正義の味方に至る物語   作:トマトルテ

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20話:正義の意志

 打撲による血を袖で拭いながら薬師寺はゆっくりと立ち上がる。

 並みの人間ならば気絶していたであろうコンテンダーの一撃も、彼には効果が薄い。

 理由としては、自分で作り出した薬物により自身の肉体を強化しているからである。

 

「……まったく、ヒーローには乱暴な人しかいないんですかね」

「僕が悪党ならさっきの一撃は脳髄への弾丸に変わってるよ。僕がヒーローだからこそお前は生き延びているんだ」

「それはなんとも…ふふふ……面白い話だ」

 

 殺すつもりならヘッドショットをかまされていたという事実に笑う薬師寺。

 その笑いに切嗣は答えることなく、コンテンダーの照準を足に定める。

 殺さないのなら動けなくして拘束するのが最も効率的なのだ。

 

「しかし、良いのですか? まだ私には子ども達という砦があるんですよ?」

「それについては何の心配もいらない」

 

 まだ人質が居ることに余裕を見せる薬師寺だったが、切嗣は一切の動揺を見せることなく懐から“催涙弾”を取り出す。

 

コーイチ達(一般市民)まで巻き込むからあまり使いたくはなかったが、肉体的外傷を与えずに制圧するには仕方がない」

「まさかそれは催涙弾――ッ!?」

「子ども達には悪いが死にはしない」

 

 最後にそう言ってガスマスクを装着し、催涙弾を床に叩きつける切嗣。

 ここは閉ざされた地下聖堂だ。そのため、煙は充満し簡単に消えることはない。

 要するに切嗣は自分以外、コーイチ達も含めて容赦なく催涙ガスの餌食にしたのだ。

 

「ゴホッゴホッ…! 涙と鼻水がどまらないぃ…ッ」

「コーイチ、階段から出るぞ!」

 

 充満していく煙に顔をグチャグチャにしながらコーイチは唯一の出入り口である階段に向かう。

 ここから出てとにかく苦しさから逃れたいという一心で。

 しかし、その唯一の出入り口には門番が立っていた。

 

「君達か……悪いがここから出すわけにはいかない」

「グロノズざんッ!?」

「ここを完全に封鎖しないと催涙ガスで充満させた意味がなくなる。ここに居る人間は僕を除いて全員に戦闘不能になってもらう必要がある」

「むぢゃぐぢゃだッ!!」

 

 涙と鼻水でまともな声が出せなくなってきたコーイチが叫ぶが、切嗣は知らんぷりだ。

 むしろ、同じように出口に向かってきた子ども達を吹き飛ばして、作戦の成功率を高めている。

 その、どちらが(ヴィラン)か分からなくなるような姿にコーイチは理解する。

 

 このヒーローらしからぬ悪辣さがヴィラン殺しの由来なのだと。

 

「そこをどけ! 俺は一刻も早くここから出たいんだ!!」

「ナックルダスター…今かかってこられると公務執行妨害で捕まえないといけないんだが?」

「上等!!」

「じょうどうじゃないでずっで!?」

 

 何やら切嗣とナックルダスターの間で、争いが勃発しかねない雰囲気になっているのをコーイチが薄れゆく理性の中で残された常識によって止めようとした時。地下聖堂の奥の方から何かを踏み砕く(・・・・)ような大きな音が響いてくる。

 

「なんだろう…?」

「コーイチ避けろ!」

「コーイチ君逃げろ!」

 

 その音に不思議がって振り返ろうとするコーイチだったが、ナックルダスターと切嗣の双方から背中を蹴り飛ばされて、階段の通路の脇に転がされてしまう。

 

「痛づづ…ッ。急に何…を……」

 

 涙でぼやける目をこすりつつ、目を開けたコーイチは言葉を失ってしまう。

 先程まで古ぼけていながらも、頑丈であった階段がボロボロになっていたからだ。

 思わず目がぼやけているせいかと瞬きをしてみるが結果は変わらない。

 同じように、何か巨大なものが通ったようにボロボロになった階段があるだけだった。

 

「し、師匠…? クロノスさん?」

 

 そして消え去った2人の男の名前を呼んでみるが答えは返ってこない。

 代わりに地上の方から鋭い銃声が聞こえてくる。上で戦闘が行われているのだ。

 銃声からそのこと理解したコーイチはボロボロの階段を上がっていく。

 

「師匠! クロノスさん!」

「コーイチか! 気をつけろ、あの薬師寺という男、奥の手を使ってきた」

「奥の手…?」

 

 地上に出て一番に言われた言葉に疑問を抱きながら、ナックルダスターと切嗣が相対している相手に目を向け、再び言葉を失ってしまう。

 

「戦うのは得意ではありませんが……この姿ならヒーローにも劣りませんよ」

 

 そう不敵に笑う薬師寺の姿は、一言で言えば―――マッスルであった。

 

「き、筋肉増強型の“個性”!?」

「いえ、私のこれは『ドラッグクッキング』。食べ物を薬物に変える能力の延長線……そう、プロテインの成分や、筋肉増強のためのありとあらゆる薬物を配合、強化した究極のドーピング―――D(ドーピング)C(コンプリート)S(スタイル)です」

