仮面ライダーDRAGOON 赤龍帝で仮面ライダー 作:名もなきA・弐
ちなみにどのシーンとは言及しませんが初期にゲンムが登場する際に流れていた、てってっててってってっ♪とぅるるるるーるーるーるるるるるー♪…のBGMを脳内で再生しながら作業していました。
それでは、どうぞ。
リザードとキョンシーが去った後、イッセーたちはザトゥージが利用している小屋でネオストラたちや仮面ライダーについての説明をしていた。
最も、説明を主にしていたのはヴァイアでありイッセー(アーシアの治療を受けている)は蒼那の質問に答えるだけだったが状況を把握した彼女は考える。
「あのトカゲだけなら何とかなったけど、あのパンダ擬き…キョンシーはかなり危険だ。あいつはネオストラの中でも幹部に位置しているからね」
『では、どうするつもりだ』
「僕が囮になるよ。イッセーはそのままリザードの撃破を…残りのメンバーはそのまま待機ってことで」
「ちょっと待てよっ!お前と辰巳だけだと…ふざけんなっ、俺たちが役立たずだって言いたいのか!?」
ヴァイアの提案に、異議を唱えたのは匙だ。
彼は掴みかからんばかりの勢いで詰め寄りるが、当のヴァイアは涼しい顔でいつもの笑顔を向けている。
「そうじゃないさ、あいつらは君たちの能力を吸収出来るからね…レベルの問題じゃない、相性自体が悪いんだ。それに、現時点でネオストラを撃破出来るのはイッセーだけだから彼に頑張ってもらうしかないのさ」
「……ざけんなっ!!なら俺が、俺があいつらをぶっ倒すっ!お前らなんかに任せておけるか!」
「…匙君、あのトカゲが君に感染したからといって別に倒す必要はないんだよ?」
その言葉に、匙は絶句するがヴァイアに尋ねたのはイッセーだ。
「ヴァイア、もしかしてリザードは…!!」
「あぁ、彼に感染した。自覚がないところを見るに彼が寝ている間に活動していたんだろうね……負の感情を持たないニンゲンなんていないさ」
「俺は、俺は…!!」
ヴァイアがそう結論付けた途端、匙はその場から逃げるように小屋から出て行ってしまう。
それに気づいたイッセーは慌てて彼の後を追うように外へ出て行った。
匙は森林を走っていた。
理由はもちろん、あのネオストラを倒すためである……結論から言えば、彼は冷静ではなかった。
無理もないだろう、あの醜い怪物が自分から生まれたことを認めたくない。
それは当たり前の感情だしそう思いたくなるのも仕方がない。
故に…。
「おいおい、随分とみっともないなぁ」
「お前っ…!!」
リザードが自分と同じ姿をして対峙した瞬間、絶句する。
そして、否定する。
「人をおちょくるのも好い加減にしろよっ!俺の真似を…」
「認めろよ、俺はお前でお前は俺…俺はお前の感情で生まれたんだぜ?女が欲しいっていう負の感情でな」
「違うっ!俺は、俺はそんなこと望んでいない!!」
「自分の物にしたいんだろ?その中でも取り立て欲しいのが会長だ、美人で恩人だしなぁ」
リザードのその一言に、匙の頭は完全に真っ白になった。
激情に駆られた彼は勢いのまま殴り飛ばそうとするがリザードは怪人態へと変貌するとその攻撃を受け止める。
そのまま空いた手で匙を殴り、怯んだところで首を締め上げられる。
『じゃーな、俺。お前を始末して、そのまま会長を手に入れてや…』
【TRIPLE BOOST!】
「オラァッ!!」
リザードが得意気にそう話している最中、電子音声が聞こえたかと思うと続くようにドラグーンのドロップキックが遮った。
直撃を受けたリザードは「ぎゃふっ!」と潰れたような悲鳴をあげて吹き飛ぶ中、リアスとアーシア、そして蒼那が咳き込んでいる匙の元へ駆け寄る。
「大丈夫ですか、サジッ!?」
