ただいま峰田で奮闘中。   作:とろろ~

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今日も峰田。


12話

月曜日。

起床、登校、勉強、帰宅、出発、ビル、訓練、帰宅、就寝。

 

火曜日。

起床、登校、勉強、帰宅、出発、ビル、訓練、帰宅、就寝。

 

水曜日。

起床、登校、勉強、帰宅、出発、ビル、訓練、帰宅、就寝。

 

木曜日。

起床、登校、勉強、帰宅、出発、ビル、訓練、帰宅、就寝。

 

金曜日。

起床、登校、勉強、帰宅、出発、ビル、訓練、帰宅、就寝。

 

土曜日。

起床、出発、ビル、訓練、訓練、訓練、帰宅、就寝。

 

日曜日。

起床、出発、ビル、訓練、帰宅、就寝。

 

・・・・・・・エンドレス・・・・・・

エンドレス・・・エンドレス・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

 

 

 

・・・死ぬわ!!!!!

 

「うお!ビックリした。なんだよ急に。」

 

隣で筋トレをしていた峰田父上が目を丸くして言った。

 

なんだよ急に。じゃねぇよ!なんだこの状況!

 

「ん?何か問題か?」

 

問題しかないわ!休みが無いやろがい!休みをよこさんかい!

 

「え?休みたかったの。休めばいいじゃん。」

 

・・・は?

 

「いや、別に鍛えてやるとは言ったけど強制な訳ないじゃん。」

 

・・・え~っと、じゃあ休んでOK?

 

「OKOK!好きにしろよ。むしろ何でコイツ毎日鍛えてんだって思ってたし。俺なんて土日は基本家にいるじゃん。」

 

え?そうだったっけ?あれ?そういえば土日に家を出るときに見送られたことがあったような・・・。

 

「おいおい、その年でモノ忘れか?全く可哀想なy」

 

あれ?でも確か『土日も鍛えてやっから』って言って朝早く叩き起こされて・・・思い出してきた。そうだよ。確か変な香りがして気が遠くなって気がついたら玄関の外にいて『あとで行くから先に行ってろ』って言われて、何か頭がくらくらするけど鍛えなければって思って訓練場に行ったんだった。

 

そう言うと峰田父上が目を逸らしながら額から汗を流し始めた。

 

おい。おい、こっち向けよ。自分に何をした。

 

峰田父上は溜め息と共にとんでもないことをぶちまけた。

 

「ふう。わかったわかった。言うよ。ぶっちゃけ、ちょっとしたサポートアイテム使った。そして理由は・・・夫婦でイチャイチャしたかった!それ以外に何もない!!」

 

・・・は?

 

「いいかね息子よ。夫婦ってのは色々とあるんだよ。特に今回はな、お前に付きっきりだったろ。鍛え始めなんてさぁ、ずっとお前といたじゃん。女っ気ないじゃん。辛いじゃん。だからやった。後悔はない。」

 

な、なんて正直なヤローだ。怒る気しか起きない!ので、シネー!!

 

助走を付け、わりと本気で殴りにかかる。しかし、峰田父上は軽くステップを踏み紙一重で避けた。

 

なんだと?!

 

「ふっ、甘い。砂糖以上に甘いね。今までなんだかんだで戦闘訓練もしてただろ。だからな、お前の動きは把握してんだよ。」

 

なん・・・だと・・・くそっ!これならどうだ。

 

自分は峰田父上を追うようにどんどん突っ込みながらパンチを繰り出していく。しかし、どうやっても峰田父上は紙一重で避け、捉えることが出来ない。

 

「いいか息子よ。俺の持論だがサイドキックに大事なことは何だと思う?」

 

大事なこと?ヒーローをサポートすることだろ。

 

「正解だ。つまりサイドキックはヒーローより先にやられちゃあいけないんだよ。つまりサイドキックに必須な能力とは」

 

?・・・そういうことか!生き残る!つまりは回避能力!

 

「いやはや優秀優秀。正解。」

 

だけど今までの戦闘訓練は半分は当たってたじゃねえか!

 

「まあスピードはあったからな。だが慣れちまえば・・・それだけだ。」

 

・・・クソったれーー!!

 

放たれたそのセリフに自分は必殺技を繰り出そうとする。しかし・・・

 

グレーp

 

「バカめ!」

 

自分が頭に手をやる前に峰田父上は脱兎の如く訓練場の入り口に走りドアを開け外へ出た。

 

は、速い!