 

 かつての薬師寺の姿は影も形もない。

 上半身は神父服を内側から破った、普段の3倍はある鋼のような筋肉に覆われている。

 そして、その体には血管が浮き上がっており、どう見ても健康そうに見えない。

 極めつけはこれだけ筋肉をつけているにもかかわらず、細身な脚だ。非常にバランスが悪い。

 

「ド、D(ドーピング)C(コンプリート)S(スタイル)……その筋肉で師匠達を吹き飛ばしてここまで来たのか…」

「なにぶん、久しぶりなもので調整に失敗して階段も壊してしまいましたが、あそこから脱出できたのでよしとしましょう」

 

 そう言いながら薬師寺は眼鏡を外し、邪魔だとばかりに捻りつぶす。彼の姿はまるでパワーこそ力だと言わんばかりの異様だが、それに気圧されているのはコーイチだけだ。

 

「ようやくデカブツのお出ましか。やはり(ヴィラン)はデカい奴に限る!」

「僕としてはあまり得意な手合いじゃないんだけどね。まあ、大した差じゃない」

 

 ナックルダスターは不敵に笑い、切嗣は無感情に銃を構える。

 コーイチを庇って受けた負傷などないとコーイチと薬師寺に知らしめる行動。

 それは偏に、2人の負けず嫌いな性格と優しさ故にだ。

 

 ナックルダスターと切嗣はお互いに似通った面を持っているのだ。

 

「コーイチ君、ここは僕に任せて君は下の子ども達を捕縛してくれると助かる」

 

 切嗣はコーイチに目を向けることもせずに、ガスマスクとロープを投げ渡す。催涙ガスはまだ消えたわけでないので、その中で自由に動けさえすれば、一般人であるコーイチでも安全に捕縛が出来るという判断だ。もちろん、一般人に任せるのは問題があるが彼らは無法者(ヴィジランテ)だ。

 

 どうせ後で警察にぼかして教えなければならないのなら、隠すべきものが多少増えたところで変わりはない。それに彼は一般人とは言え戦闘のずぶの素人ではない。故に切嗣はこの選択を行ったのである。

 

「わ、わかりました」

「大丈夫、すぐに終わらせてそっちに向かうさ」

「おう、何せここには俺がいるからな」

「……正直、お前にはあまり動いて欲しくないんだけどね。トラブルが起きそうだし」

 

 ナックルダスターの言葉に白い目を向ける切嗣であるが、それ以上反論はしない。

 言っても無駄だろうと思ったのもあるが、共闘した方が互いの生存率が高くなるというのも理由の一つだ。

 

「……随分と余裕ですね。先程までの私と同じと思わない方がいいですよ」

「小悪党が今更何をしたところで意味はないよ。貴様はここで捕まえられる、それだけだ」

「ふふふふ…小悪党ですか……嘆かわしい。私の理想はちんけなものなどではないというのに」

「貴様の理想になんて興味がないが、一応は犯行動機だ。30文字以内なら聞いてやってもいい」

 

(かみ)試練(しれん)となって人間(にんげん)悪行(あくぎょう)(はたら)くことですよ」

 

 ピッタリ30文字で説明してみせる薬師寺に軽く鼻を鳴らす切嗣。

 詳しい説明など聞くまでもない。

 要するに薬師寺は自分勝手な正義(・・・・・・・)に他人を巻き込んでいる大バカ者だ。

 

「人間を害し、また誘惑する事で神への忠誠心を試みる存在。ユダヤ教の天使(悪魔)マステマの真似事かい? くだらない」

「おや、随分と博識ですね」

「フン、訳あって神話の類には詳しくてね」

 

 切嗣は前世での戦争のことを思い出しながら薬師寺に吐き捨てる。

 

「では詳しい説明は要らないようですね。私は神より遣わされた必要悪(・・・)なのです」

 

 必要悪。その言葉に切嗣が初めて怒気を見せる。

 人殺しを正当化し、仕方がないと言い訳をしていた過去の自分を思い出したが故に。

 

「必要悪だと? 都合の良い言い訳だな」

「違いますね。私は生まれてこの方、人の悪行にしか心動かされないのです。これは主が私にこの役目を与えたという何よりの証拠です」

「……もういい。自分の正義を疑わないバカ(・・)を見ていると反吐が出る…本当に」

 

 狂信者は疑うことを知らない。そういう点ではかつての自分も狂信者と言えたのだろう。

 恒久的な世界平和という歪んだ教義を疑うことなく邁進(まいしん)していた愚か者。

 その陰を薬師寺に見るからこそ、切嗣はどうしようもなく苛立っているのだ。

 

「ああ、私は悲しい。なぜ多くの人間は神の崇高な考えを理解しないのか」

「人間だからさ。神の考えなんて知った事じゃない。もとより知る術もない」

「同感だな。神の考えに従う暇があったら、俺はこの拳でクズを殴る!」

 

 ナックルダスターがとっとと話を終えろとばかりに、前に進み出たことで話は終わる。切嗣としてもこれ以上話すつもりはなかったので、彼を援護するように引き金に指をかける。

 

「仕方がありません―――直接あの世で神の御意思を知りなさい」

「貴様がな」

 

