仮面ライダーDRAGOON 赤龍帝で仮面ライダー 作:名もなきA・弐
今回は色々と盛りだくさんです。それでは、どうぞ。
「「『使い魔』?」」
いつものように、イッセーは悪魔になったアーシアと共にチラシ配りに行こうとしたが制止され、リアスからの聞き慣れない単語に首を傾げた。
見習い中のアーシアはまだ道に詳しくないので、同じくチラシ配りをしているイッセーと共に道を覚える傍ら手伝いをしているのだ。
そんな二人に、リアスは微笑むと話を始める。
「本来なら、チラシ配りは使い魔にやらせるものなの。大体の悪魔が持っているわ」
そう言って、彼女は掌をかざすと小さな煙と共にマスコットのような蝙蝠が現れる。
イッセーは「へぇ」と興味深そうに見ており、アーシアも目を輝かせている。
「私のはこれですわ」
「…『シロ』です」
リアスに続いて、朱乃は右手を地面に向けると形状の違う小さな魔法陣と共に緑色の体色をした黄色い角を持った子鬼が現れる。
小猫は、いつの間にか両腕で白い小さな猫を抱えており、木場の左肩には可愛らしい小鳥が乗っかっている。
「……とまぁ、悪魔にとって基本的なものよ。主の手伝いから情報伝達、追跡にも使えるわ。イッセーとアーシアも仕事に慣れてきたから、そろそろ使い魔を持たせようと思ったの」
「はぁ…それで、その使い魔さんたちはどうやって手に入れれば……」
「それは…」
彼女の話にイッセーも納得したが、おずおずと挙手をしたのはアーシアだ。
その問いかけにリアスが答えようとした時、部室のドアから控えなノックが聞こえる。
「はーい」
朱乃が返事をすると、ドアはゆっくりと開き…数人の女子生徒と一人の男子生徒が入ってくる。
そこで、イッセーが必死に記憶を手繰り寄せて、彼女たちが駒王学園の『生徒会役員』のメンバーであることを思い出す。
(生徒会長の『支取蒼那』か…)
(何でお前が知っているんだよ、ドライグ)
そんなやり取りをしながらも、黒いボブヘアーに眼鏡をかけた美少女…蒼那と、その生徒会役員たちを初めて見たアーシアは彼女たちに聞こえないよう、小声で尋ねる。
「あの、どちら様ですか?」
「この学校の生徒会長と、その役員たちだよ。先生たちとは別に学校を支えている生徒たちだ」
「はぅ」と驚いていたアーシアだったが、リアスは幼馴染であり親友である蒼那…本名『ソーナ・シトリー』に対して、話しかける。
「お揃いね、どうしたの?」
「お互い眷属が増えたので、改めてご挨拶をと」
(やっぱり生徒会も悪魔だったのか)
その会話を聞きながら、イッセーは入学して数か月たったある日…非常勤の講師となったばかりの愛奈から「生徒会に入るな、近づくな」と釘を刺されていたのを思い出す。
そんなことをいつもの表情で考えていると、蒼那は左側にいた茶髪の…顔色がやや優れない男子生徒の紹介を始める。
「彼は生徒会書記で『兵士』、二年C組の『匙元士郎』です。駒を四個分消費しています」
「『兵士』の辰巳一誠、『僧侶』のアーシア・アルジェントよ」
蒼那は彼の紹介を手短に始めると、リアスもイッセーとアーシアの紹介を手短にする。
「どうも」
「よろしくお願いします!」
イッセーは軽く、アーシアは彼に倣うように元気よく頭を下げると匙は彼に対して自慢げな表情を見せる。
「まぁ……俺としては、変態三人組である辰巳と同じなんて、酷くプライドが傷つくんだけどな」
(おう、ディスられてるぞ相棒。何か言い返したらどうだ?)
