仮面ライダーDRAGOON 赤龍帝で仮面ライダー 作:名もなきA・弐
ちなみに、今回はネタ要素が多すぎたなと思います。それでは、どうぞ。
HEART8 現れたGrilled chicken
「はぁ……」
その日、教室の自分の席でイッセーは深いため息を吐いた。
別に今朝の食事に嫌いな物が入っていたわけでも、朝から愛奈に説教を受けたわけでもブレイブニルが母に懐いて寂しいわけでもない。
昨夜、リアスと自分がウェディング姿とタキシード姿で結婚式をする夢を見たのだ。
おまけにその時の彼女の衣装は胸元を大きく開けたデザインのウェディングドレスを着用しており、非常に扇情的だった。
そんな自分の欲望が入り混じった夢は心臓に悪く、おかげで今日は寝坊をしてしまったのだ。
「…おいっ、イッセー!聞いてるのかっ!?」
「そうだっ!お前…アーシアちゃんに起こしてもらっているのかっ!!」
「…何だそんなことか。当然だろ、アーシアは『俺の家』にホームステイしているのだからなっ!!」
そんな彼を現実へと引き戻したのは松田と元浜だ、彼らのやかましい言葉にイッセーはわざとらしく強調して自慢げに語る。
やはりと言うべきか、ここ最近はオカルト研究部の仲間たちと行動を共にしていたので友人二人のやり取りがとても楽しい。
そんな彼の態度に後ろの席に座っているアーシアは楽しそうに笑うが、衝撃を受けている男子二人は詰め寄る。
「じ、じゃあ…ご飯をよそってもらったりとか…!!」
「『アーシアちゃんはとても気が利くわね』…て、愛奈姉さんも褒めてくれたし母さんも家族が増えて喜んでたぞー」
「そ、そんな…照れますよ///」
元浜の問いに自慢げに答えたイッセーの言葉にアーシアは上気した頬を隠すように照れた表情を見せる。
最初こそ、稲妻に打たれたかのように愕然としていた二人だったがやがて涙を流しながら更に詰め寄る。
「な、なぁ親友?物は試しなんだが…少女や乙女の一人くらい紹介しても、罰は当たらないと思うんだが……てか、誰か紹介してくださいっ!!何でもするからっ!」
(ん?今何でもするって……)
(何で、そのネタに持っていくんですかねぇ!?)
元浜のある言葉に、反応したドライグにツッコミを入れながらもイッセーは考える。
オカルト研究部のメンバーは全員悪魔だし、残念ながら真っ当な普通の女子は自分の周囲にはいないのでどうするかと考えるがある人物が思い当たる。
「ちょっと待ってろ」
スマートフォンをポケットから取り出し、電話帳から『ある人物』の名前を見つけたイッセーは電話を掛ける。
「もしもし、辰巳です…はい、実は…」
大体の事情を説明しながら、電話の主からの内容を頭に入れる。
「……はい、ありがとうございました。じゃ、失礼します」
「でっ!?どうだった、イッセー!!」
「大丈夫だってさ。それに、今日にでも会いたいって…向こうも友達を連れて来るってさ」
鼻息を荒くして訪ねてきた松田にイッセーは電話の主からのメッセージを答えると、二人は嬉しそうにハイタッチをする。
純粋に嬉しそうな反応を見せる彼らに、少しばかりの罪悪感が芽生える。
「ち、ちなみに…どんな子なんだっ!?」
「まっ、まぁ…『乙女』だな」
