こういう時って名前を出して、お礼を言って良いのかな?一応、名前を出されるのが嫌かも知れないので出さないでおきます。本当にありがとうございました。
21話です。
あと少しで入学。その前段階のお話です。
『試練』とは、信仰や決心の強さ、または実力などを厳しくためすことである。その他の意味では、その時に受ける苦難。と辞書に載っている。
そんな『試練』を今まさに受けてるわけで。
「良いぞ!もっと避けろ!」
男は笑みを浮かべながら炎の弾を手から撃ち出す。
「フハハハハ!なかなか動くではないか!」
そして、その炎を必死に避ける小さい男は峰田実。つまり現在の自分である。
どうも皆さん、マジで逝ってしまいそうです。峰田実になった青年Aです。
先日、雄英高校に受かりました。嬉しかったです。その夜は家族で寿司を食べました。とても美味でした。
そんな家族での食事中に、こんな会話がありました。
「さてまあ、受かったのは良かったが通学ってどうすんだ?雄英まで結構あるぞ。」
え?ああ、考えてなかった。
自分は現在、神奈川県にいる。と言っても神奈川県の端っこの方なので雄英までは距離があるのだ。近くの駅までも距離があるので自転車を飛ばして・・・最低でも雄英まで2時間はかかる。毎日は辛い。
「やっぱ考えてなかったよな。」
申し訳ない。
「まあ、いいよ。じゃあ引っ越すか。」
え?
「お前だけな。」
え?
「え?」
峰田母上と声が被った。
「え?じゃないよ。って、俺の愛しい妻まで初耳みたいに言わんでよ。前に言ってたじゃん。遠い高校だから一人暮らしさせようって。」
「冗談だと思ってたわ。」
「流石にこんなことで冗談は言わんだろ。金も一人暮らし分なら何とかなるし。」
えっと、つまり自分、一人暮らし決定っすか。マジでか。毎日の楽しみである母上の美味しいご飯が食べられないっすか。
そんな心が顔に出ていたのか峰田母上は
「反対です。まだこんな小さい子に一人暮らしなんてさせられません。」
断固反対のようである。
「なんとかしましょう。あなたなら出来るわ。」
「え~どうしたもんかなぁ。・・・あ~キツイけど一つだけあるかも。」
「あら、キツイの?」
「まあ、アイツんとこに行くからなぁ。面倒なんだよなぁ。」
というわけで来たのが、ほぼ毎日練習場を使わせていただき、大変お世話になっているエンデヴァーさんの事務所である。
「というわけで、物件っつーか、部屋をくれ。」
「何がというわけで、だ。馬鹿が。」
「え~いいじゃん別に~。どうせ空いてるとこあんだろ~。」
・・・No.2ヒーローに向かって、何て口の利き方なんでしょう。もう自分は頭が痛いです。いつもいつも峰田父上は何でこうなのでしょうか。
事務所内のサイドキックやらヒーローらしき人やらはコチラを気にしながら仕事をしている。
あ、気にしないでください。本当にアホな事を言ってて申し訳ありません。
「一人暮らし用がありゃ良いんだよ。どっか社員寮的なの持ってたじゃん。」
「あるにはある。だが貴様にやる義理はない。」
・・・あれ?一人暮らし?家族と住むんちゃうん?
「え~お前んとこと契約してんだから社員扱いにしとけよ~。」
「契約をしてるのも認める。だがな・・・」
二人が話をしていると
「エンデヴァーさん、お電話です。」
「少し待て。」
「すいません。急ぎの用だとかで・・・」
申し訳なさそうに言うサイドキックの人にエンデヴァーさんは「しょうがない」と言いながら電話をとりに向かった。
なあ、父上。
「あん?」
なんか昨日と少し話が違くない?