(良いよ別に。事実だし)
力を知る人物たちからしたら完全に力量を見誤っているが、互いに干渉しない決まりがあるのでそれも仕方がないだろう。
ドライグの言葉に、イッセーは軽く流す……イッセーは自分への悪口に対してあまり怒ったりしない、自分を畜生以下だと思っているので耐性が強いのだ。
しかし、それで納得しないのはアーシアだ…一言言おうと口を開こうとするが「気にしてない」と彼に言われたため、仕方なく口を紡ぐ。
「…ごめんなさい、辰巳君。悪い子ではないのですが、サジは少し調子に乗る部分がありまして」
「良いですよ。あの二人と一緒にいるのは事実ですから」
「会長!」とイッセーに頭を下げる蒼那に異議を唱えようとする匙を視線で黙らせ、謝罪の言葉を口にする。
イッセーもいつもと変わらぬ表情で告げると、彼女はリアスに「それと」とあることを告げる。
「実は、サジにも使い魔をと思いまして」
「あら、ソーナも?……それなら、二人と一緒に同行させましょ。別に奪い合うわけではないしね」
リアスの提案に、蒼那は快く了承する……同行するメンバーはリアスとイッセー、アーシア…そして蒼那と匙の五人で『使い魔の森』へと出発することにした。
そして今イッセーたちは使い魔の森にへと足を踏み入れる…悪魔が使役する使い魔が多く生息している地域らしいが辺りは薄暗く、何処か不気味な雰囲気を感じる。
ざわざわとしている木々にイッセーとアーシア、匙が身構えていた時だった。
「ゲットだぜぃ!!」
「ひゃっ!」
突然聞こえた…やや甲高い男性の声に、アーシアは可愛い悲鳴と共にイッセーの後ろに隠れる。
イッセーが声の方向…上を向くと木の枝には一人の男性が立っており、夏休みの少年が虫取りに行くようなタンクトップに半ズボンと派手な格好で青い帽子を逆に被っている。
「俺はマザラタウン出身の使い魔マスターの『ザトゥージ』だぜぃ!グレモリーさんよ、その子たちがかい?」
「えぇ、一人増えたのだけれど大丈夫ですか?」
「問題ないぜぃ!俺にかかれば二人だろうと三人だろうと、どんな使い魔もぉ……即日ゲットだぜぃっ!!」
リアスのお願いに、ザトゥージはハイテンションで了承すると木から降りてくる。
ドライグは「おい、あいつもしかしてポケッ…」と言いかけていたため、イッセーはそれを遮るように黙らせている間、リアスと蒼那がこちらに向けて話しかける。
「イッセー、アーシア。今日は彼のアドバイスを参考にして、使い魔を手に入れなさい。良いわね?」
「サジ、分かりましたね?」
「「「はいっ!」」」
『ザトゥージさーん……!』
三人が了承すると、聞き慣れた少年の声が聞こえる。
イッセーは嫌な予感を抱きつつも近づいてくる人物に目を向けた。
「ザトゥージさんっ!何だか蛇っぽいような、エロゲとかで良く出てくる触手みたいな奴を捕まえたんだけど…食べられるかな!?」
「おーっ!そいつはショクシュヘビ!食用にもなっている奴だぜぃっ!見た目とは裏腹に串焼きにすると、とっても美味だぜぃ!!」
その人物…そう先ほどから部室に顔を出さなかったヴァイアは緑色のうねうね動く触手を納めた網を見せると、ザトゥージは嬉しそうに解説を始めており話が脱線しつつある。
一先ず彼に網を渡した後ヴァイアはイッセーたちに声を掛ける。
「ハロー、イッセーとリアスちゃん!そしてマイフレンドのアーシアちゃん。えーと…あぁ生徒会の役員たちだっけ?確か、会長の支取蒼那ちゃんと+αの匙元士郎君だよね」
「えっ、えぇ…あなたは…」
「僕はヴァイア。オカルト研究部で居候をしている身さ」
自分たちの名を告げられて完全に動揺している彼女と匙に握手をするが、ふと彼の手を繋いだ瞬間…ヴァイアは顔を近づける。
突然初対面の人間に顔を近づけられた匙は慌てて顔を引くが、彼はある質問をする。
「ねぇ、君…ちゃんと寝てる?もしかしてさぁ、悪夢のせいで良く眠れていないんじゃない?」