 

「お前は気づいてなかったようだから教えてやる!それをやる前のお前、数瞬だが完全に動きが止まるぞ。」

 

な、マジか?!

 

「超ジーマー。そのクセ直しておけよ~。初見には効くが慣れたらどうってことないぞ。壁も壊せない攻撃力無しの個性だからな。もっと考えた動きをしろよ。では、さーらばー!フハハハハハハ!!」

 

笑い声がドアから遠ざかっていく。峰田父上に逃げられた。

 

だが今は何より気持ちがモヤモヤする。

 

別に自分が強いなんて思ってはいなかった。だがこの気持ちは何だろうか?とてつもなくモヤモヤするのだ。

これはもしや悔しいのか?いや、負けて当然なのだ。フリーだなんて言ってもサイドキック。所謂プロだ。プロに負けて悔しいとかあり得ないだろう。

 

腕が震えている。

 

悔しいなんてあり得ない。プロに負けたから悔しいなんてバカである。

 

しかしながら・・・

 

「・・・クソがぁぁぁ!!!!!」

 

自分はバカである。そして同時に思った。

 

「・・・プロってスゲーなぁ。・・・ふはっ!アーハッハッハッハッハ!!」

 

笑いが込み上げてきた。

 

今の身体になってもう八年。プロになるためにずっと鍛えてきたけど、まだまだ足りない。足りなすぎた。

 

今までは正直、生き残るために鍛えたてたところが大きい。だが今は

 

「あの余裕しゃくしゃくな峰田父上をぶん殴る!」

 

という目的が出来た。

 

よっしゃ!今から訓練・・・は無理だな。

 

身体が重い。ゆっくり動かすのが精一杯である。

 

今日は帰って寝るか。

 

訓練着(ジャージ)から着替えてビルの地下階段をゆっくりと上がる。

 

ダルい身体を動かしながら階段を昇りきると驚くべき光景が目に入った。

 

その光景とは峰田父上がボコボコにされ、一人の女性の、しかも片手によって吊り上げられていたのである。

 

 

 

 

「あら?今日はだいぶ疲れたのね。早く帰りましょうか。」

 

さらに驚くべきことは、その女性。峰田母上である。

 

今だアイアンクローをされながら吊り上げられている峰田父上は苦しそぅ・・・ではなく幸せそうにハァハァ言っている。

 

何でこのような状況になったのでしょうか?

 

「うーん、なんでかしら?この人は何か言わなかった?」

 

思い当たる節が特に無いのですが?

 

「そう?・・・休日の話とかしなかった?」

 

・・・・・・イチャイチャ?

 

ミシッ!!

 

「あらあら、したのね。やだわ恥ずかしぃ。」

 

ミシミシミシ!!

 

あの、母上・・・父上の頭蓋骨からしちゃいけない音が・・・

 

「大丈夫よ。ちゃんと手加減してるから」

「手加減なんてするじゃねぇ!」

 

ミシミシミシミシミシッパキッ!!

 

「あふん。」

 

あ、逝った。

 

父上自らの言葉でトドメを刺された父上は、母上の肩に担がれ荷物のように扱われる。

 

自業自得とはいえ、峰田父上をこのように簡単に鎮圧出来る母上。もはや

 

「あっ、さっきの話は忘れるようにね。」

 

恐怖である。

 

しかしながら、まさか母上が恥ずかしさを暴力で隠す暴力系ヒロインとは思わなんだ。

 

「何か言ったかしら?」

 

い、いえ何もないです。サー!

 

「じゃあ帰りましょうか。」

 

イエッサー!

 

「サーよりママかしら。」

 

サー!じゃない!イエス、マム!!

 

「マム。・・・うん、まあよろしい。何か食べたいものはある?」

 

カレーが食べたいです!マム!

 

「じゃあ買い物しなくっちゃ。行きましょうか。」

 

・・・そのまま行くでありますか?

 

「何か問題?」

 

問題しかありませんマム!

 

「じゃあ問題ないわね。さ、行きましょう。」

 

イ、イエスマム。

 

 

こうして、今日は新たな目標と峰田家の力関係を再確認した。

 

 

 

 

 

「・・・・フヒ。俺の妻は最高や・・・」

 

ボソッと聞こえた言葉に自分は・・・

 

ドMがこの世の最強なのか?

 

と本気で悩んだ。

 

 




父上が今日も峰田でした。

実となった青年Aは果たして強くなるの?

強くなりますよ。たぶん。

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