 コンテンダーが銃声を上げる。それが開戦のゴングだ。

 

 薬師寺は肩を狙われて撃たれたそれを姿勢を低くすることで躱し、その姿勢のままタックルを繰り出す。だが、薬師寺の動きは読まれていた。前衛のナックルダスターがスクラムを組むように受け止める。

 

「ぬぅ…やはりパワーでは勝てないか」

「そうでしょう、そうでしょう! この体は既に常人のものではなく超人のものですからね!!」

 

 しかしながら、ドーピングにより筋肉の塊と化した薬師寺を押し留めるには力が足りない。

 ナックルダスターはずるずると後ろに押し下げられていく。

 これが彼だけならば、圧倒的なスペック差で押し切られてしまっていたことだろう。

 だが、彼は1人ではない。

 

「コンテンダー、再装填完了」

「な…ッ!」

「発射」

 

 後衛に控えている切嗣が居る。ナックルダスターが薬師寺を押し留めている間にコンテンダーに銃弾を入れなおし、再び薬師寺に向けて放つ。当然、薬師寺は逃げようとするが今度はナックルダスターと組み合っているので動きを阻害され避けることが出来ない。よって。

 

「づぁあああッ!?」

「まずは右足だ」

 

 容赦なくコンテンダーによってその足を撃ち抜かれることになる。

生半可な銃弾であれば簡単に跳ね返す鋼の筋肉も、戦車の装甲を貫くコンテンダーは防げない。

 

「そして次は俺だ」

「息…が…ッ」

 

 足を撃ち抜かれた痛みで体を硬直させる薬師寺。

 ナックルダスターはその隙をつき、後ろに回り込んで薬師寺の首に裸絞(はだかじ)めを繰り出す。

 ドーピングにより肉体を強化されたと言っても、体の構造が変化したわけではない。

 首を絞めれば当然息が出来なくなる。だが、首の筋肉も増強したおかげかすぐには落ちない。

 

「最後は身動きの取れなくなった貴様に僕が止めを刺すだけだ」

「させ…ません…!」

 

 最後の一撃のために再びコンテンダーに銃弾を込める切嗣。それを見て、薬師寺は切嗣を排除しなければならないと判断し、筋肉で増大した腕を伸ばす。距離としてはギリギリ届く範囲。それ故に、ナックルダスターに抑えられながらでもその腕を届かすことが出来る。

 

 はずだった。

 

「馬鹿な……」

 

 唖然とした表情を浮かべて切嗣を見つめる薬師寺。

 彼の腕は確かに切嗣に触れることに成功していた。

 ただ、触れているというよりも―――その腕の上に乗られているといった方が正しいが。

 

 

「―――ウスノロ」

 

 

 切嗣は薬師寺の腕の上で仁王立ちし、無感情に彼を見下ろす。

 その光景は、薬師寺と切嗣の圧倒的な実力差を如実に表していた。

 

「ドーピングによって…超人になった…私が…!」

「馬鹿だな。貴様が超人だというのが事実だとしても…」

 

 愕然としたまま動くことのできない薬師寺を無視し、切嗣は腕を踏み台にして飛び上がり。

 

「僕も超人(ヒーロー)である以上、何の意味もない」

 

 薬師寺の顔面に踵落としを叩き込む。

 

 落下エネルギーで威力を増した踵落としは戦闘服(コスチューム)の硬さもあり、容易く歯をへし折る。

 血と歯が飛び散り紅白の雨を降らす中、切嗣は地上に着地して今度はコンテンダーを使う。

 

「おまけだ」

「グ…ぁ…」

 

 もはや叫ぶこともできずに残った左足を撃ち抜かれる薬師寺。それにより、自分の体を支えることができなくなった彼はゆっくりと地面に向かい倒れていく。

 

「俺からは敢闘賞を贈ろう」

 

 そこへ、ナックルダスターがダメ押しで背中を殴り飛ばして地面に叩きつける。

 今度こそ声を失い気絶する薬師寺だったが死んではいない。

 ドーピングにより強化されたおかげで命には別状はないのだ。

 

 もっとも、そのドーピングのせいで、ここまでこっぴどくやられてしまったわけであるが。

 

「さて、後は動けない様に縛って警察に連絡だな」

「そうだな。しかし……ヴィラン殺しと呼ばれる割には優しいな」

「優しい? この光景を見てよくそんなことが言えるね」

「フ、この光景を見たからこそだ」

 

 そう言ってナックルダスターはボロ雑巾のように転がる薬師寺を指差す。

 

「お前、そいつを殺さない様に手を抜いていただろう?」

「人聞きの悪いことを言うな。プロはいつだって命懸けさ」

「どうだかな。お前自身が言っていたが殺すつもりならその銃で頭をぶち抜けば一撃で終わるだろう。だが、お前はそれをしなかった。それは優しさというヤツだ」

「……殺すべきでないから殺さないだけさ。社会秩序のためには、多少手間が増えても生かして捕まえるべきだ。それがヒーローというものだろう」

 

 ナックルダスターの指摘に対してしかめた顔を隠すために、切嗣は薬師寺の体を拘束していく。

 結局の所、ナックルダスターの指摘は当たっていた。

 切嗣は敵を殺さないために、慣れない格闘技術を鍛え、主要武器である銃の使用を抑えている。

 