「はっ!?な、何言って…!?」
突然の質問に、匙は動揺をする。
根も葉もないことを言われたからではない……心当たりがあったから動揺しているのだ。
その言葉の意味に気づいたイッセーは、赤龍帝の籠手を装備するとドラゴンショットを近くの木々に向けて発射した。
『うわわっ!?ゲホ、ゲッホッ!!何だよ一体っ!?』
突然の攻撃に咳き込みながら慌てて姿を見せたのは黒い装甲を身に纏ったネオストラ…何処かトカゲを彷彿させており装甲の隙間から黄色いチューブ状の紐が垂れ下がっている。
トカゲをモチーフにした覚醒態『リザード・ネオストラ』を見たイッセーとリアス、アーシアといったネオストラの存在を知っている者たちは身構えるが、ザトゥージや蒼那、匙といったメンバーは使い魔とも悪魔とも違う異形の怪人に狼狽えてしまう。
「ななな、何だぜぃっ!し、新種の使い魔か何かかっ!?」
「はいはーい、ザトゥージさんと生徒会二人…後リアスちゃんたちも避難しようねー」
完全にパニクっているザトゥージを引きずりながら避難勧告をする中、イッセーはドラグーンドライバーを腹部に巻きつけてローカストバッテリーをホルダーに装填し、上に傾ける。
【WHAT THE CHOICE HEART!? WHAT THE CHOICE BATTERY!?…♪】
「変身っ!!」
【CURSE OF CHARGE!…L・O・C・U・S・T! LOCUST~!!♪】
『か、仮面ライダーッ!?くそっ、よりによってあの辰巳がかよっ!!』
変身したドラグーンに、リザードは若い青年の声で吐き捨ててチューブを伸ばす。
しかし彼はズババスラッシャーで斬り裂きながら、前進するとリザードの鳩尾を蹴り飛ばした。
『がっ!?この…ブゲッ!!』
「フィニッシュ!」
『あんぎゃああああああああっっ!!』
双剣を交差させて再度吹き飛ばされたリザードはチューブを伸ばしてドラグーンの右手を拘束する。
それを引きちぎろうとするがどういうわけか右手が自在に操れない。
『どうだよっ!?俺のチューブに拘束された奴は動けなくなるんだよっ!!!』
得意気になった彼は、自身の能力を説明をしながらそのまま彼を引っ張り上げようとするが……。
【DOUBLE BOOST!】
「せー…のっ!!」
『ちょっ…ぎゃあああああああああああああああああっっ!!!』
倍加した力で思い切り右腕を振り上げたことで、リザードは近くの大木に叩きつけられることになってしまう。
叩きつけられた衝撃で身動きが取れないリザード目がけてドラグーンは追撃を行う。
「な、何だよありゃあ……」
突然のことに匙は理解が追いつかない…変身したのもそうだが、駒一つ分程度の転生悪魔だと思っていた変態三人組のイッセーが未知の怪物を圧倒しているのだ。
殴りかかってくるリザードの一撃を躱してカウンターパンチを叩き込むドラグーンを見ながら蒼那は彼の間違いを訂正する。
「サジ…辰巳君は駒を八つ消費しているのよ」
「八つって……全部じゃないですかっ!?だったら何であいつ…」
「恐らく、あなたに気を使ったのでしょう」
少しだけ気まずそうに答えた彼女の顔を、匙はただ呆然と見つめる。
そんな会話をしながらも戦闘は一方的に行われており、ドラグーンの左ストレートがリザードの顔面に直撃した。
「こいつ…今までの奴らより弱いな」
『推測だが…特殊能力よりだったか、あまり喧嘩の得意じゃない感染者のどちらかだな。何れにせよ、これで決めるぞ』
ドライグの言葉に「了解」と必殺技のシークエンスに移行しようとした時だった。
凄まじいほどの殺気が使い魔の森全体に襲い掛かる。
手を止めたドラグーンと、戦いを傍観していたヴァイアたちはその方向を向く。
そこには明治時代を彷彿させる黒いフロックコートを羽織った洋装の青年がゆっくりと歩いてくる。