「一人暮らしのことか?」
そうそれ。
「俺には俺の計画があんのよ。人生設計的な。だからお前には本当は一人暮らしをして貰いたい。愛する妻にはスマンがな。」
え~マジか。・・・しかし何か気になる。この峰田父上が母上の言うことを利かないということがあるのだろうか?何か理由がある気が・・・
一人物思いに耽っていると、いつの間にかエンデヴァーさんが電話を終えて峰田父上と話をしていた。
「おい、チェイサー。」
「なんぞ?」
「貴様の息子は雄英に受かったらしいな。」
「え?おう、まあ受かったな。」
「俺の息子も受かった。」
「あ~、そりゃおめでとう。」
峰田父上が何が言いたいんだ?という顔を見せるとエンデヴァーさんが口角を上げて、にやりと笑い言った。
「少し試させろ。」
はい?
「はい?」
そして冒頭の『試練』に話は戻るのだが・・・自分ヤバい。逝ってしまう!!
「良いぞ!もっと避けろ!」
ここは、いつもの練習場である。最初に言っていた『試練』ですが、一応ご褒美がありまして。ご褒美の内容は物件です。社員寮の一室を貸してくれるそうです。無料で。雄英からは徒歩10分。とても高条件である。しかも自分には好きな物を買ってくれるらしいです。
峰田父上も自分も今から受けるエンデヴァーさんの「試させろ」の内容も聞かずに了承の返事をしてしまいました。
ちなみに内容は
「俺の炎を5分間、避け続けろ」です。
皆さん、内容も聞かずに了承するのはヤメましょう!自分みたいなことになりますよ。・・・ダレカタスケテ・・・
もうヤバいの!何がヤバいってエンデヴァーさんの炎ったら時間が経つに連れて温度が増してるの!
一発目の炎はね、軌道を見て顔に向かって来るのが分かった。だから峰田父上と訓練する時みたいにギリギリで避ける形をとったの。そしたらね!熱がね!顔の横をね!通過したの!顔の産毛がチリチリと焼けました!「アッッツい!!」ってことになりました。
次からは、最低でも20㎝は離れたとこを避けるようにしたの。そしたらね、どんどん熱が上がってるのよ!今では20㎝離れてても何か服が焦げ臭いの!泣きそう!っていうか泣いてます!!
「良いな!本当に良いな!チェイサー!貴様の息子は良い育ち方をしているぞ!」
エンデヴァーさん!テンション高いな!
「避け方だけは俺から見て盗めてたからな。まあ当然だな。」
おい父上!そろそろ止めろ!自分死にそうですけど!熱ヤバいって!マジで!
「あははははは!息子の泣き顔とかマジワロタ!」
アイツ終わったらコロス!!!
てゆーか見学に来てるサイドキックとヒーロー共!「あの小さいの凄いな。」「ああ小さいのにな。」とか小さい小さい連呼すんな!地味に心にくる!
そんなことを思っていると、その中の一人が時間を告げた。
「あ、あと1分です!」
あと1分・・・長いッス!
「ちっ、もう時間か。ならばラストスパートだ!おい小僧。貴様の避けっぷりに敬意をもって答えよう。今から10%の力まで引き上げて相手をしてやる。」
・・・あの、ちなみに今までの力って、どれくらいでした?
「3%だ。」
「誰かタスケテくださーーーい!!!!」
自分の悲鳴に誰も助ける様子はなく、その後エンデヴァーさんから怒濤の炎の球が押し寄せて来ました。
誰か助けろや!!!!
自分の記憶はココで途切れました。
気がついたら家のベッドで寝ていた。特に怪我もなく。
夢だったのか?
と思ってリビングに行くと、峰田父上が恍惚の表情を浮かべながら逆さ吊りになっており、胸には『僕は今日、息子を炎の中に投げ込みました。反省中』と貼り紙がしてあった。
夢ではなかったらしい。
とりあえず「ワロタ!」と言って爆笑していた峰田父上を思い出したので、殴っときました。
「あ、実ちゃん起きたのね。お疲れ様。ちゃんと大きいお部屋借りられたみたいで良かったわ。これで皆で住めるわね。明日から引っ越しの準備しましょうね。」
どうやら『試練』は上手くいったらしい。しかも部屋は大きいらしい。良かった。正直、最期は覚えていないのだが・・・まいっか。
明日から引っ越し準備、頑張ります!
次回は21.5話。
エンデヴァーさんと峰田父上の会話です。特にギャグ的な要素は無いはず?予定。