 これが人殺しを是とする前世であれば、薬師寺は最初にコンテンダーで殴られた時に脳天を撃ち抜かれて殺されている。一撃で仕留められるものを仕留めないのは非効率的だ。しかし、切嗣はこれでいいと思っているし変える気もない。

 

 人を殺す(何をすべき)かではなく、人を救う(何をやりたい)かこそが、人生で最も重要なことなのだから。

 

「……こっちは終わりだ。コーイチ君の助けに行こう」

「ああ、構わん」

 

 それだけの言葉を交わして、2人の男は無言で歩き出す。

 しかし、2人の間には以前のような険はなかったのだった。

 

 

 

 

 

 薬師寺と子ども達の後を警察に任せた切嗣はヴィジランテ達と別れ、糸音(シオン)に会いに来ていた。

 

「やあ、さっきぶりだね、糸音ちゃん」

「……おじ様、本当に来てくれたのね」

「約束したからね。ヒーローは約束を破らない」

 

 そう言って切嗣は護送車の前に立っている糸音に微笑みかける。

 隣には警官が立っているが、顔馴染みであるためにこちらを咎める視線はない。

 

「ここにずっと居ることもできないから、話は車に乗りながら話そうか」

「ねえ、おじ様。私さっきまでずっと考えていたの」

「考える? 何をだい?」

 

 何事かと尋ねる切嗣に、糸音は儚げな笑顔を浮かべて答える。

 

 

「じゃあね、おじ様」

 

 

 永遠の別れの言葉を。

 

「何を言っているんだい…?」

 

 彼女の言葉に何を言っているのかと、足を止める切嗣。

 それと同時に、耳障りな蜂の羽音(・・・・)が聞こえてくる。

 慌ててその音に警戒して動き出そうとするが、もう遅い。

 蜂は糸音の首筋に既に到着しており、その針から―――トリガーを打ち込んでいた。

 

「ずッ…う…ううぅ…あああああッ!!」

「糸音ちゃん!?」

 

 明らかに様子がおかしくなった糸音に駆け寄ろうとするが、彼女の体の変化がそれを許さない。

 トリガーにより“個性”が極端化した彼女の下半身は本物の蜘蛛のようになり、その瞳は闇夜に赤く光り輝く。爪も鋭く長くなり、それだけで人を殺せるような姿を見せる。

 

 アラクネ。切嗣は彼女の姿に女神に蜘蛛に変えられたギリシャ神話の女性の名前を思い出す。

 

(蜂使いがここに来て出てくるのは想定外だった…ッ。すぐに蜂を追いたいが、糸音ちゃんを放置するわけにもいかない。トリガーで理性が薄れている以上は一刻も早く抑えないと、いたずらに被害が増大する…!)

 

 そして、すぐに暴走した糸音を抑えるべく、行動を開始しようとする。

 だが、しかし。

 

「……さようなら」

 

 

 彼女が取った行動は、暴走でも虐殺でもなく―――自害であった。

 

 

「………え?」

 

 自らの心臓に突き立てた鋭い爪。

 噴水のように噴き出す赤い血潮。

 崩れ落ちて行く異形の肢体。

 

 何が起きているか理解できずに切嗣は呆然と立ち尽くす。

 

「あ…ははは…これで……おじ様に…泣いて(愛して)もらえるかな…?」

 

 血の海に沈みながら糸音(シオン)は笑う。

 切嗣をこの手で悲しみに誘い、忘れさられない存在となれば。

 自分が誰かに愛されているという証明になるのではないか?

 

 そんな歪んだ思考が生み出した結論が、自らの命を絶つということだった。

 

「何で…何で…! こんな馬鹿なことをする!? 早く血を止めないと…ッ!」

「だって…私が死んだら…悲しんでくれるんでしょ…? 悲しいなら…泣いてくれるよね…?」

 

 ―――私が死んだら悲しいってこと?

 

 糸音は以前、彼にこう問いかけていた。誰かに悲しんで欲しい。そんな願望を持つ彼女に切嗣はそうだと答えてしまった。故に、彼女は切嗣に殺されないのなら、自分で命を絶てば良いという考えに至った。そのことに今更ながらに気づき、切嗣は絶望の底に落とされる。

 

「やめろ…やめてくれ…! 死なないでくれ…ッ」

「ふふふ…おじ様の…愛を…感じる……」

 

「違う! そうじゃないんだ! 愛はそんなに悲しいものじゃないんだ!! どうして分かってくれない!? 愛とは相手に救済と希望を願い祈りを託すことだ! 君を救えなければ意味がないし、希望を持っていない君を愛することもできない!!」

 

 絶望のままに止血作業を行いながら切嗣は愛とは何かを叫ぶ。

 破滅に向かう相手を、希望を持たぬ相手を愛することは破綻している。

 それに気づかぬからこそ、糸音は愛を求めて、最も愛から遠い行動を取っているのだ。

 

「よく…わかんない…よ」

「生きていれば必ず分かる時が来る! だから…死なないでくれ…ッ」

 

 しかし、意識が薄れて行く彼女にはそんな言葉も届かない。

 故に切嗣はどうしようもなく打ちのめされる。

 

