ただいま峰田で奮闘中。   作:とろろ~

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すみません。
暫く22.5話として緑谷君の話が続きます。
その①、その②みたいに。
たぶん三話分で終わる・・・はず。




22.5話 緑谷出久 ダイジェスト版 その①

「知ってるか!でくの坊って言葉があるのを?役に立たないって意味だぜ!無個性のお前にはピッタリだな!」

 

「デク!てめーには無理なんだよ!!」

 

「デク!まだ諦めてねぇのか?本当にバカだな!」

 

 

他にもいっぱい、本当にいっぱい言われた。けど、僕は・・・・ヒーローを目指すんだ。

 

 

あの個性が無いと言われた日から体を鍛えた。最初は、がむしゃらにやり過ぎて体を壊してしまった。後で調べてみたら小さい頃に体を鍛えすぎても意味は無いらしく、筋肉をしっかりつけるには高校生の前後の時期が良いと書いていた。トレーニングメニューを考え直さなくてはいけない。

 

考え直したメニューを始めて数年、いつもの日課であるヒーローの映像を某動画サイトで見ていた。オススメ動画を自動再生していると『俺の娘、天才のうえ可愛いのだが』という動画が流れた。

 

「何でだろう?」

 

とりあえずそのまま見ていた。出てきたのはピンクの髪の毛の女の子。自分と同じくらいの歳に見える。彼女は一生懸命に絵を描いていた。だがよく見てみると

 

「これって設計図?」

 

動画の中では女の子が紙にどんどん描いていく。

描き終わると今度は工具を取り出し、ガンガンと音を鳴らしながら作っていく。動画が暗転し、三日後というテロップが出る。そして女の子が笑顔で

『こんにちは皆さん!今日ご紹介するのはコレ!パンチをしても自分の拳を痛めないガントレット!これを装着し壁を殴ります。』

 

女の子がそう言って、ガントレットを着けて壁を殴った。そうすると殴った箇所に穴が開いた。

 

『どうでした?スゴいですよね!ですが少し失敗しました。拳を痛めませんでしたが』

 

彼女は言いながら上半身の服を脱いでタンクトップになり肩を見せると青く腫れていた。

 

『殴った衝撃で肩を痛めました。失敗です。ですが諦めません。良い改良をしてこそモノは出来上がるのです!可愛いベイビーちゃん達をこれからもいっぱい作りますよ!』

 

そう言って彼女の映像は終わった。

 

この動画は僕にとって衝撃的だった。以前から考えていた構想の一つ。サポートアイテムを持つこと。これはお金がかかるために中学生になったら新聞配達などのバイトで買おうと思っていたのだが・・・自分で作るなら・・・

 

それから数年。今は中学生。あれからお小遣いもお年玉も注ぎ込んで、やっと1つのサポートアイテムを作れた。その名も『スパイダー』。手首に巻き付けたブレスレットから粘着力の高い糸を、つまり某アメコミヒーローのクモ男と同じことが出来るようにしてみた。

 

何故作るものをコレにしたかって?それは、図書館で見つけた資料を参考にしたんだ。

 

国が運営する国立個性図書館。あらゆる個性についての本が置いてある。内容は個性の発展から個性の記録。個性に関する本がいっぱいあるのだ。

 

そこで読んだ一冊の本。そこには色々な個性犯罪者の個性が明確に書かれていた。それを読んでいると一人の女怪盗ヴィランが目に入った。名前は『女郎蜘蛛』。個性は『蜘蛛の糸』が出せること。出せる蜘蛛の糸の強度と太さは、この世に生きている最大の大きさの蜘蛛と同様である。言ってしまえば、ただの蜘蛛の糸が出せるだけ。つまり個性の意味はほぼ無かった。しかし、その女性は数々の盗みをやり遂げた。その一因になったのが個性と薬品を混合するサポートアイテムにより糸に強度を持たせたとか。

 

スゴい!これを作れれば!

 

思い立ったが吉日。僕は色々な情報を集めて研究をした。結果は・・・トレーニングの時間を削り、年単位の時間を使ったけど何とか出来上がった。ただ完全に

 

「昔の某アメコミヒーローがやってた感じになっちゃった。」

 

機能は強力な粘着力のある糸を出すこと。僕には蜘蛛の糸を出す個性なんてないから、糸のように出すことが出来る機能から作り、さらにそれを強化する薬品を混合した。

 

きっと「攻撃力のあるやつを作れよ。」「くだらない」と言う人もいるだろう。

でも、このサポートアイテムは新たな道具を作るのに丈夫な紐の役割を果たしたり、粘着力があるからヴィランを拘束したり、怪我をしている人の包帯の代わりにだってなる。立派な人助けが出来るんだ。

だがしかし、

 

「む、難しい」

 

アイテムは出来上がったものの、使いこなすことが難しかった。思った場所に『スパイダー』から出す糸を飛ばせない。使いこなすことが出来るようになるまで、さらに数ヵ月を要した。

 

そうこうしている間に中学生三年生。雄英の模試判定は合格圏内。本当に良かった。でもある日の教室で

 

「そういや緑谷も雄英志望していたな。」

 

「「「「はぁ~~~!?」」」」

「緑谷が!?」

「冗談だろ!!」

 

・・・嘲笑には慣れている。僕は・・・

 

「こらデク!」

 

いきなり机の上が爆発した。

 

「うわっ!か、かっちゃん。」

 

イスから転げ落ちた僕にかっちゃんは続けて言った。

 

「"没個性"どころか"無個性"のお前が何で俺と同じ土俵に立とうってんだ!?」

 

「そ、それは・・・」

 

僕はヒーローになりたいから!オールマイトみたいにカッコよく人を助けるヒーローになりたいから!