全員が突然現れた人物に疑問を覚える中、ヴァイアと起き上がったリザードは驚愕に染まる。
「あいつ…!!」
『キ、キョンシーッ!お、俺を始末しに来たのかっ!?』
「…お前の監視もあるが、俺は仕事に来ただけだ……薄汚い異形共の味方をする、仮面ライダーの始末をな」
彼の言葉に、青年はそう返すと右腕に装着していたインフェクションドライバーを外して自身の腹部のバックルにセットする。
【BREAKING HAZARD!? BREAKING HAZARD!?…♪】
「……」
低く、重苦しい待機音声を鳴り響かせながら彼はドライバーモードとなったインフェクションドライバーの上部のボタンを右の拳で押した。
瞬間…青年の身体は白と黒のエネルギーに全身を包み込まれると『培養』を開始する。
【BUGRIALIZE…! WELCOME THE NEOSTRA…!!】
そしてエレキギターのような電子音声が響き渡った瞬間…青年は本来の姿を取り戻した。
遠くから見れば、素体ネオストラがぬいぐるみのパンダを覆っているように見えるだろう、しかし、その上に紫色の中華服と帽子を身に纏っておりほつれ目を補強するように至るところでお札が貼られている。
『……貴様は、このキョンシー・ネオストラが叩き潰す』
自らをそう名乗ったキョンシーはドラグーンの方へ走り、勢いよく拳を振り上げる。
ドラグーンは咄嗟にズババスラッシャーを交差させて防ぐ。
『オラァッ!!』
「ぐっ!?」
それを気にすることなくキョンシーは拳を振り下ろすと、途端に凄まじい衝撃が双剣を通してドラグーンを襲う。
だが、キョンシーはそこからストレートを繰り出し、更にフック、アッパーと強烈なパンチが再び迫る。
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ……オラァッ!!』
「ぐわあああああああああああっっ!!」
凄まじいスピードとパワーで放たれる拳のラッシュからの最後の一撃が叩き込まれると、ドラグーンは破壊されたズババスラッシャーと共に吹き飛ばされる。
「「イッセー(さんっ)!!」」
アーシアとリアスが地面を転がるドラグーンに悲痛な叫びをあげる中、リザードはこの場から立ち去ろうとするがそれに気づいたのは匙だ。
「…何逃げてんだよっ!!」
『あぁ?』
匙は己の神器であるデフォルメされたトカゲのような形状のガントレットを装備し、そこから伸びるラインでリザードを拘束する。
しかし。
『うざってぇんだよっ!!』
「なっ!?」
完全吸収能力という共通能力を持つリザードは弱まった拘束を乱暴に引きちぎると、逆にチューブで彼を拘束し引っ張る。
『たく、「自分同士」で戦うなんて気味悪いよなぁ…「俺」?』
「かはっ…何、言ってんだよ…!!」
『辰巳はあの様だから、代わりに活躍しようと思ったんだろ?会長に褒めて欲しいもんなぁっ!!気に入った女は、手に入れたい…お前が望んだことだぜ?』
不可解が言葉を話すリザードに、匙は睨み返すが気にせず彼は理解者であるかのように話しかける。
その瞬間、彼は気づく…気付いてしまう。
目の前で自分を苦しめているこの異形が何者なのか……。
『ぐっ、いってぇなっ!!…グヘッ!?』
「まったく、ドライバーさえ使えればどうにもなるんだけどねぇ」
ヴァイアの放った呪弾がリザードに直撃したことで匙は拘束から解放される。
攻撃を受けたリザードは彼に狙いを定めるが続けて放たれた呪弾で地面を転がる。
『くっそ…!!これじゃ埒があかねぇっ!』
吐き捨てるように、そう叫んだ彼は全身のチューブを操りそこから無数のエネルギー弾を乱射し、その隙を狙って逃走する。
それに気づいたキョンシーは、ドラグーンに止めをさせるチャンスだったが舌打ちをしてその場から離脱した。
続きます、ちなみにシトリー眷属では匙が好きだったりします。何だかんだで泥臭い熱いキャラが好きだったりします。