなく、あくまでも『リアス・グレモリー』…常に、グレモリーの名前が付き纏ってしまうの」
ゆっくりと立ち上がって、暗い夜を優しく照らす満月を見ながらリアスは本音を吐露する。
『グレモリー』と言う名に、誇りを持っている……しかし自分と添い遂げる相手ぐらいは、グレモリー家の娘としてではなく、リアスとして愛してくれる人と一緒になりたい。
「小さな夢だけど」と優しく笑って語り終えた彼女に、イッセーは自然と口を開いていた。
「俺、部長のこと好きです」
「えっ」
「グレモリー家のこととか、悪魔の社会とか、さっぱり分かりませんけど…」
「それでも」とイッセーは顔を上げて言葉を続けた。
「今ここに、目の前にいるリアス先輩が…俺にとって一番ですから…!」
「…っ///」
真っ直ぐに、嘘偽りのない本心で言い放った彼の言葉に、リアスは僅かに顔を染めた。
初めてだったからだ、そんな風に言われたのも…正面から『リアス』を見てくれたことも、家族以外からそのように想われたのも……何もかも初めてだったのだ。
彼女の様子に気づいたのだろう、「気障なセリフを言ってしまった」と反省したイッセーは慌てて謝る。
「す、すいません…!俺、変なこと言ってしまいました」
「いいえ。ありがとう、イッセー……私の『滅びの力』は、天からではなくグレモリー家が代々培ってきた物の結晶。グレモリー家と私の物、だから負けない…戦う以上は勝つの。勝つしかないの…!!」
はっきりと宣言した彼女に、イッセーは拳を強く握る。
そして、顔を上げた彼もまたリアスに対して約束する。
「…部長はすごいです。正直、ドライグに言われても俺は自分に自身なんて持てない……何にも出来ない役立たずだって今でも思ってます。でも、何があってもあなたを見捨てないって…約束しますっ!」
「ありがとう。そのためにも、心と体を休めましょ?」
真っ直ぐ純粋な瞳を向けて、自分に向かって力強く宣言したイッセーにリアスは再度感謝の言葉と口にすると、笑みを見せる。
「お休みなさい、イッセー」
「お休みなさい、部長」
そう告げた彼女は、彼に背を向けて別荘へと戻って行く。
彼女が笑ってくれたことに安堵したイッセーはドライグに声を掛ける。
「…ドライグ。『あれ』の調子はどうだ?」
『……かなり苦しいな。
ドライグの苦言に、彼も考え込んでしまう。
『
しかし今のイッセーでは諸刃の剣であり、解除後は赤龍帝の籠手も機能しなくなるという弱点も抱えている。
だが、それでも…。
「やるしかない。例え一瞬でも、あいつを倒すことが出来るなら……!」
自身の拳を見ながら、イッセーは覚悟を決めた。
『シャー……』
その様子を…ロボックスの一体である『シャークックス』が見つめていた。
今回はヴァイアが製作したガジェットことロボックスが登場しました。普段はただの四角いボックスですが窪みに対応するハートバッテリーを並列にセットすることで動物の姿へと変形します。
さて、次回からすぐにレーティングゲームが始まります。どのような結末となるかはお楽しみに。ケンタウロスも登場するよ!
ではでは。ノシ
ケンタウロス『さぁっ、オレのオペを…愛を受け取りたまえっ!!』