と言いたかった。でも、僕の口から出た言葉は

 

「別に張り合おうとか・・・」

 

情けない。

 

「小さい時からの憧れで・・・」

 

情けない。

 

「やってみないとわからないし・・・」

 

情けない。

 

「何がやってみないとわからないだ!!てめェに何がやれるんだ!?」

 

情けなかった。

 

 

 

帰り道、色々な記憶・・・というよりクラスの人達の顔が浮かぶ。どの人も個性を持っている。特に爆豪・・・かっちゃんの個性は凄い。今の時代、個性をもて余している人達が多い。そのため犯罪者がとても多い。そんな人達と戦うにはどうしても戦闘向けの個性が必須だ。かっちゃんは本当にこの時代のヒーローに合っている。

 

それに比べて僕は・・・鍛えてもそれなりの筋肉しかつかないことが分かった。サポートアイテムも、ちゃんとしたモノは作れない。

何よりも個性が・・・無い。

 

・・・見ないようにしてたのかも知れない。

このどうしようもない現実から目を反らしていたのかも知れない。

色々と不安な記憶が頭の中で濁流のように流れて押し寄せる。

そして、その記憶の中でも小さい時の記憶。病院から帰って来た時の記憶が再生された。

 

お母さんが泣いて後ろから抱き締めている。違うんだよ。お母さん。僕の言ってほしかった言葉は・・・・

 

 

『なれるだろ。』

 

 

ハッとして顔をあげる。当然のように誰もいない。でも思い出した。忘れちゃいけないのに!彼の言葉を・・・誰もが・・・無個性はヒーローになれないという世の中で・・・紫色の頭の少年の言葉と出会いを。

 

そうだ・・あの時に決めたじゃないか!周りのことなんて気にしちゃだめだ!上を向いて、つき進まなきゃ!!

 

 

「え、Mサイズの・・・隠れミノ・・・」

 

声に驚いて後ろを振り向くと、ヘドロのようなドロドロとした人が立っていた。そしてそのヘドロの人は僕に覆い被さり、口を塞いできた。

 

「わっぷ!?」(ヴ、ヴィラン!?)

 

「いや~助かったぜ。まさかあんな奴がこの町にいるなんてなぁ。おっと抵抗するなって。」

 

僕は必死に抵抗を試みた。だが泥を掻き回すような感触しかしない。

 

「へへっ無駄だよ。俺の体は流動的なんだ。ほら、大人しくしろって。あと30秒もすれば楽になるからよ。」

 

いぎが出来なっ!苦しぃっ!死ぬ。僕は死ぬのか・・・嫌だよ・・・誰か・・・・

 

意識が遠くなった時のドカンっ!とマンホールの蓋が空中に浮いた。そして

 

「もう大丈夫だ少年!私が来た!!」

 

え?

 

「TEXAS!」

 

オ・・ル・・

 

「SMASH!!!」

 

・・マイ・・・ト・・・・

 

意識を失う前に僕は感じた。彼の拳の風圧によって僕の体からヘドロの人が離れる感覚を。

 

これが僕のオールマイトとの出会いだった。




このお話は峰田実になった青年Aが主人公なのに緑谷君の話が続いてしまいます。この峰田が好きになってくださっている方々には本当に申し訳ないです。


今回の捏造設定

1、国立個性図書館。
2、緑谷君の幼少からのトレーニング。自作でサポートアイテム。


オリキャラ設定

女怪盗ヴィラン『女郎蜘蛛』
個性『蜘蛛の糸』
サポートアイテムである液体を自らの個性と合わせながら使うことで糸の強度が増す。
怪盗であるが盗みは基本的に悪徳業者からのみ。
所謂、義賊である。
だが趣味なのか稀に美術館からも美術品を盗んだ。しかし一定の期間が経つと返還されていた。
当然、盗みは犯罪であるためヴィラン認定されている。だが一般人に人気があり、ヒーロー達は捕まえるのに躊躇していた。


国立個性図書館所蔵の映像。
『女郎蜘蛛part5 美術館からの華麗なる・・・』
から一部抜粋

「さあ、今日も盗ませて貰ったわ。本当にヒーローさん達は無能なのね。」

「くそっ!追え!逃がすな!」

数人のヒーローが女郎蜘蛛の後を追う。その中に言動が可笑しなヒーローがいた。

「頼む!俺と結婚してくれー!!」

周りのヒーローや美術館員から真面目にやれ!とヤジが飛ぶが

「うるせー!あんなイイ女が居るんだぞ!つーか俺はファンとかじゃなく一人の男として惚れちまったんだ!一目惚れだ!!顔は仮面してるからわからねぇけど、一目惚れしたんだよ!だけど性格が良いのはわかる!だから言うなら今しかねぇんだよ!!あの女と!女郎蜘蛛と結婚出来るならヒーロー辞めたって構わないねぇ!!」

ヒーロー達は男の言い分に呆然としていたが女郎蜘蛛は微笑を浮かべて言った。

「面白いヒーローって居るものなのね。わかったわ。なら私を捕まえることが出来たら考えてあげる。」

女郎蜘蛛の言葉に可笑しな言動のヒーローは喜びの声をあげた。

「よっしゃーー!!捕まえればいいんだな!捕まえるって事だけなら俺の右に出るやつは一人しかいねぇ!!絶対に俺が捕まえる!!!」

そして男は頭の上に生えている玉を掴んで投げた。

───────────────

この映像より二年後。一週間に一回は行われる女郎蜘蛛の犯行は無くなった。ファンの間では捕まったのではないかと噂が駆け巡った。だが警察からの捕まえたなどの発表が無いことから噂は収まった。

三ヶ月後、とあるヒーローが「俺、ヒーロー辞めるわ。」と笑顔で引退したとかしていないとか。

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