「なんでやねん。」
何が起こったか説明しよう。
トイレを探していたビルで、ヤの字が似合うロボを駆逐して外に出たら、受験生の皆さんがロボ相手に四苦八苦しながら頑張ってた。とりあえず参戦する。
少し戦ったが、思い出したように尿意炸裂。
すぐに近くのビルに入ってトイレを探し、見つけるも、何とここはビルの四階部分。
トイレを済ませ、手を洗いながら「早く下に行かなきゃなぁ。だいぶ時間ロスになってしまった。」と思っていたら突然デカい地震発生。
洗面台にしがみつき、体勢を安定させると何とトイレの奥の壁が崩壊。何が起きたと思ったらロボットのデカい顔と目が合いました。
以上です。
・・・本当に・・もう
「なんでやねん。」
逃げたいけど、この距離じゃ逃げれんだろうなぁ。泣きそうです。
-----別会場
「スギル様!早く逃げましょう!」
「そうです!あれが恐らく0pのギミックと言われていたものです!」
「たぶん、そうですよ!スギル様、危険です!一旦逃げて、それから他の仮想ヴィランを倒しましょう!」
と、口々に僕に言うのは僕が受けとめた女の子達十数人の中の三人である。特に一緒に行動する意味はないのだが、何故か行動することに・・・本当に何でだろうか?
仮想ヴィランも協力して倒しているのだが、これってポイントの振り分け、どうなるのかな?
とか、内心思ってました。
さて、彼女達の行動は、とても正しい判断だ。敵わないヴィラン。そんなのが出たら逃げて体勢を整えてから再度挑む。人として当たり前のことだろう。それに今は試験中であり、学生の身としては0pのギミック扱いのものより、1~3pのポイントのある仮想ヴィランを倒しに行くのは当然だろう。
・・・だけど、僕は思い出す。峰田君の熱く語っていたヒーローがヒーローたる考えを。
「『プロは、いつだって命懸け』」
「「「え?」」」
「僕の1番の友達がね、言ってたんだ。『ヒーローってのは敵わないと分かっていても、自分が危ないかもって思っても、それでも人を助ける』って。・・・試験とは関係ないギミック。0p。でも、敵わないから逃げて他の点数のある仮想ヴィランを狙うって、どうだろう?と僕は思うんだ。」
呆然としながら僕を見る三人に続ける。
「どうだろうって、考えて・・・結果、そんなのはヒーローじゃないって僕は思う。」
「「「・・・!!!・・・」」」
「三人共、今までありがとね。じゃあ、僕は行くから。」
ギミックがビルを押し退けながら歩いて来るのが見える。
さて、時間もないし早く行かなきゃ。
走り出そうとした時、予想外なことを女の子達が言い出した。
「スギル様!私も行きます!」
思わず振り返り、女の子達を見た。
「えっ?」
「私も行きます!」
「私だって、行きます!それに・・・」
「「「私達だってヒーローを目指してるんです!!!」」」
少しビックリしながら女の子達の顔を見ると、先程までとは少し顔つきが違うようで、目には何かの決意が感じられた。
「そっか。」
ギミックの方を見ると少しずつ、こちらに来るのが見える。結構な大きさだ。
何だっけ、この感じ?・・・ああ、思い出した。峰田君と大きなモンスターを狩るゲームをやってるときの映像みたいだ。あちらはゲームで、こちらは現実なのだが。峰田君がこのゲームに誘ってくれる時って、確かいつもこう言っていたよね。
「じゃあ三人共、『一狩り行こうぜ!!』」
「はい!(スギル様、カッコいい!)」
「行きます!(ワイルドな感じも良いですね。)」
「頑張ります!(その感じで罵られたいかも。)」