 目の前で消えていく命を救いたくて正義の味方を目指したはずだ。だというのに、自分は彼女を救う術がない。何も出来ない。でも、認められない。自分に救うことが出来なくとも、諦められない。

 

 だって、自分は目の前で誰かが消えていく姿なんて見たくないんだから。

 

「誰か…頼む! この子を…誰か、助けてくれ……」

 

 今ならば信じぬ神にすら縋れる。そんな想いを込めて切嗣は心からの救済を願う。

 愚かな話だ。彼自身が救いを求める手を取ってあげたくて正義の味方を目指したのに。

 今この瞬間は、彼自身が正義の味方を求めて手を伸ばしているのだ。

 きっと、今回も助けなど来ない。初恋の少女が死んだあの日のように。

 

「ああ、もちろんだ!」

 

 だというのに、切嗣に答える声があった。

 何者かと振り向いてみると、そこには糸音を任せた赤髪の青年ヒーローが立っていた。

 

「……君は?」

 

 

「―――正義の味方」

 

 

「え…?」

 

 赤髪の青年は人を安心させる笑みで笑ってみせる。

 切嗣はその表情を呆然としながら、糸音の治療に入ろうとする青年を見つめる。

 

 そして、青年の顔をどこかで出会ったことがあることに気づく。

 それは、自分が初めて正義の味方を名乗った日で、母の仇と戦った日。

 今の今まで気づかなかったが間違いない。この青年は。

 

「君は…(ヴィラン)『ムーンフィッシュ』を倒した時に助けた……」

「はい! あの時に助けてもらった子どもです!」

「そうか…君が……」

 

 感動の再会ではあるが、今は糸音を救うことが第一である。それを分かっているらしく、青年は切嗣と嬉しそうに話しながらも、糸音から目を離さずに袖をまくる。そして、どういうわけか自分の腕をナイフで切り裂く。

 

「なにを!?」

「ああ、大丈夫ですよ。これは俺の“個性”『ブラッド・オブ・ヒール』です」

「ブラッド・オブ・ヒール…つまり癒しの血。ということは」

 

 青年の腕から滴る血が、糸音の傷口へと落ちていき―――その傷を癒していく。

 それはまるで、イエスキリストの血が盲人であるロンギヌスの目を治したように。

 

「俺の“個性”は自分の血で自分以外の人間の傷を治すことです。基本的には輸血パックに溜めておくんですけど、デカい傷相手には“鮮度”の良い血じゃないとダメで」

 

 そう言いながら、顔一つ歪めずに糸音を癒していく青年、癒野(いやしの)流血(りゅうぢ)

 自らを省みず、ただひたすらに他人のために血を流し続ける。

 切嗣はその姿に聖人とは彼のような者のことを言うのかと漠然と思う。

 

「……君はどうしてヒーローになったんだい?」

「そんなの、あなたみたいな正義の味方になりたかったからに決まってるじゃないですか」

「……は?」

 

 この青年は自分とは違う、本物のヒーローなのだなと考えていた切嗣は思わず面を食らう。

 

「絶望を切り裂いて希望を嗣いでくれた正義の味方に憧れたんです。あの時のあなたみたいに、誰かの『助けて』って声に応えられる人になりたいって思って……がむしゃらに走ってきたから、今ここに居るんです」

「…………」

 

 癒野(いやしの)の言葉に切嗣は言葉が出なかった。ずっと、不安だった。自分などが正義の味方になることができるのか、誰かを本当に救うことが出来るのか、救うことが本当に正しいことなのかと。だが、目の前の青年がそんな不安を吹き飛ばし、自身を肯定してくれた。

 

 

「ずっと言いたかった。助けてくれてありがとうございます。

 あなたが助けてくれたから、俺は今ここでこうして―――誰かを助けることが出来るんです」

 

 

 全ては繋がっていた。あの日、切嗣が助けを求める手を取ったから。

 今日、切嗣が助けを求めた際に手が差し伸べられたのだ。

 

 1人で世界を救うことなんてできない。

 

 でも、1人が1人を救うことは出来る。そして救われた1人が誰かを救えば2人が救われる。

 その繰り返しだ。救い、救われを繰り返していき、少しずつ救える数を増やしていく。

 そうすればいつの日にか、きっと、きっと、世界が救われる日は訪れる。

 

 青年の存在が切嗣にそんな夢物語の可能性を信じさせた。

 

「そうだ……僕は―――間違ってなんていないんだ」

 

 誰かを救うという願いは決して間違いではない。

 それを理解することが出来た切嗣の心は澄み渡っていた。

 この想いがあればもう迷うことなどない。

 

 衛宮切嗣は、正義の味方を張り続けられる。

 

「……ん、あれ…? 私…なんで生きて……」

「糸音ちゃん…!」

「おじ…様…?」

 

 癒野(いやしの)の治療により目を覚ました糸音に切嗣は優しく微笑みかける。一方の糸音の方は困惑した表情で切嗣を見ていた。無理もないだろう。彼女の考えでは決して理解できないのだから。笑いながら―――泣いていることなど。

 

「よかった…生きてる…生きてる…ッ」

 

 ――生きててくれてありがとう――

 