それを聞いて再び狂喜乱舞する二人から目を逸らしながら、イッセーは先ほど通話していた人物……ミルたんを思い浮かべるのであった。
そして、時間は過ぎて放課後…イッセーとアーシアはオカルト研究部の部室へと向かうべく旧校舎の廊下を歩いていた。
「ジャス・ティス、ラララ~ラフフフフフ~ン♪」
(タラララ~ラ、ラララ~ラチャーラララ~ン♪)
「ジャス・ティス、フフフーフ、フフフフフ~ン♪」
(チャラララララ~ラ、ラララ、ラ~ラ~ラ♪)
「『リ・スタート~♪』」
「あの、イッセーさん。その歌は…?」
「最近のお気に入り」とアーシアに自分(+ドライグ)が口ずさんでいた鼻歌について答えると、二人は部室のドアを開く。
「チーッス」
「こんにちは」
「やぁ、イッセー君。アーシアさん」
挨拶をして入ってきたイッセーとアーシアに木場がいつもの柔和な微笑みで返す。
カバンを置いてソファに腰を掛けるが、ふと気になった疑問を彼にぶつける。
「木場、ヴァイアは?」
「何か…『僕は正気に戻った』とか良く分からないこと言って外出したよ」
苦笑いする彼にイッセーも笑うしかない。
そんな彼と軽く会話しながらも、外の景色を見て黄昏ているリアスの姿が目に入る。
いつもと違う彼女の様子にイッセーは木場に質問する。
「なぁ、部長の様子が変だけど……何かあったのか?」
「うん。僕も聞いたんだけど…『大丈夫』って言われたきり何も」
心配そうな表情を見せる木場に、イッセーも物憂げな表情を見せるリアスを見つめるのであった。
結局、リアスに何も聞くことが出来ず、その日は解散となった。
自宅へと帰り、入浴を終えたイッセーはご近所に迷惑を掛けない程度に放課後で口ずさんでいた歌を熱唱していた。
こういったもやもやしている時は漫画やゲームではなく、歌を歌って発散するに限ると思った彼はコーラスをドライグに任せて歌っている。
ヘッドホンを耳に当てて次の曲へと熱唱しようとした途端……。
「えっ?」
部屋に見慣れた赤い魔法陣が浮かび上がり、赤い光で部屋が満ちた途端、そこから学生服を着たままのリアスが現れる。
連絡なしに現れた彼女に、慌ててヘッドホンを外したイッセーは尋ねる。
「部長っ!?えっと、どうしたんですか?」
「……イッセー」
「ち、ちょっと…!?」
驚く彼を気にせず、堅い表情のままリアスは彼に近づいていく。
突然現れて突然自分に近づく彼女に動揺することしか出来ないイッセーはなす術もないまま、彼女に押し倒されてしまう。
「今すぐ、私を抱きなさい」
馬乗りになったそう言ったリアスに、呆然としてしまうが言葉の意味を理解した彼は慌てて制止する。
「ち、ちょちょちょっ!待ってくださいっ、部長っ!?」
「お願い……あなたはこういうことに興味があるでしょう…」
何処か目を潤ませながら言ったリアスにイッセーは動揺することしか出来ない。
確かに、興味がないと言えば嘘になる…しかし、自分みたいな駄目野郎に彼女は迫ってくる。
嬉しい気持ちもある反面、そんなことをして良いのかと自問自答する。
そんなことが許されるのだろうか、自分みたいな弱い奴が、こんな悲しい表情を見せている彼女を見捨てるなんて…。
出来ない…!