「…すいません。俺…」
心配そうに覗き込む彼女に彼は謝罪を口にしようとするが、蒼那は優しく彼を抱き締める。
その光景を見たリザードは憤慨する。
『ずりーぞてめぇっ!!会長、俺にもぜひ…』
「余所見すんなっ!!」
隙だらけの彼の顔面に倍加したストレートを叩き込むと、ズババスラッシャーで斬撃を浴びせる。
しかし、そこに邪魔をする者が現れる。
『やれやれ、逃げたと思ったらまた追いつめられているのか』
茂みから、怪人態となっているキョンシーが現れる。
並々ならぬ殺意を放ちながら、彼は、拳を握り締めてドラグーンとの戦いに乱入しようとする。
「おっと、君の相手は僕だよ」
そこに割って入ったのはヴァイアだ。
彼は、いつもと変わらぬ表情でキョンシーの前で仁王立ちをして現れる。
目の前の現れた裏切者を彼は睨みつける。
『久しぶりだな、「リヴァイアサン」。相変わらずの腑抜け面で何よりだ』
「その名前は好きじゃない。僕はヴァイア、それ以上でもそれ以下でもない」
お互いが睨み合う中、先手を打ったのはキョンシーだ。
彼は地面に拳を打ち付けてライオットを複数生み出す……そのままライオットたちが襲い掛かるがヴァイアはそれを躱し、呪弾で迎撃を開始する。
『そこでしばらく遊んでいろ…』
「やだねっ!」
ライオットに任せてキョンシーはドラグーンの元へ向かうが、ヴァイアはライオットの一体を投げ飛ばして彼を妨害する。
その隙に呪弾を発射して攻撃すると、作戦を変更したキョンシーは数体のライオットをドラグーンの方へ向かわせる。
一方、匙は落ち着いた頭でこれまでの今日の自分を振り返っていた。
相手の力量を勝手に測り間違えただけでなく、己の慢心と評判だけで好意的だった彼をバカにしていた。
怪人の苗床にさせられたのがダサくて、彼女に嫌われたくなくて、一人で勝手に突っ走って、結果的に彼女を心配させた。
カッコ悪い…本当に、カッコ悪い……。
これでは…。
「弟たちに、顔向け出来ないよなぁ…」
そうぼやいた彼は、会長に頭を下げると闘志を宿した瞳で敵を見据えて走り出した。
「オラァッ!!」
『っ!?』
ドラグーンに不意を突こうとしたライオットを、神器を纏った手で殴り飛ばし、彼に向かって頭を下げる。
「すまなかった、辰巳っ!!嫌な思いもさせたし、迷惑を掛けたっ!この通りだっ!!!」
勢いよく頭を下げた匙に、ドラグーンは困惑する。
何処までも真っ直ぐな……まるで、あの頃の自分を思い出すような清々しいまでに正直な彼に声を掛ける。
「良いよ。その代わりに…この雑魚を片付けるのを一緒に手伝ってくれっ!!」
「あぁっ、会長の『兵士』の力…みせてやるぜっ!」
「ミッション・スタートだっ!」
その叫んだ匙はライオットを蹴り飛ばして、宣言するとドラグーンも決め台詞と共にズババスラッシャーで切り裂く。
匙が神器で伸ばしたラインで敵の足に巻きつけて動きを封じるとドラグーンが殴り飛ばす…息の合ったコンビネーションにリアスやアーシア、蒼那は楽しそうに笑う。
「何だか、あの二人…」
「イッセーさん、楽しそうです」
「もしかしたら、似た者同士なのかもしれませんね」
三人がそんなやり取りをしている中、ドラグーンと匙はライオットの胴体を同時に殴って消滅させる。
最後の個体を破壊したのを見たリザードは怒りで身体を震わせる。
『くっ、こうなりゃ…逃げるが勝ちだっ!!』
「あっ、待ちやがれっ!!」
リザードは背を見せてそのまま逃走を開始する。
自分を守る戦闘員は全員破壊された上に、キョンシーも役に立たない…そうなると戦闘が得意ではない自分に出来ることは、逃走することだけだ。
身軽な動きで木々に飛び移って移動をすると彼の姿は見えなくなる。