 切嗣は糸音の手を取り、何度もありがとうと繰り返す。

 その表情が余りにも嬉しそうで、まるで救われたのは自分だとでも言いたそうで。

 糸音は、何が何やら分からない状態でも1つだけ理解した。

 

 人は悲しい時だけでなく、嬉しい時にも涙を流す(・・・・)のだと。

 

「……ごめんなさい」

 

 だから、彼女は切嗣の想いの全ては理解できないながらも、小さな声で謝る。

 彼は自分が死ぬことではなく、生きていることが何よりも嬉しくて泣いているのだと理解して。

 

「……ごめんなさい、もう死ぬなんて言わないから」

 

 それ故に、彼女の心も優しく満たされ、救われたのだった。2人の―――正義の味方によって。

 

 

 

 

 

「そういう結末になるかぁ。予定とは違うけどこれはこれでオモシロいからいっか」

 

 切嗣と糸音が涙を流している場面を蜂を通して見ながら、ハチスカはビルの屋上で笑う。

 糸音にトリガーを打ち込んだのは彼女であるが、この展開は予想外であった。

 トリガーで強化して逃がすつもりだったのだが、結果は自害に失敗して捕まえられるときた。

 

 しかし、バイト感覚で悪事を働いている彼女からすれば、面白かったのでOKである。

 糸音が自分達の情報をばらすかもしれないが、困るのは上の人間だ。

 雇われの自分には関係ないと、今を楽しむことに集中する。

 

「一応おめでとさんって言った方が良いのかな、糸音ちゃん?」

 

 ニヤニヤと笑い、今日も面白い一日だったと伸びをして彼女はその場から消えようとする。

 だが、しかし。暗闇から飛んできたナイフが左目に突き刺さりそれを許さない。

 

「痛ったぁー、か弱い女の子に暴力を振るうなんてひっどいなぁ、プンプン」

「ハァ…貴様がか弱い女子? 邪悪な悪党に生きる価値はない」

「えー、ダニを食うダニにも価値はあるって言ってたじゃん」

 

 目を刺されたというのに笑いながらナイフを引き抜き、下手人(げしゅにん)に笑いかけるハチスカ。その手に持つナイフには蜂が突き刺さっており、それが身代わりになったことを知らせる。

 

「……ハァ、あの時の俺の目は曇っていた。虚飾の仮面を被り真実を見逃していたのだ。悪党は大も小もなく、皆断罪すべき存在。故に貴様を粛正する」

 

 そんな彼女に対し、顔無き断罪者は(つば)のない刀を突き付け血に染まった瞳を向ける。

 

「もとコンビなんだから見逃してくれてもよくない? それに“英雄紛い”の方がツミブカいとか言ってなかった?」

「ハァ…義を見てせざるは勇無きなり。全てが罪深いのだ。贋作の英雄も、それが蔓延(はびこ)る社会も、(いたずら)に力を振りまく(・・・・)犯罪者も。残らず、粛清の対象でしかない」

「相変わらずメンドウくさいなぁ」

 

 面倒臭いと言いながらも、不敵な笑みは絶やさないハチスカ。

 それは自分の実力に自信がある故か、はたまた、ただの狂気か。

 

「断罪者スタンダールもこれじゃあただの人殺しだね。あ、元からか」

「ハァ…違う。俺は顔無き理念。存在せず行為する者。世界を染めゆく色彩(いろ)。自ら流し、流させる血がその意義の証。俺の後ろには(わだち)が残る。拭えど消えぬ、血痕の道標―――ステインだ」

 

「あー、はいはい。今回はそういう設定なんだね。ホント、ナルだねぇ」

 

 顔を無くした男、ステインの名乗りにも特に気にすることなく適当に返事をするハチスカ。

 そんな適当な対応にもステインは眉一つ動かさずに、戦闘態勢に入る。

 如何なる理由があろうとも、悪は赦さずに断罪すべきという信念を持って。

 

「ハァ…その命でもって正しき社会への糧となれ」

「断罪マンは正義の味方みたいに救ってくれないんだねぇ」

 

「一度折り目のついた紙が二度と元通りにならない様に、ハァ…悪党は決して正しき存在には戻れぬ。故に殺す。二度と罪を起こさせぬために殺す。そこには慈悲も憎悪もなくただ理想だけがある」

 

「もっと分かりやすく言ってくれないかな?」

「馬鹿は死ななければ治らない」

 

 一度でも正しき道から逸れた者に生きる価値などない。正しいもの以外この世界には必要がない。だから殺す。殺せばそこで終わりだ。決して悪事を起こせず、再犯の恐れなどない。少数の悪を殺しさえすれば多くの正しき者達が救われる。

 

 世界は少数の犠牲を糧により良いものへと変わっていく。生きるべき者が生き、死ぬべき悪党が死ねばいい。それこそが“正義”だ。

 

「故に貴様は死ななければならない。ここで殺しておけば正しき者達が救われる」

「あははは! 正論に見えるけど、ラリってるよね、その意見ってさ?」

「ハァ…これ以上は時間の無駄だ。―――死ね」

「それはゴメンってやつだし!」

 

 その言葉を皮切りに、2人の姿は闇の中に消え去っていく。

 