「やめてください、部長」
馬乗りになったままブラウスを外そうとした彼女は動きを止める。
驚愕の表情を見せる彼女にイッセーは言葉を続ける。
「どうして、どうしてなの、イッセー……?」
「理由は分かりませんけど、そんな勢いだけでこんなことしちゃいけない。部長だって、本当は分かっているんじゃないですか」
「……」
彼の言葉に、リアスは目を見開くがイッセーの真っ直ぐな瞳から目を逸らしてしまう。
やがて彼女は、か細く声を震わす。
「でも、でも…!」
「部長、役不足かもしれないけど『
その言葉に、リアスは目を見開いた。
しばらくは沈黙していたが、やがて口を開いた。
「ごめんなさい、イッセー。私…どうかしていたわ」
「良いんです。それに、迎えも来たようですよ」
イッセーがそう言葉にした途端、グレモリー眷属が使用している魔法陣とは違う銀色の魔法陣が出現するとそこからメイド服を着た女性が現れる。
「こんなことをして、破談に持ち込もうとしていたのですか?旦那様やサーゼクス様が悲しみますよ」
銀髪が特徴の、メイド服越しでも分かる豊満なスタイルを持った女性はリアスに話しかける。
その美貌にイッセーは見惚れそうになるが、彼女から発せられる魔力からただの悪魔ではないと推測する。
「そうね。でも、もう大丈夫よ……ごめんなさい、『グレイフィア』」
「あなたはグレモリー家の次期当主なのですから。それと、自分の眷属とは言え殿方に肌を露わにするのはご自重ください」
「グレイフィア」と呼ばれた女性は、立ち上がったリアスの元まで近寄りブラウスのボタンを締め直す。
そして、イッセーの方に向き直りお辞儀をする。
「始めまして。私はグレモリー家に仕える、グレイフィアと申します。以後お見知りおきを」
「は、はい」
頭を下げたグレイフィアにイッセーも慌てて頭を下げる。
その反応に、リアスは自分でも分からず少しだけ不機嫌になりながらも彼に話しかける。
「ありがとう、イッセー。話は明日必ず……続きは根城で聞くわ、朱乃も同伴で良いわよね?」
「『雷の巫女』ですか。構いません、上級悪魔たるもの片割れに『女王』を置くのは常ですので」
そう会話を終えたリアスは、もう一度イッセーの方に向き直り彼の頬にキスをした。
「ぶ、部長っ!?い、今のって…!///」
「ふふ、今夜はこれで許して頂戴…」
そう笑ってリアスはグレイフィアと共に魔法陣へ入るとそのまま姿を消す。
イッセーはただただ、夕飯を呼びに来たアーシアが来るまで呆然としているのであった。
そして、翌日の登校に松田と元浜からミルたんとそのお友達についてクレームを受けながらも、それを適当にいなしながら放課後の旧校舎。
「ちわーす」
アーシアと、途中で遭遇した木場と共に部室に入るとそこにはリアスと朱乃…そして昨夜のメイドであるグレイフィアがいた。
(一目見た時から思っていたが、相棒。東方のあのキャラに似てないか?)
(いきなりどうしたお前は?あれだろ、あのナイフを使う)
(そうそう、PADちょ…)
(それ以上はいけない。その渾名が嫌いな人もいるから)
突然話し出したドライグに、返事を返すが続けて口にした禁句にメタ的なツッコミをするイッセー。
そして、リアスは座っていた席からゆっくりと立ち上がる。
「全員揃ったわね。部活を始める前に話があるの」
「お嬢様、私がお話しましょうか?」
グレイフィアからの申し出に、手を出して断ると一歩前に出る。
「実はね…」
それを遮るように、部室の床に赤…燃え上がるようなオレンジ色の魔法陣が出現する。
グレモリーの魔法陣とは違うそれから熱い炎が広がり熱気が包む中、炎の中心に男の姿が見える。
「……『フェニックス』」
俺の傍で木場が…多くの人が知っているであろう不死鳥の名を呟く。
魔法陣からは炎が未だ巻き起こっており、やがてそれが消えゆくと中心にいた男が振り返った。
「ふぅ、人間界は久々だ……会いに来たぜ、愛しのリアス」
(……誰だ?)