こちらに逃げてくる受験生を避けながら、四人はギミックに走り出した。
とある試験監視ルーム
「くけけ・・・どうなってんだろうな・・・」
ゴツゴツとしたマスクから目を光らせながら画面を見つめる男が言った。
「パ、パワーローダー先生?」
「あの男の持ってた地雷。人体に影響なく機械にだけ効く強力な電磁波を発揮しやがった。・・・どういうことだ?ここまで強力なら人体に影響はあるはずだろう?・・・ナニかの個性で作ったものか・・・」
ブツブツと一人で喋っている。
正直怖いので皆触れないように別の話題に移った。
「それにしてもアレですね。まさか受験生同士で協力して倒すと思いませんでしたね。」
「そうですね。中々のコンビネーションでした。ちゃんと攻撃、防御、支援、指揮と分割して行動してましたね。」
「ええ、とても良かったですよ!あの子達は受験前に何処かで出会ってたのでしょうか?」
「どうでしょうね。中学は確実に別なのですが、何処かで会っていても不思議ではない程の連携でした。」
「いやいや、本当に素晴らしかったよ。彼らの今後に期待大さ!さて、他の会場はどうなってるかな?」
「皆!こっちを見てくれ!かなり熱いぜ!」
『ッッスマーシュッッ!!!』
そこには逃げ遅れた女の子のために、足の骨を折り、腕の骨を折りながら0pのギミックを一撃で倒す男の子が映し出されていた。
「イエッッーーー!!!!」
「おお、素晴らしい。」
「この子、良い個性を持ってるのに何故こんなにも目立ってないんだい?」
「ふむ・・・どうやら緊張してか、本来の力が出ていないらしい。しかし、これは本当に素晴らしい個性だ。これならメンタルさえ良くなれば良いヒーローになるな。」
試験官である先生達は一つのモニターに夢中になっていたが、一人だけ違うモニターを見て唸る男がいた。
「ほう。やるじゃないか。」
「どした、イレイザーヘッド?さっきの見ねぇの?」
「ふん。俺は興味ないな。それよりこちらだ。」
そこには小さな男の子がギミックの前から走り去っていく映像が映っていた。
「・・・どゆこと?」
「少し巻き戻すから見ておけ。」
「ああ・・・・・・・おお?マジか?」
「マジだ。」
そこに出たのは小さな男の子が、あまりにも地味にギミックの動きを完全に停止させた姿だった。
-----峰田の試験会場
「し、しんどかった!」
やることは簡単だったけど、かなりしんどかった!
『目があったら戦いの合図!』
え?顔も合わせず素通りで歩いてたはずなのに理不尽すぎる!
そう思ったのは、もう何年前のことだろうか。某有名なゲームのセリフなのだが。
今、目の前の大きなロボットの顔がそんなセリフを自分言っている気がしてならない。
ほら、もう今もね、ゴゴゴゴゴって言ってるもの。もう漫画みたいに彼(ロボット)の後ろで音が見えるみたいに感じるもの。ゴゴゴゴゴって。
と思ってる間にロボットは動きだし、完全にこちらを向いて右腕を引き絞るように引き、構えた。
今から何が起こるかよく分かる行動である。
・・・うわぁ、これは酷い。
ロボットは、拳を握り前に繰り出す。正拳突きである。しかも完全にこちらに向けて。
ふざけんなや!グレープラッッうわ!
迫り来る拳にグレープラッシュを浴びせながら左前に避けたのだが、急な落下する感覚に襲われる。
忘れてた。ここは4階。しかも部屋はかなり崩れていたことを。
落ちて行く身体を何とかしようとしても、どうにもならず自分の身体は見事に地べたに激突した・・・が直ぐに跳ね上がった。そしてグルグルと回りながら綺麗に着地を決めた。
・・・あ、危なかったー!!