 後日ビルの屋上で大量の血痕が見つかり騒ぎとなるが、彼らの結末を知る者はいないのだった。

 

 

 

 

 

 蜘蛛田糸音(しおん)が目を覚ますとそこは病院だった。あの後、眠ってしまったので正確なことは分からないが、怪我をしたので逮捕よりも先に治療に回されたのだろうと判断し、体を起こす。

 

「起きたのかい?」

「わ! おじ様!?」

「君はあの後、気絶して病院に運ばれたんだ。全く、おかげで肝が冷えたよ」

「ご、ごめんなさい」

 

 起き抜けに大好きな人に顔を見られて顔を赤らめる糸音。

 ひょっとしなくても寝顔も見られていたのだろうと思うと、恥ずかしくなる。

 相手にその気がないのは救いと言うべきか、悲しむべきか。

 

「まあ、無事ならいいんだけどね」

 

 それだけ言って切嗣は凝り固まった背筋を伸ばす。

 その姿に彼が心配してずっと傍に居てくれたことを悟り、糸音は彼から見えないように笑う。

 

「……あ、あの」

「なんだい?」

「私ってこれからどうなるのかな?」

「もう動いても大丈夫だと判断されたら事情聴取だね。それから裁判を経て、君への罰が決まる」

 

 切嗣からの説明を聞いても糸音は取り乱すことはなかった。彼女自身も自分がやってきたことの重さは分かっている。何の罰も無しに元の生活に戻れるとは思っていない。償うことが許されるだけマシだろう。

 

「君は未成年だからある程度罰は軽くはなるだろう。でも、罪が消えるわけじゃないし、僕もそこら辺を庇うつもりはない。しっかりと償ってほしい」

「分かっているわ、おじ様」

「ならいい」

 

 その言葉を最後に2人は黙り込む。お互いに何を話したらいいかが分からないのだ。

 気まずいというわけではないが、重い空気が流れる中、先に動いたのは切嗣だった。

 

「……それじゃあ、僕は行くよ。まだ仕事が残っていてね」

「うん、ありがとうね、おじ様。わざわざ起きるまで待っていてくれて」

「どういたしまして。……と、一つ忘れていたな」

 

 わざとらしく、思い出したと言いながら切嗣は病室の机に置いてあった花束を取る。

 そして、(うやうや)しく糸音(シオン)に差し出す。

 

「これって……紫苑(シオン)の花?」

「うん。これから色々とあるだろうけど、困ったことがあったらいつでも力になるよ」

「………ねえ、おじ様。おじ様って女タラシって言われるでしょ?」

「え?」

 

 糸音の気持ちを受け入れる気などないくせに、いつでも力になると言う。

 その八方美人のような言動に糸音は溜息を吐く。

 逆に切嗣の方は何故分かったのかと、驚愕の表情を浮かべている。

 

「でも、許してあげる。おじ様が私の言ったことを覚えてくれたから」

「許して貰えて助かったよ」

「でも、私以外の人にやったら勘違いされちゃうよ」

「それは大丈夫……かな?」

「なんで、そこで疑問形になるのかな?」

 

 そう言えば、信乃ちゃんにも似たようなことは言ったことがあるようなと、呟き始める切嗣に冷たい目を向ける糸音。しかし、それでも嬉しいことには変わりがないのでそれ以上責めることはやめる。彼女の懐は広いのだ。

 

「んんっ。とにかく、しばらくは安静にして早く体調を良くするように」

「はーい」

「それじゃあ、僕は行くよ」

 

 最後に軽く手を振って病室から出て行く切嗣。

 そんな後ろ姿を見送りながら、糸音(しおん)紫苑(シオン)の花を撫でる。

 自らの名前と同じ名前を持つ花は、何故だか自分の在り方を示しているようで親近感が湧いた。

 

「―――君を忘れない」

 

 紫苑(シオン)の花言葉の1つを口に出してみる。

 

 他にも『追憶』、『遠方にある人を思う』という意味があるが、切嗣が伝えたかったのはこれだろう。自分のことを忘れないかと聞いた時に約束してくれた。その証拠がこの花だ。忘れずにいて、気にかけ続けるという意志表示。

 

 

「もう…こんなことばっかりするから……本気で好きになっちゃうんだよ?」

 

 

 淡い桃色の唇から切なげに息を吐き、彼女は花びらに小さな口づけを落とすのだった。

 

 

 

 

 

 糸音と別れた後、切嗣はすぐに鳴羽田に戻っていた。

 薬師寺と糸音は捕まえたものの、肝心の蜂使いに関してはまだ終わっていない。

 そのため切嗣は、糸音が蜂に刺された付近に何か証拠はないかと探し回っているのだ。

 

「おう」

「……お前か、ナックルダスター」

 

 そんなところに現れたのは、缶ビールを片手に一杯やっているナックルダスターだった。

 

「蜂使いでも探しに来たのか?」

「ああ、まだ全部が片付いたわけじゃないからね」

「仕事熱心なことだな」

「ヴィジランテ活動をごまかす手間が無かったらもう少し楽をできたんだけどね」

 