その男は赤いスーツを着崩し、胸までシャツを開けたノーネクタイといった格好をしており、イッセーとドライグの第一印象はホスト、もしくはチャラ男といったところだ。
木場の呟いた言葉と男の言動から、彼の正体とリアスの知り合いであることを察することは出来るが結局のところ話が見えない。
警戒をしているイッセーに気づいたのだろう、グレイフィアは彼を紹介する。
「この方は『ライザー・フェニックス』様…フェニックス家のご三男でありグレモリー家次期当主の婿殿。すなわち、リアスお嬢様の御婚約者にあらせられます」
「…へっ?こ、婚約ぅっ!?」
流石のイッセーも声を出して驚くしかなかった。
「いやぁ……リアスの『女王』が淹れてくれたお茶は、美味しいものだな」
「痛み入りますわ……」
ソファに座りながらそう褒めたライザーに対して朱乃は笑みを保っているが、何処か格式ばっているような…表面上での笑顔であることは誰にでも分かった。
一方、彼の隣に座っているリアスは不機嫌な表情で腕を組んでおり、時折彼女の綺麗な紅髪を触ったりしている。
(随分と品がないな。自分が名家の人物ってだけで、特別だと思い込んでいるボンボンの典型だ)
ドライグがそんなことを呟いていると、ライザーがリアスの太ももに手を伸ばそうとしたがそれを拒否するように立ち上がりその場から離れる。
「いい加減にして頂戴、ライザー。以前にも言ったはずよ、私はあなたと結婚なんてしないわ」
「だがリアス……君のお家事情はそんな我が儘が通用しないほど、切羽詰まってると思うんだが?」
彼女の言葉に、ライザーは呆れたように返すがリアスは一歩も引かない。
「家を潰すつもりはないわ。婿養子だって迎え入れるつもりよ…でも私は、私が良いと思った者と結婚するわ」
「先の戦争で激減した純潔悪魔の血を絶やさないというのは…悪魔全体の問題でもある。君のお父様もサーゼクス様も、未来を考えてこの縁談を決めたんだ」
「……父も兄も一族の者も、みんな急ぎ過ぎるのよ…!もう二度と言わないわ、ライザー……あなたとは結婚しない!!」
強く宣言したリアスに、ライザーの表情は先ほどとは変わらなかったがその瞳には灼熱の炎が渦巻いている。
それに対抗するように彼女も紅い魔力を全身から放出を始めた時だった。
「お納めください、リアスお嬢様。ライザー様……私はサーゼクス様の名でこの場におります故、一切の遠慮は致しません」
「…最強の『女王』と称されるあなたにそんなことを言われたら、流石に俺も怖いな」
少しばかり声を低くして警告したグレイフィアに肩をすくめたライザーだったがその顔には冷や汗が見える。
それほどまでに、彼女の強さは圧倒的なのだろう。
彼女は言葉を続ける。
「旦那様方もこうなることは予想されておりました。よって決裂した場合の最終手段として『レーティングゲーム』で決着をつけるようにと」
「レーティングゲーム?」
「爵位持ちの悪魔が行う、自らの眷属を戦わせて競うチェスに似たゲームだよ」
木場の説明を受けたイッセーは「だから悪魔の駒か」と一人納得していると、ライザーは得意気な笑みを浮かべてリアスに声を掛ける。
「俺はゲームを何度も経験してるし、勝ち星も多い。君は経験どころか、まだ公式なゲームの資格すらないんだぜ?」
「……本来、レーティングゲームが出来るのは成熟した悪魔だけです」
「こっちはビギナーか……もしかしなくても人数にも差があったり?」
「…先輩の言う通りです」
ライザーの言葉に対して、朱乃は細かな説明をイッセーにする。
それを聞いたイッセーは苦虫を噛み潰したように呟くと、小猫がその言葉を肯定する。
そして、ライザーが指を鳴らした。
瞬間、最初に彼が訪れた時と同じように炎のような魔法陣が出現し、そこから十五人の少女たちが現れる。
「こちらは十五名…つまり駒はフルに揃っている。リアス、見たところ君の眷属はこの部室にいる全員だろう?」
ライザーは自慢げに自らの眷属を語る。
そこには男の姿はなく、全員が美少女や美女と呼べるような女性だけで構成されていた。
(おいおい、あいつ昔の相棒が夢見ていたハーレムを構成しているぞ?さぁ、相棒。今の心境を一言どうぞ)