説明しよう。実技試験開始10分前に遡る。
・・・まあ、単純に【開発少女part14】でやっていた発目明の真似をして、服の中にモギッた玉をペタペタと貼っておいたのだ。
戦闘準備というか、備えって本当に大事ですね。
「に、逃げろー!!」
「みんな!早く逃げるんだ!」
「あ、あんなの敵うわけないじゃない!」
と遠くから聞こえて来る。
うん。自分もそう思います。ので逃げ・・・
ギギギギガガがが
異音を出しながら、ビルから色々な破片を着けた拳を抜いた彼(ギミック)がですね、何故か見てくるのです。
『魔王からはニゲラレナイ』
とでも言ってそうです。
・・・・・・正直、ゲームや漫画でこういうのを倒すやり方って、何個かあって二番煎じで嫌なのですが
「相手しても良いけど・・・修繕費は払わんよ。」
こうして、攻撃力0の自分とポイント0のギミックとの戦いが始まった。
とある試験監視ルーム
「ねぇ、相澤くん。私にも見せてくれないかしら?さっきの坊やの映像。」
「ミッドナイト。えぇ、いいですよ。」
「ありがと。・・・ふふっ、彼、良いわよね。」
巻き戻った映像を見ながら、ミッドナイトは顔を赤くしている。どうやら小さな男の子が半泣きになりながら、ギミックの拳を避けている姿が気に入ったようだ。
・・・なんでこの女は教師をしてるんだ?
と、思っても口にはしないイレイザーヘッド。
「ねえ、ここからどうやって倒すのかしら?」
「見てれば分かりますよ。」
「あら、そっけないわね。」
「・・・・・奴の動きをよく見て下さい。」
「動き?・・・ギミックと一定の距離を保ちながら拳を避けている?」
「それだけじゃありません。奴はそこらに落ちている瓦礫の影に隠れながら動いてます。」
「それはそうでしょ。少しでも身を隠しながら移動するわよ。ただこのサイズにそんなことしたって無意味じゃない。ほら、ギミックが瓦礫ごと殴ってるわよ。」
かなり大きな音を出したがら瓦礫ごと押し潰さんとギミックが小さな男の子を狙っている。そして飛び散る瓦礫。無惨にも粉々になっている。
「・・・粉々になったにしては瓦礫の量が少なくないですか?」
「え?・・・あら本当ね。」
いったい何が、と言う前にギミックがおかしなことになっていることに気がついた。
「ギミックの拳が大きくなってるわね。あれは砕けた瓦礫?」
「ええ、奴の個性は頭の玉が粘着材の役割を果たしますからね。ギミックの拳を見ると紫色の玉が無数に見られます。隠れたときに瓦礫に着けているんでしょう。更に、この後が見物ですよ。」
「そうなの?」
映像を見ていると先程まで半泣きになっていた男の子が瓦礫にも隠れず、平然な顔をしてギミックの前に現れた。
それをギミックは殴らんと拳を振り上げ、打ち下ろした。
「なにを・・・危なっ!」
しかし、打ち下ろした拳は小さな男の子の横に逸れ、そのまま動かない。そしてギミックからは煙が吹き上げた。
「な、なんなの?」
「当然と言えば当然でしょう。今回のギミックは受験生用になっており、図体はデカいが耐久性はないですから。瓦礫のような設計外のモノを着けて殴ってれば重さでイカれるでしょうね。」
ミッドナイトは、なるほど、という顔をしながら少し笑みを浮かべる。
「半泣きになってたのも全ては演技だったのね。少しでも自分が弱ってると思わせるための。楽しみだわ。この子が入学してきたら・・・」
ゆっくりとその場を去るミッドナイト。
ミッドナイトが去る際に「いっぱい虐めて、本当に泣かせてあげたいわ。」と聞こえたが聞こえないことにした。
そして壁には実技試験の結果が出ている。
10位 峰田実
VILLAN(ヴィラン) 38P
RESCUE(レスキュー) 18P
10位 矢吹スギル
VILLAN(ヴィラン) 19P
RESCUE(レスキュー) 37P
「本当に楽しみですよ。」
というわけで実技試験終了です。
峰田くん。矢吹くん。共に10位にしました。
これで二人はA組、B組に分けられます。良かった。
あ、スギルくんと一緒に戦った女子三人は受かりませんでした。スギルくんを含めた四人で戦っちゃったため、ポイントも四分割されちゃいました。さらにレスキューポイントが無かったためです。
そして彼女達は、ヒーロー科に入るため頑張って士傑高校に入学します。
という考えですが士傑高校が出るまで書くの?と言われれば・・・頑張るとしか言えない。