 皮肉を言って、そのまま立ち去って行こうとする切嗣。

 そんな切嗣にナックルダスターはあるものを切嗣に投げ渡してくる。

 反射的にそれをキャッチする切嗣だったが、それが何かを理解すると同時に顔をしかめる。

 

「……なんだいこれは?」

「見たらわかるだろう、缶ビールだ」

「そういう意味で言ってるわけじゃないんだが」

 

 こんなものを渡してきて何がしたいのかと聞いているのだと、切嗣は苛立ちを隠すこともせずに伝える。だが、ナックルダスターはどこ吹く風だ。

 

「コーイチ達は未成年だからな。一緒に飲める奴がいなくてな」

「1人で飲めばいいだろ。僕はまだやるべきことがあるんだよ」

「足がかりもなしに、動いていてもしょうがないだろう。どこに居るかも分からない相手に気を張っても仕方がないぞ。第一、こんな時間に仕事も何もないだろう」

「………はぁ、分かったよ。どうせ、この街には依頼が終わるまで居るんだ。つき合ってやるよ…一杯だけな」

 

 何を言っても退く気がないと理解し、切嗣はしぶしぶといった様子で承諾する。

 蜂使いの行方を追わなければならないが、どこで何をしているのかが分からないのが現状。

 最低でもトリガー騒ぎがこの街から無くなるまでは、ここに居て仕事をしなければならない。

 

 まだまだ調査や戦闘が続いていくと考えれば、確かに焦っても仕方がない。

 それに正義の味方は自分だけではない。そう考えると動かないことへの不安が少しだけ薄れた。

 

「おう、そうでないとな。クズを成敗した後の祝杯だ」

「……なんでお前が正義の味方を名乗っているのかが理解できないよ」

 

 何やら不穏なことを告げるナックルダスターに切嗣は思う。

 頼りにならなくはないが、こいつだけは絶対に正義の味方と呼びたくないと。

 

「細かいことは気にするな。それよりもだ」

「……はぁ」

 

 切嗣は早く調査に戻りたいとため息を吐きながら缶ビールを開け、前に突き出す。

 

 

『―――乾杯』

 

 

 甲高い金属音が1つ、夜空の下に響き渡るのだった。

 




そしてヴィジランテ本編に続く。最後の乾杯は個人的に書きたかっただけ。
こんな終わり方ですが、原作の進み具合とか、拙作の進行具合の問題で完璧に終わらせるのは無理そうだったので妥協。『僕のヒーローアカデミア』原作開始までの空白期に綺麗に解決したものとしてください。

次回は洸汰(こうた)君と会うので一応原作開始(デクがオールマイト鍛えられてる時期)
本格的開始はその次ぐらいから。

こっからはオリキャラの説明。興味ない人は見なくても問題ないです。



蜘蛛田(くもだ)糸音(しおん) (元死亡枠)
 コンセプトは彼女の名前であるシオンの花。「追憶」でイリヤを思い出す。「君を忘れない」で糸音は切嗣のことをずっと覚えていた。切嗣はイリヤとアイリを忘れない。最後には糸音も入ったけど。「遠方にある人を思う」も糸音は切嗣、切嗣はイリヤを思うという感じでした。
 シオンという名前そのものが伏線と気づけた人は居ないはず。……何故なら作者も最初はそんなこと考えていなかったから。蜘蛛と糸を使い女の子らしい名前を考えた結果糸音(しおん)になり、18話を書いているときに偶々シオンの花言葉とピッタリだったので作り替えた。おかげですごく面倒な子になり作者を苦しめてくれた。
 最初は死亡する枠だった子。シオンの花言葉の由来通りに最後は切嗣が絶望の淵で花を墓に供える予定だったけど、墓の描写が三回目になるので止めて生存√に。今後の出番は未定。

薬師寺(やくしじ)料作(りょうさく) (元死亡枠)
 コンセプトは外道。麻薬を使い子どもをシャブ漬けにし、盾にもする外道で、こいつぶっ飛ばしたいと思われる役割。の、はずが神父という要素が強すぎて言峰か天草にしか見られないという状態になったので、開き直って言峰+天草に。
 しかし、おかげでステインに殺される役目から解放されたある意味の勝ち組。最初は追い詰められたところで子どもを殺して逃走してステインに殺されて、見つけた切嗣がステインに「お前がこいつを殺していれば、子どもは死ななかった」と責められる予定でした。
 ヴィジランテ編自体かなり鬱展開の予定でしたが、5話で終わらせて早めに原作に行くために希望ある展開、そしてケリィ無双。そのせいであんまり活躍しなかったけどしょうがないね。

癒野(いやしの)流血(りゅうぢ) (色んな意味で救世主枠)

 コンセプトは純粋なヒーロー。個人的にこいつの名前が最もヒロアカっぽくできた奴。
 元は切嗣が殺さなかったことで状態が悪化することに病んでいるときに現れて、助けることは間違っていないと言う救世主枠。『ムーンフィッシュ』の時に出た子なんで出てくるのを予想した人も居るかも。
 自害した糸音を救うために能力がキリストっぽくなった救世主。
 何気にヒーローとして初めてのオリキャラ。よって今後の出番は少なく、出てもちょい役。
 唯一、役割にほとんど変更がなかった作者にとっての救世主。
 赤毛の正義の味方。

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