「くたばれ、焼き鳥野郎っ!!」
『っ!?』
ドライグに載せられる形で、イッセーは思わず声高々にライザーに対する罵倒を口にしてしまった。
思ったほど、沸点が低いのかはたまたプライドが高いのか彼は先ほど罵倒した下級悪魔に詰め寄らんばかりの勢いで睨みつける。
「き、貴様っ!フェニックス家の三男であるこの俺を愚弄するのかっ!?」
「うるせぇよっ!!これ見よがしに美少女たちをはべらかしやがって!罵倒の一つや二つも言いたくなるだろうが、この焼き鳥野郎!」
「そうだそうだっ!!」
破れかぶれと言わんばかりにイッセーは今まで溜まっていた鬱憤をライザーに向かって全て吐き出す。
それに対して便乗してきたのは扉を蹴破らんばかりに入ってきたヴァイアだ…秋葉原にでも行ってきたのだろうか彼の服装は青いハッピであまり光らなくなっているサイリウムを右手に持ち、左手にはPS4でも買ったのか大きめの紙袋を携えている。
「誰だ、貴様はっ!?」
「うっさいっ!!何がフェニックスだっ!僕はてっきりクールな一匹狼で幻魔拳を使うのかと思ったのに…!僕の夢を返せっ!」
「何処の聖○士ッ!?誰だか知らんがフェニックスにどんな夢を持っているんだっ!!」
「フェニックスと聞いたら夢ぐらい持つだろぉっ!?このボボボーボ・ライザー・イボンコッ!!」
突如現れて滅茶苦茶かつ理不尽な怒りを一方的に吐き出す不審者にライザーはツッコミを入れるが、最後に放ったヴァイアの一言が突き刺さった。
「きっ、貴様ぁ……!!焼き鳥ならまだしも、漬物に対して拒否したり好きな女にバナナをプレゼントするような不名誉な名前をぉ…!!」
(意外とノリ良いなこいつ)
どうやら会心の一発だったらしい…ライザーは怒りを通り越して絶句しており身体を怒りやら何やらで震わせている。
ちなみに、ヴァイアの発言は思ったよりもツボだったのかリアスや木場、小猫は噴き出してしまい、グレイフィアや朱乃だけでなくライザーの眷属たちも顔を背け、笑いを堪えている始末。
イッセーも笑いを堪えていたが一々反応する彼に対して評価を変えていた。
「ぷっ…コホン。イボ…ライザー様、どうか落ち着いてください」
「おい、『ユーベルーナ』。今イボンコと言いかけなかったか、イボンコと言いかけたな?」
「そんなことは決して…ぶふっ」
「なぜ噴出すっ!?後、残りの連中も笑うな!!泣くぞっ?俺はそろそろ泣くぞっ!?」
「ユーベルーナ」と呼ばれた白いローブを羽織った紫色のロングヘアーの女性はライザーを抑えようとするが、イボンコの破壊力に吹き出してしまう始末。
先ほどまでの威圧感は消し飛んでしまっており笑っている眷属たちに彼はすっかり涙目だ。
そして、しばらくしてから数分後……調子を取り戻したライザーはユーベルーナと熱いキスを交わし、一方的に告げる。
「…とにかくだ。リアスの眷属諸君、縁談が成立した暁には俺は彼女を愛するつもりだ。無論、俺のハーレム要因としてな」
「……部長を、女を道具か何かのように扱うつもりか…?」
「日本のことわざであるだろ?『英雄色を好む』とな」
「鏡を見てから辞書を引き直してこい、イボンコ野郎」
一応婚約者であるリアスの前でありながら、自身の眷属に熱い抱擁をしながら言い放った彼の言動に、イッセーは視線を鋭くしながら問いかける。
そんな視線を気にせず傲慢な態度で反論するが、直後に言われた一言によって表情が憤怒へと変わった。
「…っ!『ミラ』ッ!!」
「っ!!」
ライザーの指示に「ミラ」と呼ばれた和服の小柄な少女は自身の持っている棍棒を構えながら、イッセーに襲い掛かる。
彼女の放った攻撃は確かに速く、不意を突かれたら流石のイッセーも部室の床に沈んだであろう。
しかし、彼は頭に血こそ上っていたが我を失っていたわけではなかった。
「よっと!」
「なっ!?」
神器を使わず、イッセーは棍棒を捌く。
驚いたミラはすかさず武器を振るうが彼はそれを全て躱し、受け流す。
やがて自分の攻撃が当たらないことに業を煮やした彼女は最大の一撃を繰り出した時だった。
「……!」