後を追いかけようと両脚に倍加をかけようとした時だった。
『ヒヒイイイイイイイイインッッ!!!』
『っ!?』
突如聞こえた鳴き声とエンジン音が混ざった音に、空中を飛来する全員が見上げるとそこには赤いラインに黒い馬を模したメカニカルなロボットに乗った仮面の戦士がいた。
紫色のアンダースーツの上にはティラノサウルスをモチーフにした赤くひび割れた鎧を纏った仮面の戦士はドラグーンの前に着陸させて、ドラグーンと酷似したグリーンカラーの瞳を向ける。
その姿には若干の差異はあったが、間違いない…かつて自分を救ってくれた、ドラグーンこと辰巳一誠にとっての目標でもある存在。
「…あんたは、もしかして…!」
「……」
動揺する彼を手で制して、仮面の戦士はバイクへと変化している『マシンブレイブニル』に視線を向ける。
まるで、ドラグーンに使えと言っているようだ。
指示されるままマシンに触れると、バイクの名前と能力などの情報が流れ込んでくる。
「本当に、良いのか?」
「……」
「よし、行くぞブレイブニルッ!!」
『ヒヒイイイイイイイインッ!』
恐る恐る尋ねたドラグーンに仮面の戦士は無言で頷くと、自身の愛機となったブレイブニルは新たな主人を迎えるように鳴き声をあげて徐々にスピードが上がっていく。
そして、仮面の戦士は自身に向けられている視線を気にすることなく、ヴァイアと交戦しているキョンシーを見据える。
「……」
【ZUBAGA-N SLASHER!!】
電子音声共に、仮面の戦士の右手にはリボルバーマグナムの銃身に刀身が合体したような奇妙な形状をしており、刀身の上には銃口が見える。
『ズバガーンスラッシャー』を構えた彼は、地を蹴ってヴァイアに纏わりついたライオットを銃撃して消滅させると、ブレードでキョンシーを襲う。
キョンシーはそれを両腕で防ぎ、鍔迫り合いを始める。
『貴様…!』
「……」
彼が何かを言うよりも先に、仮面の戦士はキョンシーを弾き飛ばして至近距離での銃撃を行う。
火花と煙を上げながら仰け反ったキョンシーは彼らと距離を取って睨みつける。
『…ちっ、ここは退くか』
それだけを言うと、キョンシーは地面を叩いたことで生じた土煙に紛れて姿を消した。
いなくなったのを確認したヴァイアは立ち去ろうとする仮面の戦士に話しかける。
「ありがと、君がいなかったら僕は死んでいたよ」
「……」
彼の言葉に何も言わず、仮面の戦士はヴァイアに向かって三つの物体を投げ渡す。
それをキャッチすると、イッセーが使用しているハートバッテリーと同形状の物だったが金色だったり青だったり橙色だったりとカラーリングに差異がある。
「そうか…君は、あれから一人で……」
「ごめん」と悲痛な面持ちで告げたヴァイアに、仮面の戦士は何も言わずに立ち去って行った。
「追いついたぜっ!リザードッ!!」
『ヒヒイイイイイイインッッ!』
『くそっ!バイクなんて反則だろうがっ!!』
ブレイブニルで爆走するドラグーンはリザードと隣接する。
あまりのスピードに驚いたリザードは罵倒しながらチューブでブレイブニルのパワーを奪い取ろうとする。
『ヒヒイイイイイインッ!!』
『はっ、はああああああああああああっっ!!?』
すると、ブレイブニルは嘶き、仮面の戦士を乗せていた時のようなメカニカルな馬の形態『ホースモード』へと切り替わると驚愕しているリザードを蹴り飛ばした。
それを見たドラグーンはホルダーを下げてインジェクタースイッチを押す。
【EXPLOSION! CURSE OF LOCUST!!】
ドラグーンはブレイブニルと共に空高くジャンプし、倍加したエネルギーの奔流に包まれながらリザードへ必殺の体当たり『ブレイブストライク』を放つ。