「っ!?なっ……!!///」
単調で大ぶりとなったその一撃を待っていたイッセーはそれを受け流し、彼女へ一気に肉薄する。
そして、少しだけ笑った彼にミラは動揺してしまう…それが命とりとなった。
「はい、終わり」
「ぁいだっ!?」
魔力で少しだけ強化したデコピンを彼女の額にすると、ミラは可愛らしい悲鳴と共にその場にひっくり返る。
一部の戦闘を見ていたライザーと、その眷属たちに動揺が走る。
『兵士』であり神器を持たないミラは確かに自分たちの中では弱いが、レーティングゲームに数多く出ているため、実戦経験がある……そんな彼女を目の前の少年はデコピン一発でKOさせたのだ。
額を擦りながら立ち上がったミラだが足元が覚束ない。
やがて、しばらく静観していたグレイフィアが口を開いた。
「……どうなさいますか、お嬢様」
「分かったわ。ライザー…レーティングゲームで決着をつけましょう」
真っ直ぐと彼を見て宣言したリアスの言葉に、ライザーは自身の眷属の心配をしながらも魔法陣と共にその場を後にする。
それを見届けたグレイフィアは彼女に声を掛ける。
「期日は十日後とします。リアス様とライザー様の経験、戦力を鑑みてのハンデです」
「…悔しいけど、認めざるを得ないわね。そのための修業期間としてありがたく受け取らせていただくわ」
その言葉と共に、全員の表情が変わった。
こうして、ライザー・フェニックスとのレーティングゲームに向けて…グレモリー眷属の修業が開始された。
「なるほど、『彼』が現れましたか…そうなるとリヴァイアサンにハートバッテリーを渡した可能性が高いですね」
「だが、あれ以上の騒ぎを起こすわけにもいかん。異形共が俺たちのことを調べるだけではらわたが煮えくり返る…!!」
誰も使われておらず、廃屋となっているため一先ずのアジトとして利用している……郊外にある大きな洋館の一室でハルピュイアとキョンシーは今後についての話をしていた。
その時、呪法を施してある黒い電話機が鳴り響くとハルピュイアは受話器を取る。
「はい……えぇ、そうですか。分かりました、あなたの好きにしなさい『ピーコック』」
「どうした?」
「『ケンタウロス』が感染させて誕生したネオストラからの報告です。レーティングゲームに参加すると」
「下らないな。異形の娯楽に興じるなど愚の骨頂だ」
嫌悪感を露わにしながら、吐き捨てるように言ったキョンシーをハルピュイアが窘めようとした時だ。
「はっはははははははは!あっははははははははは!!そうか、動くのか!ピーコックがオペのために動くのかっ!!ならばオレも行かなくてはならない!それがドクターだ、そうだドクターの使命だともっ!」
高々と笑いながら室内へと勢いよく入ってきた大柄な医者の男……ケンタウロスに対して、ハルピュイアはため息を吐いた。
「あなたも行くつもりですか?」
「当然のことである、なぜならそこに患者がいるからだっ!患者がいるということはオペが必要だということ!オペが必要だということはドクターが存在していなければならないからだっ!!ふははははははははっっ!!」
笑顔を浮かべながら語る彼に対して、キョンシーはしばらく無視をしていたがやがてハルピュイアが口を開いた。
「分かりました。ピーコックの邪魔とならないよう、気を付けてください」
「もちろんだともっ!!おぉっ、患者よっ!今こそ我が愛をもって、汝らを死と苦痛から解放せんっっ!!!」
彼女からの了承をもらったケンタウロスは大きく両腕を広げながら、笑顔でその場から退室する。
それを見たキョンシーは一言呟いた。
「…笑っていたな」
「笑っていましたね」
幹部となってからも、未だ憤怒や悲哀の表情を見たことがない二人は…常に笑顔を浮かべた彼に対してそう呟くことしか出来なかった。
ついに来ました、焼き鳥から不死鳥へと成長を続けるチャラ男ライザー。
そして、次回から修行パートになりますが申し訳ありません。かなり省略化する可能性が高いです。
色々と挑戦したいことがあるので頑張っていきたいです。
それと、ケンタウロスですか……書いていて面倒くさいけどかなり楽しいです。
ではでは。ノシ