「行けえええええええええええええええええっっ!!!」
『ぐぎゃああああああああああああああああっっ!!?』
けたたましい音と押し潰されたような悲鳴と共に、リザード・ネオストラは爆散しハート型シンボルも粉々に砕け散った。
『ヒヒイイイイイイイイイイイインッッ!!!』
主との初勝利の余韻を味わうかのように、マシンブレイブニルは誇り高く嘶くのであった。
「よーしよしよし」
『ヒヒーン♪』
その数日後、オカルト研究部の部室でイッセーは使い魔となったブレイブニルの頭を撫でていた。
現在のブレイブニルはぬいぐるみサイズにまで小さくなっており、かなりデフォルメされている。
どうやら戦闘時と非戦闘時では姿を切り替えられるらしく、リザード戦が終わった途端この姿へと変わったのだ。
あの後、仕切り直しとしてザトゥージと共に使い魔を探し匙とアーシアがゲットすることに成功した。
イッセーも、ブレイブニルと契約を交わしたため正式な使い魔へとなった。
ちなみにアーシアがゲットにしたのは『
頭に載るくらいの大きさの子竜だが成竜ともなれば見上げるほどの大きさになるらしい。
希少な魔物であり、たとえ運良く出会えても契約など普通は無理な相手であるため、これにはザトゥージも驚いていた。
それは良かったのだが、弊害も少しだけあり……。
「そうだ。アーシア、ちょっと良いか…て、ぎゃあああああああっっ!!?」
「イ、イッセーさんっ!?」
アーシアに用があって近づいてきたイッセーに対して反応したラッセーは自身能力である雷撃を放つ。
ザトゥージ曰く「ドラゴンのオスは他の生物のオスが大っ嫌い」らしく、ここ数日はこのやんちゃな子竜に木場共々翻弄されているのだ。
そこから更にややこしくなる。
『ヒヒイイイイイイイインッ!!』
『ブッ!?キュイイイイイイイイ…!!』
「やめろブレイブニルッ!」
主を攻撃して憤慨したブレイブニルがラッセーに突撃し、互いに威嚇をしてそこから雷撃と咆哮が混じった大喧嘩が始まる。
このように、イッセーが攻撃されればブレイブニルはラッセーに体当たりを行い、それに激怒したラッセーが反撃すると言った状況が続いているのだ。
しかも、喧嘩している最中のこの二匹は主の声が聞こえないほどに暴れまわる始末で部室に結界を張らなければ活動すらもままならない始末だ。
「お互い、大変だな。アーシア」
「そうですね、イッセーさん」
しばらくは使い魔の教育を行おうと、イッセーとアーシアは初めての使い魔に数日間苦戦させられるのであった。
匙…一人で暴走して一人で鎮静化する…でも、彼って良くも悪くも正直なので自分が悪いと思ったらきちんと謝る度量があると思うんですよね。
誰かに説得されるよりも、自分で反省して自分で納得する…その方が彼に似合うかなと思ったのでこのような形になりました。
突如、バイクを持って現れた仮面の戦士……プロローグで登場した人物と酷似していますが果たしてどうなのでしょう?そしてヴァイアに渡したハートバッテリーはどう使われるのか?
色々なことを詰め込んでしまいました……もうちょっと計画的にやらねば……。
キャラクターの方でキョンシー・ネオストラとヴァイア、ライダー紹介の方でマシンブレイブニルを更新しました。ではでは。ノシ
リザード・ネオストラ ICV井口祐一
匙元士郎に感染したネオストラで、黒いトカゲを模した装甲を身に纏っている。また体の各部には黄色いチューブ状の紐がある。
身軽な動きを得意とする他、チューブは相手を拘束するだけでなく、相手の動きを止めたりエネルギー弾を乱射したりと多彩だが、接近戦はかなり不得手。
我の強い個体の代表格であったため、幹部たちからは粛清候補として挙げられていた。